孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  新型コロナ禍のなかで増加するアジア系へのヘイトクライム

2021-03-02 22:24:29 | アメリカ

(NYロウアーマンハッタンで2月27日、アジア人差別に抗議し、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の撲滅を呼びかける集会「Rise Up Against Asian Hate」が開催され、数百人が集まった。集会はアジア系アメリカ人連盟が組織した。【2月28日 mashup NY】

 

【「外に出るのが怖い」】

新型コロナパンデミックで社会的なストレスが高まっているアメリカでは、トランプ前大統領のコロナと中国を関連付けた一連の発言もあって、日本人を含めたアジア系住民へのヘイトクライム的暴力が増加しています。(日本人から見て白人や黒人の顔が同じように見えるのと同じで、彼らからすれば日本人も中国人も同じようにしか見えないでしょう)

 

日本人関連では、昨年9月末に日本人ジャズピアニストの海野雅威さんが襲われた事件がありました。

 

****NYで暴行され重傷の日本人ピアニスト、手術受け回復中****

米国で活動する日本人ジャズピアニストの海野雅威さんが先月末、ニューヨーク市内の地下鉄の駅で暴行されて重傷を負い、病院に入院した。ニューヨーク市警や本人の家族が明らかにした。妻によると、手術を受け現在は回復に向かっている。

 

警察の調べによると、海野さんは9月27日、ハーレム地区にあるウエスト135番ストリート駅で、改札口をふさいでいた若者の集団に目を付けられた。

 

海野さんが集団を避けようとしたところ、後ろから押されて暴言を浴びせられ、男1人が海野さんを殴るなどの暴行を続けた。海野さんが倒れると男は現場から逃走し、海野さんは近くの病院に運ばれた。ニューヨーク市警によると、容疑者はまだ逮捕されていない。【2020年10月12日 CNN】

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最近の事件では、東本願寺別院への放火も。

 

****日本の寺 放火などの被害 米・ヘイトクライムか****

アメリカ・ロサンゼルスにある東本願寺別院が、放火などの被害に遭い、警察は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の疑いで捜査している。

 

犯人は、フェンスを乗り越えて侵入した。そして、灯籠を倒し、ちょうちん台にも火をつけたということで、燃えた跡がそのまま残されていた。

 

ロサンゼルスの日系人街にある東本願寺ロサンゼルス別院で25日夜、ちょうちん台が放火されたほか、灯籠が破壊され、入り口のガラスも石で割られた。

 

防犯カメラの映像では、容疑者は30代くらいの白人の男とみられ、犯行時間は5分ほどだった。

 

東本願寺ロサンゼルス別院 輪番・伊東憲昭さん「建物とかに被害を受けるのは直せるけど、人間だったら、けがしたり、殺されたりすることもあるから、皆さん気をつけないといけない」

 

ロサンゼルスやニューヨークなどでは、アジア系の人を狙ったヘイトクライムが相次いでいて、警察は、今回も同様の事件の疑いで捜査している。【2月28日 FNNプライムオンライン】

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アジア系住民へのヘイトクライムについては、2020年は全米で2,800件以上の被害が報告されています。

こうした状況に、アメリカ在住の日本人からは「外に出るのが怖い」との声も。

 

****寺に放火、後ろから刺され...アジア系へのヘイトクライム、コロナ禍で多発。「外に出るのが怖い」****

突然後ろから押され転倒、顔をカッターで切られる、寺の提灯台に火....アジア系へのヘイトクライムが多発している。ニューヨーク市はチラシやサイトで通報するよう呼び掛けている。

 

「一人で歩くのは避けている」「話しかけたくても、何をされるかわからず怖くて黙っている毎日...」
アメリカに住む日本人から聞いた言葉だ。

 

新型コロナウイルスの感染拡大した2020年から今年にかけて、アメリカで、アジア系へのヘイトクライムが続いている。

2月25日には、ニューヨーク市のマンハッタンの中華街近くで36歳のアジア系男性が午後6時20分ごろ、道を歩いていたところ、後ろから突然倒され背中を刺された。

 

男性は、腎臓の一つを摘出するなどし重体だという。「自分が刺した」と近くの警備員に伝えた容疑者の23歳の男は、「自分を見る目が気に入らなかった」と話しているという。警察によると、凶器は20センチのナイフだという。

 

同日夜、ロサンゼルスの東本願寺別院のちょうちん台が放火された。LAタイムズによると、灯籠も破壊されており、警察はヘイトクライムの疑いで捜査している。

 

2月16日には、同じくロサンゼルスのコリアンタウンで、27歳の韓国系アメリカ人の男性が「チャイナウイルス、中国へ帰れ」と叫ぶ2人の男から突然、襲われた。殴られた顔に青黒くあざが残る姿を各局テレビなどメディアが伝えた。

 

2月3日には、フィリピン系アメリカ人の61歳男性が、地下鉄で突然カッターで顔を耳から耳にかけてきられ100針を縫う大怪我を負った。

 

昨年7月には、ブルックリンで、89歳の中国系女性が無言で近づいてきた男に突然殴られ、洋服に火をつけられる事件もあった。

 

大学のアジア関係学部などで作る団体「Stop AAPI Hate」によると、新型コロナウイルスが感染拡大した2020年、世界で2800以上のヘイトクライムが報告されているという。

 

ニューヨークに住むキア•シェリーンさんもこの一年あまりの間に不快な思いをしてきたという。見知らぬ人から突然の敵意を剥き出しにされたことは一度だけではないという。

 

「2020年2月、知らない人が、にわかに私のそばに寄ってきて『コロナなんだろう』と言い捨てた時もありました。公共の場で明らかに距離をあけられて避けられたということもありました。

 

ヘイトが蔓延する雰囲気なので、とにかく今は、言いがかりをつけられてしまわないか心配です」とハフポスト日本版の取材に対して話した。

 

アメリカのニューヨークでは2週間連続で週末デモがあり、2月27日はデブラシオ市長がヘイトクライムに反対する運動に参加した。

 

ニューヨーク市は、市内でのアジア系に対するヘイトクライムが増加していることを踏まえ、偏見、差別及びヘイトクライムに対処するためのサイト「Stop Asian Hate」を開設した。市により日本語のチラシも作成された。

市によると、2020年にニューヨーク市であったアジア系アメリカ人に対するヘイトクライムは28件あり、うち18件が逮捕されている。【2月28日 井上未雪氏 Huffpost】

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2月27日にはNYで抗議集会も開催され、デブラシオ市長も参加しています。

 

****全米でアジア系に対する暴力多発、NYで抗議集会****

米全土でアジア系米国人に対する暴行事件が相次ぐ中、ニューヨーク市内で2月27日、アジア系住民を狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)に抗議する集会が開かれた。

 

集会で発言したフィリピン系米国人のノエル・キンタナさん(61)は、2月3日に地下鉄の車内で顔面を切りつけられる被害に遭ったといい、「私の周りにはたくさんのニューヨーカーがいたのに、誰も助けてくれなかった」と訴える。

 

ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は参加者に向けて「アジア系に対する憎悪を止めよう! 今すぐ止めよう」と呼びかけた。

 

ニューヨーク市内では25日にアジア系米国人の男性(36)が刃物で刺される事件も発生。チャック・シューマー上院議員(民主党)は、新型コロナウイルスの流行が始まった頃からアジア系に対する暴力が急増する兆しがあったと述べ、「アジア系米国人はニューヨークや米全で人種に根差す差別や嫌がらせの標的にされている」と指摘した。

 

CNNの取材に応じた参加者の女性は、外出するときは身構えるようになったと告白し、「もう歩きながら音楽は聴かないようにしている」と打ち明けた。「前政権の発言が憎しみをかき立てた。カンフーウイルスとかチャイナウイルスと呼んで。そして悲しいことに、私たちが格好の標的にされている」

 

抗議集会を主催したアジア系米国人連合(AAF)の集計によると、暴言を吐かれたり暴行されたり、咳(せき)や唾(つば)を吐きかけられたり、のけ者にされたりといった偏見やヘイトクライムの被害は2020年の1年間で500件近く報告された。

 

それでもほとんどは報告されないまま終わるため、この数字は氷山の一角にすぎないとAAFは見ている。【3月1日 CNN】

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【声をあげない「模範的移民」イメージから標的とされやすい面も】

アジア系は「被害にあっても声をあげない、事を荒立てない」という印象からターゲットにされやすい側面もあるとの指摘も。

 

****NYで頻発アジア系への暴行*****

(中略)全米各地で、昨年来、アジア系の人間を狙った犯罪(ヘイトクライム)が多発している。ニューヨークでは特にその傾向が顕著で、殴られる、暴行されると言ったケースが続発している。

 

昨年秋には、ニューヨーク在住の日本人ミュージシャンが地下鉄で若者の集団に暴行され骨折などの重傷を負う事件も発生。(中略)

 

現地の日本人が巻き込まれた、というおそろしい事件ではあったが、正直、その時はまだ「他人事」であった。

事件が起きた場所は自分の住む地域と環境も違うし、そこはそのような事件が起きやすい地域だったから起きた事件、と思った。

 

ただ、事件が起きたのがまだ明るい、9月の午後7時だったことが気になった。

かつてはニューヨークで事件に巻き込まれるのは「行ってはいけない場所に行ってはいけない時間に行く」からだ、とよく言われた。だが、この事件は少なくともそういう時間帯に起きてはいない。以前は事件に巻き込まれる時間帯は、ほとんどが深夜だった。

 

コロナ禍になって、この事件以前も以降もアジア人が攻撃される事件がいくつか起きていたが、今年2月に入ってアジア人を対象にした暴力事件が急増、事件の詳細を知るほど、今では、自分は無関係、と思えなくなって来ている。

 

2月3日、朝の通勤時間帯の地下鉄車内で騒いでいた男を注意したフィリピン系の男性が、言い争いの末、顔面をカッターナイフで切られる事件が発生した。男性は100針を縫う傷を負った。

 

2月16日朝7時前、58歳のアジア系女性が電車を待っていたホームでいきなり後頭部を殴り飛ばされ、ホームに倒れ込んだ。

 

同日午前11時、地下鉄の座席に座っていたアジア系の71歳の女性が左の顔面を殴られた。女性は出血しながらも犯人を追いかけようとしたという。彼女の両側にはアジア系ではない女性が座っており、明らかに自分が標的にされた、と言っている。

 

また、同日夕方、観光地として有名なSOHO地区の路上で、30才代のやはりアジア系の女性が、横に止まった車の中から無言でいきなりペッパースプレー(護身用の唐辛子スプレー)を顔面に吹きつけられた。

 

2月17日にはニューヨークの別地区のチャイナタウンで、52歳のアジア人女性が口論の末、「羽衣のように(被害者の娘談)」投げ飛ばされ頭に裂傷を負った。

 

以上の事件はすべて「夜」とは言えない時間に起きている。何か今までとは違った変化が起きて来ていることは確実だ。アジア人の事件の被害者が急増してきた。

 

最近、これらアジア人が対象とされた事件は比較的大きく報道されているが、以前は報道さえされなかったことも多い。それだけ、アジア人へのヘイトクライムと思われる事件は、重大な社会問題化している証だと思う。

 

しかし、これらは報道されている事件は「氷山の一角」であることは間違いない。実際警察も、起きた事件の多くは、実際には届けられていない、と認識している。

 

アジア人はアメリカでは、特にニューヨークでは「模範的移民」と言われる。

これは決して褒め言葉ではない。

 

アメリカで安定した普通の暮らしがしたい。「普通」を求めるがために、目立たず比較的「お行儀よく」行動するアジア人は、その他の人種の人々と少々傾向が違っていると思われている。

 

波風立たせず、周りに迷惑をかけずで、事件や被害にあっても、大きく声をあげない。被害にあっても、事件が周囲や自分の立場に影響することを極度におそれ、警察にも届け出ることはまれ。

 

実はこれらの指摘は当たっている。

これに加え、言葉の問題もあり、届け出には多くの労力と、周りの理解が必要で、被害にあっても泣き寝入りして自分の中のこととして問題をしまいこむアジア人は「迷惑をかけない」、「お行儀がいい模範的な移民」というわけだ。

 

ステレオタイプではあるが、こういう印象を持たれているのが犯罪のターゲットとされてしまう一因であると思う。

 

先日の集会は、少数の人種ならば、おたがい手を合わせて、もっと問題を訴えていこう、というものだ。

 

声をあげなければ何も変わらない。

集会(2月27日の抗議集会)は、様々な22の民族、人種の団体が主催に加わった。この中には日系の団体、黒人の団体、韓国系、アラブ系、インド系などの団体も含まれる。

 

集会の参加者は当初限定的と見られたが、アジア人へのヘイトクライムの急増を受け、注目度が上昇、もともとは予定になかったデブラシオ市長、州司法長官、上院議員なども登壇し、参加者は数百人規模となり、国内外に大きく報道された。

 

ヘイト事件の急増にはコロナ禍が人々の心や生活に与えた影響が背景にあるのは間違いない。

無言で殴りかかってくる者、護身のためなのか、ナイフを持ち歩いているもの。

 

持ち運びにすら苦労する大型の包丁などを、なぜ身につけているのか、どう考えても理解に苦しむが、それぞれのヘイト事件を見れば、明らかに、攻撃をすることを前提に、声をあげないアジア人をストレスのはけ口にしているとしか思えないケースばかりだ。

 

アジア人ならやってしまって構わない。事件が届けられなければ捕まらないし、異人種だから心も痛まない、ということだろうか。

 

ちなみにヘイトクライム以外の暴行事件も急増していて、ヘイトに見えるが、ヘイトクライムに認定されていない事件が多数ある。アメリカではヘイトクライムは重罪で、当局が訴追に慎重になっていることを関わりが消極的、とする批判もある。

 

(中略)参加者の殆どはアジア系で、自分もそのうちの「一人のアジア人」であった。しかし、周りをよく見渡せば、集会参加者の多くはアジア人ではあったが、アジア系でない、他の人種、民族の人々の参加も決して少なくなかった。

 

自分も声を上げることができるだろうか。

遠い目で演壇を見ながら、明日は我が身かもしれない、という言葉が頭に浮かんだ。

【3月2日 柏原雅弘氏(ニューヨーク在住フリービデオグラファー) Japan In-depth】

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