ヴィオロンチェッロ・ダ・スパッラの最大の利点は、奏者がチェロとちがって自由に動けるというところ。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ヴィオローネを、すべて腕と肩でささえてひけるということになれば、そのアンサンブルは、たとえば歩きながらでも演奏できるということになり、ルイ14世の「24のヴィオロン」もそういうものだったかも、と想像してみたりします。王にしたがい歩きながら、また王の行くところどこでも、演奏できたということになります。映画「王は踊る」(音楽はムジカ・アンティクヮ・ケルンが担当)でも、そうしたシーンがあればおもしろかったのですが。
そんな愛好家の夢想はさておき、ヴァイオリン奏者にとっても、ヴィオロンチェッロ・ダ・スパッラ、奏者としての領域をひろげる夢のような楽器だといえるでしょう(さらなる検証と実践が必要だとしても)。いわゆる古楽系ではないヴァイオリン奏者もスパッラに手をだしはじめているようで、YouTubeでもセルゲイ・マーロフ Sergey Malov の演奏を視聴できます(最大1080pの映像で音も良好。「Sergey Malov plays Violoncello da spalla.」で全4本)。マーロフの楽器もシギスヴァルト・クイケンや寺神戸亮の楽器と同じく、ディミトリー・バディアロフ製作の楽器です。