孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

セルビア  国境共同管理でコソボと合意 EU加盟候補国へ向け前進

2011-12-05 21:21:44 | 欧州情勢

(9月28日 ミトロビツァを北部のセルビア人地域と南部のアルバニア人地域に分断するイバ側河畔で、治安維持にあたるNATO指揮下の国際治安部隊(KFOR)兵士  “flickr”より By Prishtina Insight http://www.flickr.com/photos/67513988@N08/6197621184/

【“分断の街” ミトロビツァ
欧米の支持を得てセルビアから分離独立したコソボと、これを認めないセルビアの関係を象徴する都市が、コソボ北部の“分断の街” ミトロビツァです。
ミトロビツァは市内を東西に流れるイバ川を境に、北部のセルビア人地域と南部のアルバニア人地域に分断されており、セルビア人居住区の北部は、コソボにおけるセルビア人共同体の事実上の首都となっています。

このミトロビツァにおける、セルビア人とコソボ政府の衝突、NATO指揮下の国際治安部隊(KFOR)による介入については、8月6日ブログ「コソボ  セルビア人支配地域ミトロビツァで衝突 遠い和解への道」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110806)で取り上げたところです。

****コソボ:北部で衝突…特殊部隊がセルビア地域に進入****
コソボ北部ミトロビツァのセルビア人支配地域にコソボ警察特殊部隊が進入してセルビア側と衝突し、26日までに警官1人が死亡、数人が負傷した。現場一帯に国際部隊が投入されたが、27日にはセルビア側住民の一部が国境検問所に放火するなど緊張が高まった。欧州連合(EU)の仲介で始まったコソボ・セルビア直接交渉への影響も懸念されている。(中略)

コソボ政府は事実上「野放し状態」のセルビア国境を掌握するため、25日深夜から26日朝にかけ特殊部隊を派遣した。
コソボ警察は衝突後、国境から撤退した模様。ミトロビツァ北部では怒ったセルビア人が道路にバリケードを築くなど抵抗の構えをみせている。
EU加盟国の多くや米国は、08年のコソボ独立を承認、これを認めないセルビアとの仲介役を務めている。
毎日新聞 2011年7月28日 12時49分【7月28日 毎日】
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両勢力の衝突を回避すべく、KFORが国境管理にあたることでNATOとセルビアが合意しましたが、11月28日には住民とKFORが衝突、ドイツやオーストリアの兵士30人が負傷する事件もおきています。
また、コソボ政府にも、国境を自ら管理できないことへの強い不満があります。

セルビア:事実上、国境の存在を認める
この問題で、進展がみられたようです。
****セルビア、コソボとの段階的国境共同管理で合意****
セルビアは2日、対立を続けるコソボと、国境の共同管理を段階的に実現することで合意した。
セルビアがコソボ独立を認めない中、双方の直接対話を仲介してきた欧州連合(EU)が発表した。

セルビアは9日のEU首脳会議でEU加盟候補国として認定を受け、EUとの加盟交渉に入ることを目指しており、コソボとの関係改善は、そのために不可欠な条件となっている。

「コソボ独立」を認めないセルビアの強い影響下にあるコソボ北部のセルビア系住民居住地域では今年7月、コソボ当局が国境の直接管理を試みて住民と衝突。以来、緊張が高まり、北大西洋条約機構(NATO)軍が国境管理のため駐留している。(後略)【12月3日 読売】
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今回合意の意味は“セルビアは今回の合意で事実上、国境の存在を認める形になった”【12月3日 朝日】ということで、セルビア・コソボの関係改善の前提条件が整った形です。
ただ、コソボ領内で少数派として生活するセルビア系住民はこれを認めているのでしょうか?
現実的選択肢としては、セルビア系住民もコソボ国民として生きていくしかない状況ですが、それが平和的に可能になるようにセルビア・コソボ両国政府の配慮が求められます。

9日の欧州理事会でEU加盟候補国承認
記事にもあるように、EU加盟を目指すセルビアにとっては、コソボとの関係改善が求められていました。
セルビアのEU加盟については、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(92~95年)当時のセルビア人武装勢力指導者ムラディッチ被告をセルビアが今年5月に逮捕したこともあって、今年10月には新たなEU加盟候補国に格上げする方針が出されています。

****EU:セルビアを加盟候補国に格上げ 欧州委が提案へ*****
欧州連合(EU)の内閣にあたる欧州委員会は12日、セルビアを新たなEU加盟候補国とし、モンテネグロとの加盟交渉を開始するよう提案する。

セルビアはコソボの独立を承認せず、EUが主導するコソボとの対話も先月、中断させている。しかし、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(92~95年)当時のセルビア人武装勢力指導者ムラディッチ被告を今年5月に逮捕するなど、改革への姿勢を評価する。ただ、セルビアとの加盟交渉開始は先送りされる。

欧州委の提案は年末のEU首脳会議で承認される見込み。
EUは内戦を経験した旧ユーゴスラビア諸国に加盟を促すことでバルカン半島に安定をもたらすことを目標にしており、今回の提案もその一環。

EU拡大は、加盟申請▽潜在的加盟候補国▽加盟候補国▽交渉開始▽加盟承認▽加盟--の順で進む。
セルビアは09年に加盟申請し、これまで潜在的加盟候補国だったが、加盟候補国に格上げされる。次の段階の加盟交渉で求められる司法改革など35の条件を満たすよう国内改革を進める。コソボ承認はセルビア加盟の条件ではないが、対話再開が求められる。

旧ユーゴ諸国ではモンテネグロが10年に申請を認められ、加盟候補国となっていた。スロベニアが04年にEUに加盟。クロアチアが今年、13年の加盟が認められた。マケドニアは加盟候補国で、ボスニアとコソボが潜在的加盟候補国。【10月12日 毎日】
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今回のセルビア・コゾボの国境共同管理合意が念頭にあったのか、先月末に来日したセルビア議会のジューキッチ・デヤノビッチ議長は、EUへの加盟問題について、9日の欧州理事会で「加盟候補国の地位を得られると確信している」と述べ、EUとの加盟交渉が開始される可能性が高いとの見解を示しています。

それにしても、EUは欧州経済危機で屋台骨が揺らいでいる今、従来のような拡大路線をとる余裕があるのでしょうか?
コメント
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