(イランが捕獲したとしているアメリカの無人偵察機RQ-170センチネル “flickr”より By ampulmassa_ampul http://www.flickr.com/photos/ampulmassa/5720341027/ )
【「挑発と諜報行為」を強化していることを示唆するもの】
核開発問題をめぐるイランとアメリカのいがみ合いは毎度のことですが、先月8日、国際原子力機関(IAEA)が、イランが原子爆弾の開発に欠かせない特殊な技術を外国の専門家などから取得し、03年に起爆装置の実験を行った情報など疑惑の根拠を列挙した報告書を発表、こうした機密情報には「信頼性がある」として、「深刻な懸念」を表明したことで、その対立はヒートアップしています。
また、先月29日には、イランのイスラム体制派民兵組織「バシジ」に属する学生らが在イラン英国大使館を襲撃した事件が起きて、一層険悪な関係となっていました。
そうしたなかで、高度のステルス性能を備えるアメリカの無人偵察機が、“撃墜”だか“捕獲”だか何だか、経緯はよくわかりませんが、イランの手に渡ったことが報じられ、イラン側によって、その機体の映像が公開されています。
イランはこれまでもしばしばアメリカの無人航空機を撃ち落としたことを主張していますが、今回は映像証拠付きです。
****イラン、「撃墜した米無人偵察機」の映像を初公開****
イラン政府は8日、米軍の無人偵察機がイラン東部の領空「深く」まで侵入したと主張している問題で米政府に正式に抗議するとともに、前週撃墜した「RQ-170」だとする映像を国営テレビで公開した。
イラン国営テレビのウェブサイトによるとイラン外務省は、同国での米権益を代行する在イラン・スイス大使館のリビア・ルー・アゴスティ大使を呼び、領空侵犯は米国がイランに対する「挑発と諜報行為」を強化していることを示唆するものだとして、正式に抗議を伝えた。
現在、イランと米国の間には国交がないため、テヘランのスイス大使館が米国の利益代表部を務めている。
「RQ-170センチネル」は、米航空宇宙大手ロッキード・マーチン製の高高度ステルス無人偵察機で、その存在は2009年まで明らかになっていなかった。米空軍は2010年になってその存在を認めた。
■イランの電子戦部隊が着陸させた?
イラク国営テレビは8日夕、革命防衛隊の防空幹部2人がこのクリーム色の無人機を調べる姿を放送した。機体の外観は「RQ-170」そっくりで、目だった損傷はほとんどみられなかった。
機体を調べた1人、革命防衛隊航空部門トップのアミール・アリ・ハジザデ准将は、この無人機は革命防衛隊の電子戦部隊のわなにかかり、サイバー攻撃によってほとんど無傷で着陸させられたと述べるとともに、イランの専門家はこの機体からどれほど貴重な情報が得られるか、よく理解していると語った。
米国では、この無人機から獲得した先端技術をイランが利用するのではないかとの懸念が出ていると報じられている。しかしある匿名の米当局者は7日、イランには無人機から得た情報を活用できるほどの技術力はないだろうと米政府は考えていると述べた。
米紙ニューヨーク・タイムズは、イランの核開発との関連が疑われる施設の位置の調査にステルス偵察機がよく使われており、今回の無人機もその1機だったのではないかと報じている。【12月9日 AFP】
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映像では、アメリカの神経を逆撫でするように、イラン調査官が機体を撫でまわしていました。
“イランには無人機から得た情報を活用できるほどの技術力はないだろう”というのは、“豚に真珠”ということでしょうが、ロシア・中国も関心を示しているとも報じられています。
****撃墜の米偵察機、中露がイランに調査依頼*****
イランのメヘル通信は7日、軍関係者の話として、同国領空内で撃墜されたと報じられた米国の無人偵察機について、ロシアと中国が機体の調査をイランに申し出ていると伝えた。
イランが許可すれば、レーダーに捕捉されにくい最新のステルス技術が中露に流出する可能性がある。
アフガニスタンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)は4日、撃墜されたと報じられたのは、アフガン西部で飛行中に不明となった米偵察機かもしれないとする声明を出した。【12月8日 読売】
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今年5月、パキスタンにおけるビンラディン容疑者宅の奇襲攻撃でも、ステルスヘリ1機が事故を起こし、現場で破壊処分されましたが、その残骸がパキスタンの“友好国”中国に渡るのでは・・・ともアメリカメディアでは懸念されていました。結局このときは、残骸はアメリカに引き渡されました。
イラン報道がもし事実なら、今回は殆んど無傷の機体ですし、問題は多々あるものの一応“同盟国”のパキスタンと異なり、“敵対国”のイランです。いわば“人質”状態です。
ロシア・中国も、アメリカとの関係で、機体を譲り受けるようなことは表立ってはできませんが、機体が敵対国イランにある限り、技術調査の方法はいろいろあると思われます。
アメリカ国防総省のカービー広報官は5日、無人偵察機が行方不明になった事実を認めつつ、「攻撃を受けて墜落した証拠はない」として、撃墜したとの主張には否定的な見解を示しています。
そして、同広報官は「米軍機が回収不能な場所に落ちることについては常に懸念している」と語っています。
制御不能になった際の自爆システムとか備わっていないのでしょうか?
そもそも“制御不能”では、そうしたシステムも機能しないということでしょうか。
確かなことは、私たちが生活している頭上を、無人偵察機、更にはスパイ衛星といった類のものが飛びかっており、電話やメールなど通信はエシュロンなどによって傍受されている・・・ということでしょうか。
【「仮想大使館の開設は大悪魔による新たな謀略だ」】
もうひとつ、最近のイラン・アメリカ関連の話題としては、イランの国民向けにアメリカが「バーチャル(仮想)米国大使館」を開設したというものがあります。「ボイス・オブ・アメリカ」のような情報戦略の一環でしょう。
****米国務省:イラン国民向けに「バーチャル大使館」開設****
米国務省は6日、外交関係のないイランの国民向けに「バーチャル(仮想)米国大使館」と称するインターネットのホームページを開設した。イランの核開発問題に対する政策から、スポーツ、音楽などの軟らかい話題まで、米国に関するさまざまな情報を英語とペルシャ語で提供する。「自由の国・米国」をイラン国民にアピールし、情報統制で民主化を弾圧するイラン政府を揺さぶる狙いがあるとみられる。
ホームページには、イラン国民に向けて語りかけるクリントン国務長官の動画が掲げられ、「米国とイランは外交関係がないために、あなた方イラン国民と対話する重要な機会を逃してきた」とホームページ開設の理由を説明している。
米国ビザの取得方法なども詳しく説明。米国で活躍するイラン人音楽グループ、アメリカンフットボールなどについてのニュースも視聴できる。
英語版のホームページはhttp://iran.usembassy.gov/ 【12月7日 毎日】
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イラン側は、「仮想大使館の開設は大悪魔による新たな謀略だ」(国会外交政策・国家安全保障委員会のボルジェルディ委員長)と批判し、サイトへのアクセスを遮断しています。
****米政府がイラン向け「仮想大使館」…即接続遮断****
米政府は6日、米国と国交のないイランの国民との直接交流の窓口として「仮想在イラン米大使館」のウェブサイトを開設したが、半日でイラン当局により遮断され、米側が反発する事態となっている。
ロイター通信によると、イラン国内からの同サイトへの接続は、開設から約11時間後に遮断された。イランのメヘル通信によると、イラン国会のボルジェルディ国家安全保障・外交委員長は7日、仮想大使館開設を「イラン国民を尊重するふりをして、だますのが目的だ」と非難した。
一方、カーニー米大統領報道官は7日の声明で、「市民が情報を得ることをなぜ恐れるのか、イラン政府は説明すべきだ」と非難した。
ウェブサイトは、渡米ビザの申請受け付けのほか、米政府の対イラン政策の説明などを英語とペルシャ語で掲載し、特に若い世代向けの情報発信を狙っていた。イラン当局は、政府を批判する改革派勢力の伸長を警戒し、交流サイト「フェイスブック」や多数の外国メディアのウェブサイトへの接続を遮断している。【12月8日 読売】
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イラン側がアクセスを遮断することは当然に予想されていたと思いますが、それでもアメリカがこういうものを開設した意図は何でしょうか?
イラン側対応を批判するためでしょうか?方法を駆使すればアクセズあるいは情報取得も可能なのでしょうか?