(アフガン・ヘラートで 数年前の写真のようです。 現地の親子は米兵と打ち解けた様子ですが、子犬は警戒しているような・・・ flickr”より By lakerae
http://www.flickr.com/photos/lakerae/35030153/)
【誤爆“でアフガン軍幹部解任、地位協定見直し】
アフガニスタン西部ヘラートで22日に行われた米軍主導の多国籍軍によるイスラム教徒集会会場への空爆で、女性や子どもを中心とした民間人90人以上が死亡するという事件がありました。
アフガニスタン政府当局者が民間人多数が死亡したとする一方で、米軍・多国籍軍側はタリバンがアフガン軍の車両を襲撃したため反撃し、武装勢力の戦闘員30人が死亡したのみだ“と主張しており、カルザイ大統領が攻撃についての調査を命じていました。
調査にあたったシャハラニ巡礼相は現場を訪れた後、
「爆撃の規模は大きく、多数の家屋が破壊されており、女性や子ども、高齢者など90人以上の非戦闘員が死亡していたことがわかった」
「彼ら(米軍)は、そこ(空爆現場)にイスラム原理主義組織タリバンがいたと主張している。それを証明してもらわなければならない」
「これまでのところ、多国籍軍が空爆を実施した理由は明確ではない」と語っています。
同相は調査は現在も継続されていると語り、空爆当時、アフガニスタン軍部隊とともに軍事作戦を行っていたとされる米軍特殊部隊とも面会する予定であるとしています。【8月25日 AFP】
カルザイ大統領は24日、無責任な作戦を行ったなどとして、西部地域の司令官らアフガン軍幹部を解任しました。
AP通信によると、幹部らは作戦を主導。事実関係を把握しながら報告していなかったとされています。
恐らく、カルザイ大統領の怒りの矛先は米軍なのでしょうが、それは立場上どうにもならず、アフガン軍幹部はその身代わりのようにも思えます。
この手の事件は多発しています。
7月6日にも東部ナンガルハル州で米軍機による空爆があり、アフガン政府は結婚式の車列が誤爆されて女性と子供39人を含む計47人が死亡した“と発表しています。
米軍側は「死んだのは武装勢力」と主張していましたが、政府の調査チームは「タリバンやアルカイダとは全く関係のない民間人が誤爆された」と断定しました。
カルザイ大統領は7月17日、被害に遭った村を慰問しましたが、過激派から脅迫されているカルザイ大統領が国内を移動するのはまれなことだそうです。
真相は定かではない部分もありますが、カルザイ大統領はともかく、アフガニスタンの人々の心がこの種の事件で米軍等の外国勢力から離れていくことは確実です。
米軍等への国民の批判は、外国勢力によって支えられているアフガン現政権への批判でもあります。
こうした事態を懸念するアフガニスタン内閣は、駐留多国籍軍の地位見直しを求める動きをみせています。
アフガニスタン内閣は25日、アフガニスタン国内で活動する国際組織の地位を定める諸協定について、再交渉を求める意向を明らかにしました。
見直しは特に、多国籍軍部隊の「権限と職責の制限」や民間人への空爆の中止、不法な拘束、一方的な家宅捜索に重点が置かれることになると報じられています。
【フランス兵犠牲も誤爆か?】
誤爆は民間人だけでなく、友軍にも及びます。
カブール郊外で18日から19日にかけて、NATO主導の国際治安支援部隊(ISAF)に参加するフランス軍がタリバンの伏せ攻撃を受けて戦闘となり、フランス兵10人が死亡、21人が負傷しました。
これは、1回の戦闘では最悪の外国兵士の犠牲者数です。
アフガンへの積極姿勢をみせているサルコジ大統領は、「仏部隊は大きな打撃を受けたが、フランスは対テロ、自由と民主主義のための戦いで責任を果たす。私の決意は変わらない」と述べ、派兵継続に変更のないことを表明しています。
一方、野党・社会党のオランド第1書記は「戦争の目的は何か。そのために何人の兵士が必要なのか。01年からこれまでに何が得られたのか。こうした点について議会での討議が必要だ」と発言。
極右・国民戦線のルペン党首も「兵士らは米国が自国のために行う終わりのない戦争のために死んだのだ」と主張しています。【8月20日 毎日】
この事件について、仏ルモンド紙は20日、この戦闘で負傷した複数の仏軍兵士の話として、NATOによる誤爆とISAFの支援を行っていたアフガニスタン軍からの誤射があったと報じています。
これに対し、NATO側は21日、広報官が「ルモンド紙の報道に関しては、まったく根拠のないもの。誤爆があったことを示す情報はまったくない」と語り、誤爆の事実を明確に否定。
フランスのモラン国防相も同日、米軍戦闘機が誤爆した事実はないと語っています。【8月22日 AFP】
誤爆・誤射なんて話になると、ルペン氏など怒り狂いそうです。
【アメリカ批判を強めるロシア】
なお、22日の米軍の民間人誤爆“事件に関しては、グルジア・南オセチアでアメリカと対立を深めるロシアが異例のアメリカ批判を行っています。
ロシア外務省は声明を発表。「ロシア政府は深刻な懸念を持っている」と述べたうえで、アフガニスタンで反テロ軍事作戦を主導する米軍に対し、住民の犠牲を伴う無差別爆撃を停止するよう呼び掛けています。
ロシアがこれほど強い調子でアメリカを批判したのは初めてだそうです。
ロシアは今年4月、鉄道輸送によるNATOの物資のロシア領通過を認めましたが、グルジアでの対立を受けて、ロシア軍のノゴビツィン参謀次長は21日、アフガン作戦の物資通過の停止の可能性について慎重に検討している”ことを明らかにしています。
【アメリカ、増派検討】
アフガンではタリバンの活動自体が、ますます勢いを強めているように見えます。
6月にはカンダハルで数百名規模の刑務所からの脱走を成功させ、7月には隣国パキスタンから350~400人の武装勢力がパキスタンとの国境検問所を襲撃し、これを多国籍軍が空爆するなどして武装勢力の約150人が死亡した戦闘もありました。
こうしたタリバン側の大規模な作戦・攻勢も目だってきています。
アフガンには現在、約3万6000人の米軍部隊が駐留していますが、強まるタリバンの攻勢・拡大する犠牲者数に、アメリカ国防総省では増派も検討されています。
一方、イラクではアメリカとの地位協定交渉が続いていますが、マリキ首相は25日、バグダッドで行われた部族長らとの会合の席で、米政府とイラク政府が2011年までにイラクでの外国軍の駐留を終了することで合意した“と発表しています。
まだ詳細は流動的ですが、いずれにしても比較的安定しているイラクから難航するアフガンへ、アメリカ軍の展開も次第に軸足を移すことが想定されます。
イラクでの米軍増派作戦は効果をあげたとされていますが、思い切ったアフガンへの大規模増派はタリバンを抑えこめるかもしれません。
ただ、そのとき、現地政権・住民との信頼関係、NATO諸国の協力、ロシアの対応・・・いろいろ困難な課題が立ちはだかりそうです。
もとよりアフガンでの戦いは9.11に対するアメリカの報復戦争ですから、アメリカが一人で戦う事態も当然と言えば当然ですが。
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(先ほど気がかりなニュースが。26日午前、アフガニスタン東部ジャララバードで活動する非政府組織「ペシャワール会」の日本人男性職員1人が、何者かに拉致されたと、国連機関を通じて在アフガニスタン日本大使館に連絡が入ったそうです。)