浮見堂を見た後、丸窓のある江戸三の下の道を駐車場へむけてのんびり歩いていた。
この時点では、鹿の姿が全く見えなかったが・・・
左にわずかに写っているおじさんが、自転車で来たときのこと。あちこちから見る見る鹿が集まってきた。
おじさんの手には何かが見える。江戸三を写していた私は、賑やかになった道端へ行ってみた。
おじさんは、自転車の前籠から、次々と食パンの端(みみ)を出して、集まって来た鹿たちに与えると、どの子達も食べることに一生懸命だ。
すぐに一袋のパンの耳がなくなってしまう。自転車の前籠に詰められるだけつめて持ってきたおじさんは、「コーヒーを飲みに行く喫茶店で溜めて置いてくれるので、こうしてここに持ってくるのですよ。」写真を撮りながら見ている私に、話しかけてくれた。
鹿はおじさんの自転車をよく知っているらしく、他の自転車には知らない顔で見送っていたのに、おじさんの自転車には、今まで何処にいたのかしらと思うほど、短い時間に集まってくる。
もう何年も続けているとのこと、おじさんは、無心に食べている鹿を優しい目で食べつくすまで眺めていた。
もうずっと以前のことだが、大仏殿の裏の大仏池の畔で、やはりパンの耳を持ってきて鹿に与えているおばさんを見たのを思い出した。
街の優しい人に温かく見守られているのだなぁ。
おじさんが去り、鹿も去ったので、私も駐車場へとその場を後にした。
興福寺の五重塔の上に、秋の雲が流れているのを見ながら~~~。
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