孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  反政府デモ再燃 警察が実力行使 ミャンマーと連動

2021-03-04 22:49:47 | 東南アジア

(タイ・バンコクで、催涙ガスを浴びて顔を洗ってもらっている民主派デモの参加者(2021年2月28日撮影)【3月1日 AFP】)

 

【ミルクティー同盟】

しばらく沈静化していた感もあったタイの民主化・王室改革などを求める反政府行動が再び再燃しています。

 

****タイ首都で政権退陣求めるデモ、警察が数か月ぶりの実力行使****

タイの首都バンコクで2月28日、プラユット・チャンオーチャー政権の退陣を求めるデモが行われ、警察はゴム弾や放水銃、催涙ガスを使用した。バンコクの抗議デモで、警察が実力行使に踏み切ったのは数か月ぶり。

 

タイの若者主導の抗議運動はここ数か月、新型コロナウイルス流行の第2波を受け勢いを失っていたが、先日著名な運動指導者4人が王室への不敬罪で起訴、勾留されると、再び活発化している。

 

バンコクではこの日、推定2000人のデモ隊が、戦勝記念塔があるロータリー交差点からプラユット首相が住む近くの軍人用官舎まで行進した。

 

参加者の中には、出稼ぎ労働者のミャンマー人も多数おり、母国でアウン・サン・スー・チー国家顧問が拘束された先月1日のクーデターに抗議した。

 

その後、多数の参加者が貨物コンテナや鉄条網で作られたバリケードを突破し、官舎の敷地入り口を警備していた機動隊と対峙(たいじ)した。

 

緊迫したにらみ合いが続く中、機動隊はデモ隊排除のため放水車と催涙ガスを使用した。殺傷能力こそないものの、バンコクの抗議デモでは数か月ぶりの実力行使となった。現場にいたAFP記者によると、機動隊はゴム弾も発射した。

 

エラワン救急医療センターによると、デモ参加者16人が負傷し、機動隊員1人が意識不明となった。AFPの取材に応じたラチャウィティ病院の看護師は、機動隊員は死亡したと話したが、詳しい状況は明らかにしなかった。

 

NGO「人権のためのタイ人弁護団」によると、16歳の1人を含む19人が逮捕された。 【3月1日 AFP】

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この時期に再燃したのは、著名な運動指導者4人が王室への不敬罪で起訴、勾留されるということに加えて、隣国ミャンマーで吹き荒れる反政府運動に連動している面もあるようです。

 

タイのプラユット首相も、もともと軍事クーデターで実権を掌握した経緯がありますので、ミャンマーで起きている政変と重なるものがあります。

 

****ミャンマーと共鳴、タイで抗議デモ再燃 「ミルクティー同盟」で連携深まる****

タイで一時沈静化していたプラユット政権への抗議デモが再燃している。隣国のミャンマーで広がる国軍クーデーターへのデモに共鳴している形で、その手法が取り入れられてもいる。

 

権威主義に反発するアジアの若者らが会員制交流サイト(SNS)を通じて連帯を示す「ミルクティー同盟」が、両国のデモ隊の結びつきを強めている。

 

タイの首都バンコクでは2月28日、大規模デモが実施され、デモ隊と警官隊の衝突で双方の計36人が負傷した。地元当局の発表によると、警察官1人が死亡したという。プラユット首相は「デモ参加者が暴力行為に及んだ」と批判した。

 

(中略)デモ再燃の理由の一つはミャンマー国内で拡大したデモだ。タイの活動家の一人はロイター通信に「(両国のデモ隊が)一緒に行動していると感じている」と述べた。

 

ミャンマーのデモでは参加者が「悪霊退散」を願う際の風習にならって金属などを打ち鳴らす様子が見られるが、この手法はタイにも広がった。独裁と戦う意思を示すために3本指を立てるポーズはタイで始まり、ミャンマーでも定着した。

 

双方を結ぶミルクティー同盟はSNS上で「民主化推進派による汎アジアの連帯」(ロイター通信)を示す運動として拡大中だ。

 

もともとは香港、台湾、タイのSNS利用者が独裁や権威主義への共闘のために立ち上げ、そこにミャンマーも加わった。名称は各地域でミルクティーを飲む習慣に由来するとされるが、米外交誌ディプロマットは同盟という枠組みができたことで「戦術の共有や主張の拡散がしやすくなった」と分析している。

 

タイとミャンマーは軍が政治に影響を及ぼす構造が似ていることも、双方のデモ隊に共感が生まれた理由の一つとみられる。プラユット氏は陸軍出身で2014年のクーデターで実権を掌握し、ミャンマー国軍にも融和的な姿勢を維持する。

 

タイのデモに参加している大学生(20)は「両国の軍は国境を越えて連携している。抗議活動も連携を強化していくべきだ」と力を込めた。【3月3日 産経】

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【タイとしてミャンマーのクーデターを是認した訳ではないとは言うものの・・・】

タイとミャンマーの反政府運動の間で「共感」があるように、両国トップの間にも「共感」があるようです。

 

ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン最高司令官は1日のクーデター後、プラユット氏に書簡を送り、権力掌握の理由を説明して「ミャンマーの民主主義」への支持を求めたとされます。

 

国際的にも注目されたのは、ミャンマー軍事政権のワナマウンルウィン外相が2月24日、タイの首都バンコクを訪問し、タイ、ミャンマー、そしてミャンマー問題で主導的な動きを見せているインドネシアの三国の会談が行われたこと。

 

****ミャンマー軍政の外相がタイ訪問 インドネシア外相と3者会談****

ミャンマー軍事政権のワナマウンルウィン外相が24日、タイの首都バンコクを訪問した。タイのドン外相、同国を訪問しているインドネシアのルトノ外相と3者で会談。

 

1日のクーデター後に発足したミャンマー軍政の閣僚が外国閣僚と直接会談するのは初めてだ。タイ外交筋が明らかにした。

 

インドネシアは、ミャンマー情勢を巡り、東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)の加盟国に閣僚級会合の早期開催を働き掛けている。

 

ロイター通信によると、インドネシアは、軍政が実施するとしている再選挙への監視団派遣を提案。ルトノ氏はミャンマーの首都ネピドー訪問も検討したが、在インドネシアのミャンマー人などから「軍政を公認することになる」との反発が出たため見送った。

 

一方、タイはプラユット首相が10日にミャンマーのミンアウンフライン国軍最高司令官から書簡を受け取るなど、ミャンマー国軍とのつながりが深い。【2月24日 毎日】

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一応、公式見解としては、タイとしてミャンマーのクーデターを是認した訳ではないということですが・・・。

 

****ミャンマーのクーデター プラユット首相「是認していない」****

プラユット首相は2月25日、先のミャンマーの外相との会談において「タイがクーデターを容認した」との批判的見方が一部で出ていることについて、「是認していない」と反論した。

 

首相は、「(ミャンマーの外相から)表敬訪問の要請があった。タイとミャンマーはつきあいがあり、要請に応えた。(外相と会ったことは)なにかを是認したことを意味しない」と説明した。【2月26日 バンコク週報】

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【政権と一体化した司法にあって、閣僚失職判断】

タイのニュースで「??」と感じたのは、閣僚失職に繋がる刑事裁判所判断のニュース。

 

****タイ2閣僚が失職 反タクシン派デモ扇動で有罪判決****

タイの刑事裁判所は24日、インラック前首相時代の2013~14年に首都バンコクで起きた反タクシン元首相派デモを扇動した罪などでナッタポン教育相、プッティポン・デジタル経済社会相を含む26人に有罪判決を言い渡した。

 

2人はいずれも控訴したが、憲法の規定で失職した。インラック氏はタクシン氏の妹で、政権運営には兄の意向が影響していたとされる。

 

2人はいずれもデモを主導した団体「人民民主改革委員会(PDRC)」に所属していた。ナッタポン被告は禁錮7年4月、プッティポン被告には同7年の実刑判決が言い渡された。2人は保釈を申請したが、却下され、収監された。

 

PDRCを率いたステープ元副首相も禁錮5年の判決を受けた。PDRCはインラック政権の打倒を目指し、14年にバンコクの主要交差点を占拠する「バンコク封鎖」を実行した。首都機能がマヒ状態に陥り、当時のプラユット陸軍司令官(現首相)が混乱収拾の名目でクーデターを起こした。

 

いまのプラユット政権は多数の政党が連立するが、ナッタポン氏とプッティポン氏は軸となる親軍政党「国民国家の力党」に属する。

 

両氏は教育改革やインターネット検閲を巡り、若者を中心とする反体制デモ隊の批判を受けていた。【2月25日 日経】

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タイの司法は、タクシン派政党や、若者らに人気のあった新未来党に解党命令をだすなど、保守派・現政権とはズブズブの一心同体関係にあると思っていましたが・・・

 

詳細は知りませんが、今回判決はあくまでも一審判断ですので、そういうレベルでは政権と距離を保つ裁判官も存在するのかも。控訴審ではひっくり返るのでしょう。

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