孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー国軍  「アラカン軍」との戦いにロヒンギャを「盾」として利用 両者の対立を利用

2024-04-15 23:04:06 | ミャンマー

(バングラデシュ領に逃げ、投降したミャンマー国軍の兵士。国境管理が強まり、難民としてロヒンギャが避難することの妨げになっている(現地SNSから)【4月15日 デイリー新潮】

【重層的な差別の構図 ラカイン族とロヒンギャの対立を利用する国軍】
もとより戦争は「殺し合い」ですから、そこに「正義」とか「公正さ」を求める筋合いのものではない・・・とは思うものの、それでも「えげつないな・・・」と感じてしまうことも。

ミャンマー情勢については1週間まえの4月8日ブログ“ミャンマー  首都でも国境地帯でも厳しい状況が報じられる国軍”で取り上げたばかりですが、現在の“主戦場”のひとつとなっているのが西部ラカイン州における少数民族武装勢力「アラカン軍」と国軍の戦いです。

アラカン軍(AA)は、(ミャンマー全体では少数民族ですが)ラカイン州海岸部で多数派である仏教徒ラカイン族(アラカン族)の主権回復を闘争目的とする武装組織です。

そのラカイン州は、イスラム教徒の少数民族ロヒンギャが多く暮らす地域で、国軍とその協力者により民族浄化的な迫害が行われる地域でもあります。

ラカイン族(アラカン族)は多数派ビルマ族からは少数派として差別を受ける一方で、更に劣後する状況にあるイスラム教徒ロヒンギャに対してはこれを差別する側でもあります。ラカイン族とロヒンギャの間には対立・憎しみがあります。

こうした差別される者が、更に弱い立場の者を差別する差別の重層構造は珍しくはありませんが、ラカイン州の状況もそのひとつです。

戦闘で劣勢にたたされ、兵員不足を補うために徴兵実施に踏み出した国軍は、この差別の構造を利用して、無国籍状態に置かれているロヒンギャを兵員に取り込み、アラカン軍との戦いにおける使い捨ての盾のように利用しているとの情報があります。

****ミャンマー兵にされるロヒンギャの悲劇… 嘘つき「国軍」の酷すぎる所業とは****
2021年に国軍が起こしたクーデターによって、緊張状態がつづくミャンマー。今、国軍は、国籍がないロヒンギャを兵士にして、戦闘の前線に送りはじめている。

ミャンマー西部のラカイン州に暮らすロヒンギャは50万人とも60万人ともいわれている。

ラカイン州を中心に暮らすベンガル系イスラム教徒のロヒンギャは、国軍による迫害から逃れるために、2017年に多くの人々が隣国バングラデシュに避難した。

いまでも100万人を超える人々が、バングラデシュ南部の難民キャンプに収容されている。彼らが置かれている現況は「2017年のときよりひどい」といわれる。

利用される対立の構図
今回のクーデターでは、国民の多くが国軍に反発し、少数民族の武装組織も反旗を翻した。ミャンマーは半ば内戦状態に陥っているが、とくに戦闘が激しいのはラカイン州で、地元の少数民族軍であるアラカン軍と国軍が衝突している。ロヒンギャはその戦闘の盾のように使われている可能性が高い。

ラカイン州の民族地図は錯綜している。土地問題などをめぐり、ラカイン族とロヒンギャは長く対立してきた。その両派を、ビルマ族を中心にしたミャンマー国軍が武力で抑え込む構図ができあがっていた。

アラカン軍との戦闘で劣勢に立たされている国軍の兵力不足は深刻で、それを補う目的で、国軍はロヒンギャを戦闘に駆り立てはじめている。ラカイン族とロヒンギャの対立を利用しようとしているわけだ。

現地は電話、ネットなどの通信環境が遮断されている。強制的に国軍兵士に仕立てられたロヒンギャの数の把握は難しいが、少なくとも1,000人、1万人を超えているという人もいる。

国籍、弔慰金も「嘘」
国軍はロヒンギャに対し、国軍の兵士になれば国籍を与えるといって勧誘していると,もいわれる。しかし、在日ビルマロヒンギャ協会のアドバイザー、アウンティンさん(55)は、「真っ赤な嘘。国籍をもらったというロヒンギャはひとりもいない」と語る。

犠牲者は増えている。3月初旬には、ラカイン州の州都シットウェ近くで100人を超えるロヒンギャが連行され、国軍の基地に送られた。

それから1週間もたたない3月13日、97人の遺体がロヒンギャの元へ届けられた。国軍の船に乗せられ、前線に向かう途中でアラカン軍の襲撃を受けたと説明された。国軍は遺族に100万チャット(約7万円)と米2袋を渡すと通知したという。

あまりに少ないが、これにも前出のアウンティンさんは憤りを隠せない。「これも国軍の嘘。遺族の誰ももらっていませんよ」

さらに3月14日には、国軍基地内で7人のロヒンギャが死亡した。国軍は訓練中に地雷が爆発したと説明していた。しかしその後、基地から逃げようとしたロヒンギャを国軍が殺害したことがわかってきた。

国境管理が厳重に
ラカイン州ではアラカン軍の攻勢がつづいている。ほぼ半分はアラカン軍の支配エリアになったという。毎日のように、「アラカン軍がミンビアにある国軍基地を占領」といった情報が入る。国軍と対立してきたラカイン人の意気はあがる。

しかしこの戦況も、ロヒンギャを追い込めることになっている。アラカン軍に追われた国軍兵士は、隣国のインドとバングラデシュに越境し、投降するケースが後をたたない。

結果、インドとバングラデシュは国境管理をより強めている。ロヒンギャは難民としてバングラデシュに向かうことが難しくなってきているのだ。

ロヒンギャはガザ地区のパレスチナ人のようにラカイン州に閉じ込められ、国軍の暴挙におびえている。【4月15日 下川裕治氏 デイリー新潮】
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国軍は「国籍のない者は徴兵していない」としていますが、夜中に国軍が村に来て徴兵に適した若者を探し出し、30人以上を連れていった・・・といったロヒンギャ住民の証言なども報じられています。

イギリスに拠点を置く人権団体「ビルマ・ロヒンギャ協会」は2月28日の声明で、「ロヒンギャは国軍に『人間の盾』にされ、結果的にアラカン軍(AA)の攻撃の標的にされている」と主張しています。

【苦戦が続く国軍 貧困が深刻化する経済危機】
戦況については、国軍の劣勢が続いているようです。南東部カイン州では国境貿易の要衝が少数民族武装勢力の手に落ちています。

****少数民族武装勢力が“国境貿易の要衝”にある軍拠点占拠と発表 ミャンマー****
ミャンマー南東部の少数民族武装勢力は11日、国境貿易の要衝ミャワディにある軍の拠点を占拠したと発表しました。地元メディアは、首都の空軍基地も複数の砲撃を受けたと報じていて、軍の支配力が低下しています。

ミャンマー南東部カイン州の少数民族武装勢力「カレン民族同盟」は、ミャワディにある軍の最後の拠点を占拠し、武器を押収したと発表しました。

ミャワディをめぐっては、軍が今月、隣国のタイ政府に対し、タイ側に逃れた軍関係者を帰国させるために特別チャーター便の運航許可を求める事態となっていました。

また、地元メディアは11日、首都ネピドーにある空軍基地が複数の砲撃を受け、死傷者が出たと報じました。ネピドーの軍事施設は今月4日にも無人機で攻撃を受けています。

ミャンマーでは、去年10月に少数民族武装勢力が一斉蜂起して以降、軍は各地で拠点を奪われるなど支配力が低下しています。【4月11日 日テレNEWS】
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国軍兵士・関係者が国境を超えて逃げ込んでいるタイではセター首が7日、ミャンマー国軍が弱体化しつつあるとし、今こそ協議を開始する好機との見方を示しています。

****ミャンマー紛争、タイは中立維持 避難民受け入れの用意=外相****
タイのパーンプリー外相は9日、ミャンマーの紛争でタイは中立を維持しているとし、混乱によって住居を追われた最大10万人の人々を受け入れる用意があると表明した。

ミャンマーの紛争激化を協議する閣議に先立ち、対立する両勢力に和平協議に参加するよう促した。

また、セター首相はこの日、「ミャンマー情勢はタイにとって極めて重要だ」とソーシャルメディアXに投稿し、政府は平和と安定のためにあらゆる関係者の協力を推進する用意があると述べた。

セター氏はこのほど行われたロイターとのインタビューで、2021年のクーデターで政権を掌握したミャンマー国軍が弱体化しつつあるとし、協議を開始する好機と述べていた。【4月9日 ロイター】
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内戦の混乱のなか、市民生活は困窮しています。

****ミャンマー貧困率、50%に急増 国連報告、経済危機続く****
国連開発計画(UNDP)は11日、ミャンマーの経済状況に関する報告書を公表し、2017年に24.8%だった貧困率が23年には49.7%に急増したと明らかにした。

21年2月の国軍によるクーデター以降、危機が続いていると指摘。「中間層が消えつつある」として年間推定40億ドル(約6100億円)の支援が必要だと各国に呼びかけた。

報告書は約1万3千世帯への調査をまとめた。貧困を抜け出して安定した収入を得られているのは、人口の25%に満たないと指摘。多くの家庭で医療費や教育費などを削減して日々の生活をしのいでいると分析した。【4月11日 共同】
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この一点をもってしても国軍による統治は失敗していると言え、すみやかに政権の座から去るべきでしょう。
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