孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

バングラデシュ、インドネシア、中国  変わる社会、変わらぬ社会

2008-06-07 16:30:36 | 世相

(19年前 天安門で抗議活動を行う学生を鎮圧に向かう戦車の車列の前に立ちはだかる1人の男性 “flickr”より By laihiu
http://www.flickr.com/photos/laihiu/159409428/sizes/o/)

【バングラデシュ 強権的に進む腐敗一掃】
バングラデシュでは、ともに軍事クーデターで命を落とした元大統領を夫または父に持つ二人の大物女性政治家に率いられた2大政党、ジア前首相のバングラデシュ民族主義党(BNP)とハシナ元首相の野党のアワミ連盟(AL)を軸にまわってきましたが、両者・両党の対立による政治的混乱、更に汚職・腐敗が蔓延した状態にありました。

07年1月に予定されていた総選挙に向けてつくられた選挙管理内閣が両党の対立から行き詰まり、首席顧問が交代、軍部に支持された暫定政府が引き継ぐかたちで、非常事態を宣言し総選挙は延期されました。
その後、実質的な軍事政権でもある暫定政府は、ジア前首相、ハシナ元首相ら与野党幹部約150名を汚職容疑などで逮捕。
強権的に“汚職・腐敗一掃”の荒療治に着手した暫定政府は、政治家だけでなく犯罪者や活動家など28万人以上を拘束したと言われています。【07年9月4日 産経】

暫定政府は、年内に延期されていた総選挙を行い民政へ復帰する予定を発表していますが、「政党は選挙に参加できるが、総選挙延期前の状態には戻らない」と、逮捕されたジア前首相、ハシナ元首相らを排除して選挙を実施する方針を示唆しています。
なお、非常事態宣言が続くなか、現在でも屋外での政治活動は禁じられています。

こうした強権的な“政界・社会の浄化”について、国民は概ね支持しているとも言われていますが、昨年8月には大学内に入った治安当局の活動をきっかけに学生の抗議行動が暴動化したこともあります。
また、選挙についても「政府は次期選挙で2大政党を抑え、骨抜きの議会を作ろうとしている」との指摘もあります。

暫定政府は総選挙に向けて、政党活動再開の道筋を話し合う対話を始めましたが、政党側は、対話の条件として逮捕されている党首の釈放や非常事態の即時解除を要求、対話に応じていません。
この事態に圧力をかけるためか、暫定政府は今月1日までの3日間で、主要政党の活動家など1637人を拘束しました。【6月3日 朝日】

あわせて、大規模な犯罪取り締まりを実施。
少なくとも1万人を拘束したと発表しています。
警察当局者は、この取り締まりについて、総選挙を前に治安強化を図るためのものと説明、「拘束しているのは明確な容疑者だけで、多くは密輸業者や武器の違法所持者だ。逮捕には政治的な動機はない」と強調しています。【6月4日 AFP】

“民主化による混乱か、強権的な独裁による発展か”という図式はしばしば目にしますが、バングラデシュでは“強権的な民主化の枠づくり”が問題になっています。
なお、バングラデシュの経済は現在とても順調だというようなことをTVで見聞きしたような気がします。

【インドネシア “普通の国”“中進国”?】
インドネシア政府は5月23日深夜、ガソリンの統制価格引き上げを発表しました。
世界的な原油高騰により、国内価格を抑えるための政府補助金が膨らみ、財政的に維持できなくなったためです。
(価格引き上げに代えて、同規模の低所得者への所得補償を行うとしています。)
発表以降、全国各地で学生らによる抗議デモが行われ、警官との衝突に発展したケースもあります。

その中には、デモ隊を追って大学構内へ警察が侵入し、「スハルト時代の高圧的な国軍を思い起こさせる」と批判を受けたケースもあります。
しかし、そうした批判を避けるため、大通りを封鎖する学生に対し、遠巻きに見守るだけで手を出さない“平和的な抗議行動は容認し、暴力的な行為を取り締まる”警備も見られ、当局への批判が出されることを含め、かつてとは異なる社会的“変化”が見られるとの評価もあるそうです。

オーストラリアの戦略研究所は「普通の国としてインドネシアを見る」と題した報告書で、「インドネシア政府は汚職撲滅に向け厳しい取り組みを続け、警察組織を改革した。民兵組織の解散や、麻薬密売組織の摘発で成果を上げている」「国軍はスハルト時代に担った政治的役割を次々取り上げられ、もはや政治の舞台から降りた。タイやフィリピンなどと違う点だ」としたうえで、「インドネシアはブラジル、インド、メキシコなどと同じような『中進国』になった」と評価しているとか。【高取茂2008/06/03】

もしそうなら大変結構なことですが、かつての東ティモールでのインドネシア国軍・民兵の行動がまだ記憶に残る今、いささか「本当だろうか・・・」という疑念も感じます。

【中国 風化する天安門事件】
中国では、学生らによる民主化運動を武力鎮圧した1989年の天安門事件から、4日でまる19年を迎えました。
当局は事件の死者数について、319人としていますが、当時の病院関係者の証言を元に「1000人を超える」との声もあります。
政府はデモを首謀した容疑者として数百人を逮捕、現在も多くが投獄されたままとみられています。

秦剛外務省報道官は3日、報道陣に対し「1980年代末に起こった政治的事件については、すでに明確な結論が出ている」と、事件を「反革命暴乱」と位置づける中国政府として、事件の再評価をする考えはないことを明らかにしました。
人権状況の改善を求める内外の声についても、秦報道官は「他人がどう言おうと、状況がどう変化しようと、わが国は中国的性格の社会主義の道を貫くだけだ」と一蹴したそうです。
特段の社会的な動きも見られませんでした。

昨今の中国社会の様相を見ると、地方当局と結託した大資本による土地利用に抵抗する人々など、“お上の意向”が貫徹する社会というかつてのイメージとは異なる、個々人が自己主張するような面も見られます。
政府側も情報公開について、一定に配慮する変化も見られます。
インターネットの普及による個人の情報発信も見られます。
“隔世の感”を抱くこともしばしばありますが、天安門事件の風化現象をみると、共産党による一党支配という大枠を揺るがすような変化には至っていないようにも見受けられます。


コメント
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