信じられないような、見事な逆転劇をみることができた。
ハーフマラソンを走ってへとへとに疲れ切ったまま、スタジアムに駆け付けると、すでに試合が始まって5分ほどたっていた。
サッカーJ1リーグ第8節、アルビレックス新潟対アビスパ福岡。
新潟は、前半のうちに、PKやCKから失点してしまい、0-2の窮地に陥った。
疲れ切った体がさらにだるくなりそうな私だった。
前半は、とにかく対戦相手のアビスパ福岡の選手の動きが非常によかった。
新潟の選手たちに対するプレスは強いし、セカンドボールはよく拾うし、さすがJ1リーグ現在3位だけのことはある。
前半を終えて2-0の試合は、サッカーでは意外と危険なスコアだという。
だけども、堅守の福岡は、ここまで7試合で5失点しかしていない。
そのチーム相手に逆転どころか、同点に追いつくのも難しいだろうけど、なんとかそうなることを期待した。
危険なスコアへの期待が実現に近くなったのは、なんと後半開始早々だった。
ペナルティエリア左から得たFKのチャンスに、伊藤涼太郎がダイレクトに蹴り入れたのだった。
お見事!
これで1点差となったが、そこから試合は攻守の見応えがある互角の展開で進んだ。
こう着状態を打開するため、71分、松橋監督は、3人の選手を一気に交代させた。
鈴木、ダニーロ、太田→谷口、松田、小見。
84分には、秋山→島田。
これが、効果的に働いた。
特に松田。
右から積極的にペナルティエリアに進入し、ゴール前にボールを上げるなど、脅威となった。
反対に、福岡は、新潟のウラを取ろうとするようなボールが多くなった。
それが逆に、新潟がボールを回収しやすくなって、チャンスシーンが多くなってきた。
だが、時間は進み、5分のアディショナルタイムもすでに半分が過ぎようとしていた。
それでも、あきらめずに追いつこうと攻める新潟は、93分、涼太郎→谷口→涼太郎とワンツーを使うと、見事な涼太郎の同点ゴールが、ネットを揺らした。
場内は、大興奮!
でも、涼太郎はその名の通り、クールで表情を変えない。
試合終了まであと1分ほどしかないが、ここで勝ち越されたくはない。
一度福岡の攻撃をしのぐと、次は新潟の番。
左奥に攻め入った小見が、右の松田にパス。
松田は、島田とのパス交換の後、鋭く攻め入り、ゴール前にボールを送る。
そのボールは弾かれたが、転がった先にいたのは、涼太郎。
ゴール正面から美しいシュートがズバリと決まり、ゴールに突き刺さった。
新潟、大逆転!
涼太郎のハットトリック!!
さすがに今度は、彼も感情むき出しに駆け出すと声を上げ、仰向けになって倒れた。
そこに何人ものチームメートが折り重なっていく。
スタジアム、大熱狂!!!
目の前のおばちゃんたちも振り返って、私たちとハイタッチ!
おばちゃんたちのの首元には、涼太郎の13番のタオルマフラーがあった。
試合終了!
興奮の大逆転勝ちだった。
「ホーム強いっすねえ!」
涼太郎の叫びが、心地よかった。
勝つと負けるは大違い。
もし負けていたら、開幕当初の勢いが完全に失われた、と言われたことだろう。
ところが、3位の堅守のチームから3点を取って逆転勝ちだ。
これからの戦いに勢いが生まれた。
これでここまで3勝3分け2敗。
順位も8位まで上がった。
さあ、上昇気流にのって行こう!
Visca Albirex !!!
大逆転劇で身も心も軽くなり、ハーフマラソンの疲れを忘れて、駐車場までの道を走ったり速足で歩いたりした私なのであった。