孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  チャベス大統領がコロンビア革命軍に武力闘争放棄を勧告

2008-06-14 17:52:04 | 国際情勢

(今年1月、FARC人質解放を仲介し、上機嫌のチャベス大統領 “flickr”より By ¡Que comunismo!
http://www.flickr.com/photos/quecomunismo/2184249914/)

何かとその言動が話題になりやすい、南米ベネズエラのチャベス大統領。
今回は、従来からその関係が疑われていた隣国コロンビアの反政府左翼勢力“コロンビア革命軍(FARC)”に武力闘争放棄を行うように勧告したとかで、みなを驚かせています。

【コロンビアの越境攻撃】
コロンビアとの関係で言うと、3月初めFARCのエクアドル領内拠点をコロンビアが越境爆撃した事件の際に、エクアドルと協調するベネズエラはコロンビアとの国交を断絶、国境に戦車部隊を結集させるなど剣呑な状態になりました。
その後、ドミニカ共和国の首都サントドミンゴで開かれたリオグループ(中南米諸国で構成)の首脳会議で、コロンビアが越境攻撃を二度と繰り返さないと約束し、コロンビア、エクアドル、ベネズエラの3カ国は事件の収拾をはかりました。

首脳会議でエクアドルのコレア大統領とコロンビアのウリベ大統領が非難の応酬をした後、チャベス大統領が「戦争の嵐を吹き荒れさせ続けることはできない」と表明し、事態収拾に乗り出したそうで、3人の大統領は首脳会議終了後、「危機は終わった」と発表し、握手を交わしたとか。 【3月10日 時事】
チャベス大統領は笑みをたたえ、「この首脳会談は神からの贈り物だ」とも語ったそうです。
いつものことではありますが、一気にたかまり、急転直下の展開、茶番劇のような演出です。

外交関係はこれで回復しましたが、正式な国交回復はまだだったようで、今月6日、コロンビアとエクアドル両国は、カーター元米大統領の仲介を受け、無条件で国交を即時回復することで合意しました。
大統領を辞めてからの活動が注目され、「最初から“元”大統領だったらよかったのに」とも言われるカーター元大領です。

【チャベス大統領とFARC】
南米最大のゲリラ組織として政府に対抗してきたFARCは、麻薬や誘拐を資金源にしてきましたが、近年はウリベ・コロンビア大統領の強硬路線で次第に追い詰められていると言われています。
追い詰められたFARCは強硬な反米路線をとるチャベス・ベネズエラに接近。
チャベス大統領は「テロ組織指定などというものが存在するのは、米政府の圧力のためにほかならない」、「FARCやELN(もうひとつのコロンビア国内左翼ゲリラ組織)はテロ組織ではなく、コロンビアに領地を持つ正規軍として承認されるべきで、我が国で尊重される『21世紀の社会主義』的な政治思想を持った反乱軍だ」と、FARCへの親近感を公言していました。(コロンビア政府の主権を殆ど無視していますが)

しかし、FARCを資金や武器の面で支援していたことが公になると話は別です。
3月のコロンビア軍によるFARC急襲の際に、ベネズエラがFARCへ3億ドルもの資金供与を行っていたことや軍事的支援を行っていたことを示す文書、更に、FARCが放射性物質を詰めた爆弾(いわゆる「汚い爆弾」)製造のため、ウラン入手を図っていたことがうかがえる別の文書も押収パソコンから発見されたと言われています。

麻薬、誘拐、更にウランにまで繋がるFARCとの密接な関係が公になると、カストロ引退後の南米左派各国のリーダーとして地位を望むチャベス大統領とてしは、非常に困った事態です。
しかも、5月26日(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080526)にも取り上げたように、FARCは3月の攻撃によるナンバー2に続き、最高司令官も死亡し、組織的に相当揺らいできています。

ウリベ・コロンビア大統領に複数の幹部から電話があり、身柄の自由が保障されるならFARCを脱退し、ベタンクール元大統領候補ら人質を解放するとの提案がなされたとも報じられています。
そんなことになると、いよいよFARCとチャベス大統領の関係がいろいろと表に出てきかねません。
ベネズエラ政府は“ファイルは偽物だ”と主張していますが・・・。

【武力闘争放棄を勧告】
そんな流れを受けて、チャベス大統領は8日、自らホスト役を務める定例のテレビ・ラジオ番組で、FARCの新指導者に対し異例に厳しい口調で、すべての人質を無条件に解放するよう促したそうです。【6月9日 時事】
更に9日テレビ番組(上記番組と異なるものかどうかは不明)で、FARCに対し、「ゲリラ闘争の時代は終わった。FARCが帝国(米国)の介入の口実になっていることを、あなたたちは理解しなければならない」と武力闘争放棄を勧告したそうです。【6月9日 毎日】

まあ、ときに“豹変”するのは“君子”の条件でもありますから・・・。
しかし、FARC幹部の投降などが実現すると、チャベス大統領にとって困った情報がいろいろ出てくることも予想されます。

【ボリビアの自治権拡大要求】
南米関連で、同じく厳しい正念場を向かえているのがボリビアのモラレス大統領。
ボリビアでは、貧しい西部・先住民の支持を受ける左派モラレス大統領の進める富の再分配政策に対し、先住民と白人の混血が多い豊かな東部諸州が反発しています。
5月4日には最大州のサンタクルス州が“自治権拡大”(実質的に中央政府コントロールからの離脱)を求める住民投票を実施、85%の賛成を集めました。(5月14日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080514

その後も、6月1日に北部のベニ州・パンド州で行われた住民投票において、中央政府に対する自治を認める条例案に対する賛成がやはり多数を占めました。
条例案は、州に対して財政や公共事業に関する権限を与えるだけでなく、通常は中央政府に対して与えられる海外からの援助を受け取る可能性も認め、また、天然資源や土地を管理することもできるようにするものです。
モラレス大統領は住民投票自体が違法であると主張し、ボイコットを訴えています。

今後は6月22日に南東部のタリハ州で同じような住民投票が実施される予定です。【6月10日 IPS】
さらに8月10日には、モラレス大統領とガルシア副大統領、9人の州知事に対するリコール投票が予定されており、モラレス大統領にとって厳しいハードルが続きます。


コメント
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