孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  頻発する学生らの集団拉致事件 身代金目的か 政府の支払いが事件誘発との批判も

2021-03-17 22:59:11 | アフリカ

(【3月2日 ロイター】ナイジェリア北西部ザムファラ州で武装集団に連れ去られ、その後解放された女子生徒)

 

【2050年には人口4億、世界第3位】

経済規模でアフリカ最大の国は、南アフリカではなくナイジェリア。

そのナイジェリアは現在人口約2億人ですが、2050年には4億人に倍増し、インド、中国に次ぐ世界第3位になる予想とか。

 

当然に、経済的にはその市場規模が注目されます。

 

****世界のなかで「ナイジェリア」ほど有望な国はないと言える理由*****

(中略)資産管理のサポートなどを行うBeograd Consulting Group(ベオグラード コンサルティング グループ)埜嵜雅治CEOは「世界を見渡してもナイジェリアほど魅力的な投資対象はない」という。その真意について伺った。

 

アフリカ54ヵ国で最もGDPが高い国、ナイジェリア

――資産管理のサポートなどを行っている御社は、最近ナイジェリアに注目していると伺いました。なぜなのでしょうか。

 

(中略)ここでナイジェリアのアフリカにおけるポジションを確認しておきましょう。アフリカで最もGDPの大きな国はナイジェリアです。多くの方は南アフリカだと想像するでしょうが、アフリカにある54ヵ国のなかで最も経済規模が大きいのはナイジェリアなのです。

 

またアフリカ西部の15ヵ国からなる「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」の中心国でもありますし、55ヵ国が加盟する「アフリカ連合(AU)」での存在感も増しています。ちなみにコロナ禍で導入が先送りになりましたが、ECOWASではEUにおけるユーロのように、共通通貨「ECO」の導入が予定されています。

 

このようにアフリカの中心国であるナイジェリアの経済成長率は、2016年のマイナス成長を経て、2017年からは年々、上昇しています。それにも関わらず、株価が低迷しているわけです。ナイジェリアという国に注目するには、十分すぎる条件ではないでしょうか。

 

30年後「ナイジェリアの人口」が4億人に達するワケ

――初めの着眼点は、「株式の割安感」ということですね。しかしいくら平均株価が安くても、値上がりが期待できないと投資対象としては難しいと思いますが、御社はどこに注目したのでしょうか。

 

現時点で人口が多く、この先も増え続ける可能性が高い、というのは大きな判断材料でした。内需が拡大し、経済成長が見込めますから。

 

ナイジェリアはアフリカで最も人口の多い国です。2000年に日本と同程度の約1億2000万人の人口だったのが、20年で7000万人ほど増えました。2050年には人口が4億人に達し、世界第3位になるといわれています。

 

なぜここまで人口が増えるのか。多くの方は「生まれてくる子どもの数が多いから」と思われるでしょうが、それだけでは大幅な人口増とはなりません。さらに注目すべきは「5歳未満の死亡率の低下」です。

 

元々ナイジェリアの出生率は高かったのですが、一方で5歳未満の死亡率も高い水準にありました。先進国では考えにくいですが、下痢が原因で多くの乳児が亡くなっていたのです。しかし経済成長と共にインフラが整備され、医療も進歩したことで、5歳未満の死亡率は2000年以前に比べて半分程度にまで低下しました。

 

経済成長が続けば、出生率も下がります。それは多くの先進国が経験したことで、ナイジェリアでも同じです。このまま経済成長が続けば、出生率は頭打ちになるでしょう。

 

しかし先進国に比べると死亡率はまだまだ低下の余地があります。それに伴い、人口も加速度的に増加していくというわけです。

 

ビジネス上でもナイジェリアのアドバンテージは大きい

――30年後には、ナイジェリアは中国やインドに続く、人口大国になるわけですね。

 

そうです。アフリカ全体の人口は30年後に25億人に達するといわれています。世界の4人に1人はアフリカの人という時代になるのです。さらにアフリカの人の5、6人に1人はナイジェリア人を占めるようになります。これだけでもナイジェリアの影響力は計り知れません。

 

さらに注目すべきは、ナイジェリアの公用語は英語だということです。これはイギリスによる植民地時代の影響によりますが、「公用語=英語」は、今後ナイジェリアが経済成長を続けていくために、大きな武器になると考えます。(後略)【2月25日  幻冬舎GOLD ONLINE】

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もちろん、楽観的な話ばかりではありません。

2050年に向けて人口が増大するのは、ナイジェリアを含むアフリカ諸国。

そうなると、食糧不足が懸念されるという指摘もあります。

 

****ナイジェリア、世界第3位の人口大国に…アフリカの人口急増、世界的食糧不足で価格高騰****

今年の6月に国際連合広報センターが「世界人口推計 2019年版」を発表した。それによると、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人と20億人も増加するという。それだけではなく、国別人口順位が次のように変わるとしている。

 

【2015年】

・1位:中国(13億7000万人) 2位:インド(13億1000万人) 3位:米国(3億2000万人)

 

【2050年】

・1位:インド(17億人) 2位:中国(13億人) 3位:ナイジェリア(3億9000万人)

 

なんとアフリカのナイジェリアが米国(3億8000万人/50年:4位)を抜いて世界第3位の人口大国になる。ナイジェリアは15年には人口1億8200万人で世界第7位だが、35年間で約2.2倍に急増する。

 

国連によると、2020年から2100年までの人口増減率で増加率上位10位はすべてアフリカ諸国となっている。

 

ニジェール:581% タンザニア:378% ザンビア:344% コンゴ民主共和国:304%

モザンビーク:296% ナイジェリア:256% スーダン:225% ウガンダ:199%

エチオピア:156% ケニア:133%

 

アフリカ諸国の人口が今後急増することによって、世界人口は2050年に97億人に膨れ上がる。人口増加による問題の一つは、食料供給が追いつくのかという問題である。

 

人口が急増するアフリカ諸国の農業は零細で、自給自足が主体の家族農業となっている。そこで、その家族農業を支援して市場に食料を供給できる農業経営にし、食料供給力を高めようと国連で決議されたのが、「家族農業10年」であった。

 

気候変動で穀物価格上昇

他方、地球温暖化問題に取り組んでいるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も食料問題にアプローチをしている。今年の8月にIPCCは、「土地の利用状況と気候変動に関する特別報告書」を公表し、気候変動と食糧供給システムとの関係を解明し、私たちの食生活のあり方にまで警告を鳴らした。

 

報告書では、「工業化以前の期間より、陸域面気温は世界全体の平均気温に比べて2倍近く上昇している」として、それによる極端な気候変動が食料安全保障や生態系に悪い影響を及ぼし、砂漠化や土地劣化を進行させているとし、2050年には穀物価格が最大23%上がるとした。

 

さらに報告書は、食料生産から流通、消費による温室効果ガス排出量が、総排出量の4割弱であることを明らかにした。

 

温暖化の緩和を進めるために、「食品ロスおよび廃棄物を含む、生産から消費に至るまで食料システム全体にわたって対応の選択肢を導入」することを求めるとともに、「食生活の変化による総緩和ポテンシャルは2050年までに70~80億トン/年になると推定」としている。ここでいう「食生活の変化」とは、肉よりも米やトウモロコシなどの穀物を多く摂る食生活に変えることである。

 

このように、世界人口が急増する一方、地球温暖化によって穀物価格が上昇するなど、食料供給は楽観できない状態に追い込まれている。そして、それは私たちの肉食偏重の食生活の見直しを迫るものにもなっている。【2019年12月1日 Business Journal】

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【頻発する武装勢力による学生らの集団拉致】

2050年の話はともかく、今現在に目を向けると、ナイジェリアに関してはイスラム武装組織ボコ・ハラムのテロ活動などによって治安状態が非常に悪いという大問題があります。

 

そうした治安の問題の背後にあるのは、貧困、格差、政治の腐敗・・・といった問題。これは多くのアフリカ諸国に共通する問題です。

 

ナイジェリアで特に目立つのが、武装勢力による学生らの集団拉致。

 

****ナイジェリアで学生39人拉致 武装勢力が大学を襲撃****

ナイジェリア北部カドゥナ州で11日夜、武装勢力が大学を襲撃し、学生39人を連れ去った。AFP通信などが伝えた。治安当局や軍が、武装勢力と拉致された学生の行方を追っている。

 

同通信や地元メディアによると、武装勢力は同日午後9時半ごろに学校に侵入し、無差別に銃撃を開始した後、学生たちを連れ去った。翌12日未明、駆けつけた軍が反撃して約180人の学生を救出したものの、学生39人の行方が分からなくなっているという。救出された学生の中には負傷者もおり、病院で治療を受けているという。

 

ナイジェリアでは昨年12月以降、北部を中心に学校が襲撃されて多数の生徒が拉致される事件が相次いでおり、今回で4件目。武装勢力は主に身代金を目的としているとされる。

 

これまでの3件とも拉致された生徒らは解放されたが、政府は身代金の支払いを否定している。【3月13日 朝日】

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集団拉致自体が驚くべきことですが、尋常でないのはその頻度。

しかも、最近の事例では事件後解放されることが多く、メディア上では、頻繁に事件発生のニュースと解放のニュースが踊っています。

 

“ナイジェリアでまた学校襲撃 300人以上連れ去られる”【2月27日 朝日】

“拉致された女子生徒279人、全員解放 ナイジェリア”【3月2日 AFP】

 

“武装集団が学校襲撃 生徒1人殺害、42人拉致 ナイジェリア”【2月18日 AFP】

“学校襲撃で拉致された生徒ら42人、全員解放 ナイジェリア”【2月27日 AFP】

 

【政府の身代金支払いが事件を誘発?】

前出【朝日】には、“武装勢力は主に身代金を目的としているとされる。これまでの3件とも拉致された生徒らは解放されたが、政府は身代金の支払いを否定している。”とありますが、身代金は払っているとの指摘も。

 

そのことが事件を誘発する原因にもなっているとも。

 

****政府が身代金の支払いに応じたら誘拐事件が急増…ナイジェリアで学校襲撃相次ぐ****

ナイジェリアで武装集団が学校を襲撃し、生徒らを誘拐する事件が急増している。政府側が身代金の支払いに応じたことが事件を誘発したとの見方が広がり、政府の治安対応に批判が集まっている。

 

英BBCなどによると、15日に中北部カドゥナ州の小学校で教師3人が誘拐されたほか、11日にも同州の学生寮から女子生徒39人が連れ去られた。

 

誘拐事件は、隣接するカツィナ州で男子生徒300人以上が被害に遭った昨年12月以降急増し、被害者はこれまでに800人以上に上る。多くはその後、解放されたが、政府側はその都度、身代金を支払っているとされる。【3月16日 読売】

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拉致された学生らを取り戻さないと、国民からの批判にさらされる。

でも、武装集団を捕らえる力はない。カネでなんとか・・・・という話でしょうか。

 

前出【朝日】が伝える39人拉致の事件については、悲惨な映像が明らかになっていますが、こうした映像には身代金支払いを求める犯行組織側の狙いがあるように思われます。

 

****武装集団に拉致された学生、銃突きつけられた映像が浮上 ナイジェリア****

 西アフリカのナイジェリアで、北西部カドゥナ州の学校から連れ去られた学生たちが銃口を突き付けられたりむちで打たれたりする映像が浮上した。

 

映像は13日に浮上し、フェイスブックで広く共有された。一部の学生は見るからに苦しんでいる様子だった。男子学生の1人は背後の人物に銃口を突き付けられた状態で、政府に対して犯人に従ってほしいと訴えていた。

 

カドゥナ警察によると、同州マンドにある連邦カレッジが11日夜、武装集団に襲撃され、学生39人が拉致された。今回の映像に映っているのはこの学生たちの一部だった。同国北部で教育機関から学生や生徒が集団で拉致される事件は、今年に入って3回目になる。

 

銃を突き付けられた学生は、救出のための強行作戦を実行すれば犯行集団による重大な結果を招くと訴え、「ここにいる私たちの多くがけがをしている…ひどいけがを…時間が過ぎる…私たちのほとんどは健康問題を抱えている」と付け加えた。

 

犯行グループが身代金を要求しているのかどうか、現時点では分かっていない。

 

カドゥナ警察の広報は14日、CNNの取材に対し、「映像は本物だ。犯人は拉致した被害者の1人を使ってこの映像を録画した」と語った。犯行グループからの金銭的要求については認識していないとしながらも、身代金の要求

に応じる選択肢はないと強調している。

 

拉致されたのは、農業を研究する19〜25歳の学生だった。

カドゥナ州当局は12日、軍が武装集団と交戦し、学生や職員など180人を救出したと発表していた。

 

しかし警察は14日午前の時点で、カレッジから連れ去られた学生39人はまだ拘束されていると述べ、被害者全員を無事救出するため、他の治安機関と連携して合同作戦を展開すると説明した。【3月15日 CNN】

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身代金支払いに関して、前出【読売】のような批判が高まると、政府側も支払いが出来ず、いたずらに時間が過ぎ、結果的に人質を持て余した犯行組織側が人質を・・・という最悪の可能性も考えられます。

 

ボコ・ハラムが「西洋の教育は罪」という意味であることが示すように、イスラム過激派にとって、学生は糾弾すべきものの象徴ともなってきましたが、営利目的の集団誘拐が繰り返される背景には、そうした宗教的な話ではなく、貧困のため教育機会が十分になかった者が生きるために犯罪組織に身を投じ、教育を享受する学生に憎悪の感情を抱いているのでは・・・・というのは私の妄想です。

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