孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  女子学生通学バス爆破、搬送先病院も襲撃

2013-06-16 22:13:33 | アフガン・パキスタン

(クエッタの女子大の通学バス 今回爆破されたバスも、テロ直前まではこんな様子だったのでしょう。 “flickr”より By Rehana. http://www.flickr.com/photos/29699247@N02/5710441980/in/photolist-9GBvsd-9EchRP-cbcqow-c9XJsY-daCsfQ-aZsYtr-9GBRKw-9Gyq6X-9GyqnK-7yLZoK-byrKmX-bkwRMj-byrKmM-byrKni-bkwRM3-as4uzW-eznPTP-dW8snZ-eMM5ac-9MEjBb-9NNs8w-9NNs8o-8yPFnW-e2Kzcp-e2Rec9-e2RegY-e2Redb-e2Re9A-e2ReaW-dBFJon-8vB7pv-8vB7rn-7K8Dbv-7zbuHD-ac4sUZ-e2Kz5P-e2Refw-ecSa3S-aco6BX-dt1rSm-dw1Cjz-7PKAHp-9JCFzV-9JFvjq-9JFwHd)

女性が教育を受ける権利を訴え、パキスタンでイスラム武装勢力に頭部を撃たれて重傷を負い、その後イギリスでの治療で奇跡的な回復を見せているマララ・ユスフザイさん(15)が自伝を出版するという話は、3月29日ブログ「イスラム社会の女性 マララさんの自伝出版 シリア難民家族の重苦しい戦いの日々」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130329)で取り上げたところですが、マララさんの行動が映画化されることになったそうです。

****マララの勇気」映画に=銃撃のパキスタン少女、7月から印・英で撮影―インド****
パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴え、イスラム教原理主義組織に銃撃されたマララ・ユスフザイさん(15)。その行動を描いた映画「グル・マカイ」の撮影が近く始まる。監督はインド映画の中心地ムンバイ在住のアムジャド・カーン氏(39)。出演者もほぼ固まったといい、「世界中にマララの勇気を届けたい」と意気込みを語った。

7月からインドやパキスタン、英国などで撮影を始める。主演はバングラデシュ出身のファティマ・シェイクさん(16)。シェイクさんの両親は娘がテロの標的になると懸念を示すが、カーン氏によると「本人は非常に乗り気」だという。【6月16日 時事】 
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映画化の詳しい背景などは一切知りませんが、3月29日ブログでも述べたように、彼女が伝えるメッセージがパキスタンやアフガニスタン、更には世界の教育機会に恵まれない状況に置かれている女性の社会環境改善の一助となることを期待します。また、映画の撮影が無事に行われ、多くの人々に彼女のメッセージが届くことを願います。

ただ、残念なことに、マララさんの話題を取り上げるたびに、「しかし、今のパキスタンは・・・」という話の展開になってしまいます。

****パキスタンで女子大生を標的にした攻撃、25人死亡****
パキスタン南西部バルチスタン州の州都クエッタで15日、女子大学生が乗ったバスが武装集団によって爆破され、14人が死亡、19人が負傷した。政府当局者が明らかにした。
その約90分後、負傷者が搬送された病院が襲撃され、準軍事組織の辺境州防衛部隊報道官によると、さらに11人が死亡、17人が負傷した。

2番目の攻撃が行われたのは、負傷者が搬送された同市の医療機関ボラン・メディカル・コンプレックスの救急病棟。武装集団は銃撃した後、病院内に立てこもった。
チョードリー・ニサル・アリ・カーン内相が報道陣に語ったところによると、こう着状態が数時間続いた後、治安部隊が建物に突入し、人質35人が解放されたという。病院内では自爆攻撃もあったという。

パキスタンで今年起きた死者を出す攻撃のうち2件がクエッタで起きている。2件ともパキスタンでは少数派のイスラム教シーア派を標的にしており、今回の攻撃で犠牲となった学生は、シーア派住民の間で人気のある女子大学の生徒だった。

現在のところ犯行声明は出されていないが、クエッタはパキスタンの最大宗派であるイスラム教スンニ派と、同国の人口約1億8000万人のうち20%を占める少数派のシーア派との宗派間対立の中心地となっている。【6月16日 AFP】
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なんとも痛ましい事件ですが、負傷者が搬送された病院を更に襲撃するというのも、随分と執拗な攻撃です。
“負傷者でごった返していた病院では爆弾が2度爆発し、武装勢力が医師や患者を人質にとって病院を占拠した。銃撃戦で、地元当局者や兵士らに犠牲者が出たもよう”【6月15日 産経】とのことです。

また、【6月15日 産経】は、“イスラム教スンニ派過激組織で少数派のシーア派住民へのテロを繰り返している「ラシュカレジャングビ」が犯行を認めた”と伝えています。

クエッタではシーア派イスラム教徒に対するテロが頻発しており、1月10日にも市内のビリヤード場において、連続して爆発が発生し、少なくとも81人以上が死亡、120人以上が負傷。
更に、2月16日には、クエッタ市内の市場で爆弾テロが発生し、少なくとも80人以上が死亡、190人以上が負傷しています。【日本外務省「クエッタにおける爆弾テロの発生に伴う注意喚起」より】

両事件とも、今回同様に、非合法スンニ派過激派組織「ラシュカレ・ジャングビー(LeJ)」が犯行声明を発出したと伝えられています。

同じ都市で、1月、2月、更に6月に、数十人規模の死者を出すテロが繰り返し起きるというのは、日本の感覚では信じられないことです。

クエッタのシーア派住民の多くは100年以上前に隣国アフガニスタンから移住してきた少数民族ハザラ人の子孫で、モンゴロイド系の容姿を持つため容易に区別がつき、過去、何度もテロの標的になっています。

今回の事件は、シーア派、少数民族ハザラ人、女子学生というイスラム過激派の標的とされやすい条件が重なっています。

****パキスタンでシーア派住民ら狙いテロ 政府の無策への批判高まる****
・・・・シーア派住民を狙ったテロでは、ハザラ人以外にも南部カラチや北部の住民が犠牲になっている。昨年4月に、ギルギット周辺で両派の対立が深まり外出禁止令が出され、観光客の邦人らが一時、ホテルから出られなくなった。昨年1年間で、全土で400人以上のシーア派住民が死亡する最悪の事態となっている。

宗派対立が激化している原因について、パキスタンのシンクタンク、平和研究所のムハンマド・アミル・ラナ所長は11日、産経新聞の電話取材に「1990年代は、政府は過激派を殺害したり、両派の対話を呼びかけたりしていたが、最近は何の措置もとられていない」とザルダリ政権の無策ぶりを批判。

ジャーナリストのイクラム・ホティ氏は、「パキスタンは国家として、社会的にも、治安面でも、財政的にも機能障害を起こしている」と述べ、物価高騰などによる社会不安が背景にあることに言及した。(後略)【1月11日 msn産経】
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もっとも、「戦場」のような危険にさらされているのはクエッタやシーア派住民だけではありません。

****パキスタン南部:最大都市カラチ「戦場と同じ****
パキスタンの最大都市カラチ周辺が、隣国アフガニスタンの旧支配勢力タリバンと連携する武装勢力「パキスタン・タリバン運動」に事実上支配されていることが地元の治安問題研究者などの分析で分かった。
当局は「支配」について否定するが、カラチ警察のテロ対策責任者は毎日新聞の取材に「タリバンはカラチを標的にしている。市内の治安状況は戦場と同じ」と、極めて治安が悪化していることを認めた。

パキスタンでは2001年に米国主導で始まったアフガニスタンでの戦争の影響でテロが頻発してきた。国際テロ組織アルカイダと連携、アフガン国境に近い北西部を拠点としてきた武装勢力「パキスタン・タリバン運動」は活動範囲を広げ、昨年7月ごろから南部カラチでもテロを激化させるようになった。

最大の商業都市でもあるカラチが武装勢力に完全に支配されると、国の経済に大打撃を与えるだけでなく、核保有国でもある同国の治安悪化は米欧の南西アジア戦略にも影響を与える可能性がある。

パキスタン最高裁は昨年11月、カラチが州都のシンド州政府に対し「タリバンが潜伏している問題を深刻に受け止めよ」と、治安対策強化を命じる決定を出した。カラチ在住の元政府高官は「2万人の武装勢力が内外に潜伏し、市周辺部は武装勢力に事実上支配されている」と話す。

カラチでは大量の警官や軍兵士が警戒する中、下院選投票日の5月11日には「反テロ」を訴える政党事務所で爆弾テロが起き、12人が死亡した。カラチ港からアフガン駐留外国軍に物資を運ぶ運送会社の社長は「市街地から10キロも離れると無法地帯だ」と話す。

カラチ警察のテロ対策責任者、アワン特別捜査部長は「市内で活動する武装勢力は20〜30の小集団に分かれ、街中に溶け込んでおり、捜査を困難にしている」と話す。公式統計はないが、地元記者によると、カラチでは過去2年で最低でも3000人がテロの犠牲になったという。【6月4日 毎日】
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5月に行われた総選挙では、イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)が単独過半数を獲得し、5日、PML―N総裁であるナワズ・シャリフ元首相(63)が圧倒的賛成多数で新首相に選出されました。
シャリフ首相はイスラム武装勢力との対話による和平実現を目指していますが、アメリカ無人機による攻撃は選挙後も続き、武装勢力側は交渉拒否を発表しています。

「テロ地獄」と化しているパキスタンの現状に、なんらか有効な手立てが講じられるか・・・見通しはあまり明るくないようです。
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