(ミンダナオ島のベースキャンプ付近のジャングルを船で行くMILF兵士 今年4月12日撮影 “flickr”より By Keith Bacongco
http://www.flickr.com/photos/kitoy/2704303280/)
【和平交渉再開】
世界の目は北京とグルジアに向いていますが、今日はマイナーな話題でフィリピン・ミンダナオ島の話。
1ヶ月前の7月11日ブログ「フィリピン・ミンダナオ島 BIMP、赤道アジア、和平交渉、ダバオの“処刑人”市長」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080711)でも少し取り上げたミンダナオ島の反政府武装組織「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)との和平交渉の件です。
マニラなどと比較して経済的に立ち遅れ貧困層が多く、また宗教的にもキリスト教主体のフィリピンのなかでイスラム教徒が多いミンダナオ島では、70年代、急進派イスラムグループが島の分離独立を目指し「モロ民族解放戦線」(MNLF)を結成して武力闘争を開始。
MNLFは96年に和平合意しましたが、分派した「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)は闘争を継続。
その後、MILEは03年に政府と和平準備交渉を開始しました。
この和平交渉はマレーシア政府を仲介に進められ、マレーシアを中心に日本からの復興事業担当者1名を含む国際停戦監視団(57人)が構成されました。
しかし、自治権をどの程度付与するかをめぐってフィリピン政府が難色を示し交渉は停滞。
しびれを切らしたマレーシア側は、30人を撤退させ、任期が切れる8月末に残りを引き揚げることも表明していました。
こうした動きに後押しされるかたちで、昨年末から中断していた和平予備交渉が再開される見通しとなったことが7月18日には報じられました。
また、マレーシアのライス外相が8月4日、フィリピン政府の要請があったとして少なくとも現在ミンダナオ島に残る12人を残留させると明らかにしました。
日本政府も引き続き監視団に専門家を派遣する方針を明らかにしています。
かろうじて、踏みとどまったようです。
【最高裁差止め?】
ただ、気になる記事もあります。
*****過激組織との合意差し止め=最高裁が異例の決定-比****
フィリピン最高裁は4日、アロヨ政権が予定していた過激組織モロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平合意文書の調印を一時差し止める異例の決定を下した。
政府とMILFは、MILFが拠点とする南部ミンダナオ島にあるイスラム系住民の「先祖伝来の土地」の扱いに関して、天然資源の管理など大幅な自治権の付与、イスラム教徒自治地区(ARMM)の拡大などで大筋合意。5日に調停国のマレーシアで覚書に調印する予定だった【8月4日 時事】
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不親切な記事で、最高裁が何を問題としたのかわかりません。
また、その後どうなったかの続報も見ていません。
そうしたなかで、こんな記事も。
*****フィリピン 宗教超えた夫婦愛****
フィリピン南部ミンダナオ島のコタバト市で、一人のイスラム教徒の青年(29)に出会った。
国民の8割以上がカトリック教徒のフィリピンで、コタバトは住民の半数以上がイスラム教徒だ。周辺にはイスラム反政府組織「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」の拠点があり、今も政府軍との間で散発的な戦闘が続く。市内で爆弾テロが起き、死傷者が出ることもたびたびだ。
青年の親類にも銃を手に政府軍と戦った者が多い。「カトリック教徒をどう思うか」との問いに、青年から予想外の答えが返ってきた。
妻は教会の司祭のめいで、厳格なカトリック教徒だという。青年は「ミンダナオの紛争は、世界各地で起きているカトリックとイスラムの対立と同じものではない」とほほ笑みながら答えた。
2人は「たまたま知り合い」、周囲からさほど反発も受けずに結婚した。イスラム教徒が食べることを禁じられている豚肉など食習慣の違いも、妻が配慮してくれるので問題はない。イスラム教のラマダン(断食月)中に妻が昼食をとることも気にならない。
週末には宗教を問わず友人たちと夕食を共にする。時には政府軍と反政府勢力の兵士が同席することもある。もちろん、妻の家族とも友人のような良い関係だという。
MILFと政府の間で和平交渉が行われているが、先行きは不透明だ。紛争の解決について話が及ぶと、青年の顔が急に曇った。「私たちの生活が、宗教に関係なく仲良く暮らせることを証明しているのに」【矢野純一 8月10日 毎日】
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【ムスリムの異教徒との婚姻】イスラム教徒の異教徒との結婚がどうなっているのかウィキペディアで確認すると
「(イスラム法では)ズィンミー(イスラム以外の一神教徒)とムスリムの婚姻に関しては、ムスリム男性はズィンミーの女性と結婚できるが、ズィンミーの男性はムスリムの女性と結婚することは出来ない。ズィンミーの男性がムスリムの女性と性的関係をもった場合、男性は処刑される。・・・注意しなければならないのは、以下に述べるとおり現実のムスリムと非ムスリムとの関係は極めて多様であり、良くも悪くもイスラム法どおりではないことである。・・・西ヨーロッパ、中央アジア、インド、トルコを含むバルカン諸国などのムスリムは必ずしもイスラム法の規定にしたがっておらず、イスラム法で明確に禁止されているムスリム女性と異教徒男性との結婚も存在している。但し地域による違いもあり、保守的なムスリム家庭の場合駆け落ちを強いられることがある。
イスラム法の厳格な適用が行われる中東では、男性のみならず女性も結婚に際しイスラムへの改宗を強制される。・・・」
異教徒には、なんだか随分男性にとって手前勝手なルールのようにも思えます。
かつて白人男性が黒人奴隷女性と関係を持つのは普通にあったけど、黒人男性が白人女性にそぶりを見せるだけでリンチにあった・・・そんな関係を彷彿とさせます。
イスラムを絶対優位として異教徒との婚姻を制約すること自体に全く馴染めませんが、百歩、否、千歩譲ってそこを認めるなら、少なくとも非ムスリムと関係を持ったムスリム男性は、二度とそのような行為ができないように切断するとかいった措置がないと片手落ちでしょう。
話がズレてしまいました。
ミンダナオ島です。
その後MILEとの和平交渉がどうなっているのかよくわかりません。
上記毎日の記事の夫婦が安心して暮らせるような環境が1日も早く実現してもらいたいものです。