孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マレーシア  “消えた航空機”も絡む、野党政治家アンワル氏の挑戦と既存勢力の抵抗

2014-03-21 22:32:35 | 東南アジア

(1月の入国トラブルの後、2月末再来日して都内で記者会見するアンワル元首相【2月28日 時事】)

捜索難航「レーダーはコンテナの他、鯨やイルカを感知した」】
未だ消息がわからない“消えたマレーシア航空機”については、オーストラリア・アボット首相が公表した“マレーシア航空機と関連があるかもしれない二つの物体”を中心にした捜索が続けられています。

現段階では成果は得られていませんが、“捜索に詳しい関係筋によると、衛星画像に写し出された物体が不明のマレーシア機かどうか判明するには「数日」かかる可能性があるという”【3月21日 ロイター】とのことです。

****マレーシア機:豪の捜索で発見できず インド洋南部の物体****
衛星写真で消息不明のマレーシア航空機の残骸の可能性がある物体が発見されたインド洋南部で21日、豪空軍機などによる捜索活動が続けられたが、発見には至らなかった。

豪海上保安局(AMSA)によると、この日の捜索には豪空軍や米海軍の哨戒機計4機の他、民間航空機1機、民間の商船2隻が参加。

AP通信によると、同局報道官は「天候は回復し、視界も良くなっている」と話した。だが、現場は豪西部パースの南西約2300キロの海上で、パースとの往復を除くと航空機が現場付近で活動できる時間は2~3時間しかない。

一方、捜索範囲は2万3000平方キロに及び、洋上には多数のゴミが漂流している。捜索に参加したニュージーランド空軍のヤードレー准将はAFP通信に「レーダーはコンテナの他、鯨やイルカを感知した」と語り、捜索の困難さを強調した。

アボット豪首相は訪問先のパプアニューギニアで、「真相を究明するため、できることは全てやる」と記者団に語った。現場海域は数千メートルの深さ。機体が発見された場合に引き揚げを担う豪海軍の艦船は22日に到着する。【3月21日 毎日】
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それにしても“豪西部パースの南西約2300キロの海上”というと、日本を中心にした見慣れた世界地図では、一番南(下)のあたり、“何もない”ような海域で、憶測されているようなハイジャック等によって意図的に向かったとすれば、“どうしたまた、こんな方向に?”と訝しく思われるようなエリアです。
詳細は今後の捜索活動を待つしかありません。

アンワル氏の挑戦を阻む同性愛疑惑
ミステリアスな事件の展開から、ハイジャック説を含め、多くの諸説が囁かれていますが、その中のひとつに、マレーシア政治情勢と絡んだザハリ機長の「自殺説(ジハード)」があります。

そもそも、マレーシアに関する国際的ニュースにといえば、最近では、野党を束ねて長期政権打倒の挑戦を続ける野党政治家アンワル氏の動向が中心でした。

マレーシア航空機の事故直前にも、そのアンワル氏の挑戦が“同性愛疑惑”という怪しげなもので危機に瀕しているというニュースがありました。
イスラムの影響が強く、同性愛が法的に禁止されているマレーシア社会にあっては、“同性愛疑惑”は政敵を葬り去る手段ともなりえます。

****マレーシア:同性愛事件、元副首相に逆転有罪****
マレーシアで野党連合を率いるアンワル元副首相(66)が2008年に事務所スタッフの男性に「同性愛行為」をしたとして異常性行為罪に問われた事件の控訴審で、マレーシアの上訴裁判所は7日、無罪とした1審判決を取り消し、有罪判決を言い渡した。

アンワル氏は現職の下院議員。マレーシアのメディアによると、今後収監されれば、失職する可能性がある。

アンワル氏は1998年に政治腐敗を批判して、当時のマハティール首相と対立し失脚。別の「同性愛行為」と「権力乱用」の罪で有罪を言い渡され、約6年間服役した。【3月7日 毎日】
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上記記事にもあるように、アンワル氏は1999年4月14日、汚職の罪で懲役6年の有罪判決を、また、2000年8月8日には、同性愛の罪で懲役9年が言い渡されて収監されています。

2004年9月2日、最高裁判所はアンワル氏に下されていた同性愛の罪状を覆す判決を出し釈放されたものの、刑期が終わった後5年間は政治活動を行うことが禁止しているマレーシアの法律によって、表立っての政治活動再開は2008年4月15日からとなっています。

しかし、政治活動開始直後の2008年7月16日、再び同性愛容疑で逮捕されます。この時は翌日に釈放され8月補選で当選し、政界復帰を果たしています。

この2008年の同性愛容疑の裁判の方は、2012年1月9日、高等裁判所は同性愛容疑について無罪を言い渡しました。
2013年5月の総選挙では野党連合を率いて政権交代を目指しましたが、得票率で与党を上回り、大きく議席を伸ばしたものの、過半数獲得・政権交代には至りませんでした。

そして、上記記事にあるように、2014年3月7日、上訴裁判所は同性愛容疑について、一審の無罪判決を覆して有罪判決を下しています。

この上訴裁判所による逆転有罪の直前には、最大自治体の知事にあたるポストを足場に、次期総選挙での政権奪取をめざすアンワル氏の意欲的な戦略が報じられていました。

*****政権奪取へ州首相目指す」 マレーシアのアンワル元副首相****
マレーシアの野党指導者アンワル・イブラヒム元副首相(66)は27日、都内で朝日新聞記者と会見。首都近郊に位置する最大州のスランゴールで来月、州議会議員の補選に立候補し、州首相をめざす考えを明らかにした。最大自治体の知事にあたるポストを足場に、次期総選挙での政権奪取をめざすという。

アンワル氏は別の州で選出された国会議員だが、兼職は禁じられていない。

スランゴール州は野党連合の地盤。同氏が補選で当選し、議会で州首相に選ばれる可能性は高い。同州は同国の人口の約5分の1を占め、製造業を中心に日本企業も多数進出している。

アンワル氏は「外国投資が集まる最大自治体を、腐敗がなく効率的な政権運営のショーケースにすることで、ナジブ政権に圧力をかける」と話した。

マレーシアでは1957年の独立以来、現在の与党連合が政権を維持している。昨年の総選挙は初の政権交代があるかどうか注目されたが、野党は得票率で上回りながら議席では与党を下回った。

最大9倍を超す一票の格差に加え、野党は大規模な不正があったと抗議しているが、選挙直後を除き、他の新興国のような大規模な街頭活動は展開されていない。

同氏は「次回の総選挙で必ず勝てると信じているからだ。選挙制度改革は必要だが、今の制度でも得票率が55%を超えれば、野党の議席が上回る」と語った。

アンワル氏は1月、笹川平和財団の招待で来日しようとしたが、法務省東京入国管理局が入国を拒否した。権力乱用の罪で有罪判決を受けたことがあり、必要なビザ取得の手続きを行わなかったためと日本政府は説明しているが、同氏は「日本政府の対応には不満だ。私と財団の双方が事前に問い合わせをして問題ないと言われた。このままだとマレーシアで『やくざと関係があるため』などとデマを流されるから、改めて来日した」と説明した。【2月28日 朝日】
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今年1月に来日したアンワル氏の日本入国を法務省東京入国管理局が拒否した件については、昨年7月以降、短期滞在で訪日するマレーシア人はビザを取得する必要がなくなっていますが、「ただし、過去に犯罪歴がある場合は引き続きビザの取得が求められる。アンワル氏はこれに該当する」(大使館の広報担当者)とのことです。

日本側は、“事前に在マレーシア日本大使館から来日に問題はないと聞いた”とのアンワル氏側の言い分についても、「照会は確認されていない」としています。【1月21日 朝日より】

「2013年にマレーシア政府から日本に届いた『最新報告書』に基づく措置」とした日本側の当初の説明、両者の言い分の食い違いなど、もやもやした感じもある出来事でしたが、政権獲得に向けた具体的動きを示したアンワル氏に繰り返しかけられる同性愛疑惑については、非常にわかりやすい政治的策略の臭いがします。

アメリカ政府も“懸念”を表明しています。

****アンワル氏有罪に「懸念」=米****
米国務省のサキ報道官は7日声明を出し、マレーシアの野党連合指導者、アンワル元副首相が性的不品行罪(同性愛行為)で逆転有罪判決を受けたことについて「(マレーシアの)法の支配および司法の独立という点で懸念を生じさせる」と表明した。【3月8日 時事】 
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旧知のアル・ゴア元米副大統領がアンワル氏に電話をかけてきて、『非常に残念で、マレーシア政府や司法に落胆している』」と同氏を労わり、激励したそうです。【下記 JB PRESS】

今後は、上告した連邦裁(最高裁)で争われます。

【「自殺説(ジハード)」】
で、アンワル氏とマレーシア航空機との関連ですが、“消えたマレーシア航空機”のザハリ機長は、アンワル氏の熱心な支持者であり、上述のように政権獲得に戦略を“同性愛疑惑の逆転有罪”によって阻まれたことを悲憤して航空機もろとも自殺(ジハード)に及んだ・・・という説があるそうです。

機長がアンワル氏の支持者であり、アンワル氏とも面識があるのは事実ですが、それ以降の話については、野党・アンワル側は当然ながら否定しています。

****機長の自殺説について語るカリスマ野党指導者、アンワル・イブラヒム元副首相単独インタビュー(末永 恵****
同性愛行為でのアンワル氏有罪判決に落胆した機長の”暴挙”?
・・・・そんな中、今“渦中の人”と、その言動や挙動に注目が集まっているのが、アジアで著名なマレーシアのカリスマ野党指導者、アンワル・イブラヒム元副首相(66歳)。

捜査線上に、ザハリ機長の「自殺説(ジハード)」が同機の有力な失踪原因として浮上する中、同機長が野党支持者で、かつ熱烈なアンワル支持者であることが判明。

しかも、MH370便が消息を絶つ前日の7日夜、マレーシア上訴裁判所でアンワル元副首相に対し、同性愛行為による禁固5年(連邦裁=最高裁にすでに上告)の有罪判決が下ったことにザハリ機長が大きな落胆を覚え、判決の数時間後にクアラルンプール国際空港を離陸した同機を道づれに自決したとも憶測されている。

有罪判決および同機失踪の後、日本のメディアでは初めて単独インタビューに応じたアンワル元副首相は、機長の自殺疑惑や自身との関係、マレーシア政府の対応能力、さらには今月23日に投開票が実施される首都近郊のセランゴール州議会補選や、4月の米オバマ大統領マレーシア訪問への期待などについて語った。

インタビューが行われたのは、アンワル氏が率いる野党連合のPKR(人民正義党)本部。

まず、マレーシア政府の危機管理体制やその対応について中国政府などから批判が上がっていることに対し、「マレーシア政府は、初動の情報開示から失態を繰り返した。ICPO(国際刑事警察機構)に盗難パスポートを利用した乗客の照会をせず、非常に重要な飛行ルート情報に関しても二転三転した」とした上、「国家機密の問題はさておき、非常に未熟でプロフェッショナルでなく、真実を述べていない。情報開示において透明性を欠いており、国際社会から疑いの眼差しで見られている」と非難。(中略)

その上で、「ザハリ機長がアンワルの支持者で、あたかも野党や私が今回の事件に“間接的”にでも関与しているとの疑惑をもたせるような捜索活動は、政治的な陰謀にほかならない」と事件への野党の関与を否定した。

さらに、「同機長は私の息子の妻側の遠戚で、何回か会ったことがある」と個人的に面識があることを明らかにした上で、「野党連合のPKR党員でマレーシアの民主化へ情熱を傾けていて、『moderate』(温厚な)な印象の人だった」とその人柄について語った。

また、7日の上訴裁判所での有罪判決の場にザハリ機長が姿を現していたという欧米メディアの報道を、「誰も彼を見なかった。彼は裁判所に来なかった」と否定した。

その上で、「原因究明が急がれる中、マレーシア政府が常套手段で野党指導者の私に謂われもない嫌疑をかけようとしている政治的な陰謀」と強調。さらに、「機長が他の多くのマレーシア国民と同様に、私の有罪判決に怒りを覚え、落胆したのは確かだ」としながらも、「それが、“ジハード”につながったとは思わない」と機長の自殺説を否定した。(中略)

その上で改めてアンワル氏は「私は無実」と、これまでと同様、容疑を否定した。また、上告した連邦裁の判決によっては、前回のように政治生命を絶たれることになるが、「米国政府などがマレーシアの連邦裁を調査、監視しており、さらに今回のMH370便の事件で世界が注目する中、これまでのように法を欺くような行動は取れないだろう」と発言。

上訴裁判所による同性愛行為への有罪判決についても、「DNA鑑定や物的証拠ですでに一審で無罪判決だったのだから、司法は政府の圧力に屈することなく、法の下の平等に基づいて、粛々と判決を下すべきだ」と第一審での無罪判決を不服とし、上訴裁に上訴した政府への圧力に屈すべきでないと訴えた。(後略)【3月20日 JB PRESS】
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政権獲得はできても、その後が大変
アンワル氏は“元副首相”の肩書がしめすように、以前はポスト・マハティールの最右翼と目される与党内の有力政治家でしたが、1997年のアジア通貨危機の対応策のあたりからマハティール元首相との確執が表面化し、ついには職を追われ、同性愛疑惑で逮捕されることになります。

アンワル氏の政治的手腕については知りませんが、マレー系・中華系、インド系の他民族複合国家であるマレーシアにおいては政党も民族ごとに分かれており、中華系左派からマレー系イスラム原理主義政党までを取り込んだ民族的にも政策的にも多様な野党連合を束ねていくことは並大抵のことではありません。

政権獲得までは、長期政権打倒という一大目標で結束できても、政権獲得後の実際の政治運営がうまくいくのか・・・大きな不安は感じます。

ただ、そうしたアンワル氏の可能性・不安はともかくとして、政敵をスキャンダルで葬り去ろうとするのが与党側の対応であるなら(もちろん、与党側は“司法判断であり、政治は関係ない”としていますが)、何とも情けない話であり、早急に政権交代が実現されるべきでしょう。
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モロッコのスペイン飛び地にアフリカ移民が殺到

2014-03-20 23:12:40 | アフリカ

(スペインの飛び地メリリャとモロッコを隔てるフェンス “flickr”より By Chiara Tamburini http://www.flickr.com/photos/12522820@N05/2057427198/in/photolist-48NRqJ-4r24Ys-5gRXUz-6SpChR-7eRHjp-7eRHH4-7eRJDR-7eRKkx-7eRL7T-7eRLRD-7eRMcx-7eRMDp-7eRN28-7eRNmB-7eRPb6-7eRPUe-7eRQUZ-7eRRFv-7eVC1w-7eVCjN-7eVD77-7eVDLS-7eVEB1-7eVGMS-7eVHFU-7eVJjs-7eVJDN-7eVKrE-7eW2Nm-7oPEoa-da6rry-fDutLE-drwfJ4-drwzCo-drwx6y-dVS1dP-7ZjRaK)

欧州を目指す移民の大量流入
昨年8月に、イギリスが領有するジブラルタルを巡って、その返還を求めているスペインとイギリスの関係が悪化したことがありました。

ジブラルタルはスペイン領域内に飛び地として存在するイギリス領ですが、そのスペインは対岸のモロッコ領内にセウタ(海峡を挟んでジブラルタルと向かい合うアフリカ側の都市)とメリリャという2都市を飛び地として有しています。

イギリスに対してはジブラルタルを返せと言いつつ、セウタ・メリリャを返せとのモロッコの主張は退ける・・・ということで、スぺインの言い分には難しいものもあります。

参考:2009年7月22日ブログ「スペイン ジブラルタルは“返せ” セウタ・メリリャは“わが領土”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090722

領土をめぐる議論は往々にして、この類の自分に都合のいい主張でもあります。

この北アフリカ・モロッコに存在するスペインの飛び地は、豊かな生活を求めて欧州を目指すアフリカ移民にとっては、欧州への不法移民の窓口にもなっています。

****北アフリカのスペイン領、移民1000人超が殺到****
アフリカ北部、地中海に面したスペインの領土メリリャで、マリやカメルーンからの1000人を超える移民が不法入国を試みた件を受けて、スペイン政府は19日、警察官ら120人をメリリャに派遣した。

メリリャはモロッコの北東部にあるスペインの飛び地。18日早朝に両国の治安部隊が移民の越境を阻止しようとしたが、500人ほどが国境のフェンスを乗り越え、「勝った、勝った」と叫びながら移民収容施設に向かって走って行ったという。

当局によれば、これほど多くの移民が一度に殺到するのは2005年10月以来のこと。この時には1日で350人が越境した。

スペイン政府の推計では、メリリャともう1つの飛び地セウタに入境しようと集まっている移民の数は4万人。さらに4万人がスペインへの入国を目指し、モーリタニアとモロッコの国境近くに集まっているという。

スペインのフェルナンデス内相は6日、セウタを訪問。移民の大量流入はスペインだけでなく欧州全体の問題だとして、欧州連合(EU)に協力を呼びかけた。

現在、メリリャの移民収容施設には、定員の3倍を超える約1800人が滞在している。

18日の大量流入を受けてスペイン赤十字社は軍とともにテントを増設して収容施設の敷地を拡大。だが現地では、政府は近いうちに移民の一部をスペイン本土に移送せざるを得ないとの報道も出ている。

先月6日には、泳いでセウタに入境しようとした15人の移民が溺死するという事件が起きたばかり。人権団体からはスペイン警察が発砲したゴム弾が死因ではないかとの見方も出ているが、政府は移民を直接狙って撃ったものではないとしている。【3月20日 CNN】
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ここにきてセウタ・メリリャに大量のアフリカ移民が殺到している事情についてはわかりません。
ただ、セウタ・メリリャを通じた不法移民の流れ、更には麻薬密輸の流れは以前からある問題です。

****豊かさ求め、国境越え スペイン領にモロッコ移民流入****
領土問題に揺れるセウタ、レイラ島、ジブラルタル
地中海を臨むモロッコと陸続きのセウタは、アフリカ大陸に残るスペインだ。植民地時代の「負の遺産」だとして、モロッコは返還を求めているが、解決のめどは立たない。その一方で、経済格差を背景に、移民による「静かな侵略」が続く。

黄土色の乾いた土がむき出しの丘の上に、家々が密集している。どれも無造作に建て増しされたものだ。入り組んだ細い路地からはアラビア語が聞こえた。小さなモスク(イスラム教礼拝所)もある。ここで欧州の雰囲気を感じることはない。

プリンシペ。モロッコ国境に近いスペイン領セウタにある移民の居住区だ。10年ほど前からモロッコからの移民たちが住むようになり、今では8千~1万人になった。

水道や電気も使える。しかし、ほとんどが無許可で、使用料も支払われていないという。人口約8万人のセウタで、プリンシペだけで1割ほどを占める計算だ。

セウタ中心部でも、目立つのは「非スペイン人」たちだ。カフェには仕事にあぶれた男たちが昼間から集まり、アラビア語で話していた。店の料理はすべて、イスラム教に沿ったものだという。商店街には、スカーフをしたイスラム教徒の女性の姿が目立つ。

「静かな侵略」。移民たちの増加はスペイン市民の間でそう呼ばれる
周辺地域はかつてスペインが植民地化し「保護領」となった。周辺のモロッコ人は、身分証だけでセウタに入国できる「特典」が与えられている。モロッコとの平均収入の格差は約15倍。豊かさを求め移り住む人は絶えない。

移民はモロッコからだけにとどまらない。セウタへの入国の手引きをしているというモロッコ人男性に話を聞くと、サハラ砂漠以南のセネガルやギニアなどからもやって来るという。

記者がモロッコ側の国境地帯を車で走っていると、木の間にアフリカ系とみられる3人組が隠れているのが見えた。「国境越えのタイミングを待っているんだ」。運転手がそう教えてくれた。密入国が頻繁に行われていることがわかる。

国境越えの手口は、身分証を偽造したり、車のシートやコンテナに隠れたりするなどさまざま。スペインの外国人法では、非合法でも入国すれば強制送還されることはまれ。入国に成功すると、プリンシペにいったん住む。時期を見計らって、さらに豊かな欧州本土を目指し地中海を渡るという。

スペインも移民増加に手をこまねいていたわけではない。2005年には国境の柵の高さを3メートルから倍の6メートルにするなど様々な手を打ってきたが、大きな成果は上げていない。

さらにスペインを悩ませているのが、麻薬の流入だ。国連薬物犯罪事務所(本部・ウィーン)の調べでは、欧州に流入する大麻の大半がモロッコ産で、セウタ経由も少なくないとされる。移民の手引きをする者たちの中には、「大麻を扱うグループもいる」との話もある。
セウタは、アフリカからの移民と密輸麻薬の入り口にもなっているのだ。

モロッコ政府は1956年の独立以来、セウタの返還をスペインに求め続けている。モロッコのラルビ・メッサリ元情報大臣は「セウタや、その周辺の島々はいまだに返還されない植民地だ。地理的にも、歴史的にもモロッコ領であることは、疑いがない。モロッコには返還への確固とした戦略がある」と語る。

その一方で、メッサリ氏は「隣国は互いに協力しなければならない。今は、財政危機という病気の国を介抱する時だ」と財政難にあえぐスペインに同情すら見せた。モロッコ側に返還交渉を急ぐ考えは今のところうかがえない。モロッコ国内の世論も最近は、それほど盛り上がっているとはいえない。(後略)【2012年11月30日 朝日】
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カンダタの悩み
今回騒動となっている不法移民たちは、上記記事にもあるスペイン政府がつくった高さ6mのフェンスをよじ登って侵入しようとしているのでしょうか。

“モロッコとの平均収入の格差は約15倍”とのことですが、マリやカメルーンなどの不法移民にとっては食べていけるか飢え死にするかの差にも相当するでしょう。

それだけの差が“国境”なるもので決められるということになると、当然に人々は命がけでこの国境を越えようとします。

もちろん、国によって、日々積み重ねてきた努力に差はあるでしょう。指導者の資質の差もあるでしょう。ただ、個々人のレベルでみたとき、その差を受け入れるべきどれだけの違いがあるのか?

しかし、自分自身の日本国内におけるささやかな生活を含めて、先進国の豊かな社会はこの国境に守られて存在しており、これを否定すれば、現在の生活は直ちに危うくなります。
人々の自由な移動によって、結果的に、世界の所得水準は平準化するでしょうが。

さりとて、「蜘蛛の糸」のカンダタのように「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己(おれ)のものだぞ。お前たちは一体誰にきいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と叫ぶのもいかがなものか・・・ということで、いつも悩む問題です。保身をむき出しにするのか、偽善的にふるまうのか、悟りを開くのか・・・。

そういう基本的な話とは別に、スペインがどうしてこんな厄介な飛び地の領有に固執するのか、よくわかりません。
もちろんいろんな権益はあるのでしょうが、厄介な飛び地はモロッコに渡して、身軽になった方がよさそうな気がしますが・・・。
「領土を譲ることなど、どんな理由でも認められない」ということなのでしょうか?
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4年目を迎えたシリア内戦  犠牲者を増やし続けるだけの現状を変えうる現実的対応は?

2014-03-19 23:16:26 | 中東情勢

(政権側のプロパガンダ画像ではありますが、3月12日 ダマスカス郊外の難民施設を訪問したアサド大統領 “flickr”より By Devyatka Site http://www.flickr.com/photos/120468246@N06/13192949284/in/photolist-m6PjbQ-m4JQ4N-m4Luuo-m4LcRd-m4JiZv-m4L5UN-m4KnFX-m4JZ8P-m4KHwN-m4HvWi-m4HbFe-m65xM4-m4Lkhq-m4PqWz-m4JFDT-m54CW9-m4Js9A-m4HCvt-m4HVz9-m4Pomg-m4H5Eg-m4LSfY-m4N1qc-m4T3eU-m4Si2a-m4TbWJ-m4TcUA-m4Qy86-m4SWyL-m4S6W5-m4K83N-m4QAKR-m4S5kR-m4SbCE-m4RaUC-m4LQ2i-m4PSEZ-m4JR6h-m36Gkw-m35fga-m36H8y-mbkJjg-m4LEux-m4KVkZ-m4LzwN-m4TqC1-m4Kivm-m6zTfK-m4SGen-m7sxSc-m2uTkt)

軍事的優位を強める政権側
シリア内戦は2011年3月15日に始まってから3年が過ぎ、4年目に入っています。
この内戦ではこれまでに14万人以上の命が奪われた上、人口の半数近くが家を追われ、今ではその多くが難民生活を余儀なくされています。(UNHCRによると、難民は約250万人、国内避難民は650万人以上、合計900万人を超え、全人口2190万人の4割以上になっています。)

内戦終結に向けた交渉は道筋を見いだせないまま停滞しており、市民の犠牲者が増え続ける状況となっています。
(3月5日ブログ「シリア 人道決議案は採択されたものの、日ごとに増す人々の飢えと苦しみ」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140305

軍事的には、かねてよりアサド政権側の攻勢が伝えられていましたが、3月16日に政府軍側が反体制派の重要拠点ヤブルードを制圧したことで、政権側優位の流れが更に加速しそうです。

****シリア:反体制派拠点、陥落 政府軍が補給路断つ****
シリア内戦で、政府軍は16日、レバノン国境に近い西部山岳地帯にある反体制派の主要拠点ヤブルードを制圧した。国営シリア・アラブ通信が報じた。

政府軍は首都ダマスカス北方の山岳地帯をほぼ確保し、中部ホムスや地中海沿岸地方に至るルートを掌握した。反体制派はレバノンからの補給路を断たれた格好で、ダマスカス郊外やホムスでの戦闘が政府軍優位に傾く可能性もある。(中略)

政府軍は昨年春以降、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの支援を受けて、西部山岳地帯で攻勢を強めた。6月にクサイル、12月にナブクと要衝を次々と制圧し、ヤブルードにも空爆などで激しい攻撃を続けていた。

反体制派によると、政権側にはヒズボラのほか、イラクのシーア派民兵も加わっていたという。【3月17日 毎日】
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国際関係面においても、ウクライナ・クリミアを巡るロシアと欧米の対立が先鋭化する流れは、シリア和平交渉を一層難しくすることが予想されます。また、ロシアを後ろ盾とするアサド政権を強気にさせることにもなっています。

****シリア反政府デモ発生3年 露のウクライナ強硬策 アサド政権の後押し****
シリアは、内戦につながった反政府デモ発生から15日で3年を迎える。今年1、2月にスイスで行われたアサド政権と反体制派の当事者間協議が不調に終わり、内戦の政治解決機運は後退。

ロシアの中東での「橋頭堡(きょうとうほ)」として同国の支援を受ける政権側にとっては、ウクライナ情勢をめぐってロシアが自国勢力圏を死守する構えを鮮明にしていることも追い風となっている。

「ロシアは国際関係に重要な役割を果たしている」。シリア国営通信によるとアサド大統領は11日、こう述べ、自身の後ろ盾であるロシアの最近の動きを称賛した。ロシアがウクライナ問題で米欧への強硬姿勢を貫いていることが、政権側に、シリア問題でもロシアの関与は揺るがないとの自信を与えるとみられる。

国際社会の関心がウクライナに集中していることで、政権側の軍事行動に対する米欧の目が行き届かなくなるとの指摘もある。

シリアの隣国レバノンなどからの報道によると、政権側はこのところ、首都ダマスカス周辺やレバノン国境地帯、北部の主要都市アレッポ周辺へ重点的に戦力を展開。北部のトルコ国境地帯や東部などの反体制派支配地域を面的に制圧するのは難しいことから、要衝に絞って軍事的優位の確保を図っているもようだ。

政権側の「たる爆弾」と呼ばれる焼夷(しょうい)弾による空爆も続いており、3年前の反政府デモ発生以降の死者数は全土で14万人を超した。

シリア内戦をめぐっては1、2月、政権側と反体制派の代表組織「シリア国民連合」の当事者間協議が行われた。
武力介入に消極的な米欧は、協議を通じてアサド氏退陣へ道筋をつけたい考えだったが、政権側は退陣を念頭に置いた議論には乗らず、協議の成果は激戦地の中部ホムス旧市街からの住民脱出など限定的なものにとどまった。内戦の長期化も辞さずに生き残りを狙う政権側の外交的勝利ともいえる。

シリアでは今年、大統領選が予定され、アサド氏の出馬・当選が確実視されている。アサド氏は選挙結果を盾に政権の正当性を主張していくものとみられる。【3月15日 産経】
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犠牲者を止めるために求められる現実的対応
今後のシリア情勢については、“シリア情勢の専門家、英エジンバラ大学のトマス・ピエレ氏は、「シリア内戦は、欧米の介入がなければ今後何年も続くだろう。しかし米大統領がバラク・オバマ氏である限り、介入は全く見込めそうにない」と指摘する。「(オバマ氏の後任選挙が行われる)2016年以降には、状況が変わるかもしれない」”【3月14日 AFP】とも。

しかし、政府軍の兵糧攻めで市民に餓死者が出るような状況で、“今後何年も続くだろう”“2016年以降には・・・”というのは、救いのない話です。

****良い筋書きなど存在しない****
目下、反体制派の内部ではこれまでにないほど分裂が進んでおり、政権側に加え、かつて同盟関係にあったイスラム武装組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」とも戦っている。

穏健派・過激派、両方の反体制派に加え、国際テロ組織アルカイダ系の「アルヌスラ戦線」までもが、今年1月以降、ISILに対し激しい戦闘を仕掛けており、今のところ収束の気配もない。

専門家らは、政権側は最近領土奪還を進めているが、全土を取り返すだけの兵力は持ち合わせていないと分析している。

識者らの推定によると、反体制派は10万~15万人の戦闘員を抱えており、そのうちの1万~2万人が外国人。また反体制派には約2000の武装組織があり、そのうち「イスラム戦線」が最も重要な立場を保持している。

一方政府軍の兵力は30万人とされ、このうちの半数が徴集兵。加えて、数千人規模の親政権派民兵らの支援も受けられる。しかしシリア人権監視団によると、政権側は過去3年間に5万人もの戦闘要員を失ったという。

「どちらにとっても勝ち戦ではない」。ドイツ国際安全保障研究所の所長で、「Syria under Bashar(バッシャール下のシリア)」を著したフォルカー・ペルテス氏はAFPに対し語った。

「もしかしたらアサド氏は、領土の大半を取り戻し、制圧できていない地域については焦土作戦を展開するかもしれない。しかし、再び国全体を支配下に置くことは決してないだろう」

ペルテス氏はさらに、国家崩壊は「可能性の一つではなく、一つの現実であり、仮に戦争があす終わったとしても国の再建には10年以上かかるだろう」という見通しを示している。

また、同じくシリア問題に詳しい地理学者のファブリス・バランシュ氏は、シリアの分裂もあり得ると指摘。「どちらか一方の勝利には終わらず、北東部のクルド人地域と、北部の反体制派地域、そして中部の政権掌握地域という、事実上の分割状態」を予測している。

「シリアにとって良い筋書きなど存在しない。アサド氏は再びゆっくりと支配を強めるだろうが、そのためにどれだけの犠牲を払わなければならないことか」
「政権側が復権を果たせば抑圧を伴うのは必至で、そうなれば数十万人の流出につながるだろう」
「2006年に(イスラエルとの衝突後に)レバノンに注入されたような資金をシリアが受け取るようなことは考えにくく、イラクのような産油国でもないのだから」【3月12日 AFP】
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死傷者や避難民の増加を嘆いているだけで、この先何年も同じような状況を続けるのは愚かしい道のように思えます。

欧米側が描いていた反体制派を主体とした政権構想は、内部分裂し、イスラム過激派の台頭を抑えきれない反体制派の現状では、完全に破たんしていると言わざるを得ないでしょう。
力づくでアサド政権を引き摺り下ろし、反体制派主体の政権をつくったとしても、更なる混乱のスタートになるだけに思えます。

現段階でシリア統治の主体となりうる可能性があるのは、“全土を取り返すだけの兵力は持ち合わせていない”ながらも戦局を優位に進めているアサド政権しかないように思われます。

アサド政権側がこれまでに行ってきた多くの非人道的行為を考えると、いかなる形にせよアサド政権の残存を認めることは、欧米側にとっては耐え難い筋書でしょう。

しかし、すでに十分すぎる犠牲者を出し、更にこの先数年同様の惨状を続けるという最悪のシナリオに比べればまだましではないでしょうか。

シリアは、嘆き、悲しみ、批判ではなく答えを求めています。これまでの経緯に縛られることを止め、今後の犠牲者を速やかに減少させる答えがどこにあるのか、現実的に考えるべき時期ではないでしょうか。

ただ、ウクライナ・クリミア問題で欧米・ロシアの亀裂が深まり、互いの譲歩のなかで協調して解決策を探す気運にないことはシリアにとって残念なことです。
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クリミア、ロシア編入の手続きはじまる 双方にとって今後の問題も 

2014-03-18 23:34:49 | 欧州情勢

(クリミア半島のシンフェロポリにあるクリミア自治共和国議会議事堂前で、ロシアの国旗を持ち踊る人々(2014年3月17日撮影)。(c)AFP/DIMITAR DILKOFF 【3月18日 AFP】)

住民投票でロシア編入・・・しかし、NYダウは大幅上昇
クリミアの住民投票を受けての“独立”、ロシア編入に向けたプーチン大統領の動き・・・ということで、アメリカは対ロシア制裁を発動、今後の展開次第では更なる制裁で大国ロシアとの対立が鮮明にならざるを得ない状況にあります。

このような状況で意外だったのは、アメリカの市場がクリミアを巡る国際情勢の緊張に全く反応しなかったことです。

****NYダウは大幅上昇、181ドル高 ウクライナ懸念後退****
週明け17日のニューヨーク株式市場は、ウクライナ情勢を巡るロシアと欧米の対立懸念がやや後退し、大企業で構成するダウ工業株平均は6営業日ぶりに値上がりした。終値は、前週末より181・55ドル(1・13%)高い1万6247・22ドルだった。ウクライナ南部のクリミア自治共和国で実施されたロシア編入を問う住民投票の結果は、賛成票が9割を超えるなど市場の予想に沿った内容だった。これを受けて市場では、幅広い銘柄に買い注文が入った。ダウ平均は一時、前週末終値に比べ200ドル超上がった。【3月18日 朝日】
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クリミア問題はすでに織り込み済みだった、住民投票結果も圧倒的多数で編入が支持されることは予想されていた・・・という事情はありますが。

もともとアメリカはクリミアの問題にさほどの関心は持っていない・・・クリミアを含めたウクライナの経済破綻で困るのはロシアとEUだ・・・・アメリカは“長期戦”で構えていればいいと考えている・・・といった見方もあります。

****ウクライナ問題でアメリカはどうして「ポーカーフェース」なのか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代****
先週末、3月14日(金)にアメリカの株式市場はかなり下げました。週末に行われるクリミア半島帰属問題での住民投票を前にして、ウクライナ情勢全般への悲観論が広がったからです。

その住民投票では、97%がロシアへの帰属に賛成票を投じたと発表されました。いよいよ、ウクライナの一部であるクリミア半島が、ロシア領になっていくプロセスがスタートしたのです。

ところが、この住民投票のニュースはアメリカでは実に小さな扱いでした。この週末の間、各局は延々とインドネシア航空機の行方不明事件を報じており、例えば30分のニュース番組の場合ですと、最初の15分がこのインドネシア航空機のニュースで、ウクライナ問題はその後の「今日のその他のニュース」で取り上げるという扱いがほとんどだったのです。

住民投票の結果を受けた週明け、3月17日のNY市場の反応も意外でした。前週とは打って変わって大幅高となったのです。ダウは181ドル強(1・1%)上げて前週末の下げの相当部分を戻した格好になります。

先週は、12日の水曜日に、首都キエフに置かれたウクライナの暫定政権のヤツェニュク首相が訪米して、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談しています。そのTVでの扱いは「まあまあ」でしたが、私が驚いたのは、アメリカはこの首相訪米にあたって、追加の金融支援のオファーは一切していないのです。

それどころか、その前週にケリー国務長官がキエフに行って約束した10億ドル(約1000億円)という融資保証について、オバマは「もったいぶって」恩を売るような発言をし、ヤツェニュク首相はこれに謝意を表明しというセレモニー的なやり取りがあったのですが、それと同時並行で議会共和党は「そんな怪しいカネは出すな」という反対論をブッていたのです。

以前にもこの欄に書きましたが、今現在、ロシアは150億ドルの援助の大部分をストップして代わりに戦車を派遣しています。一方でEUは110~130億の援助を「口に」はしています。
一方で、ウクライナの対外債務は1500億ドルあり、一説によれば今年中に返済期限が来る債務は100~120億ドルあるようで、6月末に大口の償還があると言われています。

その中で10億ドルというカネしか出さないアメリカ、しかも首相が来ている最中にその融資枠設定への反対論が公然と出るというのはどういうことなのでしょう? 

反対しているのは共和党で、基本的には反ロシア、オバマはプーチンに甘いという非難を繰り返しているグループが、10億ドルの拠出に難色を示しているのです。西側が思い切りカネを出して、プーチンを追い払えという意味での「強硬論」は今のところ、アメリカにはありません。

そんな中での、NY市場の180ドル高というのは何なのでしょう? このアメリカの「ポーカーフェース」ぶりをどう理解したら良いのでしょうか?

それは、この問題の当事者はロシアであり、EUだという認識です。そしてカネの面で言えば、まずロシアが相当額を出し、次いでロシアにエネルギーの依存度を高めているドイツが相当の負担をすればいいというスタンスです。

更に言えば、非常に自己中心的な姿勢ではありますが、アメリカとしては(1)ウクライナが最悪の場合にデフォルトになっても困らない、また(2)この地の混乱により化石エネルギーの価格が上昇してもシェールガスも出るので以前ほどには困らない、というスタンスがあるようです。

更に言えば、ロシアの金融事情は厳しいものがあるのです。現在のロシアの株価指数MICEXは、3月3日に大暴落した水準をウロウロしており、年初から15%下げた状況が続いています。ロシアの通貨ルーブルも、対ドルの水準ではダラダラと下げが続いています。そんな中、オバマは「長期戦」で構わないというスタンスを取りつつあるようです。

以前にも書きましたが、困っているのはロシアであり、ウクライナが破綻して連鎖倒産するのは困る、とりあえず借金の担保にクリミアを切り取る構えで西側を怒らせてカネを出させようとしたが乗ってこない、そうこうするうちに、株も通貨も下げが止まらない......強気のウラでプーチンは困り果てている、恐らくアメリカはそのように読んでいるのではと思います。【3月18日 Newsweek】
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クリミアへのロシア・プーチン大統領の強硬な対応は表向きで、実際は“借金の担保にクリミアを切り取る構えで西側を怒らせてカネを出させようとした”というのがロシアの本音だ・・・というのは冷泉氏の持論ですが、そこまではどうでしょうか?

プーチンを止められなかったアメリカ
「ソビエト連邦の崩壊は20世紀最大の地政学上の悲劇だ」と言明し、旧ソ連圏諸国での政治動向には欧米の反ロシア的な画策が背後にあると信じるプーチン大統領が、ウクライナの政変に乗じて素早く、極めて強引な手法で“強いロシア”復活のために動いた・・・、欧米側は“19世k的”“別世界”のロシア・プーチン大統領に対し有効な対応策をとれなかった・・・といのが常識的ではありますが、本当のところでしょう。

****プーチン氏を過小評価した米政権****
ウクライナ南部クリミア自治共和国のロシア編入が現実味を帯びるなか、オバマ米政権の多国間協調主義による外交政策は、プーチン大統領の帝国主義的な領土の回復と拡張の野望を阻止できず、限界を露呈した。

「21世紀に19世紀の行動を取っている」(ケリー米国務長官)、「プーチン氏は『別世界』にいる」(ドイツのメルケル首相)-。

欧米はプーチン氏の行動を、米国が主導してきた第二次世界大戦と東西冷戦後の世界秩序を変更する試みであり、領土拡張主義という「亡霊の復活」とみてきた。

ただ、厄介なことに、政治・経済ブロックが東西に二分されていた冷戦時代とは異なり、今や経済のグローバル化が進み、欧米とロシアの経済利害は複雑に絡み合っている。ここに対露経済制裁の難しさもある。

従って欧米、とりわけオバマ政権にとっては、グローバル化時代の領土拡張主義を相手に、戦後の世界秩序をいかに維持し新たなルールを見いだすのか、外交・安全保障上の重要な試金石となっている。

オバマ政権には「断固とした決意と行動」が求められ、大統領は「代償を伴う」と繰り返し警告した。だが、政権の内情を知る元政府関係者は「政権は当初、ロシア軍のクリミア侵入はないと分析するなど、プーチン氏の姿勢を過小評価していた」と証言する。

その後の外交・制裁圧力も奏功しなかった。クリミアがウクライナにとどまる代わりに、自治権を拡大するという米側の提案は一蹴された。渡航制限や資産凍結は、「何ら抑止効果をもち得ない」(ゲーツ元国防長官)うえに、「外交圧力を支えるものとしての軍事的な抑止力も不十分」(元政府関係者)である。

こうした対応は、ロシアが後ろ盾となっているイランやシリア、何よりアジアで領有権の拡大を図る中国に、「米国に挑むリスクは低い」との誤ったメッセージを送るだろう。

世界経済における中国の影響力は、ロシアの比ではない。中国が東シナ海などで軍事力を行使した場合、経済制裁を含めオバマ政権の対応が行き詰まることは、目に見えている。

今後はウクライナ東部が焦点となるが、ロシアとの対立構造が固定化され、中東も不安定化すれば、オバマ政権はアジア重視戦略の見直しも迫られかねない。ウクライナ情勢は日本や東南アジア諸国にとり、「対岸の火事」ではない。【3月18日 産経】
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ただ、これまでのブログでも書いたように、国家帰属の問題においては最終的には住民の意思が最大限に尊重されるべきものであり、国土は絶対不可侵のもの、あるいは“固有の領土”といったものではなく、そのときどきの力関係・諸事情によって常に変動してきているものであり、更に言えば、クリミア問題は西側勝利で終わった冷戦終結の構図の“微調整”に過ぎないという見方からしても、“ロシア・プーチン大統領のやりたい放題を許している”と悲憤慷慨する必要もないように個人的には思っています。

ロシア編入がもたらす問題も
クリミアのロシア編入は、クリミア住民、ロシア双方にとって、それほどバラ色の未来ではないようです。
現在はロシア民族主義が高揚したクリミアにおいても、失地回復を喜ぶロシアにしても、クリミア併合がもたらす負担の側面は「まとないチャンスが到来した。併合のコストについて言い争う者などいない」と、問題視されていませんが、将来的には大きな問題となってきます。

****クリミア、ロシア編入でもウクライナ依存―電気・水道の大半供給****
ウクライナ・クリミア自治共和国は、住民投票でロシアへの編入を承認したが、ウクライナ本土とのインフラ面の結び付きを断ち切るのは難しそうだ。

乾燥して風の強いクリミア半島には、名高いリゾート地と港湾を支えるための自前の資源がほとんどない。ロシアとは陸地でつながっておらず、天然ガスの約25%、水道の70%、電力の90%をウクライナ本土に依存している。

ロシアが先週末にウクライナ本土に侵入しガス輸送施設を一時占拠したことで示されたように、クリミアのウクライナ依存度の高さが紛争の発火点になる恐れがある。ロシアはクリミアへの資源供給確保のため、その他のインフラも占拠する可能性があるからだ。

ガス施設の占拠についてクリミア政府スポークスマンは、ガス輸送が停止され、クリミア東部が停電に見舞われたため必要だったと説明した。しかしウクライナ政府側は、輸送は停止されていなかったと否定した。
画像を拡大する

ウクライナ政府にとって、クリミアを失うことは政治的な打撃となる一方で、年間10億ドル(約1010億円)のクリミア向け予算の削減となる。ロシアがクリミアの併合に踏み切ったとしても、クリミアは存続のためにウクライナへの経済的な依存を続けなければならず、皮肉にも併合がウクライナにロシアとの交渉材料を与えることになる。

ウクライナは理屈の上では、クリミアが分離すれば電力供給を遮断できるが、そうすれば全国的な電力供給網が混乱に陥る恐れがある。(中略)ただ、ウクライナ政府がガスや電気、水道の供給を停止すれば、クリミアに大混乱を引き起こすため、供給停止命令を出す可能性は極めて小さいとみられている。

しかし、本土からクリミアへの供給ラインはぜい弱で、ロシア軍とウクライナ軍との間で戦闘が起きれば供給ラインはすぐにも遮断の脅威にさらされる。クリミアは電力需要の約10%を独自の小型発電所で満たせているが、残りについてはウクライナ本土からの2系統の送電網で電力供給を受けている。

クリミアは家庭向けの水道供給は十分にあるが、かんがいや工場向けは本土に頼っている。天然ガスに関しては、沖合ガス田の生産がブームとなっているおかげで、需要の約4分の3は自前で賄える状況だ。

政情不安に加えてこうしたライフラインの供給不安があるため、観光客の足は遠ざかりそうだ。昨年クリミアを訪れた観光客の70%はウクライナ本土から来ていた。また、クリミアのインフラやホテルは投資不足のため老朽化が進んでいる。

ウステンコ氏によれば、今回の危機発生前から、インフラ問題や犯罪率の高さ、「影の経済」活動のせいで、多くの投資家はクリミアを敬遠していた。今やウクライナやロシアだけでなく国際投資家にとっても、クリミアに新規投資を行うのは問題外になるという。

今後はロシア政府がクリミアに対する主要な投資者にならざるをえない。ロシア政府当局者によると、クリミア併合に伴う費用は1年目だけで40億ドルに及ぶという。

しかし、ロシア国内ではクリミア併合への支持は強い。この当局者は「まとないチャンスが到来した。併合のコストについて言い争う者などいない」と語る。
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すでに通貨問題で住民生活への不安も出てきています。

****ウクライナ:クリミア…興奮の陰に通貨など生活直撃の課題****
ロシア連邦への編入手続きが始まったウクライナ南部クリミア自治共和国では18日、ロシア系住民を中心に歓迎ムードが広がった。一方、ウクライナからロシアへの「国替え」には、水や食料、電力の確保などさまざまな問題も浮上している。

18日付の地元紙「クリムスカヤ・プラウダ」は1面に「双頭のワシ」をあしらったロシアの国章とロシア国歌の全文を掲載。自治共和国の首都シンフェロポリの議会前では、ロシア国旗をもった自衛部隊のメンバーが「プーチンは我らの大統領だ」と話した。

一方、ウクライナの大手銀行「プリバトバンク」は18日、クリミアにある支店の営業を停止し、ATMでの現金引き出しを1人につき1日500フリブナ(約5300円)までに制限した。

銀行側はクリミアの公式通貨となったロシア・ルーブルへの対応や、ウクライナの政変後に現金を引き出す人が増えて「十分な現金を確保できないため」としている。

だが、プリバトバンクは、創設者の新興財閥コロモイスキー氏が反露派のウクライナ新政権に近いことから、今回の騒動には政治的背景も指摘される。

ルーブル導入に関しては他の銀行も対応に追われており、一部の商店で銀行カードが使えなくなるトラブルも発生。現行通貨のフリブナは2015年末まで使える予定だが、2通貨を当面どのように両立させるのか明確でなく、不安を抱く住民もいる。3月30日からクリミアの現地時間を2時間早めてモスクワ時間に合わせることになり、市民生活の混乱が予想される。

また、クリミアはウクライナ本土に淡水85%、電気80%を依存し、食料も70%が本土から搬入されている。
自治共和国のテミルガリエフ第1副首相はロシア紙のインタビューで「クリミアには1カ月分の食料備蓄がある」と強調したが、ロシア編入でウクライナとの関係が「断絶」した場合、深刻な影響を受けるのは必至だ。【3月18日 毎日】
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アメリカの“内向き姿勢”】
アメリカ国内の保守派やアメリカの強いプレゼンスを必要としている国からは、“ロシア・プーチン大統領のやりたい放題を許している”とアメリカ・オバマ政権の弱腰対応、内向き姿勢を批判する声があります。

しかし、「世界の警察官ではない」とは言いつつも、現実問題としてアメリカは世界中の国際問題に関与し、その動向が注目されています。

クリミアが問題となっている日にも、オバマ米大統領はホワイトハウスでパレスチナ自治政府のアッバス議長と中東和平交渉を巡って会談しています。
イラン核問題の最終解決に向け、欧米やロシアなど主要6カ国とイランは18日、ウィーンで実務協議を再開しています。
シリア問題もあります。

アメリカとしてこれらに深く関与して、場合によって実力行使で・・・と言っていたら、とても身が持ちません。
アメリカが多国間協調主義で“内向き”と取られがちな対応に終始するのも当然のことのようにも思えます。
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ウクライナ  クリミア住民投票 96.77%がロシア編入に賛成

2014-03-17 22:12:32 | 欧州情勢

(クリミア半島セバストポリで、ロシア編入の賛否を問う住民投票の暫定結果で96.77%が賛成票が占めたことを祝う親ロシア派の人々(2014年3月16日撮影)。(c)AFP/VIKTOR DRACHEV 【3月17日 AFP】)

ロシア編入支持に「雪崩現象」】
世界中が注目していたウクライナ・クリミアの“ロシア編入に賛成か、それともウクライナにとどまり自治権の拡大を目指すか”の住民投票は、96.77%が編入に賛成するという結果になったと報じられています。

6割を占めるロシア系以外のタタール人においてはボイコットも行われましたが、それでも投票率はクリミア全体で82.7%にのぼったと発表されています。

ロシア編入が支持されるというのはわかっていた話ですが、予想した以上に高率で支持され、また、投票率も高くなった印象があります。

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帝政時代の18世紀からソ連時代の1954年までロシア領だったクリミアはロシア系住民が6割を占め、ロシア復帰を求める声が強かった。

2月のウクライナ政変で発足した新政権が民族主義の傾向を見せているとしてクリミア住民に反感が浸透。親ロシア派の当局側のキャンペーンも奏功し、ロシア編入支持に「雪崩現象」を起こしたとみられる。直前の世論調査では編入賛成は約8割だった。

また、反ロシア感情が強い少数派の先住民族クリミア・タタール人の間で住民投票をボイコットする動きが出ていたが、クリミア自治共和国のアクショーノフ首相はタタール人の約40%が住民投票に参加し、うち半数がロシア編入を支持したとの見方を示した。【3月17日 毎日】
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こうした数字については、ウクライナ・キエフ市民などにおいては「銃で脅された状況下での選挙で受け入れられない」という感情はあるかとは思いますが、投票にはロシアや欧米など23カ国から約70人の監視団が派遣されており、現段階においては大きな不正行為などは報じられていません。

(既成事実をつくりあげるために、大至急で行われた投票であり、また、ロシア系住民の民族意識高揚のもとでの投票ですから、多少の行き過ぎ、手違い等はあったと思われます。ウクライナ国籍を持たない在住ロシア人が投票を許された・・・といった類の話はあるようです。)

****クリミア:整然と「復帰」意思表示…シンフェロポリ****
ロシア連邦編入の賛否を問う住民投票が16日行われたウクライナ南部のクリミア自治共和国。首都シンフェロポリでも多くの人が賛成票を投じ、1954年までロシア領だったクリミアの「ロシア復帰」を待ち望む声が聞かれた。

自治共和国議会から約300メートル離れた第1中等学校に設けられた投票所には、投票開始の午前8時前に約20人が並び、関心の高さをうかがわせた。住民はロシア編入かウクライナ残留かを選ぶ投票用紙にチェックを入れ、不正防止のため透明になっている投票箱に票を投じていた。

「我が家のロシアに戻りたい。それが願いです」。ロシア系のイリーナ・ボツマンさん(42)は、プーチン露大統領を「秩序をもたらしてくれる一家のあるじ」と呼んだ。ウクライナの新政権については「政変で多くの犠牲を出した人とは暮らせない」。一緒に投票した娘のユリヤさん(21)は7月に出産予定で「生まれてくる子の祖国はロシアになる」とった。

同じくロシア系のワレーリ・ゴンチャロフさん(29)は「ロシアは社会保障などクリミアの生活を良くしてくれる。石油・ガス資源があり、欧州より頼りになる」と話した。

投票所で住民30人に聞いたところ、回答を拒んだ2人以外はロシア編入に賛成だった。大半が以前から編入を望み、4人はウクライナの政変でロシア入りを支持するようになったという。

投票所前では私服姿の自衛部隊3人が警戒にあたり、自治共和国議会の周辺は車の通行が禁止された。投票は平穏かつ整然と実施され、住民の意思を反映する取り組みがうかがえた。

投票率は2010年のウクライナ大統領選(67%)や12年の最高会議選(49%)などクリミアで過去に行われた選挙を超過。一方、反露感情が強い先住民族クリミア・タタール人の間でボイコットの動きもあったが、南部バフチサライなどで投票への参加が報告された。【3月16日 毎日】
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通常の投票で“96.77%”といった数字は眉唾ものに思えるのですが、ロシア側も投票の公正性が国際社会における今後の主張に大きく影響することは承知でしょうから、そんな無茶な不正行為もやっていないのでは・・・・という感もあります。

無視できない圧倒的結果
ロシア系住民の民族意識高揚、ロシア側の“ロシアに編入されれば、すべてうまくいく”式のバラ色のプロパガンダ、反ロシア意識の強いタタール人への“差別はしない”という働きかけ・・・等々が行われた結果ではありますが、ある意味、選挙結果は大なり小なりそういうプロパガンダによるものであり、もしそこに大きな不正行為がなかったとしたら、“投票率82.7%”“ロシア編入賛成96.77%”はやはり無視できない数字になるように思われます。

もちろん、ロシア・プーチン大統領の“ロシア軍は介入していない”あるいは“ロシア系住民の安全が危険にさられている”との虚構を強弁しながら、実質的にはクリミアに兵力を展開し、軍事的に抑え込んでしまう国際秩序を無視した強引な手法、クリミア自治政府のウクライナ憲法等を無視したロシア編入に向けた性急な行動など、看過できない点は多数あります。

だからこそ、アメリカ、欧州は今回住民投票を認めないとの立場をとっている訳ではありますが、プーチン大統領がアメリカへのあてつけとして引き合いに出すコソボの例に見るように、国家帰属を決めるうえで最大に重視されるべきは住民の意思でしょう。その意味で“96.77%”はやはり大きな影響力を持ちます。

現実問題としても、反発しあう住民が既存の国家の枠組みに縛られる形で“同居”していても、将来的な展望は開けません。どうしても別れたいなら“離婚”を認めるのが現実的対応かと思われます。

(単に“仲が悪いので別れる”という話ではなく、本来は、時間をかけて妥協点はないか探り、“離婚”した場合のメリット・デメリット、“離婚”によって引き起こされる諸問題をどうするかの検討・・・がなされるべきであり、今回クリミアの場合、あまりにも性急に事を運びすぎていることは言うまでもないことですが、ここに至っては・・・という感もあります)

当然ながら、クリミア側はロシア編入に向けて一気に走り出しています。

****クリミア議会、ロシア編入正式要請=独立決議も採択―ウクライナ資産「国有化」宣言****
ウクライナ南部クリミア自治共和国議会は17日、住民投票の結果を受けて、ロシアに編入を正式に要請する決議を採択した。ウクライナからの独立決議も採択した。議会代表団は同日、ロシアに向かい、モスクワでロシア上下議会関係者とロシア編入に向けた協議を開始する。

議会は、クリミア半島内のウクライナの国家資産を国有化する決議も採択した。ウクライナ新政権が反発し、対立激化は必至だ。

クリミア側の編入要請に対し、ロシアのプーチン大統領がどのように対応するかが次の焦点。大統領は当初、「クリミア併合は検討していない」と発言していたが、投票結果を尊重するとの立場に軌道修正している。プーチン氏にとっても、今回の90%超のロシア編入賛成という圧倒的な結果は無視できないとみられる。【3月17日 時事】
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ロシア・プーチン大統領が、クリミア併合に動くのか、それとも当面はクリミアを併合せず、同自治共和国の実効支配を維持するにとどめるのか・・・そこについてはよくわかりません。

おそらくプーチン大統領自身、“走りながら考えている”状況でしょう。
併合した場合の欧米諸国からの経済制裁等の影響も考える必要がありますが、プーチン大統領にとっても“96.77%”という数字は、おいそれと後には引けない状況を作り出しています。

親ロシア派の他の地域への波及を断つ形で収束を
****米大統領「承認せず」 露大統領と電話協議、制裁強化通告****
住民投票実施を受け、オバマ米大統領は16日、ロシアのプーチン大統領と電話で協議した。プーチン大統領は住民投票の正当性を主張したが、オバマ大統領は結果を認めず、制裁強化に踏み切る意向を伝えた。

露大統領府によると、プーチン大統領は住民投票について「国際法に従って実施された。コソボの先例も考慮された」と主張。ウクライナ新政権について「ロシア語圏住民らの状況を不安定化させる極右や過激派グループの暴力を抑制する能力や意思がない」として懸念を伝えた。

米ホワイトハウスによると、オバマ大統領は住民投票がウクライナ憲法と国際法に違反すると指摘し、「ロシア軍の介入の下で実施された。米国も国際社会も承認しない」と表明。「ロシアの行動はウクライナの主権と領土保全を侵害した。さらなる代償を科す準備はできている」と追加制裁を発動する方針を伝えた。

一方で、プーチン大統領はオバマ大統領との電話協議で「クリミアの住民は自由な意見表明と自決の機会を保障された」と住民投票を評価したものの、編入を巡る今後の方針には触れていない。また、外交努力を続けることで一致した。(後略)【3月17日 毎日】
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今さらロシア・プーチン大統領がクリミアから手を引くというのも現実的でないシナリオですし、大局的に見ればソ連崩壊・冷戦終結という西側勝利の構図自体に何ら変化はなく、今起きているのは境界線付近での微調整に過ぎません。

それも、見方を変えれば、ロシア寄りのウクライナ前政権を崩壊させて、西側はウクライナ本体を取り込み、ロシアはわずかにクリミアを何とか手にした・・・という形にもとれます。
ただ、バルト3国のように境界線付近にはロシア系住民を多く含む国も少なくなく、今後同様の問題が飛び火する形になると、“新冷戦”という大きな問題にもつながります。

ロシア側の強引な手法には問題は多々あるものの、住民の意思、ソ連当時のクリミア帰属変更の経緯なども考慮すれば、クリミアのロシア支配は止むを得ないという立場で、問題がウクライナ東部やバルト3国などに及ばないような形でロシアと話をつける・・・というのが現実的対応ではないかと思えます。
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中央アフリカ  止まない暴力 懸念される避難民の生活

2014-03-16 21:18:39 | アフリカ

(切り取り箇所には黒こげになった遺体があります。 2月10日 暫定大統領や軍幹部、政府高官らが出席し開催された軍の式典の数分後、軍服姿の兵士たちが平服姿のある男性をセレカの元戦闘員だと非難した。兵士たちは、なたで男性を切りつけて頭部を大きな石で砕いたうえ、片足をくるぶしの下から、もう片足は全体を切断。その後男性の体を路上に置いてタイヤを積み上げると、火を放った。・・・約30分以上の間、子どもを含む群衆が死体が燃えるのを携帯電話で撮影しながらみていた。【3月10日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】より http://www.hrw.org/ja/news/2014/02/08-0

止まない暴力の連鎖
これまでも何回か取り上げてきたように、中央アフリカではイスラム教徒の武装勢力「セレカ」によるキリスト教徒への暴力、「セレカ」が権力を失った後は、キリスト教徒民兵組織「アンチ・バラカ」によるイスラム教徒への報復・・・という暴力の連鎖が止まらず、国際的な人道支援もままならない“前例を見ない人道危機”とも言われる惨状が起きています。

中央アフリカを最後に取り上げたのは、2月19日ブログ“中央アフリカ  進行する「ジェノサイド(大虐殺)」 遅れる国際社会の介入”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140219)ですが、その後は殆ど関連ニュースを目にしません。

この間、世界の関心はもっぱらウクライナ・クリミア半島情勢に集中している感もありますが、フランス軍の介入やアフリカ連合(AU)主導の平和維持部隊の活動にも関わらず、中央アフリカ情勢は好転していないようです。

現在の暴力は、キリスト教徒民兵組織「アンチ・バラカ」によるイスラム教徒への報復が中心と思われますが、イスラム教徒側の「セレカ」の暴力も停止した訳ではないようです。

****中央アフリカ共和国:民兵組織セレカによる村落の攻撃****
・・・・重武装したセレカの部隊はムスリムのフラニ民族の牧畜民と共に、2014年2月26日、ボッサンゴア北東のボワイ村を攻撃して死傷者を出したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

攻撃により8人が死亡し、銃撃で少なくとも10人が負傷した。負傷者の大半は小さな子どもだ。民間人が村から逃れると、部隊は村内の多くの建物に放火した。逃げ遅れたため、火のついた家に閉じ込められる人も出た。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、民間人に対するセレカの攻撃が今後も続くと警告し、フランス軍とアフリカ軍に対し、ボッサンゴア北東60kmに位置する一帯の警戒強化を求めた。(中略)

ヒューマン・ライツ・ウォッチが集めた複数の目撃証言と、人道援助団体消息筋からの内部情報によれば、重武装したセレカ兵の大集団が、フラニ民族牧畜民の支援を受けて、2月26日昼頃にボワイ村を包囲し、逃げ惑う住民に無差別発砲した。

フラニ民族はほとんどがムスリムで、西アフリカと中央アフリカの家畜売買を取りしきっている。
イノサン・ダイベナムナさん(44)はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、午後1時頃に攻撃が始まったときは自宅にいたと述べた。

「セレカとフラニ民族が攻撃を行い、家々に火をつけて回った。徒歩でやってきたが、武装はしっかりしていた。100人以上はいた。まず村を包囲したので、われわれは逃げようがなかった。セレカ兵は軍服を着て赤と緑のベレー帽をかぶっていた。しかしフラニ民族は伝統衣装を着ていた。カラシニコフ銃、ロケットランチャー、大口径銃、マシンガンで武装していた[中略]。銃撃が始まると、われわれは恐怖に駆られて茂みに逃げ込んだ。すると向こうは村に入ってきて、すべての家に火をつけた。われわれの知るかぎりで8人が死亡した。負傷者10人はボッサンゴアに運んだ。しかし行方不明の子どもがまだいる。茂みで死んでいるかもしれない。」

セレカとフラニ民族はマキシム・ベアムコマさん(35)の足を撃ち、自宅に閉じ込めておいて火を放った。氏はこの攻撃から生還した。(後略)【3月11日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】
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避難民に迫る新たな人道危機
更に、現在問題が深刻化しているのは、避難民の生活の安全の問題です。

****中央アフリカ共和国:過酷な避難生活に、迫りくる雨季****
中央アフリカ共和国内の紛争から逃れるために国境を越えた人びとが、過酷な避難生活に直面している。食糧を手に入れる手段がほとんどなく、援助が文字通りの"命綱"となっている。

また、難民キャンプの衛生状態は悪く、難民数に対してトイレなどの衛生設備が全く足りていない。

隣国のチャドやカメルーンには、すでに数万人が到着し、いまなおその数は増え続けている。一方、地域によっては、国境なき医師団(MSF)が唯一の援助団体となっているところもあり、援助不足が深刻だ。

1.3万人でトイレ20基、給水4ヵ所――チャド
避難者の多くは、中央アフリカ共和国内で襲撃を受けた経験を持つ。トラックに揺られ、ひどく疲れる旅を経て、同国難民の一部はチャド南部にあるシドに滞在。健康リスクが高く、不衛生な環境で生活している。

彼らは世界食糧計画(WFP)から食糧配給を1度受けたきり。それも1ヵ月以上も前の事だ。
シドで国境なき医師団(MSF)のプログラム責任者を務めるオーガスティン・ンゴイは「前回の食糧配給のあと、8000人以上の難民が到着しています。タンパク強化ビスケットをもらえた一部の人を除いて、誰も食べ物がありません」と話す。

シドにいる難民の大半は急ごしらえの仮住まいで暮らしている。一方、直近の到着者は着の身、着のままで木の下に野宿している。現在1万3200人いる難民に対し、トイレはわずか20基、給水地点は4ヵ所しかない。

マラリアの症例は、現地でのMSFの診療件数の30%を占めている。また、16日間で56人の子どもが、急性栄養失調の治療を受けた。

当局はこの危機に懸命に対応しようとしているが、その費用、人員、支援は全く不足している。MSF以外には、現地で活動している国際援助団体がないからだ。

ンゴイは「緊急食糧援助はもとより、蚊帳、仮設住居とトイレも必要としています。WFPを含めた国連機関は今すぐ行動する必要があります」と指摘する。【3月10日 国境なき医師団】
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****中央アフリカ:紛争から逃れた人びとに新たな人道危機****
国内の紛争や暴力行為から逃れるために隣国チャドに逃れてきた何千もの中央アフリカの人びとが、さらなる人道危機に瀕している。チャドの雨季が始まると、住居、食糧、医薬品などの供給がさらに滞り、避難民の状況は急激に悪化する。

アムネスティの派遣団は2月末から2週間、両国の国境沿いやチャドの首都ンジャメナの避難民滞在キャンプなどを訪れ、避難民に話を聞いた。何千もの人びとが、乾燥した大地で木々に身を寄せるようにして生きていた。

当局や人道機関から見捨てられ、栄養失調に苦しんでいた。多くは衝突の混乱で家族からはぐれてしまった子どもたちだった。
雨季には周辺地域との交通が遮断され、水を媒介とする感染症も新たな脅威となる。

チャド政府と国連機関など国際社会は、これら避難民に対して、安全、食糧、医療サービス、住居などが確保できるように、即急に支援すべきである。

難民キャンプの中には、中央アフリカの紛争地に近く危険な所もあった。
一人の女性は、「自分を襲ったセレカ(イスラム教徒武装勢力)の司令官が、自分が逃げてきた先のキャンプに移ってきた」と話した。別の避難民は、自分の避難所に少なくとも4人の元セレカ兵士がいることがわかり、身の危険を感じているという。
警備体制がまったく不在であるため、一触触発で衝突が起こりかねない。

アムネスティ派遣団は、数名のチャド当局や人道機関のスタッフとしか遭遇しなかったが、ほとんどは自分の身を守るのに精一杯であった。

チャド政府は、明らかに拡大する難民の対応に手を焼いている。国際社会が協力して当局を助け、新たな人道危機を防ぐことが至急必要である。

また、難民を認定し彼らが国際的な保護を受けられるようにするために、首尾一貫した体制が敷かれることも重要である。国連難民高等弁務官とチャド当局は、できるだけ早く協力してこの作業を開始しなければならない。【3月12日 アムネスティ国際ニュース】
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****中央アフリカ難民数十名が飢餓により死亡****
カメルーンで、中央アフリカから来た女性や子どもを含む難民数十人が、飢餓により死亡しました。

プレスTVによりますと、国連難民高等弁務官事務所のファトマタ・ルジューン=カバ報道官は14日金曜、「多くの難民が栄養不良により、病気に罹患し、また死の危険にさらされている」と表明しました。

カバ報道官はまた、「少なくとも33人の子どもを含むおよそ50人が、激しい飢餓状態に陥り、死亡している」と述べています。
さらに、「このことは今年初めの2ヶ月間に、数千人の中央アフリカ人がカメルーンに避難したあとで発生している」としています。

カバ報道官はまた、難民の状況は非常に危険だと表明し、「最近カメルーンの難民キャンプにたどり着いたおよそ80%の難民が、マラリア、下痢や呼吸不全に苦しんでいる」と語りました。

さらに、「多くの難民が、難民キャンプにたどり着く前に、中央アフリカの荒野の林の中で、水や食料もなく、数週間も隠れることを余儀なくされている」と述べています。

国境なき医師団はあらゆる人道支援団体に対して、カメルーンに避難した中央アフリカ難民に対して、できる限り速やかに支援するよう、協力を要請しました。

イスラム教徒が大部分を占めている4万4千人以上の難民は、およそ1年前から中央アフリカからカメルーンに避難しています。【3月15日 Iran Japanese Radio】
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治安維持のためにも、人道支援のためにも、国際支援が全く不足している状況で雨季を迎えようとしています。

上記の情報の多くは国際支援団体やイランメディアからのものです。
欧米メディアからの情報が殆どありません。

クリミアを巡るロシア・プーチン大統領とアメリカ・EUのチェスゲームのような政治情勢も重要ではありますが、現に進行している惨状に関しても、もう少し目を向けていいのではないかと思われます。
アフリカで何百、何千人が死のうが、ニュース価値はないということでしょうか。
危険すぎて現地に入れないということでしょうか。
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インドネシア  庶民派ジョコ氏、大統領候補に正式決定  インドネシアの改革は?

2014-03-15 22:28:57 | 東南アジア


(2012年6月17日 洪水被災地を訪れたジョコ氏 “flickr”より By Johan Tallo http://www.flickr.com/photos/80258330@N03/7385811104/in/photolist-cfEdjL-j3tFDn-ex5ziY-ex2o7P-ex2kPM-jev5RE-dkEAFB-ex2wpk-ex5JmN-ex5q4s-ex5ELy-d4Rhi3-dr4LpX-dqU7j6-dqUho3-dr4EvM-9JHywh-dr4Mwi-dqUhMu-dr4L4k-dr4FKn-dr4FhK-k3VUJ1-k3U2Mn-haMhJp-haLnVt-haLGEn-haPexP-haM28q-haLhut-haMHRC-dcs1mE-iuSyRo-haLeh7-haN4BR-haMbWk-haLF4C-haNod7-haMhFh-haL8UJ-haNJ86-haMBqw-haMMv3-haMTG9-c2PBMU-agHpqS-emtrQL-haLiJ3-e99vaT-kweJDp)

汚職まみれの政治家 政党はよい人材でなく金を持っている人を候補に選んでいる
ブラジル・ロシア・インド・中国という新興国BRICs(あるいは南アフリカを加えたBRICS)に次ぐグループとしていつも名前があがるのがインドネシア。

1998年のスハルト政権崩壊後の民主化の進展と経済成長の実績がその背景にありますが、この国の抱える大きな問題は政治の腐敗・汚職体質の改善が進まないこと、それによって経済・社会の改革も十分に進まないということにあります。

****インドネシア、進まぬ脱汚職 前党首・憲法裁長官…逮捕相次ぐ****
インドネシアで汚職が減らない。1998年のスハルト体制崩壊後の民主化に伴い、汚職撲滅に国を挙げて取り組んできたはずなのに、最近でも与党の前党首、州知事、警察幹部、そして憲法裁判所長と汚職容疑の逮捕者が相次ぐ。国民に怒りと失望が渦巻く。

ユドヨノ大統領が党首を務める民主党のアナス前党首が1月10日、捜査機関の反汚職委員会(KPK)に逮捕された。容疑は西ジャワ州ボゴールの運動施設建設事業に絡み建設業者から約22億ルピア(約1900万円)の賄賂を受け取ったというもの。

この事業を巡っては多額の事業費が民主党に流れて2010年の党首選の資金として使われた疑惑がもたれている。アナス氏は汚職のうわさが出始めた昨年2月、自ら党首を辞めた。

2期10年の任期を終えて今年退任するユドヨノ大統領は汚職撲滅を重要政策に掲げてきた。それだけに民主党への国民の失望は大きい。世論調査で党支持率は1ケタ台に落ち込んでいる。

憲法裁判所のアキル・モフタル長官=昨年11月に解任=がKPKに自宅で現行犯逮捕されたのは10月2日。アキル長官は中部カリマンタン州グヌンマス県知事選の結果の是非をめぐる裁判の審理を担当。知事側に有利な判決を出す見返りに賄賂を受け取ったとされる。自宅からシンガポールドルと米ドルで約2570万円相当が押収された。

アキル長官はバンテン州ルバック県知事選結果をめぐる裁判でも、落選候補側から賄賂を受けた疑いがもたれている。自宅から現金と有価証券が計47億ルピア(約4090万円)分見つかり、マネーロンダリングに関与していた疑惑も浮上した。さらに執務室からマリフアナとエクスタシーと呼ばれる薬物も押収され、国家麻薬審議会が捜査している。

憲法裁は03年に発足した。最高裁判所とは別機関で、大統領の罷免(ひめん)権、違憲審査権、選挙結果の是非をめぐる判断などを担う。裁判文書をウェブで公開するなど、改革姿勢が国民に支持されてきた。

半面、政府、国会、最高裁からの推薦に基づいて選ばれる判事に政党出身者が含まれているなど、独立性が疑問視されてもいた。

アキル長官も、民主党と連立を組むゴルカル党所属の元国会議員。09年に憲法裁判事に選ばれ13年4月に長官に就任した。以前から地方選の結果をめぐる裁判で賄賂を受けた疑惑が取りざたされていた。

 ■分権、腐敗も地方へ拡散
「開発独裁」のスハルト体制下では、インドネシア語の頭文字からKKN(カー・カー・エヌ)と呼ばれる汚職、癒着、縁故主義がはびこった。

スハルト氏は忠誠心と引き換えに部下にビジネスチャンスを与えた。側近を縁故で固めて富を蓄積した。ただ、中央集権化していたため、投資家や企業家は誰にいくら「追加料金」を払えばいいかが予測しやすかったといわれる。受け取る側も組織ごとに金をプールするなど多くがシステム化されていたという。

スハルト体制崩壊後、汚職追放は国家的課題となった。憲法裁と同じ03年に発足したKPKは政治家や警察幹部、大物実業家を次々と摘発してきた。これまで手がけた事件で有罪が確定したのは約230件。だが市民からの情報提供は毎年6千~7千件あり、一向に減る気配はない。

地元紙の編集幹部は「レフォルマシ(改革)とともに汚職も『分権化』された」と指摘する。地方分権が進み多くの許認可権が自治体へ移された。地方独自の法規もできた。その結果、様々なレベルの行政官や議員が「追加料金」や「手数料」を要求できる機会が増えたという構図だ。

汚職・癒着・縁故主義の地方への拡散の代表例といえるのが、アキル長官の汚職容疑の舞台の一つとなっているバンテン州だ。

アトゥット知事は04年の初の直接地方選で知事に選ばれて以来、州内の8自治体のうち4首長を親族ら身内から当選させ「王朝」を作り上げたといわれる。

民間の汚職監視団体は、同州は11年に中央政府から補助金と社会福祉費を計3900億ルピア(約32億円)交付されたが、うち1割が知事一族が関与する社会団体に不正流用されたと指摘する。アトゥット知事はアキル長官に約10億ルピア(約840万円)の賄賂を贈った疑いで昨年12月に逮捕された。

 ■追及阻む政治家/軽い刑罰 汚職監視組織の倫理委員長
地元のNGO、インドネシア汚職監視組織(ICW)のテテン・マスドゥキ倫理委員長に問題点と課題を聞いた。
     ◇
国会はKPKの力を弱めるために様々な手を使ってきた。これまで6万件の汚職の通報があるがKPKが着手したのは400件だけ。増員を国会が支持しないからだ。刑が軽いのも問題だ。劇的な事件を立件しても抑止効果がない。

政治家がKPKを支援しないのは自分たちが汚職まみれだから。政党は資金集めに苦労し、知事候補や市長候補、国会議員候補からの上納金をあてにする。よい人材でなく金を持っている人を候補に選んでいる。

警察も国会と並んで汚職が多い。ユドヨノ大統領はそこに手がつけられなかった。警察の汚職を摘発するための特別捜査隊を警察内部に作るべきだ。

ただ、スハルト時代よりは確実に前進している。メディアと監視団体が汚職を厳しく追及している。ジャカルタ特別州のジョコ・ウィドド知事のような清廉で民衆に近い指導者が各地の自治体で誕生し始めていることも好材料だ。ジョコ氏が大衆の期待通り大統領選に立候補して選出されれば汚職撲滅も進むだろう。(ジャカルタ=翁長忠雄)

 ◆キーワード
 <インドネシアの民主化> 
1998年のスハルト政権崩壊後、政治犯の釈放、言論・結社の自由化、選挙制度改革、地方分権、国軍改革などが進んだ。スハルト体制下で政党は3党に制限されていたが、99年の総選挙では48党が参加した。2004年の大統領選は国民の直接投票が初めて実施された。

旧政権の汚職体質からの脱却も民主化過程の重要課題となり、03年に反汚職委員会(KPK)が発足した。職員、捜査員は約1千人。汚職を捜査し、訴追する権限を持つ。盗聴することもできる。【2月5日 朝日】
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清廉な庶民派ジョコ氏、大統領選挙へ出馬決定
不満を募らせる国民の期待を担う形で注目されているのが、上記記事の最後に名前があがっているジャカルタ特別州のジョコ・ウィドド知事です。

貧困家庭出身、気さくな庶民派の人柄、ソロ市長やジャカルタ特別州知事としての実務手腕などから、国政経験がないながらも、今年行われる大統領選挙に向けて圧倒的な国民支持を得ており、選挙に出れば当選は確実と1月段階で早くも“当確”がうたれています。

****ジョコ・ジャカルタ州知事「国と州、仕事は同じ」 インドネシア大統領選、最有力視****
・・・・立候補の可否は所属する国政最大野党・闘争民主党のメガワティ党首(元大統領)が決めるが、ジョコ氏は「国でも州でも運営の手法は同じ」と述べ、擁立された場合の自信をにじませた。

ジョコ氏は国政経験はないが、現場で住民の声を聞いて問題解決に当たる姿勢や行政改革の取り組みが評価されている。

行政のあり方について「会社でも市でも州でも規模の違いだけで運営方法は同じだ。国も同じ。ジャカルタの人口は1千万だが国全体では20倍というだけだ」と語った。

大統領選立候補の可能性については「メガワティ党首が決めること。私は今(知事の)仕事に集中している」とも述べた。

ジョコ氏は中部ジャワのスラカルタ市出身。父は大工だった。家は貧しく何度も引っ越しをした。子どもの頃の夢は起業して成功すること。ガジャマダ大卒業後、家具輸出業などを経て2005年に同市長に転身。2期目途中の12年にジャカルタ知事選に出て現職を破り当選した。

低所得者向けの医療無料化や教育費援助など市民の目に見える改革で支持を拡大。渋滞解消のために露天商を粘り強く説得して撤去にこぎ着けた。

インフラについても、計画から20年以上宙に浮いていた都市高速鉄道事業を着工させ、中断していたモノレール建設も再開させた。ジョコ氏は「事業計画は以前からあったが事業決定と実行がなかった。なぜできなかったのかは知らない。私が着手した洪水問題などは7、8年で解決する」と語った。中央政府や周辺自治体との連携についても「以前は意思疎通がよくできていなかった。今は取れている」と述べた。

インドネシアは1998年の民主化後も横行する汚職の追放が国家的課題だ。ジョコ氏は汚職対策について「法の執行も大切だが予防のシステムが特に重要だ。ジャカルタではオンラインシステムを駆使し、予算がどこに必要か何に使われているかを検証できる。透明性は高い」とした。
 
 ■「庶民派」に高い支持
ヘビーメタルが大好きで、公用車は大衆車。屋台でご飯を食べ、気が向けばバジャイ(3輪タクシー)にも乗る。そんな「庶民派」のジョコ氏の行動をメディアが連日追い、人気がさらに高まるという構図ができあがっている。

知事就任1年を迎えた昨年10月の民間の世論調査で87%が知事の実績に「満足している」と答えた。有力紙コンパスの2012年12月の世論調査で大統領選候補としての支持率で17・7%とトップに躍り出ると、その後も支持率を高めていった。他の機関の調査でも軒並みトップだ。(中略)

 ■インドネシア大統領選をめぐる支持率(1月8日付・コンパス紙から)
ジョコ・ウィドド・ジャカルタ特別州知事 43.5%
プラボウォ元陸軍戦略予備軍司令官    11.1%
アブリザル・バクリ・ゴルカル党党首    9.2%
ウィラント元国軍司令官          6.3%
メガワティ元大統領            6.1%
ユスフ・カラ元副大統領          3.1%
【1月29日 朝日】
********************

ジョコ氏は最大野党・闘争民主党に属しますが、その党首はスカルノ元大統領と第一夫人の長女でもあるメガワティ前大統領。(ちなみに、デヴィ夫人はスカルノ元大統領の第3夫人)
メガワティ氏はワヒド元大統領弾劾によって副大統領から昇格しましたが、04年と09年の大統領選でいずれもユドヨノ氏に敗れています。

ジョコ氏人気の高まりを受けて、党のベテラン議員を中心に“メガワティ氏を大統領、ジョコ氏を副大統領候補”の組み合わせなら勝てるかも・・・という動きが出て、メガワティ氏も乗り気なような感もありました。

ただ、ジョコ氏を大統領候補として立てないと総選挙が危ないという若手や地方議員を中心とする党内の声によって、メガワティ氏もジョコ氏の大統領候補を受け入れました。

****ジョコ・ウィドド氏、インドネシア大統領選候補に決定****
インドネシアの最大野党・闘争民主党は14日、7月に実施される大統領選の候補に、ジャカルタ州知事のジョコ・ウィドド氏(52)を指名すると発表した。各種の世論調査で大統領候補としてトップを独走しており、当選が有力視される。

ジョコ氏は同日、「メガワティ党首から大統領候補になるように指示された。準備はできている」と報道陣に語った。
(中略)
ジョコ氏が大統領候補に決定したことで、16日に本格的な選挙戦が始まる総選挙で闘争民主党の得票を押し上げるとみられる。総選挙で得票率を伸ばすほど大統領選を有利に進めることができる。

大統領選にはほかに、ゴルカル党のアブリザル・バクリ党首やプラボウォ元陸軍戦略予備軍司令官らが立候補を表明している。【3月14日 朝日】
********************

イタリアでも国政経験のないレンツィ氏が国民の期待を集める形で、イタリア史上最年少首相に就任しましたが、レッタ前首相を力ずくで引きずり降ろした強引な政治手法に対する批判もありました。

ジョコ氏の場合は、少なくと表向きは「(大統領選挙出馬は)メガワティ党首が決めること。私は今(知事の)仕事に集中している」と、党内の混乱から距離を置く慎重な姿勢を続けていました。

そのかいあっての大統領選挙候補決定となりましたが、7月本番までに大きなトラブルがなければ“当確”の勢いです。

ジョコ新大統領のもとで改革が実行できれば、インドネシアはいよいよ本格的新興国としてテイクオフすることもできますが、既得権益層の抵抗、社会全体の意識改革、国軍の協力を得られるか・・・など、課題も多いことは言うまでもないところです。
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リビア  反政府勢力による原油輸出を阻止出来ず、首相は罷免 国内対立に拍車か

2014-03-14 22:02:51 | 北アフリカ

(リビア東部から原油“密輸”を行った北朝鮮国旗を掲げたタンカー 【3月12日 International Business Times】)

国家財政の要の原油を巡る利権争奪戦
カダフィ政権崩壊後のリビア情勢については、2013年11月16日ブログ「リビア “瀕死”の民主化プロセス それでも“一応及第点”との評価も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131116)で取り上げました。

東西間の部族対立、内戦後も武装解除に応じない民兵組織の跋扈、カダフィ強権支配体制のもとで抑え込まれていたイスラム過激派やカダフィ支持派によるテロ活動の活発化・・・・という状況で、中央省庁が武装民兵によって占拠される、更には白昼堂々と武装組織によって首相が拉致されるといった事件も起き、背後には第2党でもあるイスラム主義政党が存在しているのでは・・・といった具合で、“瀕死の民主化プロセス”にあるとも言えますが、それでもシリアのような内戦状態にはまだ陥っていないとも言える・・・・そんなところのようです。

リビアにとって原油輸出は国家再建の要ですが、反政府民兵組織が支配する東部の港で、政府・軍の阻止にもかかわらず北朝鮮国旗を掲げるタンカーによって原油が積み出されるという事件が起きました。

ゼイダン首相は爆撃警告までしながらもこれを阻止できず、国の威信を失墜させたとして議会によって罷免される事態となっています。

****リビア:原油密輸防げず、首相罷免−−制憲議会****
リビア制憲議会は11日、原油の密輸出を防げず国の威信を失墜させたとして、ゼイダン首相を罷免した。新首相を選任するまで、サニ国防相が職務を代行する。

ロイター通信によると、自治拡大を要求し部族勢力が不法占拠する東部シドラ港では、北朝鮮国旗を掲げたタンカーが無許可で原油を積み込み、首相が部族勢力に警告。しかし、タンカーは11日、海軍の警戒網を破り公海上に逃走した。

タンカー所有者はサウジアラビアの企業だとの情報もあるが、サウジ政府は否定。目的地も不明だ。タンカーは、最大3500万ドル(約35億円)相当の原油を積んでいるとみられ、北朝鮮が原油調達先の多角化を狙っている可能性もある。

検察当局は、汚職容疑の捜査のため、ゼイダン氏に海外渡航禁止を命じた。

リビアでは、2011年の内戦でカダフィ独裁政権が崩壊。だが、内戦後も部族勢力や民兵組織が武装解除に応じず、中央省庁を占拠するなど政府とたびたび対立。昨年10月にはゼイダン首相が武装集団に一時誘拐される事件も起きた。【3月12日 毎日】
*******************

“油田が集中するリビア東部では旧カダフィ政権の崩壊後、港湾の警備が民兵組織に委ねられた。この組織の指導者らが昨年以降、「政府は信用できない」として自治拡大や利益の分配を要求。港を占拠し、原油の輸出を妨害してきた。”【3月9日 CNN】という状況下での密輸事件でした。

“東部の石油施設を占拠して石油輸出を止め、独自の石油輸出ルートを開拓すると脅して中央政府により多くの利益配分を要求する諸勢力に対し、リビア暫定政府や米国はリビア政府以外から石油を買わないようにと国際社会に強く求めてきており、小規模の「密輸」は行われても、公然と大々的に船積みして出航する事例は筆者の知る限りない。”【3月12日 池内恵氏 フォーサイト】とも。

【「われわれは中央政府や議会(国会)に反抗しているのではない。われわれの権利を主張している」】
原油輸出を強行した反政府勢力側については以下のように報じられています。

************
9日、リビアの石油施設警備隊幹部(兼東部自治政府幹部)で反カダフィー派のイブラヒム・ジャトハラン氏が率いる元兵士らが抗議活動を行った。

ジャトハラン氏はリビア政府の委託を受けて石油の積出を行う港の警備を担当してきた。しかし昨年7月、ジャトハラン氏らは少なくとも3つの重要な石油の積み出し港を掌握し、輸出を遮断し、東部の自治権をこれまで以上に強化し、収益の共有を求めた。

リビアの連邦化を主張しているキレナイカ評議会を率いるラボ・バラシ氏は、シドラ港からの原油輸出を再開したと発表した。「われわれは中央政府や議会(国会)に反抗しているのではない。われわれの権利を主張している」と述べた。

キレナイカ評議会はキレナイカの自治を宣言し、2013年10月に独自の政権を樹立している。

キレナイカとはリビア東部、地中海とエジプト、スーダン、チャドの国境に接する地域を指し、今日ではリビアのベンガジ州にあたる。

1949年、イドリース1世がキレナイカの独立を宣言(キレナイカ首長国)、1951年にトリポリタニアやフェザーンとの連合王国・リビア王国が誕生した。

イドリース統治下では、石油収益はリビアの地域で分配されていた。カダフィ大佐によるクーデターで王国が倒された後、キレナイカは抑圧され、キレナイカの部族は冷遇されていた。

このため同地域では旧王政支持者や反カダフィ勢力が強く、2011年の内戦では反カダフィー体制打倒の拠点になった。

タンカーが攻撃を受ければ「リビア東部地方のキレナイカはこれに応戦し、石油擁護と革命は決定的になる。このような動きは宣戦布告になる」とバラシ氏は声明で述べている。【3月12日 International Business Times】
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カダフィ政権との内戦当時からトリポリを中心とする西部と、反カダフィの中核となったベンガジを中心とす東部は対立を続けており、今回事件もその対立の延長線上にあります。

それにしても、いきなり首相罷免とは・・・という不思議な感もありましたが、“これを報じたal jazeera net 等は、リビア国会はこれまでもzidan首相を不信任しようとしていたが、票数が足りなかったところ、今回のタンカー事件が「ラクダの背なかをへし折った最後の一本の麦わら」の役割を果たして、不信任することとなったと評しています。”【3月12日 「中東の窓」 http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/cat_73705.html】といった事情が背景にあるそうです。

議会から罷免されたゼイダン首相は、金銭をめぐる不正疑惑があるとして検察当局が渡航禁止を命じていましたが、同氏は12日までにリビアを出国、欧州に渡ったもようだとも報じられています。【3月12日 msn産経より】

政府の警告を無視しての大規模密輸も国家の威信を失墜させたとも言えますが、首相が罷免されて国外逃亡したことによる威信失墜の方が大きいように思えます。

謎の北朝鮮国旗を掲げたタンカーが、本当に北朝鮮当局の意を受けたものなのかについては、“サウジアラビア黒幕説”などもあってよくわかりません。

“北朝鮮政府は国際海事機関(IMO)に対し、同船が国内法に違反したと通告するとともに、船籍を取り消したという。”【3月13日 CNN】

問題のタンカーのその後ですが、“リビア海軍が砲撃し、停止させた”“公海上に出たタンカーが、ミサイル攻撃を受けて炎上している”といった情報もあるようですが、上記CNNは次のように報じています。

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タンカーをめぐっては反政府組織が、同船が原油を積み込んで出港し、リビア海軍の妨害をかわして公海に出たと発表。

サニ国防相は12日、海軍はタンカーに向けて砲撃を行ったものの、環境汚染を懸念する米海軍の制止を受けて攻撃を中止したことを明らかにしている。エジプト軍のアリ報道官は12日、同国海軍が問題のタンカーの航行を監視し、領海内に入った場合には臨検を行う方針を明らかにした。【同上】
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結論としては、“政府が武装勢力を抑えきれないなか、石油をめぐるリビア国内の対立は今後、混乱の度を深める可能性もある。”【同上】というところです。
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“消えたマレーシア航空機” 情報が錯綜 国際的な大規模捜索にもかかわらず依然行方不明

2014-03-13 21:39:04 | 東南アジア

(国際的にはザワザワしてきていますが、乗客の親族・関係者などの心痛はつのっています。写真中央は乗客の親族の女性。北京空港で撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)【3月8日 Newsweek】)

マラッカ海峡?アラビア海?】
クアラルンプールを8日00:41に発ち北京に向かった“消えたマーレシア航空機”の捜索が全く進んでいないことは多くの報道のとおりです。

進路を引き返したとか、レーダーから消えた進路の南シナ海近辺とは全く異なる方角のマラッカ海峡方面に方向を変えた・・・との軍レーダーの情報もあり、捜索は広範囲に及んでいます。

****半島上を「物体」横断 マレーシア不明機の可能性****
南シナ海上空で8日未明にマレーシア航空MH370便(ボーイング777―200型機)が消息を絶った地点付近で、直後からマレーシア空軍のレーダーが空中を飛来する何らかの物体を捉えていたことが12日わかった。

物体は約45分飛行し、マラッカ海峡上空でレーダーから消えたという。この物体が航空機なのかはわかっていない。

12日に記者会見したマレーシア空軍幹部が明らかにした。軍が解析したレーダー記録によると、この物体は航空機が消息を絶った南シナ海からマレー半島を東から西へと横断。半島西のペナン島の北西約200マイル(約320キロ)地点でレーダーから消えたという。

このため、マレーシアの捜索当局は、この物体が航空機の可能性もあるとみて、南シナ海のほか、範囲をマラッカ海峡の海域にも広げて捜索を続けている。【3月13日 朝日】
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この情報も不可解な点が多いようですが、乗客の安否を考えると可能性のある手がかりを調査しない訳にはいきません。

更には、レーダーから消えた後も4時間飛行していた・・・との情報もあるようで、そうなると“計算上はインド洋を越えて最長でアラビア海まで達することができる”となって、もうどこを探せばいいのかわからない状況にもなります。

****機影消えた後4時間飛行か=マレーシア機に新たな謎―米紙****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は13日、行方不明になっているマレーシア航空機がレーダーから消えた後も約4時間にわたり飛行していた可能性があると報じた。調査状況に詳しい関係者2人の話として伝えた。

同紙によれば、マレーシア航空機のエンジンからは定期的な保守点検の一環で自動的に地上にデータが送られている。このデータは、計5時間飛行したことを示していた。

航空機はクアラルンプールを離陸して約1時間後にレーダーから消えた。そのまま4時間飛行したとすれば、計算上はインド洋を越えて最長でアラビア海まで達することができる。

米国の対テロ対策当局者らは、操縦士か、他の何者かが、レーダーによる探知を避けるために意図的に発信装置を切り、航空機を別の場所に向かわせた可能性を調べている。

しかし、航空機が向かった先や、なぜ発信装置を切ったまま長時間飛行したのか、理由は謎のまま。調査チーム内では同機がハイジャック犯に乗っ取られていたのではないかという意見も出ている。【3月13日 時事】 
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当初、偽造パスポート乗客2名の存在で疑われたテロの線は一応消えた形になっていましたが、“発信装置を切ったまま長時間飛行”となると、ハイジャックの可能性も出てきます。

事態を把握できていないマレーシアへ高まる批判
ただ、どうしてこんな情報が今頃出てくるのか・・・?という疑問が湧きますし、一体マレーシアは事態を把握しているのか(多分出来ていないのでしょうが)という話になってきます。

乗客の大半を占める中国も怒っていますし、振り回される関係国の中にはベトナムのように一時“捜索を縮小する”といった不快感を示す国も出てきます。

****不明機捜索で深まる「混乱」、マレーシアに非難集中****
消息を絶ってから4日がたったマレーシア航空MH370便について、マレーシア当局による発表内容の矛盾や、対応の遅さ、情報の欠如などに対する批判が上がっている。

専門家らは、こうした大規模な危機的状況の際に効果的な広報活動を行うことができない当局の「無能さ」は痛ましいほど明らかだと述べている。

MH370便の捜索範囲は当初から大きく変わっており、マレーシア航空と政府は、日増しに高まる明確な説明への要求と、対応のもたつきに対する非難に直面している。

「これほどの規模のことを彼らは経験したことがない。事の大きさを把握することも彼らにとってはいささか難しい」と米格付け会社大手スタンダード&プアーズ(S&P)の調査部門「キャピタル・アイキュー」のシュコア・ユソフ氏は指摘する。

同便が消息を絶って以来、マレーシア航空は報道陣に対し、乗員乗客名簿や捜索活動の詳細などについて、10回を超える発表を行い、家族にも支援を申し出ている。一方の当局も、定例会見を行っている。

しかしユソフ氏は、時にマレーシア当局は「耳障り」で「軽率」に見え、一方、危機対応に関するスタッフの訓練不足を露呈したマレーシア航空の幹部たちは「反省に欠けている」と非難する。

12日には、捜索範囲を北西方向のアンダマン海に拡大したことをマレーシア当局が認めたことに対し、ソーシャルメディア上での批判が爆発した。あるツイッターユーザーは「なぜ未確認情報がこんなにも多いのか。もう何が本物の情報なのか分からない」と投稿した。

MH370便に搭乗していた乗員乗客239人のうち、153人が自国民だった中国も、マレーシアの情報不足を批判。乗客の親族らも、自分たちへの連絡が滞っているとして、マレーシア航空を非難している。

中国外務省の秦剛報道局長は12日、同便が進路を引き返した可能性があるとの情報を、マレーシア当局が後に否定したことを指摘し、「現時点では多くの情報があり、非常に混沌としている。われわれもそれが正しいのか正しくないのか、確認するのが難しい」と苦言を呈した。

マレーシア航空は11日、混乱をあおるかのように、捜索の焦点に関する発表を撤回した。また、マレーシア空軍のロザリ・ダウド大将が、同便の予定航路から遠く離れたマラッカ海峡でレーダーが不明機を捉えたと述べたとの報道を、大将自身が否定する一幕もあった。

航空業界誌フライトグローバルの保安関連担当編集者デービッド・リアマウント氏は、「責任ある国の政府と航空当局に、情報を扱う能力がないことは許され難い」と痛烈に批判する。

マレーシアの野党指導者リム・キットシアン氏は、閣僚はMH370便の失踪について何故もっと早く知らされなかったのかと疑問を呈し、「危機管理について、多くの疑問点がある。例えばMH370便が消息不明になったときに、すぐに首相や運輸相代行に知らされず、数時間という致命的な時間が経ってから知らされたことだ」と述べた。

一方で、米PR会社オグルヴィ・パブリック・リレーションズのピーター・ハーシュ氏のように、マレーシア航空にできることはこれ以上ないと擁護する声もある。「文字通り何の情報もない中で、もし(乗員乗客の)親族から航空会社に対して大きな批判がなかったとしたら、驚くべきことだ」「全てを考慮すれば、マレーシア航空は出来る限りのことをしているように思える」【3月12日 AFP】
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マレーシア航空のために言えば、世界の空港や航空会社の評価をしているイギリスに拠点を置く航空サービスリサーチ会社、スカイトラックス(Skytrax)が、乗客の満足度調査からまとめた2012年の航空会社ランキングでは第10位(ANAは第5位 JALは第35位)ということで、そんなに評判が悪い会社ではありません。

個人的にも、クアラルンプールで使用機のエンジントラブルが発覚した際に、すぐに代替機を用意して後れを1時間半程度に抑えた・・・という手際の良さに感心したこともあります。

ただ、今回はあまりにも情報が錯綜しすぎています。

それにしても、これだけレーダー監視や衛星情報などがある現在でも大きな航空機が行方不明になるというのは驚きの感がありました。

また、そもそも追跡する手立てが“ブラックボックス”の発する微弱な信号(近くでないと検知できないとか)しかない・・・というのもおかしな話のようにも思えます。

より確実な代替手段は技術的にはあるようですが、コスト面で導入が見送られているようです。

大規模捜索を行う中国の別の思惑も
中国は多数の乗客の安否がかかっていますので、当然に大規模な捜索態勢を敷いていますが、「核心的利益」でもある南シナ海における存在感を高める・・・という政治的思惑もあるようです。

****中国軍、捜索へ続々 南シナ海で存在誇示か マレーシア機不明****
南シナ海上空で消息を絶ったマレーシア航空機の捜索に、中国が艦船や軍用機を続々と派遣している。

海軍は揚陸艦「井岡山」やミサイル護衛艦「綿陽」などを派遣。潜水チームが乗り込んだ救助船なども送り込み、海域では8隻の船舶が活動している。このほか、約10基の人工衛星も捜索に投入し、画像の解析にあたっている。空軍も軍用機を派遣した。

背景には、乗客の約7割にあたる153人が中国人で、国民の関心が高いことがある。ただ、領有権争いの舞台に近い南シナ海で中国の存在感を誇示する狙いもあるとみられる。

中国の海軍情報化専門家諮問委員会主任の尹卓少将は中国メディアの取材に、「南シナ海に捜索、救援のための飛行場と埠頭(ふとう)を早急に建設する必要がある」と語った。この機会に既成事実を積み上げ、領有権争いで優位に立ちたい思惑がにじむ。

捜索には、ベトナムやインドネシア、シンガポールなど東南アジアの諸国が協力しているほか、米国もミサイル駆逐艦を派遣している。【3月13日 朝日】
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“さもありなん・・・・”という感があります。
ただ、人工衛星などを投入するという話になると、軍事的機密・能力を公開してしまうおそれも出てきます。

****中国が画像公表を逡巡?、衛星能力秘匿で マレーシア機不明****
中国当局が12日、消息不明のマレーシア航空機の残骸の可能性がある複数の漂流物をとらえた衛星画像を発表した問題で、米国家運輸安全委員会(NTSB)の元幹部は同日、画像の公表が遅れた印象があることについて中国政府が自国の衛星探知能力をさらけ出すことを逡巡(しゅんじゅん)した可能性があるとの見方を示した。

同航空370便が音信を絶ったのは8日未明で、今回の画像は9日に撮影されていた。
NTSBのピーター・ゲルツ元幹部は、中国の衛星がどこを監視しているのかを知られるのを避けた可能性があるともした。(後略)【3月13日 CNN】
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おそらく自国民が関与していなければ公表しなかったでしょう。
なお、この中国衛星情報については、ベトナムの民間航空行政当局者が13日、複数の物体が発見されたとされる海域を同日上空から捜索したものの、漂流物はなかったと報告しています。

日本政府もマレーシア政府からの要請を受けて12日、航空自衛隊のC130輸送機と海上自衛隊のP3C哨戒機、それに海上保安庁の航空機合わせて5機を派遣することを決めました。
日本の参入に批判的な中国ネット世論もあるようで、嘆かわしいことです。

“消えたマレーシア航空機”の捜索は現在も、12か国の艦船43隻、航空機およそ40機の態勢に拡充され、マレー半島周辺の南シナ海とマラッカ海峡の広い範囲で続けられています。

一刻も早く生存者が見つかることを願います。
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キプロス  再統合交渉、天然ガス開発で再浮上

2014-03-12 22:41:05 | 中東情勢

ギリシャ神話の愛と美と性の女神の名前を冠したアプロディーテ天然ガス田。
イスラエルの天然ガス田、リバイアサン(旧約聖書に出てくる海の怪物)に隣接しています。【2013年4月7日 Market Hack】http://markethack.net/archives/51870084.htmlより


遠のく西欧とイスラムのかけ橋
エーゲ海の小さな島国“キプロス”は鹿児島県ほどの大きさ。1960年イギリスから独立しましたが、ギリシャ系住民とトルコ系住民の反目があり、1974年にギリシャの軍事政権の介入でギリシヤ併合賛成派がクーデターを企てたため、トルコがトルコ系住民の保護を理由に軍事介入。3日間で島の北部3分の1を占領しました。
以来、北キプロスはトルコ軍が支配する土地になり、15万人のギリシヤ系住民が追放されました

現在は島の北側3分の1がトルコ系の北キプロス・トルコ共和国(承認はトルコのみ)、南側の残り3分の2がギリシャ系のキプロス共和国(EU加盟)と、分断された状態が続いています。

そうしたなか、08年2月24日に行われた“南”の大統領選挙で「北キプロスとの対話の架け橋になる」と公約したフリストフィアス大統領が誕生し、3月には北キプロスのタラト大統領の最初の会談が、島中心部の国連管理下の緩衝地帯で実現。

現在進行形のウクライナ・クリミア問題など“分離・独立”は掃いて捨てるほどあるなかで、キリスト教(正教会)のギリシャ系住民と、イスラム教のトルコ系住民の和解・再統合が実現するかも・・・という期待から、このブログでも何回か取り上げてきました。

2008年2月18日「キプロス  異文化統合に向けて、大統領選挙で見せた民意は?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080218
2008年3月23日「キプロス  再統合へ向けて、小さな島国の大きな試み」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080323
2009年4月23日「キプロス  異文化統合は可能か? 北キプロスで再統合反対の野党が第1党へ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090423
2010年4月22日「キプロス  遠のく西欧とイスラムのかけ橋」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100422

しかし、ブログタイトルを見てもわかるように、具体的成果を出せず。ここ2~3年は再統合が話題になることもなくなりました。
宗教・民族の違いもありますし、“南”のギリシャ系住民が北側に残した土地・財産をどのように返還・処遇するのか・・・という問題もあります。当然、衝突時の遺恨もあります。

“南”の後ろ盾であるギリシャは財政危機でキプロスどころではない状態です。
“北”の後ろ盾であるトルコにとっては、キプロス問題の解決がEU加盟のハードルともなっていますが、新たなイスラム民主主義の旗手とも目されたエルドアン首相も最近では国内情勢のゴタゴタもあって、独善的な体質が目立つようになっています。

キプロス自体も、昨年2~4月には経済・金融危機が世界の注目を集め、再統合の機運は遠のいたように見えました。

アメリカを加えて再統合交渉が再開 狙いは天然ガス
しかし、今年2月、再統合交渉が再開されたとの報道がありました。

****キプロス:再開の再統合交渉 国際社会で期待高まる*****
地中海のキプロス共和国(ギリシャ系)と北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)が今月、約2年ぶりに再開した再統合交渉について、国際社会で期待が高まっている。

1974年の分断以来、初めてトルコを巻き込んだ交渉となり、欧州連合(EU)や米露など主要国が歓迎を表明している。背景には、キプロス島東方で天然ガス資源が発見され、再統合で南北双方が利益を得る事情がある。

キプロスのアナスタシアディス大統領と北キプロスのエロール大統領が11日、キプロス島の南北分断ラインで会談。二つの地域・共同体から成る平等な連邦国家を作る▽単一国家として国連やEUに加盟する▽南北が同時に住民投票を行う−−ことなどを目指す7項目の共同声明を発表した。

EUは共同声明を「フェアで包括的な解決への基礎」と評価。国連、米露のほかトルコのエルドアン首相も「交渉が後退しないよう望む」と歓迎した。

ただ、キプロス与党の一部には北キプロスに有利な合意との反発がある。国連主導で実施した2004年の住民投票では、キプロス側で再統合反対が約7割を占めた。

ただ今回、キプロス外交筋は「キプロス側が連邦国家案にこれほど本気になったことはない」と話しており、住民投票で支持される可能性がある。

一方、EUなどは、キプロスがEUで唯一の分断国家で、統合すれば地域が安定するとの考えがある。米国も本格的にてこ入れする。

また、北キプロスの扱いはトルコのEU加盟交渉の障害となっているが、再統合すれば加盟交渉が進展し、トルコの国内改革も進むとの期待感もある。

キプロス島東方で見つかった海底天然ガス・石油資源についても再統合すれば南北双方が衝突なく利益を得られる。(後略)【2月17日 毎日】
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今回の再交渉の背景には、新たに見つかった天然ガス田と、それをめぐるアメリカの参加があります。

****アメリカが積極的に介入*****
・・・だが1年半ほどの腹の探り合いの末、ついに新しいパートナーを交えて話し合いが再開された。新しいパートナーとはアメリカであり、キプロス、トルコの両国、特にNATO(北大西洋条約機構)加盟国であるトルコには大きな影響力を持っている。

交渉が始まる4日前のことだ。アメリカのショー・バイテン副大統領はキプロスのニコス・アナスタシアディス大統領に電話し、「キプロスの経済再生と成長の新しいチャンスのために尽力したい」と伝えた。

バイテンの言う「新しいチャンス」とは何か。交渉に近い複数の筋によると、それはエネルギーだ。米企業ノーブルーエナジーがキプロスで開発中の天然ガス田では5兆~8兆立方にの埋蔵量が見込まれており、地元の経済に対する効果は20年までで30億ドルにも達すると考えられている。
実現すれば、40年にわたって停滞してきたキプロス経済を活性化させるきっかけになるだろう。

アメリカは(EUやイスラエルも)キプロスの安定を望んでいる。それが中東の安定につながるからだ。キプロスの天然ガスの発見は、アメリカが介入する強力な理由となっている。キプロス人は現在の交渉の枠組みを、希望を込めて「オバマ・プラン」と呼ぶ。(後略)【3月18日号 Newsweek日本版】
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昨年のキプロス金融危機では、キプロスへのロシアマネーの流入が明らかになりましたが、ロシアマネーの次は天然ガス・・・ということのようです。
まあ、理由、きっかけは何でも再統合が進展すれば結構な話です。

北キプロスのエロール大統領は、再統合には消極的で、「南北2つの国家の共存による国家連合の実現」が持論とされていますが、いつまでもトルコ頼みでは将来への展望も開けません。
再統合・EU加盟・天然ガスなどによって“南”に比べて遅れている経済状態が改善するなら条件次第で・・・・といったところでしょうか。

アプロディーテ天然ガス田はキプロス島の南側に位置していますので、北キプロスとしては再統合交渉で権利を主張しないと、その利益から締め出される恐れがあるのかも。

****キプロスのアプロディーテ天然ガス田とノーブル・エナジー****
アプロディーテの権益の70%は米国の独立系石油・天然ガス生産会社、ノーブル・エナジー(ティッカー・シンボル:NBL)が所有しています。

しかし現在(2013年4月)までのところ1回試掘がなされただけです。試掘の結果は上々で、流量は強いため、強気の推定埋蔵量になっていますが、正直なところ、まだ不確実要素が多すぎる印象を受けます。

その第一は、キプロスの天然ガス田の所有権がまだ争われているということです。具体的にはトルコ政府が「アプロディーテはトルコに支配されている北キプロスとの共同所有物であって、今回、金融危機に見舞われた南部のキプロス共和国(ギリシャ系)だけがその領有権を有しているのではないと主張しています。

アプロディーテ天然ガス田はキプロス共和国の必要とする天然ガスよりも多くの産出量が見込まれているため、輸出を視野に入れた開発がなされると思われます。

その場合、一番簡単な方法はパイプラインをトルコに引くというものです。しかしトルコとキプロス共和国は仲が悪いので、これはありえないシナリオだと思います。

また欧州やアジアへ輸出しようと思えば、液化天然ガス(LNG)にする必要があります。しかしLNGプラントは60億ドルもの先行投資が必要となります。そんなカネはキプロス政府には、ありません。

経済効率の面からだけ考えれば、いずれLNGプラントを建設する必要が出るイスラエルのリバイアサンと海上のLNGプラントをシェアし、コストを案分比例で負担するという方法が理想でしょう。
ただこれも政治的なハードルを超える必要がありそうです。【2013年4月7日 Market Hack】http://markethack.net/archives/51870084.html
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再統合が進展すれば、トルコへのパイプラインも可能性が出てきます。

ただ、キプロスに大量のマネーを流入させていたロシアも、当然にこのガス田は狙っているものと思われます。
ロシアが今後どのように絡んでくるのか?
アメリカ・バイデン副大統領が再統合交渉の音頭取りを担っているのも、ロシアの影響力を意識してのことかも。
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