(マダガスカルのバオバブ並木 バオバブのイメージはこんな感じですが、セネガルのバオバブの写真はもっとずんぐりゴツゴツしたもの。 種類が違うのでしょうか? “flickr”より By danielguip
http://www.flickr.com/photos/danielguip/96213417/)
【スーダン:ナツメヤシまたはアラギ】
スーダンと言うと、ダルフール問題や南北間の対立など、政権を担うアラブ系とアフリカ系住民の間の民族問題が深刻な国です。
そんな民族対立、文化的衝突の影響を、ちょっと変わった角度で紹介した記事がありました。
****スーダンで、イスラム教が禁じる酒をつくる女性たち*****
スーダンの首都ハルツームから北に15キロのところにあるハルファヤで、イスラム教徒の女性、ザキア(Zakia)さん(23)はナツメヤシの実を発酵させた「アラギ」と呼ばれるお酒をつくって売っている。
イスラム法「シャリーア(Sharia)」が適用されている同国では、アルコールの醸造はもちろん禁止されているが、夫が家を出て行ってしまったためにザキアさんが母親、兄、7人の姉妹、めいという大家族を養わなければならない。
実際、ハルファヤでは、アラギをつくる女性は数千人にのぼる。この地には、紛争に見舞われた南部、西部、東部から逃れてきた難民たちが暮らすキャンプがひしめき合う。
コーランが禁止しているアルコールで利益を得ていることについて、「単なる商売だから」と割り切るザキアさんだが、危険な商売でもある。警察による摘発は頻繁だ。刑務所に収容されている女性の約90%は「アラギを売った」ために逮捕された人たちだという。
だが、警察はイスラム教を盾にこうした摘発を行いながらも、押収したアラギを売り飛ばして乏しい給料の穴埋めをしているとの指摘もある。見逃してもらおうと身体を提供する女性もいるという。
そうした女性たちが収容されるオムドゥルマンの刑務所は、定員オーバーで、じめじめしており、衛生状態も悪い。看守の暴力も日常茶飯事だという。
スーダンの中央政府はアラブ系のため、イスラム法が適用され、アラブの文化が指向されている。
しかし多くの国民が、自分を「アフリカ人」と見なし、アルコールの醸造と摂取が認められている部族文化に根付いている。
女性たちの職業訓練を行う慈善団体を運営している医師は、「アラギはスーダンの文化であり、犯罪ではない。アルコールでもない。われわれアフリカ人は(1956年に英国から)独立以来、アラブの文化を持ったアラブの政府に統治されてきた。彼らはアフリカではないものを押しつけようとしている」と語った。【8月12日 AFP】
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日本国内にいろんな地酒があるように(私の住む奄美大島なら黒糖焼酎とか)、世界各地にもその土地特有のお酒があります。
私は付き合い程度にしか飲めないので、旅行中に見聞きするいろんなアルコール類も試す機会がなく、ちょっと損した気分をいつも感じています。
記事で紹介されている“アラギ”ですが、一般的に言うところの“アラック”の一種のように思われます。
ウィキペディアによると、“アラック、あるいはアラクは、中近東、特にイラク、シリアを中心とし、エジプトやスーダンのような北アフリカ地方などでも伝統的につくられてきた蒸留酒。もともとはナツメヤシやブドウといった中近東乾燥地帯原産の糖度の高い果実を醗酵させてから蒸留した酒であるが、イスラム文化の拡大とともに中近東の蒸留技術が各地に伝播し、その土地の伝統的な様々な醸造酒を蒸留してローカル色豊かなアラックがつくられるようになった。”とのことです。
東南アジアでよく見かけるヤシの花穂から採った樹液でつくるヤシ酒もそのひとつです。
ネパールなどではコメから作っていたように思います。
ギリシャではレーズンをベースに、アニスなどハーブで香り付けした“ウーゾ”(個人的にはほろ苦い思い出のある酒です。)など。
アラギのベースになるナツメヤシの実(デーツ)は見事なまでにたわわに実ります。
あたり一面を埋めるナツメヤシに、“こんなにたくさんのデーツを一体どのように処分するんだろうか?”と人事ながら心配になるぐらいです。
預言者モハメッドも好んだと言われるデーツはエジプト旅行時に胃もたれするぐらい食べましたが、干し柿を更に甘くしたような懐かしい味です。
おいしいのですが、非常に甘いのでカロリーコントロールの大敵です。
一介の旅行者には旅の思い出にすぎないアラギにも、暮らしの中では社会の問題が重くのしかかっています。
【セネガル:バオバブ】
スーダンのナツメヤシの実の話に続いて、セネガルからはバオバブの木の話題。
****健康食品として欧州で注目のバオバブ、西アフリカ経済の起爆剤になるか****
「命の木」とも称されるバオバブは、アフリカ大陸のサバンナに太古から存在する木だ。さかさまに植えたように見えるために「さかさまの木」とも呼ばれる。
地元の人々は、バオバブの木を余すところなく使用する。種は調クッキングオイルに、樹皮はロープになる。実は腹痛に、葉は疲労回復に効くとされる。
バオバブの実は、オレンジの3倍のビタミンC、コップ1杯の牛乳よりも多くのカルシウムが含まれているとされる。しかも、バオバブの木は乾燥に強く、干ばつにも洪水にも耐え、耐火性もある。
Fandene村に住む農民たちは、バオバブの実を近くの町の市場で売っていたが、3年前から「Baobab Fruit Company」に売るようになった。3人のイタリア人が経営する同社は、同国唯一のバオバブの実の加工会社で、乾燥させた実を化粧品や健康補助食品用として輸出している。
こうした新たな収入で、村人たちの生活には変化が見え始めている。ある村人は、「おかげさまで子どもたちを学校にやることができた」と語った。
フェアトレードと環境的に持続可能な天然産物の開発を目指すNGO「PhytoTrade Africa」は、2006年以来、EUに対し、バオバブの実の輸入を認めるよう働きかけてきた。その努力が前月、実を結んだ。
「欧州が輸入を許可したことは、アフリカにとってすばらしいニュース。欧州に市場が開かれることで、貧困地域に生活を一新させるような収入がもたらされるだろう」と、同団体のシリル・ロンバード(Cyril Lombard)氏は言う。同団体は、貿易額は年間で10億ドル規模にのぼると試算している。
先述のBaobab Fruit Companyによると、欧州からの引き合いはうなぎ昇りに増えており、現在の年間収穫量150-200トンを大幅に増やす必要がありそうだという。
その一方で、一部の環境保護活動家は、こうした商業的な搾取がバオバブの絶滅を招くとの危惧を抱いている。
Baobab Fruit Companyは「木を損なわないよう、実と葉だけを採取している。バオバブが貴重な収入源になったら、農民たちも木を保護する必要性を認識するようになるだろう」と話している。(c)AFP/Stephanie van den Berg
【8月12日 AFP】
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その独特の姿がユニークなバオバブ、まだ一度も見たことがありません。
いつかアフリカに旅行してお目にかかりたいと願っています。
そんなバオバブの実での村おこし、しかも先進国市場を開いて・・・結構な話ですが、やはり乱獲が心配。
セネガルからはこんなニュースもありましたので。
【セネガル:海砂】
****空前の建設ラッシュ、セネガルの海岸が「砂の盗難」で消滅の危機*****
セネガルの首都ダカールの海岸には、砂を「盗む」輩が今日も群をなす。同国の建築ラッシュに伴い、建築材料の砂は売れるのだ。
盗人たちは建設会社に砂を売り、建設会社はダカールの海岸線に次々とビルを建てる。その一方で、総延長700キロの砂浜は浸食されていく。地元の環境保護団体は「ダカールの砂浜はほとんど消滅してしまった」と嘆く。
海岸の砂を持ち去ることは法律では禁止されているが、建設業界の空前の好景気に合わせて砂の闇市場が繁盛しているというのが現実だ。
同国の建設業界の2004-07年の年平均成長率は12.45%で、これは同国のGDPの4.6%にあたる。失業率が高く、国民の約半数が貧困ライン以下で生活している同国の経済を、建設業界が支えているといっても過言ではない。
建設ブームの背景には、ダカールの都市部の拡大がある。建設業界のある男性は、「新築される建物の100%が(盗まれた)海岸の砂を使っている。それしか方法がないんだ」と打ち明けてくれた。
警察も手をこまねいているわけではない。警察は2006年5月に海岸パトロール隊を組織。ダカールの海岸を週に数回巡回しているが、犯人をつかまえるのは容易ではない。パトロールの情報はまたたくまにくまなく伝わり、現地に到着する頃には海岸はもぬけの殻。警察が去ると盗人たちは再び現れるという。
この2年間で検挙できたのは84人。たいていは1-2か月の短い禁固刑と10万CFA(約2万5000円)から100万CFA(約25万円)の罰金が課されるというが、再犯率は高いという。砂を建設業者に売ると最大8万CFA(約2万円)という破格の月収が得られる。それだけ砂のニーズは高いのだ。【8月12日 AFP】
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いろんな“事情”で警察もまともに取り締まっていないのでは・・・とも想像されます。
砂なら砂漠に“腐るほど”ある国ですが、建設資材用となると海砂でないといけないのでしょう。
バオバブの木も、この砂のようにならなければいいのですが。
せっかくの資源ですから、再生可能な方法で持続的に活用してもらいたいものです。