英語道(トラスト英語学院のブログ)

トラスト英語学院(長野県伊那市)塾長。英語指導や自身の英語学習雑感、趣味のランニングと筋トレについて綴ります(^^)

悪いものは悪い

2019年11月15日 | 2020年大学入試制度改革
来年度から始まる大学入学共通テストで導入される予定の国語の記述式問題について、文科省が大学側に対して、二次試験に進む受験生を選抜する際に、成績を使用しないよう求めることを検討していることが分かりました。簡単に言えば、国語の記述式の点数は除いて、マークシート部分だけの点数で受験生を選抜するということです。

「じゃあ、何のために一次試験である共通テストで記述式を課すの?」という疑問が湧いてくるのは当然のこと。全くもって、論理が破綻しています。

そもそも、50万人以上が一斉に受験し、短期間に正確で公平な採点が必要な一次試験に、記述式を課す意味は無いのです。受験生の思考力・論理力・表現力をみるための記述式論述式出題は、国公立大学二次試験が既にその役割を担っているのだから必要ありません。

「思考力」という美辞麗句に踊らされ、食べられない絵に描いた餅を食べようとしている文科省のやり方には辟易します。

記述式とは言いつつも、採点のブレを防ぐために、思考力を問う出題とは言い難い。そして、採点はアルバイトを使い、問題は前もって採点業者へ知らされる。

こんないい加減な大学入試なんてくそくらえです。大学入学共通テストはすでに破綻しています。悪いものは悪い。昨日は野党が、記述式問題中止法案を衆院に共同提出しました。

これまでの大学入試センター試験のままで何も問題はないのですから、英語の民間試験導入延期に引き続いて、記述式導入も見送り、時間をかけて議論し直すべきです。
信州伊那谷は今シーズン一番の冷え込みとなりました。でも、伊那谷の初冬の朝ほど、凛としたものはありません。大学入試制度もこの景色のように、ピシッと引き締まったものにしてもらいたいです。


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本当の尻拭い

2019年11月06日 | 2020年大学入試制度改革
長男(高1)が、学校からこんなプリントをもらってきました。
文部科学省のHPにもPDFファイルで載っている大臣メッセージのようです。

混乱を招いた責任者として誠意を示そうとしたのでしょうけど、HPに載っているのだから見るように指示するか、大きく一枚で打ち出して掲示すればいいのに・・・。これもお上からの指示なのか、各高校が独自の判断でやっているのか?今日から各高校の生徒に確認してみますが、全員に配るなんて紙がもったいないですね。こんなことやっていたら小泉環境大臣にツッコまれるぞ。あ、でも縦割り行政だから、他の省庁がやっていることには興味はないか・・・(苦笑)。

本当の尻拭いや責任の取り方は、こんな紙切れ一枚ではなく、大学・高校・高校生の当事者たちを巻き込んで、時間をかけて議論することです。利得権益を一切排除した「結論ありき」ではない議論をしないと、同じ轍を踏むことになります。


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センター試験を変える必要性はあるのか?

2019年11月02日 | 2020年大学入試制度改革
本日(11月2日)の信濃毎日新聞朝刊の社説で、英語民間試験導入延期について取り上げられました。以下に本文を引用します。
民間試験見送り 判断遅れた責任は重い

もっと早い段階で立ち止まる機会はあったはずだ。大学や高校の現場から上がった懸念や不安の声に耳を傾けず、あと半年足らずで実際に受験が始まるこの時期まで判断を先延ばしした政府の責任は重い。

現在の大学入試センター試験に代わる共通テストに、英語の民間試験を来年度から導入するのを見送ることが決まった。萩生田光一文部科学相が発表した。

そもそも、日程ありきで急ごしらえした仕組みはずさんと言うほかない。準備不足もあらわだった。押し切れば、混乱がさらに広がるのは避けられなかっただろう。民間試験を使うかどうかを含め、制度を見直すのは当然だ。

とりわけ見過ごせないのは、住む地域や家庭の経済力によって受験機会が不公平になることだ。7種類ある民間試験の多くは都市部でしか受験できず、交通費や宿泊費の負担が生じる。受験料が2万円を超す試験もある。

当初から指摘されながら根本的な是正策は取られていない。低所得世帯の受験料の軽減を試験業者に要請した文科省の対応はおざなりに過ぎる。「身の丈に合わせて頑張って」という萩生田氏の先日の発言は、制度の不備を正当化し、諦めを強いるかに聞こえた。

民間試験の導入は、「読む・聞く」に「書く・話す」を加えた4技能を評価するためだという。だとしても、共通テストの枠に位置づけるなら、統一した試験を新たにつくるのが本来だろう。

民間の試験はそれぞれ目的も尺度も異なり、結果を一律に比べるのは難しい。入試としての公正さを確保できない心配がある。

実際、入試改革の検討過程では、民間試験に頼らず“自前”の試験を開発することも視野に入っていた。なぜそれが消えたのか。理由も経緯もはっきりしない。

入試改革は官邸直属の会議で大枠が示され、文科省が具体化を進めてきた。主体であるべき大学を押しのけて政府が前面に立つことにそもそも無理がある。

センター試験の詳しい検証を経て移行が決まったわけではなく、大学や高校での議論が土台になったのでもない。共通テストの初回を再来年1月とした日程も明確な根拠は見当たらない。

再検討が必要なのは英語の民間試験だけではない。国語に記述式の問題を導入することにも現場の異論は強い。共通テストへの移行そのものをいったん見送り、各大学の2次試験も含めた入試のあり方を議論し直すべきだ。(11月2日)
信濃毎日新聞の社説やコラムは、2020年度大学入試制度改革において首尾一貫して否定的な姿勢を貫いてきました。過去の社説・コラムは以下をお読みください。

信濃毎日新聞コラム「斜面」(10月29日)
大学入試改革の混迷 見切り発車を止めねば(9月29日)
英語民間試験 導入を無理押しするな(8月28日)
英語民間試験 今ならまだ立ち止まれる(7月8日)


大学受験の当事者である大学と高校生が蚊帳の外に置かれ、政治主導で誘導された今回の大学入試制度改革が破綻をきたすのは自明でした。なのに、ギリギリまでその最終判断を遅らせた国の責任は大きい。

大学入試共通テストのその他の問題点や論点を以下に挙げておきます。
①国語と数学における記述式の採点の公平性。
②採点効率化のため、その記述式問題が本当に思考力を問うものなのか。
③英語から排除された発音・アクセント・文法・英文整序問題の復活。

特に③については、リーディングとスピーキング・ライティングの相関性は認められます。4技能の計測が主目的であった民間試験導入が見送られた今、スピーキング・ライティング能力と関連する発音・アクセント・文法・英文整序などを排除したままでいいはずがありません。

共通一次を含めれば40年以上の時間をかけて磨かれてき大学入試センター試験。この日本国民の財産とも言える試験を安易に変える必要性は見当たりません。

受験生の論理性や思考力や表現力・記述力を問いたい?そんなことは、これまでも国公立大学の二次試験でやってきたことです。

私立大学はどうする?国公立大学と同じく、各大学が必要とするなら独自に問題を作成し、入試で課せばいいだけのこと。50万人以上が一斉に受けるセンター試験でそんなことをやろうとすること自体に無理があるのです。


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混乱の中の真っ当な判断

2019年11月01日 | 2020年大学入試制度改革
「大学受験でTOEFLが必要になるって聞きました」(高1保護者)
「英検が来年から変わるんですよね」(中2保護者)

これらは実際に指導現場にいて、この2年間のうちに保護者の方から受けた多くの相談の典型です。大学入試でTOEFLが必要になるわけでもなく、中学生が受ける英検が変わるわけでもないのに、情報が錯綜し、これから大学受験を迎えようとしている学生やその家庭、そして、教育現場は混乱した数年間を強いられました。

今朝、2020年度の大学入試制度改革の目玉の一つであった英語民間試験導入の延期が決定されました。その公平性や公正性の問題から、本ブログでも延期や中止を訴えてきましたが、ようやく、真っ当な判断が下されたのです。国会に署名を送ったのも微力ながら奏功したと考えると、嬉しいです。

今回の問題の発端は、「中・高6年間も英語を勉強するのに、日本人は英語が話せない。それは、大学受験で読む力と聴く力しか試されないからだ」です。ならば、「大学受験で書く力と話す力を試せばいい。手間暇考えれば、すでにある民間試験を使えば手っ取り早い」という流れになったわけです。しかし、最初の現状把握がそもそも間違っています。

中・高6年間、日本人は英語を勉強しているのでしょうか。
中3で英検3級程度以上の力がある生徒・・・42.6%
高3で英検準2級程度以上の力がある生徒・・・40.2%
これは今年4月に発表された文部科学省の調査の結果です。高校卒業時に英検準2級レベルの力がある生徒はたったの4割です。は~?準2級?少し英語を勉強した小学生でも受かりますよ。なぜ「高校卒業程度」の2級じゃないの?おそらく、1割にも満たないでしょう。そんな低い数値をデータを公表したら、世間が驚いてしまいますからね(笑)。日本の中高生は、英語の勉強をしていないのです。まあ、英語だけに限ったことでなく、他教科もそうです。

そして、そもそも大学受験にスピーキング力なんて必要ないのです。以下は、英語教材制作に豊富な実績がある(株)ナラボー・プレス代表の赤井田拓弥先生が、私のFacebookの投稿記事に下さったコメントの引用です。
4技能を「理解言語」と「表現言語」に分けて考える人たちが本当に少ないと思います。「言語理解は常に言語表現に先んじ、そして大きく上回る」という原則をしっかり考えれば、高校の段階で「表現言語」であるスピーキングやライティングをやってもあまり効果が出ないのだということを、だれかしっかり伝えてほしいものです。つまり、大学入試には、福澤さんがおっしゃるように、理解言語であるリーディングとリスニングだけで十分なのです。

今後はこの混乱を招いた責任の所在と原因の追及に話が及ぶと思われますが、それ以上に、次の最大の論点は、国語と数学の記述式問題導入の廃止でしょう。いや、それこそ、英語の民間試験導入と同様に大問題なのです。そして、従来のままのセンター試験継続の可能性が大きくなることを期待します。

いいものはいい、悪いものは悪い。正しい民意を主張し続ければ、潮目は変わり、国も動きます。


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英語民間試験導入 延期か

2019年10月31日 | 2020年大学入試制度改革
以下は、一昨日(29日)の信濃毎日新聞朝刊の第一面コラム「斜面」からの全文引用です。
「過ぎてしまえばいい思い出だよ」。来年度の大学受験生や保護者の前では、いつもの軽口もたたきにくい空気がある。共通テストの英語が民間試験になるためだ。いまだ不明な点が多く、公平さに疑問が残ることも不安にさせている。

一番の問題点が経済格差と地域格差だ。試験は一定期間に何度もあり、経済的に恵まれた受験生は力試しができる。会場が都市部に偏りそうなのも地方在住者に不利になりそうだ。たまりかねた高校長の団体が延期と制度見直しを求めたのも無理はない。

先週も疑問点をただそうと校長らは文部科学省や民間事業者を招き緊急シンポジウムを開いた。ところが詳しい報告ができないとして、多くの受験生の利用が見込まれる会社が欠席、批判が噴出した。今度の萩生田光一文科相の受験格差に対する発言にも批判が巻き起こっている。

BS番組での返答だ。「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるようなことはあるかもしれないが、そこは自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」「自分の志で1回や2回は古里から出て試験を受ける、そういう緊張感も大事」

文科省がよりどころとする教育基本法は機会均等をうたい、差別を戒める。経済的「身の丈」に合わせずとも学ぶ機会を得られるようにするのが教育行政の責務であろう。格差批判を「予備校に通うのをずるいと言うのと同じ」とした文科相。その感覚は現場の思いとずれ過ぎていないか。(10月29日)

以前の投稿(10月2日「振り回される教育現場))でも記しましたが、民間試験導入に対する信濃毎日新聞の否定的な姿勢は首尾一貫しています。これが正しい世論だと思うのは、私だけではないはずです。

この“身の丈発言”で批判が集中し、与党内からも民間試験導入に対して延期の声が出始めました。明日11月1日は、文科省が英語民間試験実施団体に対して進捗状況などの詳細な情報を公表を要請ている期限であり、民間検定試験の活用に必要な識別番号「共通ID」の申込開始日でもあります。萩生田文科大臣もこの日の状況を見て判断したいと答弁を繰り返しています。そして、野党は「今国会最大の課題として取り組む」(国民民主・玉木雄一郎代表)と、追求を一層強める構えです。

事態は風雲急を告げる状況。霜月を迎える明日、事態の進展に注目です。
さて、今日はハロウィン。私はイベント的なことを好まないので、当学院では控えめにデコレーションしています。英語学習において、英語圏の文化を知ったり、ゲームや歌などのアクティビティを楽しだりすることは、英語に触れるきっかけになります。しかし、それは飽くまでも“きっかけ”です。単語を覚える、文法を学ぶ、長文を音読する。そのような正統派の勉強から逃げていたら、いつまでたっても英語はできるようにはなりません。何事もある程度のレベルに到達するには、辛いことに身を投じなければなりません。そして、それが、辛くなくなり、当然のこととして受け入れられるようになった時、望む結果を手にすることができるのです。


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振り回される教育現場

2019年10月02日 | 2020年大学入試制度改革
9月29日の信濃毎日新聞朝刊の社説で、大学入試制度改革の問題点が大きく取り上げられました。以下に本文を引用します。
大学入試改革の混迷 見切り発車を止めねば

文部科学省が主導する大学入試の改革は、現行のセンター試験に代わる共通テストの実施が近づくに連れて混迷の度を増している。期限ありきで急ごしらえした制度の不備はあらわだ。このまま突き進んでいいとは思えない。

英語への民間試験の導入は延期し、制度の見直しを―。全国高校長協会は今月、文科省に要望書を出した。国公私立およそ5,200校が加わる組織が正面から異議を申し立てる異例の事態である。

共通テストは、現在の高校2年生が受験する2021年1月が初回となる予定だ。英語の民間試験はそれに先だって、来年4月から12月の間に受験する。

実際に受験が始まるまであと半年ほどしかない。にもかかわらず、英検など7種類の民間試験は日程や会場の全容がいまだに明らかになっていない。準備の遅れを隠しようもない状況だ。

高校長協会は、不安の早期解消を文科省に申し入れていたが、夏休み明けの時期になっても改善が見られないとして、もう一段踏み込んだ。全国470校へのアンケートでは、延期すべきだとの回答が7割近くを占めたという。

英語だけではない。国語に記述式の問題を取り入れることについても大学や高校の現場に異論は強い。一つは採点への懸念だ。

<公正さを欠く恐れ>

共通テストはおよそ50万人が受験する。採点は短期間で終えなければならず、1万人ほどの態勢が必要になるという。採点する人が多いほどぶれが生じ、入試としての公正さを欠く恐れがある。

極力それを抑えようとすれば、解答にあらかじめ条件を設け、採点も機械的に行うほかない。実際、昨年の試行テストでは、資料にある例に当てはめて書くよう指示し、文の書き出しや結び方まで指定する問題が出た。

これでは、記述式の目的である思考力や表現力を測れるのか疑問だ。複数の資料や文章から必要な言葉を抜き出し、設定された条件に沿って文を組み立てるのなら、表現力を見る余地は少ない。問われるのは思考力というより情報処理力だという指摘がある。

学校で数百人が受ける定期試験などと50万人規模の試験では、問いの立て方や採点の仕方が全く違ってしまう―。元高校教諭で日本大教授の紅野(こうの)謙介さんは著書で述べている。記述式でありさえすれば思考力や表現力を問えるわけではない。共通テストに導入する意味は見いだしにくい。

採点は民間の業者に委託することになった。大量の人員を確保するには、学生らのアルバイトに頼らざるを得ないとも言われる。どこまで採点の正確さを期せるか、不正を防げるのかも心配だ。

記述式の問題は各大学が個別の2次試験で課すのが本来だろう。人数が限られれば、解答を丁寧に読んで評価できる。採点のぶれが生じる恐れも少ない。

そもそも入試の改革は、各大学の個別試験を含めて考えるべきものだ。ところが、主体であるはずの大学は後ろに押しやられ、政府が前面に立って共通テストの導入は推し進められてきた。

安倍首相直属の教育再生実行会議が、高校、大学の教育とそれをつなぐ大学入試の一体的な改革を提言したのは2013年。「知識偏重、1点刻み」の入試からの脱却を掲げ、複数回受けられる新たな試験制度の案を示した。

<しわ寄せは受験生に>

その後、中教審や文科省の有識者会議での議論を経て、共通テストの導入が決まる。複数回受験といった大幅な制度変更を当面見送る一方、記述式問題と英語の民間試験を目玉に据えた。

21年を初年とした根拠や経緯ははっきりしない。また、センター試験をなぜ変える必要があるのか、具体的に検証されたとは言いがたい。大学や高校での議論の積み上げがあったわけでもない。

英語の民間試験は、公平な受験機会や入試の公正さを確保できるか、危ぶむ声が当初から出ていた。とりわけ、住む地域や家庭の経済力によって有利不利が生じることは見過ごせない。その解消さえおぼつかないまま、既定方針として導入を無理押しする文科省の姿勢は誠実さを欠く。

民間業者が参入する余地を広げたことで利権の構図が生まれ、入試制度の土台をゆがめないかも気がかりだ。同じグループ傘下の事業者が、記述式の採点を請け負い、模擬試験も手がける。さらには英語の民間試験を運営し、その対策本も出していると聞けば、釈然としない気持ちになる。

しわ寄せを受けるのは受験生だ。教育の独立や学校現場の自主性も損なわれる。いったい誰のため、何のための入試改革なのか。根本から問い直す必要がある。見切り発車をさせてはならない。まだ止めることは可能だ。

信濃毎日新聞の社説が大学入試制度改革の問題点を取り上げるのは3回目になります。過去の社説は以下をお読みください。

英語民間試験 導入を無理押しするな(8月28日)
英語民間試験 今ならまだ立ち止まれる(7月8日)

事実として、混乱している教育現場の一例を挙げさせていただきます。複数の生徒に確認したところ、来年度強行実施予定の「英検2020 1day S-CBT」の予約申込締切が今月7日に迫る中、地元の進学校で私の母校でもある伊那北高校でその旨のお知らせが、ようやく昨日配布されました。

しかし、それは、申込の是非を1週間で決めなければならないことを意味します。予約申込受付は先月18日スタートだったので、この配布自体が遅すぎます。しかも、予約金3,000円が返却される申込取消の期間は8日~15日の一週間。申し込んですぐ取消も検討しろということになります。高校側の対応が後手後手になっている感が否めません。

更に、伊那北高校では外部試験の選択肢を増やす目的で、練習として年末にかけて生徒たちにケンブリッジ英検を受けさせようとしていることも分かりました。地方の生徒なら英検かGTECで十分です。いや、都市部でさえも、多くの生徒の選択肢となるのは、すでに慣れ親しんでいる英検かGTECのはずです。ケンブリッジ英検を受けさせようとしたところで、高額な受験料(レベルによるが9,000円~20,500円程度)が必要となるだろうし、練習とはいえ一応の対策もしなければなりません。そんなに英語だけに時間を割いていいのでしょうか。当たり前のことですが、大学受験の科目は英語だけではありません。他教科を勉強する時間が奪われてしまうのは明らかです。

しかもですよ。そんなに躍起になって受けた英語民間試験の結果を大学受験の合否判定にしっかりと使おうとしている大学はごく一部です。ほとんどの大学が、今回の制度改革の公平公正さに疑問を抱き、参考程度にしか利用しません。

端的に言いましょう。「英検2020 1day S-CBT」で2級が取れればいいのです。内容・レベル的に現状の英検2級と同じですから、その程度の準備でいいのです。そして、従来通り、センターと二次試験に向けて勉強すればいいだけのこと。民間試験に振り回される必要はないのです。

ただでさえ生徒たちは混乱しているのに、そこにケンブリッジ英検を受けさせようとするのは、現場の先生たちの混乱ぶりを象徴しているように感じました。生徒たちが強いられる不必要な不安と負担の最後の砦が高校であるはずなのに、その高校側が外部試験導入に踊らされています。伊那北高校の先生方が悪いのではありません。受験生と同様に指導現場の高校の先生たちも被害者です。このような制度改悪を強いながら、現場の大混乱を見て見ぬふりをしている国の責任です。
学の独立を目指した母校・早稲田大学の大隈さんの目に、この現状はどのように映っているだろうか。

日本の大学入試は、死にかけています・・・。


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「改革」ではなく「改悪」

2019年09月16日 | 2020年大学入試制度改革
2020年度大学入試制度改革の一環として英語に民間試験が導入されますが、来年4~7月の間に行われる英検の予約受付が明後日から始まる予定です。問題が山積しており、そのどれ一つとして解決されていないのに、本当にこのまま見切りスタートをしてしまうのでしょうか。

多くの識者や関係者から懸念が表明されているにもかかわらず、マスコミをあまり取り上げず、また、大臣の記者会見答弁も的を射ていないものが多いですね。しかし、SNS上では改革の延期・中止に向けて、大きな波ができつつあります。ツイッターでインド校長さん(@EGA_Japan)が問題点を分かりやすくまとめて下さいましたので、ご紹介します。
こんなにも問題や懸念があるのに、強行するのでしょうか。2020年度大学入試制度改革はすでに頓挫しています。もう「改革」ではなく「改悪」。これでも無理にやり押し進めようとするのなら、そこには知られると不都合なカネが存在しているはずです。

日本の教育の根幹をなす大学受験で起こっているこの状況に関し、政府は国民に対して説明責任を果たすべきです。


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不都合な事実

2019年09月14日 | 2020年大学入試制度改革
自分自身の英語学習経歴と15年以上に及ぶ指導経験に基づいて、「これらを知らないと大学入試では戦えないし、英語なんか一生できるようにならない!」という基本イディオムと語彙100問を、この時期に高3生にテストしています。毎年のことなので、内容や意図についての詳しいことは以前のブログ記事「暗記を徹底せよ」や「変わる高3生」をお読みいただければ幸いです。

さて、この100問を知らないで第一志望の大学に合格しようとするのは、例えるなら、ランニングを普段していないのに「フルマラソンで3時間を切ります!」と言うのと同じことです。無理なものは無理。この程度のことさえも知らなければ、英語を読む・聴く・書く・話すのいずれもできません。知らなきゃできない、当然のこと。

そして、これは事実として・・・。英検2級に合格している生徒でも毎年30問前後しか出来ません。ひどい場合は15点前後もいます。その程度の英語力でも受かってしまうのが英検2級です。それを大学入試で代用しようとしているのです。これは、民間試験導入を進める上では、明らかに不都合な事実。こんなんで学生の英語の実力を担保できるのか。しかも、内容・レベルの違う民間試験を一律に比較できるのか。甚だ問題です。従来のセンター試験の英語で1点刻みの方が公平・公正で、誰もが納得できるはずです。

昨夜は中秋の名月。日本の大学入試制度改悪に心が揺れ動きますが、たまには綺麗な月を愛でて、気持ちを落ち着かせよう。

KAGAYAさんのTwitterより
※写真の掲載については、KAGAYAさんがツイートで許諾されています


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UUが70万に到達

2019年09月11日 | 2020年大学入試制度改革
気がつけば、本ブログのアクセス数(UU)が70万を超えていました。と言っても、このAutoPageブログに引っ越してくる前のAOLダイアリーでは12万8千以上いただいておりましたので、14年間4ヶ月で82万以上のUUアクセスをいただいたことになります。

※UUとPVの違いは以下をご参照ください。
ユニークユーザー(UU)・・・「Unique User」の略。ブログを訪問した単純な数。10人の別人がそのブログを閲覧すれば、10UUとなります。そして、その10人がそれぞれそのブログの別ページを5ページ見たとしたら、それは50PVとなります。

ページビュー(PV)・・・「Page View」の略。ブログのページが開かれるごとにカウントされる。例えば、1人の訪問者があり、その訪問者が10ページを閲覧すれば、10PVとなる。
最近はランニングと筋トレの話題が多くなり「本職は何ですか?」と聞かれれば、「フィットネストレーナーです」と憚らずに答えてしまいそうなくらいですが(笑)、英語習得とランニング・筋トレで結果を出す過程は、驚くほどに共通点があるのも事実です。そのキーワードは「小さな継続」。これからも、英語・ランニング・筋トレの話題を通して、日々の小さな継続を積み上げていく意義を発信し続けてまいります。

さて、内閣改造が行われ文科相も変わりました。混迷を極めている英語民間試験を中心とした2020年度大学入試制度改革に、このままゴーサインを出すのか、それとも延期・中止の判断を下すのか。昨日は全国高校長協会が2021年度以降への延期と制度の見直しを求める要望書を文部科学省に提出しました。以下は毎日新聞からの引用です。
2020年度に始まる大学入学共通テストで導入される英語民間試験について、全国高校長協会は10日、21年度以降への延期と制度の見直しを求める要望書を文部科学省に提出した。萩原聡会長(東京都立西高校長)は報道陣に「受験生の不安が解消しておらず、来年4月のスタートは難しいと考えている。一度、立ち止まってほしい」と述べた。

英語民間試験は英検やGTECなど7種類が予定されているが、試験の内容に差がある▽地域によって受験会場数が異なるなどの課題が指摘されている。要望書は「公正、公平の確保が依然として担保されていない」「地域格差、経済格差などの諸課題が解決する見通しがたっていない」などと指摘。「先を見通せない状況で、学校は生徒に受験の指導を開始せざるを得ない状況に追い込まれている」と訴えた。

萩原会長は「英語4技能(読む・聞く・話す・書く)を測る方向性を否定するわけでない。民間試験の日程や会場の詳細、大学の活用の有無などが明らかになってから生徒が受験するのが本来のあり方だ」と語った。

一方、柴山昌彦文科相は10日の閣議後記者会見で「(延期をすれば)大きな混乱を招く。スケジュールどおりに実施する必要がある」と述べ、延期する考えがないことを強調した。
7月にも要望書が出されているにもかかわらず、それに対する具体的な回答もないまま2ヶ月近くが過ぎたことになります。いったい、国は何をやっているのか?不安な高校生の心情や、混乱している受験現場の現状を分かっているのか?理解に苦しみます。


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大学入試制度改革 歴史に学べ

2019年09月07日 | 2020年大学入試制度改革
ジャーナリストの小林哲夫さんが、FBで大変興味深い写真と記事を投稿されていたので、ご本人の了承の下、紹介させていただきます。
1979年(昭和54)年に共通一次試験(センター試験の前身)が導入されました。当初の予定は1978年実施でしたが、1年延期で79年実施となります。その理由は、「入試センターなど共通一次試験の実施機関の整備や各大学の二次試験の作成、さらに受験生の準備期間などを考慮し、『五十三年春は無理』との印象を記者会見で明らかにした。これで共通一次試験の実施は文部省がかねてから希望していた五十三年から五十四年へずれ込む見通しが強くなった」(朝日新聞1976年6月24日)。実施2年前に時期変更とは、入試改革を強行突破しようとする今にくらべて、この時代のほうがはるかに健全です。英語民間試験、記述式採点などでの混乱、不信を取り除くためには、いったん立ち止まって延期すべきです。文科省はメンツを捨て、歴史に学び、現場の声を聞き、教育産業の利害に付き合わず、入試改革の中身を見直してほしい。


朝日新聞 1976年6月24日
これは衝撃的な投稿でした。あの共通一次でさえ、混乱があり導入を先延ばしにしていたとは・・・。

英語民間試験と記述式問題導入による混乱と不信・・・。それは2020年度大学入試制度改革と言う名の「改悪」です。文科省は今こそ歴史に学び、こんかいの混乱と不信の原因と責任を明確にするために、もっと時間をかけて議論すべきです。日程ありきの見切り発車は、受験生を混乱に陥れるだけでなく、日本の教育の質を低下させることに帰結します。


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