家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

父の運転は下手だった

2012-11-06 07:31:51 | Weblog
古い車の集まりを見に行った。

父の乗っていたブルーバードが並んでいた。

テールのウインカーがパッパッパッと流れるやつ。

その隣には、その前に乗っていたブルーバード410系が。

さらに進むとスズライトフロンテという軽自動車があった。

これも父が乗っていた。

私は、そのフロンテを見て全体の形を思い出したと共に助手席の前に付いている取っ手を思い出していた。

「ここに掴まったことがある」という記憶だ。

助手席側に回り込んでみるとコラムシフトのレバーが見えた。

レバーの内側が見えて「ここも覚えがある」と感じた。

エンジンルームは全く覚えがなかった。

自己の記憶というものは実につまらないことで満タンになっているようだ。

もう一つ思い出したことがあり、この所有者に聞いてみた。

「チェンジの入りが悪くないですか?」

「悪くないですよ」とすんなり答えた。

父はローギアからセカンドギアにシフトアップする時必ず「ガリン」という音を出していた。

それは我が家の前から走り始めると馬込川の橋に差し掛かる上り坂の付近だ。

「ガリッ」という音が聞こえると父が走っていくと分かった。

クラッチペダルの踏み方が中途半端だったらしい。

それは父自身が、そう言っていた。

だから二度目には、ちゃんとチェンジは繋がる。

「だったら初めからちゃんと踏めよ」と幼かった私も思ったものだ。

そのくせ自分は運転が上手いと言っていたから「下手なくせに」といつも思っていたことまで思い出した。

このフロンテは新品のようにきれいだった。

だが欲しいとも運転してみたいとも思わなかった。

欲しいと思った車が展示されていた。

パブリカバンだ。

しかも「売ります」と書いてある。

買えないことは分かっているので値段は聞きもしなかった。

自分の今の生活に適している気がすることは妻には言えない。

快適には個人差があるからだ。