孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  物価上昇の責任を業者に押し付ける軍事政権 軍政への抵抗を続ける人々も

2024-07-20 23:13:36 | ミャンマー

(6月19日、ミャンマー・ヤンゴンで、アウンサンスーチー氏を意味する「SUU」と書かれたバナーを掲げる女性=OCTOPUS提供、女性の左上は同グループのマーク【6月24日 東京】)

【コメの高値販売で法人起訴 物価上昇の責任を業者に押し付ける軍事政権】
国軍と少数民族武装組織及び民主派武装勢力との戦闘が続くミャンマーで、流通大手「イオン」の現地法人で働く日本人が軍事政権によって拘束・起訴されています。

*****ミャンマー軍事政権、拘束中のイオングループの邦人男性を起訴…公定価格より高値でコメ販売の疑い****
在ミャンマー日本大使館によると、ミャンマー軍事政権に拘束されていた流通大手「イオン」の現地法人「イオンオレンジ」の商品本部長・笠松洋さん(53)が(7月)11日、当局に起訴された。当局が定めた価格より高くコメを販売し、「生活必需品・サービス法」に違反した罪に問われている。

有罪判決を受けた場合、最長で禁錮3年や50万チャット(約2万円)以下の罰金が科される。笠松さんは最大都市ヤンゴンの警察署で拘束されているが、健康状態に問題はないという。

笠松さんは6月30日、複数のミャンマー人とともに拘束された。ミャンマーでは2021年のクーデター以降、コメなどの価格が高騰し、国軍は販売業者の責任と主張し、関係者を相次いで拘束している。【7月11日 読売】
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政情不安が続く軍事政権下のミャンマーではコメを含めて物価上昇が進行し、市民生活は困窮しています。

****クーデターから3年 現地で何が?コメ販売価格で…ミャンマーで日本人拘束****
日本人の観光地としては、あまりメジャーではないものの、300以上の日系企業が進出しているミャンマー。ミャンマーで9店舗を展開するイオングループのスーパーが、軍事政権の強硬策に巻き込まれています。

ミャンマーの国営テレビが、当局が、小売店の幹部4人を拘束したと伝えました。その中に日本人の名前がありました。(中略)拘束の理由は、米を規定より高い価格で販売したというものでした。

2021年2月、ミャンマーでは、国軍が総選挙に不正があったと主張し、クーデターを引き起こしました。民主化指導者・アウンサンスーチー氏は拘束され、軍が全権を握っています。

市民は、抵抗を示してきましたが、軍はこれを力で弾圧。国内の各地で民主派勢力や少数民族に対する攻撃を加えてきました。多くの人々が家を追われ、国内避難民は300万人を超えたといわれています。

政情不安に陥ったミャンマーの人々が、いま直面しているのが、物価の高騰です。

タクシードライバー
「ガソリンの値上がりで、お客さんが少なくなって、乗車賃の値上がりで、お客さんが少なくなって。そのため、収入が少なくなりました。収入は少ないのに、買うべきものは、すべて高い」

最大都市・ヤンゴンに住む日本人が撮影したスーパーマーケットの映像。卵は1パック240円とあります。以前は、130円ほどだったそうです。

ヤンゴン在住(50代)
「(物価は)1年間で2〜3倍に上がっていると思います。急に上がった感じはあります。お米も、昔の2倍以上、値上がりしていますね。お米が美味しいのは、北の地方のシャンという、いま戦闘が激しいエリアで。美味しいし、人気があったんですが、いまは置いていない」

クーデターと国民への弾圧が引き金を引いた物価の高騰。軍事政権は、その責任を業者に押し付けています。

国家統治評議会
「国家が国内経済の安定と発展のために努力するなか、一部の業者が、経済の混乱を引き起こそうと、国内市場で米の価格を引き上げている」

先月25日のヤンゴン市内の市場。長い行列ができました。米の業界団体が、安い価格で販売するとして、開いた市場です。現地メディアによりますと、この数日前、業界団体のトップらが、米の価格統制に従わなかったとして、拘束されていました。さらに、当局は、米が規定の価格で販売されているか、警官同席で現地調査を行っています。

こうした圧力や身柄の拘束で、強制的に価格を下げさせようとする軍事政権。国民の不満をそらすためなのか、こんなプロパガンダ映像を公開しています。

ミャンマー情報省 「私たち低所得層が、低価格で購入できるように、関係者や政府などがお米、約2キロを3000チャット(約150円)で販売してくれていることに感謝しています」

ある米業者は、業界関係者の相次ぐ拘束について、こう語りました。
米業者 「問題解決にならないと思います。すべての物価が上がっているので、米も上がることになります。彼らも生産や人件費のために上げなければならないですし。元締の業者が値上げし、全体的に物価が高くなってきているから、ここだけを統制して拘束するのは正しくはないと思います」【7月2日 テレ朝news】
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軍事政権は、物価上昇の責任を業者に押し付けていますが、力ずくの価格統制・供給強要では事態は改善しないのはベネズエラ・マドゥロ政権など多くの国の実例が示しているところです。

****拘束されたイオンの日本人幹部は“有罪”の可能性が… 「米」をめぐるミャンマー軍事政権の無茶苦茶****
(中略)軍事政権が、笠松さんをふくむ小売店の関係者11人を拘束したのは、6月30日の夜だった。理由は、当局が指示した米の価格より50%〜70%高く販売したというものだ。

現地では6月4日に両替商や金販売業者35人が逮捕されてもいる。彼らはいまだ釈放されていないことから、笠松さんの今後が心配されている。

「米」価格をめぐる流れ
軍事政権は6月24日に米の販売適正価格を通告した。高騰する価格を抑えるためだ。等級によって異なるが、価格は1キロ2,200チャット(約110円)〜3,800チャット(約190円)。

政権が“適正”とするこの価格は卸売価格を割り込むため、これを守ると店は赤字になってしまう。そのため、一時、米は売り場から消えた。しかし2日後には、商品棚に米は戻った。価格は従来どおりの価格、つまり政権の“適正”価格より高い値札がついていた。

ミャンマーの小売店は、日本同様、チェーン店が多い。最も大きいのは地元の「シティマートグループ」だ。イオンは以前は同店に次ぐ勢いを誇っていたが、2021年のクーデター後は、国軍に近いといわれる「ワンストップグループ」が躍進し、2位から転落したという。

各小売店が米の販売を再開したのは、ワンストップグループの店舗が米の販売を再開したことで、これに続いたことが大きい。赤信号も皆で渡れば……というわけだ。しかし政権は、先述のとおり6月30日に小売店の関係者11人を拘束。そこにはワンストップグループの幹部も含まれていた。

その後も米は売られている。価格は1キロ2,225チャットほど、政権の“適正”価格を守り、各店は赤字販売を強いられている。しかし市場の小さな店では“適正”価格の値札をつけつつ、実際に買うときには倍近い実勢価格でこっそり売っているという。政権の強硬策は空振りに終わったのか。

戦況が左右する「物価」
背景にあるのは、物価の高騰だ。ヤンゴン在住の邦人は「まず今年に入ってから物価が上がり、去年の2倍以上になっていました。4月の水かけ祭り(ティンジャン)以降、また倍になり……去年と比べると4倍です」という。

6月以降、政権は物価の引き下げに躍起になっているかに見える。高騰を招いている要因のひとつが、地方での戦闘だ。クーデター以降、国軍は民主派や反発する少数民族を武力で弾圧しつづけてきた。しかし昨年の10月27日に、地方の3つの少数民族軍が一斉に蜂起した。そこに民主派の軍事組織も加わり、多くのエリアで国軍は劣勢に立たされている。

なかでもタイとの国境に広がるカレン州の戦況が、最も物価高騰に影響を与えている。ミャンマーに流通する物資は、タイからの輸入に頼る割合が高い。その物資が大幅に減ったうえ、荷には通行料などが加算され、物価の高騰を招いているのだ。

一時はタイ国境の街・ミャーワディも、反国軍派が占領するまで国軍が追い込まれたが、その後、反国軍派の一部の寝返りや国軍兵士の増員などがあり、現況は混沌としている。国境からヤンゴンにつながる道は、さまざまなグループが支配し、それぞれが通行料を徴収する事態となっている。

「従業員の給与を上げた」ことで拘束も…
物価高騰に対し、軍事政権は権力で抑え込むという、経済状況を無視した政策に出ているというわけだ。

経済環境の悪化は、ミャンマーの通貨チャットの暴落を招く。3月には1ドル3,700チャット(約180円)ほどだったが、6月に入ると1ドル5,000チャット(約245円)まで下がった。

人々はチャットをドルや金に替えようとしたが、これに軍事政権は「暴落の原因は両替業者や金の販売業者」として35人を逮捕した。

政権トップのミンアウンラインは6月10日に行われた国家統治評議会の場で「恥知らずの業者のせいでチャットが暴落した」と逮捕の理由を語った。この一件で、ミャンマーの金相場は崩壊したといわれる。

また6月13日には「従業員の給与を上げた」ことを理由に会社の社長を拘束した。物価の上昇は給与の上昇が招いている、という論理である。

7月に入っても、政権は圧力を弱めるどころか、強める一方だ。7月2日には、不動産融資を限度額以上貸し付けた銀行の行政処分を行った。不動産価格の高騰は、資金を貸した銀行側にあるという発想である。

ヤンゴンの日本人社会からはこんな声も聞こえてくる。
「こんな状況なら、早く選挙をやって、国軍トップのミンアウンラインを大統領にしたほうがいい。そうすれば経済の専門家を政権に入れることができる。いまは軍人ばかり。あまりに無知、子供です。これで物価の高騰が収まると思っているから怖い」

しかしミャンマー人は「あえて物価を高騰させている」という見方だ。
「国軍の兵士不足が深刻な今、暗に“国軍の兵士になれば金が入る”ようにしているのです。なぜなら、米を実勢価格で売る小売業者からは賄賂が渡されますし、銀行への行政処分だって、国軍系の銀行は含まれていない。物価高騰に苦しむ国民を利用して国軍を守る図式です」

米の流通では大きな混乱は起きていない。市民に聞くと、地方の実家や親戚から米を送ってもらってしのいでいるという。市民はすでに軍事政権の経済政策を見限っているようだ。ミャンマーの経済は機能不全に向かっているということか。【7月19日 デイリー新潮】
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クーデター以降先送りされてきた選挙については、ミン・アウン・フライン総司令官は6月15日、「今年10月に国勢調査を行い、複数政党による民主的な総選挙を来年に実施する」と、初めて実施時期に言及する形で発表しています。【6月16日 TBS NEWS DIGより】

ただ、戦闘が激化する情勢で実施できるか不透明ですし、仮に行われたとしても、民主派を排除した形式的な、軍支配を正当化するようなものになると思われます。

【軍の弾圧のもと、ヤンゴンで抗議活動を続けるグループも】
ヤンゴンなど都市部においては軍事政権の弾圧により軍政批判は徹底的に封じ込まれていますが、そうした中でも抗議を続ける若者もいるようです。

****わずか数十秒、されど命懸けのデモ ミャンマー当局の目をかいくぐった若者グループが世界に伝えたいこと****
クーデターで実権を握ったミャンマー国軍が支配を固める最大都市ヤンゴンで、非暴力の抵抗を続ける若者たちがいる。当局の目をかいくぐり、ゲリラ的なデモを繰り返すグループ「OCTOPUS(オクトパス)」だ。

匿名で取材に応じたリーダーの男性は「海外の人たちには『ヤンゴンは平穏だ』とか『抵抗する人はいなくなった』と思ってほしくない」と訴えた。

◆アウンサンスーチー氏の誕生日に…
拘束が続く民主化指導者アウンサンスーチー氏の79回目の誕生日を迎えた6月19日。交流サイト(SNS)上に、ヤンゴンの道路沿いで、赤地にスーチー氏を表す「SUU」の文字とバラが描かれたバナー(旗)を掲げたマスク姿の女性の写真がアップされた。

国軍の支配下にあるヤンゴンではデモは徹底的に弾圧され、市民は自由に物を言えない状況が続く。特にスーチー氏の誕生日のような記念日は警備が一段と厳しくなるにもかかわらず、オクトパスはこの日、複数の場所でゲリラ的なデモを敢行した。デモの時間は数十秒だが、それでも命懸けだ。

◆1年かけて計画「民主主義をあきらめない」
オクトパスはクーデター直後の2021年2月末に設立された。8本の足を持つタコのように、世界中にネットワークを広げたいとの思いを込めて名付けたという。

現在のメンバーは計10人で、いずれも20代。誰かが捕まったときに芋づる式に逮捕されないよう、お互いに素性はほとんど知らない。これまでに14人が扇動罪などで逮捕され、ヤンゴンのインセイン刑務所などに収監されている。

この日のデモは1年かけて計画を練った。実の親も気付かないような変装をし、移動手段なども慎重に検討した。リーダーの男性は言う。「ヤンゴンではバラの花を持ったり、バナーを掲げたりしただけで逮捕される。罪を決めるのは軍だ。私たちは独裁者を受け入れず、民主主義をあきらめない」【6月24日 東京】
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ヤンゴンでの抗議活動は戦場での戦いより危険ですし、孤独です。

【武装闘争に身を投じる10代女性も】
一方、武装闘争に身を投じる若者は少なくありません。

****夢断たれ入隊 ミャンマー17歳女性兵士の覚悟…軍事政権に“抵抗”民主派勢力として戦場へ…『every.16時特集』*****
(中略)国軍との戦闘に志願する若者が増えている“抵抗の拠点”を取材すると、17歳女性を含む約90人が戦場に立つために軍事訓練を受けていました。

■軍事政権下ミャンマー 内戦の“転換点”
3年前(2021年)、突如クーデターを起こし、国の実権を握ったミャンマー軍。民主化の象徴、アウン・サン・スー・チー氏を拘束し、市民への弾圧を続けています。これに対し、今、10代の若者たちが、軍事政権を打倒しようと、民主派勢力の兵士に。

民主派勢力 女性隊員(17) 「戦場に行くとしても怖くはありません。国民のために命を犠牲にする覚悟があります」(中略)

■クーデターに反発市民“抵抗の拠点”
ミャンマー北西部のチン州。山奥に見えてきたのは、民主派勢力の1つ「チン民族防衛隊」の司令部です。クーデターのあと、国軍に反発する市民らが結成しました。建物に入ると…(中略) 飾られていたのは50人の遺影。中には、20歳に満たない少年の写真も。それでも、戦場に立とうとする若者が増えています。

司令部で行われる3か月間の軍事訓練。女性の姿もありました。ひと月前に入隊したクリスティーナさん、17歳。自宅のある村は国軍の空爆を受け、一家はふるさとを追われました。

■民主派抵抗勢力に入隊したワケ
(中略)

――なぜ入隊した?
ひと月前に入隊 クリスティーナさん(17) 「みんな幸せになろう、国を発展させようとしていた時に国軍はクーデターを起こしました。彼らは全てを壊し、みんなの自由を奪ったのです」(中略)

■内戦の最前線 異例の事態
クーデターから3年――。 国軍はいま、民主派勢力と各地で蜂起した少数民族との共闘に押され、かつてないほどの劣勢に立たされています。

これまでに5000以上あった軍事拠点のうち、半数近くを失ったとみられます。国軍からは兵士の投降や脱走が相次ぐ異例の事態に。(中略)

■兵力不足で国軍“徴兵制” に…
追い込まれた国軍は今年、兵力の不足を補うため、18歳以上の男性の徴兵を開始。これに反発する若者らが次々と国外に脱出し、隣国タイでは拘束されるミャンマー人が後を絶ちません。

2024年3月 タイに密入国した学生(20代) 「国軍の徴兵制は、同じ国民と戦って殺すためのものです。そんなことはしたくないし、軍隊にも入りたくありません」(中略)

■戦闘に志願 “夢”断たれ入隊
あのクリスティーナさんにも夢がありました。

ひと月前に入隊 クリスティーナさん(17) 「私は高校を卒業して、教師になると信じていました。でも、入学の時に政治の状況が変わってしまいました」

学校の先生になって、子どもたちの成長を見守りたい。その夢はクーデターで断たれました。銃を手にするのは、生まれて初めてです。

ひと月前に入隊 クリスティーナさん(17) 「戦場に行くとしても怖くはありません。ただ死ぬより、国民のために命を落とす方がいい。 犠牲になる価値はあります」(中略)

民主派の幹部は10代の若者を戦場に送ることをどう考えているのでしょうか。

――若者を戦わせることについて 
チン民族防衛隊 幹部 「革命のリーダーである大人たちにとって、これは答えのない問題です。現状では、国軍を倒す革命は成し遂げなければならない」

出口の見えない泥沼のミャンマー内戦。国際社会の関心が薄れる中で、犠牲者の数はいまも増え続けています。
(7月17日『news every.』16時特集より)【7月20日 日テレNEWS】
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