(中国がワクチン接種者に発行を開始した「ウイルスパスポート」の見本画面【3月9日 AFP】)
【世界で約3億3千万回 スローペース日本は約23万回】
日本国内の新型コロナワクチン累計接種回数は3月12日時点で約23万回とのこと。
****チャートで見る日本の接種状況****
新型コロナワクチンは医療従事者向けの優先接種が各地で進み、国内の累計接種回数は3月12日時点で4万9358回増の23万542回になった。
接種完了となる2回目の接種も始まり、接種を受けた人は累計で22万7194人、うち2回接種完了は3348人になった。
輸入第4便が3月8日到着し、1瓶あたり6回採取する計算で最大で99万4500回分だった。これまでの輸入分と合わせ、現在の調達数は約236万回分(約118万人分)になった。【3月13日 日経】
*******************
一方、世界全体では3億回を超えています。
****主な国・地域の接種状況****
世界全体の累計接種回数は3月11日までに3億2883万回を超えた。直近7日間の接種回数は1日平均で600万6863回になっている。
国・地域別では米国、中国の接種回数が突出し、2カ国で全体の45.1%を占める。欧州各国でも普及が進む。【3月12日 日経】
*******************
11日時点での国別では、アメリカが9567万回、中国が5265万回、インドが2568万回、イギリスが2425万回、ブラジルが1175万回、トルコが1036万回、イスラエルが907万回とのこと。
もちろん、途上国などではこれからの国が多々ありますが、明らかに日本は世界主要国比較で見るとワクチン接種の遅れが目立ちます。
****河野担当相×橋下徹 4 日本の遅れは“3カ月遅れの治験”****
(中略)今月(2月)から、医療従事者への接種が始まったものの、結果的に欧米に遅れる形となった。
番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏は「製薬会社は、治験データを提供する国にワクチンを優先供給する現実があるのではないか」と述べた。
これに対して河野氏は、イスラエル以外の国で、優先的なワクチン供給を受けるために、データを提供したケースはない、との見解を示した。
その上で河野氏は「むしろ日本の問題は、諸外国と比べて感染者数が桁外れに少ない。ファイザーが国際的な治験をやろうとした時、日本は対象外となった」「そこで日本政府はファイザーに依頼し、世界的に7月から始まった治験を10月からスタートし、承認にこぎ着けた」と内幕を語った。【2月28日 FNNプライムオンライン】
*******************
どういう事情があるにせよ、世界各国がワクチン確保にしのぎを削っているなかで、ワクチン確保に向けた日本政府の対応は鈍かったように思われます。
そうした「鈍さ」を可能にしたのは、国民の過剰なまでのワクチンへの不安感、それを助長するようなメディアの姿勢でしょう。
今ですら、この国民の生命を危険にさらした失政への責任追及姿勢は世論・メディアにはあまり見られません。
そうした状況を背景に、政府・自治体・専門家は国民に上から目線の「自粛」を求めるばかり・・・まあ、国民がそれで納得しているなら、コロナで何人死のうが、閉店・廃業を余儀なくされた者がどれだけ出ようが、何も言うべきことはありませんが。
【1億回を超えたアメリカ 未承認ワクチンの大量ストックがあるも、他国への供与は拒否】
ところで、接種回数で世界トップのアメリカ、1億回を超えたとか。かなりのハイペースで進んでいるようです。
****米、ワクチン接種1億回=予定の半分で目標達成****
米国内での新型コロナウイルスのワクチン接種が12日、累計で1億回を超えた。
バイデン大統領は1月の就任時、「(政権発足から100日に当たる)4月末までに1億回の接種を目指す」と表明していたが、およそ半分の期間で目標を達成したことになる。
疾病対策センター(CDC)によると、米国内で少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは、人口の約2割に当たる約6600万人。うち約3500万人は免疫獲得に必要な回数の接種を済ませ、接種回数は延べ1億100万回となった。優先接種の対象とされる65歳以上の高齢者に限ると、61%強が少なくとも1回の接種を受けた。
バイデン氏は11日の演説で、「18歳以上の全成人が5月1日までにワクチン接種を受ける資格を得られるよう、各州に指示する」と表明。ホワイトハウスは12日、優先接種対象となる職種を従来の医師や看護師などに加え、歯科医、獣医師、医学生、看護学生らに広げると発表した。【3月13日 時事】
*********************
接種がハイペースなだけでなく、ワクチン確保の点でも、未承認ワクチンをも大量ストックしているようで、なんだかんだ言いつつ「やっぱアメリカは・・・・」という感も。
そうした“ため込んでいる”ワクチンを分けて欲しいという要望もありますが、協調重視のバイデン政権も、それに関しては前政権同様「自国民優先」のようです。まあ、国民の生命を第一とする国家としては当然と言うべきか・・・。
****米政府、外国からのワクチン融通要請拒む 自国民優先****
サキ米大統領報道官は12日、世界の多くの国から新型コロナウイルスのワクチン供与に関する要請が米国に届いているが一切応じていないことを明らかにした。
米食品医薬品局(FDA)が緊急使用をまだ承認していない英アストラゼネカ社製のワクチンを、米国が数千万回分確保している理由を問う質問に答えた。バイデン米大統領が他国へのワクチン供給より、米国民へのワクチン接種を現在の最優先課題としている方針に言及した。
同社製のワクチンについては多数の国が使用を許可。ただ、欧州中心に十分な量の調達に手間取っており、供給能力への懸念も生じている。一方で米国はFDAによる使用承認の審査が続くなか、大量の在庫を既に抱えている。
サキ報道官は米国民へ投与するワクチンの量を確保したいとの狙いがあると説明。米国内では依然、毎日1400人が亡くなっているとの現状にも触れた。他国へワクチンを差し向けないのは「我々の集中すべきかつ優先順位の問題」と強調した。
他国へのワクチン供給でバイデン氏は倫理的な義務感を覚えないのかとの質問には、「大統領の目下の関心は米国の危機の封じ込めにある」と応じた。
米国の指導者としてワクチン確保で最大限の融通性を望んでいる一方で、国際社会との協力を求める意図を示しているとも述べた。【3月13日 CNN】
*******************
ワクチン確保が遅れて、統合の理念が揺らいでいるEUなどは、喉から手が出るほど欲しいところでしょうが。
****オーストリア首相、EU加盟国は「裏取引」でワクチン調達と主張****
オーストリアのセバスティアン・クルツ首相は12日、欧州の一部の国は、欧州連合の規定で定められた量よりも多くのワクチンを受け取るため、ワクチン製造会社と「裏取引」をしている可能性があると主張した。
EU加盟国は、各国の人口に合わせてワクチン供給量を調整することで合意した。しかしクルツ首相は、加盟国のワクチン調達量を比較したところ、「(各国への)ワクチン供給量は、人口に応じて割り当てる仕組みに即していない」ことが判明したと主張。
「加盟国と製薬会社が追加契約を結んだ『市場』のようなものが存在することを示す手掛かり」として、1人当たりのワクチン量で比べると、今年7月末までにマルタはブルガリアの3倍の量のワクチンを確保し、6月末までにオランダはドイツより多いばかりか、クロアチアの2倍近い量のワクチンを確保することを例に挙げ、「これはEUの政治指針とは明らかに矛盾している」と述べた。
しかし、EU側は、クルツ首相が主張するような水面下での取引は行われていないと一蹴。
欧州委員会のステファン・デケースマーカー報道官は、「加盟国が、供給されるワクチン量の増減を依頼することもあるだろうが、それについては加盟国同士で話し合われている」と述べ、「加盟国同士の協議により、製薬会社との合意で新たな分配量が決まることも考えられる」とした。
ワクチン接種計画が遅いとして批判されているEU加盟国は、供給と出荷に問題があるとしている。
ワクチン接種を1回以上受けた人口の比率でみると、米国やイスラエル、英国と比較して、欧州各国は後れを取っている。 【3月13日 AFP】
********************
一方、アメリカの断れたメキシコは中国に頼る・・・といったことも。
****メキシコ、米国にワクチン共有を拒否され、中国に頼る―中国メディア****
中国メディアの中国日報網は10日、メキシコについて「米国に新型コロナウイルスワクチンの共有を拒否され、中国に頼ることに方向転換した」と報じている。
ロイター通信の報道を引用して伝えたもので、それによると、メキシコのエブラルド外相は9日の記者会見で、「メキシコはワクチンの不足を埋めるために、2200万回分の中国製ワクチンの注文に目を向けている」とし、「ロペスオブラドール大統領が中国からより多くの支援を得るための努力を主導した結果、2200万回分のワクチンを入手できることが確認された」とした。(中略)
米国のバイデン政権は先週、ワクチンをメキシコと分け合う計画はなく、自国民の接種を優先すると表明していた。【3月13日 レコードチャイナ】
***********************
IOCバッハ会長が、中国製ワクチンを承認している国・地域の選手と関係者向けとして中国からワクチン提供の申し出があったと明らかにした件といい、中国のワクチン外交は「大成功」のようです。
【ワクチンへの関心高まる 今後は未接種者との差別化が課題】
話をアメリカに戻すと、国民のワクチン接種を促すキャンペーンに、存命の米大統領経験者のうち、トランプ氏を除く4人が出演したとか。
****存命の4人の元米大統領、ワクチン接種促すCM出演 トランプ氏は出ず****
存命の米大統領経験者のうち、トランプ氏を除く4人が出演し、新型コロナウイルスワクチンの接種を呼びかける公共広告のテレビ放映が11日、始まった。ワクチンに対する疑念を払拭(ふっしょく)する狙いがある。
出演したのはカーター、クリントン、ブッシュ(子)、オバマの各元大統領夫妻。広告は2種類あり、長い1分間のものは各夫妻が接種を受ける様子を見せるもの。
30秒の短いバージョンはクリントン、ブッシュ、オバマの各氏がアーリントン墓地の施設に3人で立ち、ワクチン接種を呼びかける内容となっている。
1分間の広告では、ブッシュ氏がワクチンが「すぐに皆の手に届く」と述べ、オバマ氏がワクチンは「希望」で「あなたとあなたの愛する人を守る」と続ける。その後、コロナ禍で失ったものに言及し、クリントン氏は「仕事に戻り、動き回りたい」、オバマ氏は義母を「誕生日にハグして会いたい」、ブッシュ氏は「テキサス・レンジャースのスタジアムで開幕戦に参加したい」と語った。
96歳のカーター氏はカメラの前では話さなかったが、自分が接種を受けるのは「この流行をできる限り早く終わらせたいからだ」との音声が流れた。
トランプ氏の参加について、事情に詳しい関係者によると、任期末期に大統領経験者らと疎遠な状況となっていたことや、バイデン大統領の就任式に出席せずワシントンを離れた経緯から、話題にあまり上がらなかったという。
ワクチン接種のキャンペーンの話は、大統領就任日の1月20日にクリントン、ブッシュ、オバマ氏の間で交わされた会話から進んだ。本プロジェクトに近い人物は、トランプ氏が就任式に参加しない決断をしたため、広告への参加を依頼されることもなかったと語る。
この広告は米広告協会が作成した。広告の作成チームはトランプ氏の参加はなさそうだと見て、参加の機会は遠のいた。ある大統領経験者の側近は、こうした時に「参加したいというサインがいっさいなかった」とも語った。
トランプ氏の広報担当に参加しなかった理由を尋ねたが返答はない。
トランプ氏は放映が始まる前日の10日に、1月にワクチン接種を受けていたことを認める声明を出している。【3月12日 CNN】
********************
日本ほどではないにしても、ワクチンへの不信感が比較的高かったアメリカでも、ワクチン接種への関心が、昨年5月38%、今年1月41%、3月54%と高まっているようです。
****職場復帰や旅行のワクチン接種義務、米の6割が支持=調査****
ロイターとイプソスが12日に公表した調査によると、新型コロナウイルスワクチンの接種を希望する米国人が半数を超えた。また、ワクチン未接種の人に対する職場や旅行での制限を支持する割合が約6割に上った。
調査では54%がワクチン接種に「非常に関心がある」と回答。1月調査の41%、ワクチン開発前の昨年5月時点の38%から上昇した。一方、興味がないという回答は27%で、昨年5月とほぼ同水準だった。
また、72%が「自分の周りの人がワクチンを接種しているかどうか」を知ることが重要と回答。ワクチン未接種の人について、飛行機の利用を認めるべきではないと答えた人は62%、公共のジム、映画館の利用やコンサート鑑賞を禁止すべきと答えた人は55%に上った。
さらに、60%が職場復帰に当たり社員全員にワクチン接種を義務付ける雇用主の下で働きたいと答え、56%がワクチン未接種の社員は在宅勤務とすべきだという考えを示した。
調査は8─9日に、1005人を対象に行われた。【3月13日 ロイター】
**********************
職場復帰や旅行のワクチン接種義務をどうするかは、今後ワクチン接種が進んで行くと、日本を含めた各国が直面する課題ですが、アメリカの場合、ワクチン接種に興味がないという27%はトランプ支持層とも重なる部分が大きいと思われますので、「政治問題」にもなりそうな感じも。
米疾病対策センター(CDC)は8日、新型コロナウイルスのワクチンの接種を完了した人に向けた手引きを発表し、接種完了者同士が屋内で集まる場合、マスクを着用したり、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を取る必要はないとしています。
一方、加藤勝信官房長官は9日、日本では接種完了後も引き続きマスク着用が必要との方針を示しています。
また、各国で「ウイルスパスポート」導入に向けた動きが見られます。
****中国、「ウイルスパスポート」の発行開始****
中国はこのほど、海外旅行者向けの健康証明書となる「ウイルスパスポート」の発行を開始した。世界初とみられている。
保持者のワクチン接種状況とウイルス検査結果を示すこの電子証明書は中国国民向けで、ソーシャルメディアプラットフォームの「微信(ウィーチャット)」で8日に発行が始まった。
外務省報道官は、この取り組みの目的について「世界経済の回復促進に寄与し、国境を越えた移動を容易にするため」と説明している。
ただこのパスポートは、中国を起点とする出入国時に提示されるが、現在の発行対象者は中国国民だけで、まだ義務化はされていない。
また中国人が海外に赴く際、他の諸国の当局がこれを活用するかどうかは不明。 【3月9日 AFP】
********************
ワクチンより自粛・巣ごもりの方がいいというハイリスク者と接種を済ませたローリスク者の間で、日常生活のいろんな面で扱いに差が出るのは当然のことでしょう。