百日紅の花が咲いている間に浮見堂を今年は訪れてみたいと、猛暑の中で思い続けていた。
9月にはいってからもまだ咲き続けている百日紅が、きっと待っていてくれたんだろうなぁと鷺池の周りを散策しながら、今になってしまったけれど、きてよかったと花も浮見堂も、鷺池も、いとおしく眺めた。
青空にピンクの百日紅は優しくよく似合う。
浮見堂の中で何かの撮影をしていたので、邪魔になってはいけないので、なるべく人が写らないようにして、好きな景色を切り撮った。 ボートに乗る人がないのか、きちんと繋留されている。
学生時代休講のときなど、よくここに足を運んで、ボート遊びをしたものだった。
池も浮見堂も、50数年前と何も変わらない。塗装したボートだけは、過ぎ去った日の遠いことを思わせる。
鷺池に浮かぶ六角形のお堂は檜皮ぶきで、周りの欄干と調和して池に映る姿も、奈良公園の中で最も人々に愛されている風景だ。この日撮影をしていたのは、近く結婚式を挙げるカップルの「前撮り」とのことだった。
浮見堂は大正5年に建てられて、平成3年~6年にかけて修復をしたのだそうだ。
撮影が済んだので浮見堂に行ってみた。靴を通して木の板の感触が懐かしい感じだ。
欄干のぎぼうしの向こうに百日紅の並木が見えるはずだけど、今は、花が少なくなったのか花の色がわずかに見えるだけなのが、季節の移りが見えるようだ。
更に季節が進んだときこの上の額縁は、紅葉したカエデの彩が美しいことだろう。
春日奥山も鷺池に映る空も、白い雲も浮見堂を中心に今目の前に広がる夏から秋への空気が入れ替わったような日に、ここにこれたことが良かったと再び思う。
人力車も足を留めてお客さんに浮見堂の美しさを話しているのだろう。鷺池の傍にある水禽屈。ひしゃくで水をすくって敷き詰めてある石の上に水を流して耳を済ませると、地の底から癒しの音色が聞こえてくる。
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