ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

行きはHEAVEN、帰りはHELL ~笹川流れマラソン~ 【HELLの巻】

2023-04-03 16:02:39 | RUN

折り返し点を回ると、今までの向かい風を感じなくなった。

これは走りやすい。

風に押されてこのままの速さでいけるといいなあ、そう思って1km余りを走って行った。

目の前にそびえるは、脇川漁港にかかる脇川大橋。

この橋がコースで最高のアップダウン。

来るときもペースを乱さずに走れたから、大丈夫。

…そう思っていたら、なんだかおかしい。

後ろのランナーに次々抜かれ、ちょっと息苦しくなってきた。

あれ?へんだな…?

 

今までになかったきつさを感じ始めた。

何度も深呼吸をして、体に酸素を送り込もうとしながら走った。

1キロのラップタイムが5分台から6分10秒台へと落ちてきていた。

 

折返しまでに抜いた、何人ものランナーに抜き返されるようになってきた。

前半と違って、今度は背後に付いていく余力はなかった。

 

 

14㎞付近で、後ろから「やっと追い付いた」という声が聞こえた。

横を向くと、先に行ったはずのSIさんだった。

「いやあ、トイレに寄ったら遅くなってしまったよ」

と言いながら、彼はスマホを取り出して走りながら、2人が収まるように自撮りした。

 

「いやあ。ちょっとまた胸が苦しくなってきたから、ゆっくり行くよ。お先にどうぞ」

私はそう言って彼に先に行ってもらった。

 

健脚なSIさんとの距離は、みるみるうちに開いていった。

15kmを過ぎると、だんだん顔を上げて走る元気がなくなってきた。

首を前に傾け、顔を前方ななめ下に向けて走る。

顔を上げるとくるしくなるので、せっかくのさわやかな海の美景もあまり見ずに、ただただ前に進もうと思うようになった。

とにかく、トンネルの前には必ず上りがある。

これがきつい。

前に進みたいのに、自分の思ったスピードで進まない。

当たり前だ、足が動かずピッチが落ちている。

だから、淡々とペースをキープして走る女性ランナーや年輩と思われるランナーにあっさり抜かれていく。

 

きついけど、前へ。

きついけど、前へ。

そればかり考えながら腕を振った。

 

行きはよいよい、帰りはこわい。

「通りゃんせ」の歌の通りだなあ…と思いながら進んでいる…つもりだが、まどろっこしい。

まさに今、行きは天国、帰りは地獄。

行きも帰りも同じ道、同じ距離を走っているはずだが、kmの標示がなかなか出てこない。

 

いくつ目か分からないがトンネルへのきつい上りで、ついに歩いてしまった。

だけど、腕は大きく振った。

そして、思った。

 

こんなにつらい思いまでして走っているなんて、なんのため?

笑っちゃうよなあ。

つらければ、走らなければいいのだ。

だけど、なんで走っているの?

 

…よくわからないけどさ、走るのをやめたくないんだよ。

こうやってきつい思いを味わえる。

これも生きているってことなんじゃないか!?

生きていることを実感できているんだ。

すばらしいじゃないか。

 

そんな自問自答を繰り返しながら、50代で亡くなった高校時代の同級生たちや先日彼岸に訪れたT君たちのことを思った。

 

笹川流れの最高の景勝地まで戻ってきた。

あと3km。

されどまだ3kmもある。

 

懸命に進み、あと2km地点を過ぎると、桑川の漁港が目に入った。

右奥の最も遠いところ、あそこがゴールだ。

がんばれ、がんばれと自分を励ました。

 

いよいよ20㎞地点。

あと1kmだ。

歩いている人もいるが、私は歩かない。

 

桑川駅のある夕日会館を過ぎると、あと500mほど。

後ろから走ってきて横から抜いて行こうとする女性ランナーと目が合った。

「淡々といいリズムで走れてますね、うらやましい」

と声をかけた。すると、私のアルビユニを見て、問いかけてきた。

「昨日も応援に行ったのですか?」

「はい。残念でした」

「あのレッドカード、もったいなかったですね」

「はい。今の私もレッドカードをもらって、走らされている気分です。どうぞお先に」

なんて会話を交わしながら、先に行ってもらった。

 

多くのランナーがラストスパートする中で、私は左脚のふくらはぎや右脚の太もも裏がつりそうになって、さらに抜かれて行った。

ようやくゴール。

ゴールゲートに到達したのは、2時間10分を30秒ほど過ぎたところだった。

でも、とにかくゴールしたぞ。

やった。

ひどい記録だけど、ハーフマラソンを完走できた。

 

ただ、今後もレースに出るためには、いくら体がきつくなるといっても、日頃からもう少しジョギング以外に何か工夫する必要があるな、と思った。

そうしないと、毎度こうして「行きはHEAVENで帰りはHELL」になってしまう。

体はこうして老化していくのだから、そのスピードを緩める方法があるはずだ。

ゴール後、縁石に座り込みながら、完走した喜びと一抹の悔しさを覚えていたのだった。

以上、自己大会最低新記録だったけど、奮闘したつもりの5年ぶりの笹川流れマラソン大会であった。

 

コメント
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