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(アフリカ東部のマラウイ 新たな貯水池・灌漑設備の建設を喜ぶ人々 ポスト京都の議論だけでなく、将来への希望をもたらす地道な対応への努力も求められています。“flickr”より By CIDSE - together for global justice http://www.flickr.com/photos/cidse/6418432221/in/set-72157628189637715/ )
【「地球温暖化が現実の問題であることを示す何よりの証拠」】
地球温暖化については、暑かったり、寒かったり、個々の年によってはぶれが大きい気象について長期的趨勢を見極める必要があり、正確な把握・理解が困難です。
直近の状況に左右されやすい個人的な感覚より科学的データが求められますが、そうした“科学的データ”に対しても異論・反論も多々あるところです。
そんななかで、ここ10年間の世界の気温は過去最高になる・・・との報告が、南アフリカ・ダーバンで開催中の国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で発表されています。
****2002~2011年も世界平均気温は過去最高、世界気象機関****
世界気象機関(WMO)は29日、2002~2011年は2001~2010年と並び、10年間の世界平均気温が過去最高になるとみられるという報告書(暫定版)を発表した。WMOは「地球温暖化が現実の問題であることを示す何よりの証拠」と、警鐘を鳴らしている。
気候の傾向と異常気象に関するこの報告書は、南アフリカ・ダーバンで開催中の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第17回締約国会議(COP17)で発表された。
それによると、正確な記録が残っている1850年以降で世界平均気温が最も高かった年の上位13位は過去15年間に集中していた。また2011年の世界平均気温は1850年以降で10番目に高かった一方、2001~2010年の平均気温を報告した国の中で、1961~1990年の平均気温を下回った国は1つもなかった。
報告書は、大気中の温室効果ガスの濃度は過去最高のレベルに達しており、世界平均気温を2~2.4度押し上げる水準に急速に近づきつつあるとしている。科学者たちの間では、世界平均気温が2.0度を超えて上昇すると、陸地と海の広い範囲で取り返しのつかない変化が起こりうると考えられている。
WMOのミシェル・ジャロー事務局長は声明で、人間の活動によって温暖化が進んでいることが科学的に証明されたとの見解を示し、政策立案者は今回の結果に留意する必要があると指摘した。
WMOのR・D・J・レンゴアサ事務次長は、「気候変動の最悪のシナリオを回避するための緊急行動が必要だ」と訴えた。【11月30日 AFP】
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【空転する新たな枠組みづくり】
「気候変動の最悪のシナリオを回避するための緊急行動が必要だ」というのは以前から指摘されていることですが、実際にどのような変化が起きているのか、その原因が本当に温室効果ガスによるものなのか・・・という、そもそもの部分での疑問に加え、温暖化ガスの規制は将来的経済成長にとって大きな足かせになってしまうこと、そして何より、そうした痛みを伴う規制策受入れについて、先進国・新興国・途上国それぞれの立場が異なり、統一的な対応が困難なことから、規制に関する国際議論はここ数年空転を続けています。
現在の枠組み「京都議定書」には温室効果ガス排出の上位3国の中国、アメリカ、インドが参加せず、削減義務を負う日本やEUなどの総排出量は世界全体の27%に過ぎません。
その不完全な「京都議定書」も12年までしか規定しておらず、ポスト京都が求められています。
当然、日本・EUは対象国の範囲を広げることを主張していますが、規制による成長への足かせを嫌うアメリカや新興国、これまでの温暖化は先進国の経済活動によるものであるから、先進国が厳しい規制を実行しその責任を負うべきとする途上国の主張は対立したままです。
途上国側の主張は、日本の立場からすれば“とんでもない”ということになりますが、気候変動で実際に大きな被害を受けているのは途上国であり、どうして先進国のつけを自分たちが払わねばならないのか・・・という主張には説得力もあります。
“05年に13年以降の第2約束期間の設定について議論が始まった。さらに07年には、議定書で削減義務がない中国や議定書から01年に離脱した米国なども含む、すべての国が参加する枠組み創設についても交渉が開始された。
こうした流れで本来は09年のCOP15で新枠組みに合意する予定だったが失敗し、議論が先延ばしにされてきた。新枠組みについてEUなどは15年までに法的な新枠組みに合意し、20年までに発効するよう提案している。日本も法的枠組み実現を支持している。”【12月1日 毎日】
【新枠組みまで期限を区切った交渉開始の宣言(ダーバン・マンデート)を採択できるかが最大の焦点】
従来からの主張対立に加え、欧州の財政危機などで、各国が経済の立て直しを最優先課題にしているため、COP17では新ルールの採択は困難と見られています。
途上国・新興国が主張する京都議定書の延長に対し、日本は、13年以降は各国が自主的削減に取り組む「移行期間」とし、新たな枠組み作りを15年以降に先送りするよう主張しています。
そうした将来的道筋のないまま、現行の京都議定書が延長されることには強く反対しており、そうした場合は議定書に参加しないとの態度を表明しています。
****「京都」延長なら離脱 COP17政府方針を決定****
野田政権は29日、地球温暖化問題に関する閣僚委員会(座長・野田佳彦首相)を開き、南アフリカで開会中の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)の対応方針を決めた。
2012年末で温室効果ガス削減の義務づけ期間が終わる京都議定書について、次の約束期間をつくる「延長」には加わらないことを確認。仮に延長が決まった場合には参加を拒否し、先進国に削減義務を課す「京都体制」から離脱する姿勢を鮮明にした。閣僚委員会には、野田首相のほか細野豪志環境相ら11閣僚が出席した。
対応方針では、世界一の排出国である中国に義務がなく、2位の米国が批准していない京都議定書は世界の排出削減につながらないとして、米中も含めて削減義務を課す新体制を目指すとした。
記者会見した細野環境相は、議定書の削減義務国の排出量が世界全体の約27%にとどまることを指摘。「交渉では様々な判断があるが、(日本が)次の約束に参加しないことに変わりはない」と言い切った。
京都議定書のルールでは、新たな約束を設ける場合にはその国の同意が必要になる。約束を拒否すれば、日本は削減義務国のリストから外れ、12年までの削減義務や排出量算定のルールなどを含めた京都議定書の批准国としての位置づけだけが残る。 【11月29日 朝日】
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EUは、12年末で終わる京都議定書の延長を容認するのと引き換えに、2020年までに京都議定書で削減義務を負わない米中両国なども含む新たな枠組みの発効を目指す「ダーバン・ロードマップ(行程表)」を採択することに強い意欲を示しています。
新たな包括的な枠組み新設に向けた道筋をつけるという点では、日本も同じ立場にもなります。
****温暖化対策:COP17に作業部会…日本が提案****
国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で日本は30日、京都議定書以降の温暖化対策の新枠組み(ポスト京都)実現に向けた来年以降の交渉のため、同条約の下に新たな作業部会を設置することを提案した。
新枠組みをめぐっては先進国と途上国、新興国の対立が激しく今回のCOPで合意するのは不可能な情勢のため、「交渉の場」の設定で議論の仕切り直しを狙う。
今回は、新枠組みまで期限を区切った交渉開始の宣言(ダーバン・マンデート)を採択できるかが最大の焦点で、日本提案は、このマンデート採択の後押しの意味もある。欧州連合(EU)も同日、日本と同様の提案をした。
京都議定書は先進国のみに温室効果ガスの削減義務を課している。来年末までの削減期間(第1約束期間)の延長を拒否する日本が、新たな交渉の場を提案することに反発する国も出てくるとみられる。最終日の9日までに各国の賛同を得られるかどうかは不明だ。(後略)【12月1日 毎日】
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【カナダ離脱のうわさ 目標達成が絶望的で、やけくそ?】
そうしたなか、日本・ロシア同様に、京都議定書延長に反対しているカナダが、12月にも「京都議定書」からの脱退を表明する見込みだと報じられ、波紋が広がっています。
****「カナダ、議定書脱退」 地元報道****
カナダのテレビ局CTVは28日までに、温室効果ガスの排出削減を先進国に義務づけた京都議定書からカナダが脱退する方針だと伝えた。ハーパー政権が12月のクリスマス前に正式発表するという。
カナダが脱退すれば、議定書に定めのない2013年以降の新たな枠組み作りに深刻な影響を及ぼす可能性がある。
AP通信によると、カナダのケント環境相は28日、「(カナダが何らかの)発表をするのにふさわしい日ではない」と語り、報道を否定も肯定もしなかった。
カナダは議定書で、2008~12年の排出量を1990年比で6%減らすことを約束。
だが、世界第3位の石油埋蔵量を持つカナダは、採掘過程で多くの温室効果ガスを排出する新しいタイプのオイルサンド(油砂)の生産を増やしていることもあり、目標達成は困難な状況になっていた。【11月30日 産経】
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このカナダの方針が、“13年以降も議定書を延長することに反対”というだけでなく、“現行の京都議定書での約束をほごにする”という意味なら、その影響は甚大です。
“カナダのこの挙動に対しはさまざまな憶測が飛び交っている。カナダは「京都議定書」の期限である2012年末まで温室効果ガス排出量を1990年比で6% 削減すると約束したが、実際は、2009年時点で、排出規模は1990年を30%上回っており、目標達成は絶望的。やけくそになったという見方もあれば、 カナダがはっきりとしたコメントを発していないこともあり、これを交渉の切り札にし、交渉の結果が思い通りにならなければ、うわさを現実的なものにすると いう見方もある。
いずれにせよ、うわさの裏には危険が潜む。これはほかの国々にとっても悪い手本となり、「京都議定書」の効力を一段と薄め、気候変動に対応する国際法規や交渉体制にダメージを与える可能性がある。
カナダにとっていえば、こうした姿勢が有利であるかどうかが考え物だ。1つの国にとって、信用は国際上で存在感やイメージを左右するものであるからだ。 「京都議定書」は国際的に法的効力を持つ。この議定書の締約国として、これを放棄すれば、短期的に自らの利益を守るが、長期的には人類生存の大計に影響 し、自らの信用をも傷つける。うわさがうわさにとどまり、現実にならないことを願う。”【12月1日 毎日中国経済】
会議では他の国々からの厳しい批判が予想され、会議の雰囲気を険悪なものにし、日本への風当たりも厳しくなることも懸念されます。
****共同歩調国離脱なら日本にも飛び火 先進国への不信増幅も****
カナダが京都議定書から脱退すると報じられたことで、COP17の交渉はさらに厳しさを増す。カナダが議定書の目標達成を放棄すれば、先進国に対する途上国の不信が確実に増すからだ。
議定書の延長拒否で日本と共同歩調をとるカナダが途上国から総攻撃にあえば、日本が目指す全ての国が参加する枠組みの実現もさらに難しくなる。
細野豪志環境相は29日の会見で、カナダの離脱について「情報がないので確認したい」と述べるにとどめた。政府関係者は「カナダの『脱退』が、2013年以降も議定書を延長することに反対するという意味なら意外感はない」と話す。
だが、カナダが現行の議定書での約束をほごにするなら話は別だ。本来、目標達成が難しければ、他国から排出権を買い取ってでも達成する義務がある。それでも無理なら、議定書延長で合意した場合に削減目標を引き上げられるといった罰則もある。
日本も08~12年に排出量を90年比6%削減することが義務づけられている。東京電力福島第1原子力発電事故後に原発の活用が難しくなり、目標達成へのハードルは高いが、節電や排出権の買い取りなどで目標達成を目指す方針だ。
そんな中でカナダだけが削減義務を果たさず、延長にも応じなければ、議定書自体が空文化する。新興国やアフリカ、島嶼(とうしょ)国などから「先進国は自らの責任を果たすべきだ」という強い批判が沸き上がることは間違いない。
COP17で日本は、議定書が期限を迎えた後の13年以降について、全ての国が自主的な目標に向けて削減努力を進める枠組みを提案している。カナダの議定書脱退が先進国と新興国の溝を深めれば、日本案に対しても「先進国が責任を果たすのが先」との声が強まる懸念がある。【11月30日 産経】
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