(オリーブの小枝、白いハト、青い地球、レインボー・・・すべて集めてみましたといった感じで気恥ずかしくもありますが アメリカ・シカゴのようです “flickr”より By Zesmerelda http://www.flickr.com/photos/zesmerelda/562173560/)
【「オリーブス・オブ・ピース」】
パレスチナ情勢がどうこうといった話ではありませんが、印象に残ったトピックスが下の記事
****平和のオリーブ:イスラエルとパレスチナの農家が共同生産****
イスラエルとパレスチナのオリーブ農家が共同で「オリーブス・オブ・ピース(平和のオリーブ)」と銘打ったオリーブオイルを製造し、特産品として海外に売り出そうと奮闘している。
この共同作業はイスラエル、パレスチナの信頼醸成の一環として、日本の支援で05年に始まった。
オリーブはこの地域の主要産物で、その良質さには定評がある。双方のオリーブ農家40人が合宿して相互理解を深めながら、品質向上や輸出のノウハウを学び、イスラエル産とパレスチナ産のオリーブをブレンドして商品化した。
初の海外受注は日本企業から舞い込み、3月に200本(500ミリリットル瓶)を輸出した。現在、欧州へも販路を拡大しようと関係機関との調整を続けているという。
混迷する和平交渉に先行して実現した草の根の「和平」。双方の調整役を務める在イスラエル日本大使館の笠井香代・専門調査員は「『平和のオリーブ』が世界に流通し、この地で起きていることへの関心を高めるきっかけになればいい」と話していた。【6月2日 毎日】
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オリーブの枝と言えば平和の象徴。
「これは『旧約聖書』に基づく。神が起こした大洪水のあと、陸地を探すためにノアの放ったハトがオリーブの枝をくわえて帰ってきたのである。これにより洪水が引き始め、オリーブの枝が水の上に現れたことが知れたのである。」【ウィキペディア】
ラベルの図柄はオリーブの枝をくわえた白ハトで決まりではないでしょうか。
(実際どんなラベルか知りませんが・・・)
ささやかな“草の根”の取り組みですが、イスラエルとパレスチナの融和という壮大な目標につながる夢を感じさせる企画に思えます。
こんな取り組みを日本が支援して実施しているというのも嬉しい話です。
政府やメディアがパブリシティで支援すれば、多くの人の関心を引くのではないでしょうか。
個人的にも入手できるなら1本ほしいと思います。
販売が軌道に乗れば、さらに参加農家をイスラエル・パレスチナ双方で増やし、オイルのブレンドだけではなく、同じ農園で両者が共同で作業して作ったオリーブも将来は・・・なんて。
【約束の地】
パレスチナの問題を硬直させているひとつの要因は、イスラエルにとってはこの地が“約束の地”、旧約聖書に記されている“神がアブラハムの子孫に与えると約束した土地”である・・・という考えです。
ユダヤ教ではアブラハムは全てのユダヤ人の祖とされているそうです。
ただ、イズラム教ではユダヤ人に加え、全てのアラブ人の祖でもあるそうで、そうなると“約束の地”の話も全く違ってきます。
聖書のことは全く知りませんので、この話はここまで。
この話を取り上げたのは、最近イスラエルである本がベストセラーになっているという記事を目にしたからです。
長いですが全文を引用します。
****イスラエルで「建国根拠なし」本、ベストセラーに****
建国から今月60年を迎えたイスラエルで、建国の原動力である「シオニズム運動」の根拠を否定する著書がベストセラーとなっている。題名は「ユダヤ人はいつ、どうやって発明されたか」。
シオニズム運動は、古代に世界各地へ離散したユダヤ人の子孫が「祖先の地」に帰還するというもの。
著者はユダヤ人でテルアビブ大学のシュロモ・サンド教授(61)=歴史学。3月にヘブライ語で出版され、アラビア語やロシア語、英語に訳される予定だ。
著書では、今のユダヤ人の祖先は別の地域でユダヤ教に改宗した人々であり、古代ユダヤ人の子孫は実はパレスチナ人だ――との説が記されている。
サンド教授は「ユダヤ人は民族や人種ではなく、宗教だけが共通点」と指摘。第2次世界大戦中に約600万のユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツが、ユダヤ人は民族や人種との誤解を広めたとする。
そのため、イスラエル政府が標榜(ひょうぼう)する「ユダヤ人国家」には根拠がないと批判。「パレスチナ人を含むすべての市民に平等な権利を与える民主国家を目指すべきだ」というのが著者の最大の主張だ。
シオニズム運動は欧州で迫害されたユダヤ人たちが19世紀末に起こし、「ユダヤ人国家の再建」を目指した。運動の根拠になったのは、ユダヤ人が紀元後2世紀までにローマ帝国に征服され、追放されたという「通説」だった。
これに対し、教授は「追放を記録した信頼できる文献はない。19世紀にユダヤ人の歴史家たちが作った神話だった」との見解だ。パレスチナ人から土地を奪うことを正当化するために、「2千年の離散の苦しみ」という理由が必要だったという。
教授によると、古代ユダヤ人は大部分が追放されずに農民として残り、キリスト教やイスラム教に改宗して今のパレスチナ人へと連なる。イスラエルの初代首相ベングリオンらが建国前に著した本の中で、パレスチナ人たちをユダヤ人の子孫と指摘していた。ユダヤ人の入植で対立が深まる中で、パレスチナ人を子孫とは言わなくなったという。
教授は「新説ではなく、建国指導者らが知りながら黙ってきたことをはっきりさせたにすぎない」と語る。【5月31日 朝日】
“今のユダヤ人の祖先は別の地域でユダヤ教に改宗した人々であり”と言うのは、アーサー・ケストラーが以前から主張しているものでしょうか。
この考えによると、通常“ユダヤ人”という言葉から私達が連想する白人系の人々(ロシア・ポーランド・ドイツなど東欧に分布し、アシュケナージと呼ばれている)は、7世紀~10世紀頃カスピ海北部にあったハザール(カザールとも)王国の人々(当時の国際情勢を理由に集団でユダヤ教に改宗した)の末裔であって、モーゼに率いられて出エジプトしたユダヤ人とは別ものである・・・ということになります。(極めてラフな整理の仕方で、不正確な点が多いことはご了承ください。)
この考え方自体は広く知られているもので、“ユダヤ人”に関心のある方が必ずと言っていいほど取り上げる問題です。ネットで“アシュケナージ ハザール”といったキーワードで検索すると千件以上のサイトがヒットしますので、詳しくはそちらでご覧ください。
この考えの真偽のほどは知りません。
また、イスラエル国内でどのように扱われているのかも知りません。
“古代ユダヤ人は大部分が追放されずに農民として残り、キリスト教やイスラム教に改宗して今のパレスチナ人へと連なる”という点に関しては十分に考えられるところです。
政治的弾圧があったとき、民族残らず移動した・・・というより、ボート・ピープルのように一部の人々が移動し多数は残った・・・というほうが可能性としては高いようににも思えます。あくまでも一般論ですが。
【柔軟かつ現実的な発想で】
サンド教授の説によれば、“約束の地”が神から約束されているのは現在のイスラエルの主流を占める人々ではなく、むしろ追い立てられたパレスチナ人であるということになります。
真偽のほどはわかりませんが、サンド教授の本が“約束の地”にこだわる人々の頭をほぐしてくれれば結構なことですが、恐らく批判する立場の人々はますます自己主張にかたくなになる・・・というのが現実かも。
ただ、いずれにしても2千年ほど昔の“神様の約束”を云々しても仕方がないと思います。
(部外者だからそう言えるので、信仰篤い当事者には“仕方がない”ではすまされないのでしょうが。)
多くの人も言われるように、“神様の約束”も時効です。
昔のことを蒸し返して、多くの善意の者の現在の生活基盤をひっくり返すことは適切ではない・・・という“時効”の概念そのものです。
固定観念に固まっているのはアラブ側も同様です。
エジプトはイスラエルと和平条約を79年に締結、シナイ半島の返還も実現、それから30年、両国は正式な外交関係を維持しています。
そんなエジプトのムバラク大統領が、5月11日にイスラエルのペレス首相あて、建国60周年記念に祝意を示す電報を送ったそうですが、同日にカイロのエジプト・ジャーナリスト・シンジケートで開かれた会議では、大統領の祝意に対する批判とともに、イスラエル建国は「近代史における人類に対する最大の犯罪」と評し、ユダヤ人国家建設の柱であるシオニズム非難が行われたとか。
また、エジプト政府は、メディアによる批判を懸念して、テルアビブに本拠を置くエジプト・イスラエル友好協会の代表団のエジプト訪問を土壇場でキャンセルしたそうです。【6月2日 IPS】
昨日のことはさておき(ましてや2千年前の話は問題外です。)、今日そして明日の生活のためにはどのような方法がいいのか・・・柔軟で現実的な発想による交渉・関係構築を期待したいものです。
ところで、洞爺湖サミットの料理の油として「オリーブス・オブ・ピース」を使用するというのはいかがでしょうか。