英語道(トラスト英語学院のブログ)

トラスト英語学院(長野県伊那市)塾長。英語指導や自身の英語学習雑感、趣味のランニングと筋トレについて綴ります(^^)

2019年総括

2019年12月31日 | 閑話
大晦日恒例、「2019 我が家のニュース トップ3」と「2019 我が家の漢字」です。

【第1位 愛犬Ryeが我が家の一員に】
ずっと飼いたかった犬。素敵なご縁に恵まれて、6月にRyeと出会うことができました。

【第2位 パパが初フルマラソンでサブ4達成】
今年一番の目標だった初フルマラソンでサブ4。10月の第3回松本マラソンで見事に達成(3時間51分3秒)。

【第3位 長男が高校生活を満喫】
高校生となった長男。先日の音楽部の定期演奏会では素晴らしい演奏を披露し、初めて涙しました。青春っていいね。


犬を飼い始めたことで、起床・給餌・散歩等、今まで以上に生活に規則的なリズムが出来て、自ずと生活が律せられました。

初マラソンでサブ4を達成するためには、日々走るだけでなく、筋トレや食生活まで気を配り、自分自身を律する力が強くなりました。その積み重ねの結果としてのサブ4でした。

長男は得意なピアノで更にその才能を伸ばしてくれ、音楽と共に自分の人生の旋律を奏でているようです。

ということで、「2019 我が家の漢字」は
に決定です。「律」と言えば、思い出すのが大宝「律令」
。おー、令和の「令」ともつながりがあるじゃないですか!(←強引)

※昨年までの我が家の漢字の歴史です。
2018年 「挑」
2017年 「走」
2016年 「学」
2015年 「果」
2014年 「実」
2013年 「続」
・2012年 「荒」
2011年 「飛」
・2010年 「昇」
2009年 「耐」
今年も一年間、ブログ「英語道」をお読みいただき、ありがとうございました。来年も毎日更新を目標に日々を綴ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。良いお年をお迎えください。


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ベストオブいいね!2019

2019年12月30日 | 閑話
2019年もあと2日。今年の自分の Twitter と Facebook の投稿を調べた結果、「私のベストオブいいね!2019」は、12月21日に投稿したこのツイートになりました。
今日現在、504のいいね!と249のリツイートをいただきました。ありがとうございます(*^^*)。本ブログの12月22日の記事「伝統的英語教育への回帰」にも同様の内容を書かせていただきましたので、お読みいただければ幸いです。

来年も心で感じた思いを明晰な言葉に表し、多くの方に伝えていきたいと思います。

トラスト英語学院 Twitter(フォローどうぞ)
http://twitter.com/eigodo


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遠い昔に覚えたこと

2019年12月29日 | 英語勉強法
代名詞を教える時、必ず紹介する諺があります。

Heaven helps those who help themselves.
(天は自ら助くる者を助く)

これは、私が劣等生だった高2の時、早稲田を目指して一念発起して勉強を始め、引きまくっていた『新英和中辞典』(研究社)で出会った諺です。

『新英和中辞典』(研究社)より
当時の辞書は今でも大切にとってありますが、表紙が取れてボロボロです。
30年以上も前の遠い昔に覚えたことは、今でもサッと口を突いて出てきます。当時は「こんなことを覚えて何になるんだ」という疑問さえ抱かず、ただただ一心不乱に暗記し、知識を吸収していた自分。しかし、時が経ると、その知識が自分の一部になり、今の自分をつくってくれているのだと実感できます。

学生諸君。20年後、30年後の自分のために、知識を貪欲に吸収しておく方がいいよ。大人になってからも勉強はできるが、今以上に自由に勉強できる時間は、間違いなく限られていくのだから。


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自分の人生に真剣なのか

2019年12月28日 | 指導現場にて
大学入試センター試験まで一ヶ月を切りましたが、それは、年が明ければ高2生が大学受験生となることも意味しています。高2生には今、意識改革が求められます。しかし、長野県の公立高校に通う高校生たちには、大学受験の厳しさがなかなか伝わらないのも現実です。

今週、ある高2生を相当な怒鳴り声を上げ、活を入れました。危機感ゼロ、当事者意識皆無の状態。これまで何度も教えてきたことも忘れており、正直、呆れてしまった。一体全体、誰のための大学受験なのか?何のための勉強なのか?そして、誰の人生なのか?

お前よりも俺の方が、お前の人生に真剣だよ。

「どうにかなる」「なるようにしかならない」「このくらいでいい」。そのような気持ちが少しでもあって大学受験に向かうのであれば、望む結果は手にできない。自分の人生に真剣に向き合い、ここで変わらなければ一生変われない。

優しく言っても響かないものには、声を荒げるしかない。昭和のやり方かもしれないが、私には私のやり方がある。でも、怒鳴った後に後悔が残るのも、いつものこと・・・。
たまたま同じ日に、これまで同じく厳しく指導してきた高3生が、少し遠出をしたお土産にリンゴを持ってきてくれました。この生徒のように、アツい想いで生徒にぶつかれば必ずそれに応えてくれる・・・と信じるしかない。


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努力不足を認める言い訳

2019年12月27日 | 指導現場にて
「英単語集の英単語を場所で位置で覚えてしまって、模試など初見の長文に出てきた時、思い出せません」

と、今週の授業でたまたま同じ質問(or相談?)を複数の生徒から受けました。

私の答え。「何をほざいてんだ!それは覚えていない証拠だよ!」

英単語を覚えるには様々な方法がありますが、一冊の単語集を基本とするのは大切です。それを繰り返して覚え、そこからボキャブラリーを拡げていくのが理想です。

私が大学受験生の時、『試験にでる英単語』の一冊しか単語集はやっていません。しかし、その一冊を本当に血反吐が出るまで繰り返し、覚えました。もちろん、最初は単語のある場所や位置から覚えていきました。「最初はintellect。その次にはconscience」「ignobleには変なイラストが書いてあったな(笑)」等々。場所や位置を覚えることから暗記が進み、初見の長文の中でその単語が出てきた時に、自然と意味が取れるようになるのです。


長文の中に出てきた時にその単語の意味が思い出せないということは、単語集での場所と位置しか覚えていないのです。それは、英単語を暗記したことにはなりません。つまり、まだまだ繰り返しが足りていないだけのこと。己の努力不足を自ら認めてしまう言い訳。変な言い訳をせずに、一冊をもっと徹底して繰り返して、覚えてみろ!
最近は『英単語の語源図鑑』がベストセラーになるなど、語源から英単語を覚えることを薦める参考書類が増えてきましたが、『試験にでる英単語』は初版が昭和50年(1975年)にかかわらず、語源の知識で覚えられるように工夫されています。収められている単語も洗練されていますので、大学受験だけでなく、英語をやり直していてボキャブラリーを増強したい人にもうってつけです。


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2019年日本の10大ニュース

2019年12月26日 | 英語勉強法
年末に楽しみにしているのが、The Japan News がその年の日本の10大ニュースを英文で振り返る社説です。今年も定期購読している英字新聞 The Japan News に載りました。ウェブ上でも読めます(*^^*) >>こちら

2019年も今日を含めてあと6日。様々なことがありましたが、この英文社説は時事ニュースとそれに関連した語彙も復習できて最高の教材となります。英語を勉強されている方は、レベルにかかわらず、辞書を片手に読まれてみて下さい。

記事に書かれている10大ニュースを以下にまとめておきます。
1位:天皇陛下が即位。「令和」に改元
2位:ラグビーW杯日本大会開幕、日本8強
3位:京都アニメーション放火、36人死亡
4位:消費税率10%スタート
5位:東日本で台風大雨被害、死者相次ぐ
6位:ノーベル化学賞に吉野彰氏
7位:沖縄・首里城が焼失
8位:ゴルフ・渋野日向子が全英女子優勝
9位:マリナーズ・イチローが引退表明
10位:徴用工問題で日韓関係悪化

今の日本を英語で語るために大切な語彙ばかりですが、今年は abdicate(退位する), abdication(退位)という英単語をどれだけ目にしたことか・・・。間違いなく「2019年 今年の英単語」に決定です。毎年恒例「2019我が家の漢字」は大晦日に発表予定です。


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奥深き語源の世界

2019年12月25日 | 英語勉強法

Ho-ho-ho! Very merry Christmas!
毎年のクリスマスにトラスト英語学院の玄関で迎えてくれるのは、ホストマザー・Judy が10年以上も前にシアトルから贈ってくれたサンタクロースです。振り返ると、Judy が亡くなってからもう3年以上の時間が流れているんだな・・・。留学していた2001年に一緒に過ごしたクリスマスは忘れることは絶対にありません。このサンタクロースと共に、大切な思い出です。

さて、昨日のカニバリゼーション(cannibalization)の語源に関する投稿で、友人から「誤りではないか」と指摘を受けました。私は cannibalization の語源を carnival と同じラテン語の carnem levare(「肉を取り除く」の意)だと思い込んでいましたが、よく調べてみると、友人の指摘通り、スペイン語の「Canibal(カニバル)」に由来するようです。以下、Wikipedia「カニバリズム」の「語源」からの引用です。
スペイン語の「Canibal(カニバル)」に由来する。「Canib-」はカリブ族のことを指しており、16世紀頃のスペイン人航海士達の間では、西インド諸島に住むカリブ族が人肉を食べると信じられていた。そのためこの言葉には「西洋キリスト教の倫理観から外れた蛮族による食人の風習」=「食人嗜好」を示す意味合いが強い。

発音が似ているため、日本ではしばしば謝肉祭を表す「カーニバル (carnival)」と混同されるが、こちらは中世ラテン語の「carnelevarium(「肉」を表す「carn-」と、「取り去る」を意味する「levare」が合わさったもの)を語源に持つ。

「食人」、「人食い」という意味の語としては、ギリシャ語由来の「anthropophagy(「人間」を意味する「anthropo-」と、「食べる」を意味する「-phagy」の合成語)」が忠実な語である。
語源は奥深いですね。いやはや、勉強になります。間違った記憶をしっかり修正し、英単語の語彙力の精度を高めていきます。

カマキリのcannibalism(共食い)!2012年9月6日撮影


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謝肉祭から夜想曲へ

2019年12月24日 | 英語勉強法
「いきなり!ステーキ」が年末年始にかけて大量閉店するというニュースで、その原因が急すぎた店舗拡大により起きたカニバリゼーション(自社競合)だと、ありました
カニバリゼーション(cannibalization)
自社の商品が自社の他の商品を侵食してしまう「共食い」現象。新商品の導入による既存商品の売上減少、売場でのフェース展開の行き過ぎによる自社商品の売上減少、新規チャネルによる既存チャネルの侵食などがあげられる。カニバリゼーションには本来「人食い・共食い」という意味がある。(J-marketing.netを参照)
一見すると難しい用語に見えますが、元をたどれば意外と知っている単語であり、そこから英単語の語彙力を増やせるきっかけにもなりますから、この際、覚えてしまいましょう。
まず、cannibalization の元になっているのは、誰でも知っている「カーニバル」です。そう、あのリオのカーニバルです。

(※後日追記・・・cannibalizationの語源は正しくはスペイン語の「Canibal(カニバル)」に由来するようです。こちらをお読みください。)

carnival 謝肉祭

carnival の語源がラテン語の carnem levare(「肉を取り除く」の意)だと知れば、carnivalに近い単語が肉食関係の意を表すことも容易に想像つきます。

carnivorous 肉食の
herbivorous 草食の
omnivorous 雑食の

難しい?とんでもない。どれも簡単に覚えられます。herbivorousはハーブ(herb)から、omnivorousはオムニバス(omnibus)から来ています。 ドラマなどで、数編の独立した話で構成したものを「オムニバス形式」と言って、耳にした人も多いと思います。

シアトル留学中に受講していたTOEFL Preparationの授業では、自然科学系の文章を扱うことが多かったことから、当時私はomnivorousを覚えた後、なぜか「両生類」を覚えました。

amphibious 両生類の;水陸両用の

amphibian と名詞化すれば、「両生類」「水陸両用車」の意味にもなります。そう、シアトルといえば観光名物 Ride the Ducks という水陸両用車を知らない人はいないでしょう。4年前の家族旅行でシアトルを訪れた際に乗った Ride the Ducks の思い出はこちらをお読みくださいね。

そして、動物関係の単語から、「夜行性」「昼行性」は何というか疑問を持てれば、更に語彙は広がります。

nocturnal 夜行性の
diurnal 昼行性の

これらも決して難しい単語ではありません。nocturnalの元になっているのはnocturne(ノクターン・夜想曲)であり、diurnalの元になっているのは、もちろんdayです。

スタートはカーニバルだったのに、いつの間にか夜想曲まで語彙が広がりましたね。結局、英単語の暗記なんて、何かをきっかけにすればどんどん広がっていくのです。英単語集だけで覚えるのには、脳ミソに限界があります。要は、語彙力を広げるために暗記をいかにするかの工夫です。


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走り続ける理由を磨く

2019年12月23日 | ランニング・筋トレ
ただ走っているだけでは、距離は走れるようになるだろうけど、速くなれないし強くなれない。

自重や器具を使った筋トレ、ストレッチ、食事にまで気を配らなければ、自分の望む走りは出来ない。それは一朝一夕になされるものではなく、まさに日々の継続、小さな努力を積み上げていく作業です。

最近はランニング関係の雑誌やエッセイなどの書籍に触れるようにしています。そこにこそ、理想の走りのヒントや考えもしなかったきっかけがあるかも知れないからです。
最近繰り返し読んでいるのが、村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』。著者は月に200km以上を走り、フルマラソンでサブ4の本格的なランナーです。作家というと不健康なイメージがありますが、文学を作り出す時に人間の内から出てくる“毒素”と向き合うために、意識的に健康的な体を維持しようと、作家になったころからずっとランニングを続けているのです。

本著は小説ではなくエッセイですので、著者のランニング対するアツい想いが溢れ、ランナーにとっては意を同じくする文章ばかりです。
走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。暇をみつけては、せっせとくまなく磨き続けること。(111ページ)

次のレースまで4ヶ月以上あるので、自分の走りを見直そうと思い、先週は敢えてゆっくりペースの6分/kmで、10kmを60分で走っていました。体が温まってくる後半はいつも自然とスピードに乗ってしまいますが、スピードを絶対上げずに抑える。これはこれで我慢が必要ですが、走り終えるといろいろな学びがありました。普段は10kmを50分切るペースで走っているので、呼吸は全然上がらない一方で、体幹中心にいつもと違う筋肉に刺激が入りました。ゆっくりやって出来ないものは速くやっても出来ない。こういうトレーニングをせずに速さばかり追っかけてしまうと、故障につながるのが実感できたように思いました。

しかし、3日目から右足底に違和感が出始め、休足日を設けたり、距離を抑えて走っていました。トレーニングとしては逆効果に感じたので、昨日はいつものペースに戻して、10kmを49分30秒(4分57秒/km)で走ってみました。すると、体に違和感なく快調でした。やはり、このペースを基準にして、たまにLSDを行うのが適切かと思いました。うーむ、ランニングは奥深い・・・。自分の体と相談しながらのこの試行錯誤が、ランニングの醍醐味なんでしょうね。

もちろん今日も走ります。2019年の総走行距離2,000kmまで、あと約40km。それが今日走る続けるための「ほんの少しの理由」です。


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伝統的英語教育への回帰

2019年12月22日 | 2020年大学入試制度改革
今日は冬至(winter solstice)ですね。

sol…ラテン語で「太陽」
sistere…ラテン語で「静止する・立たせる」

冬至には伊那市では南アルプス・仙丈ケ岳(3,033m)から朝日が昇る「ダイヤモンド仙丈」が見られますが、あいにく今日は曇りですので見られませんでしたので、3年前の冬至に撮影したダイヤモンド仙丈を載せておきます(*^_^*)。
さて、昨日、週刊朝日オンライン記事で、元外交官の多賀敏行さんが大学受験英語の有用性について説かれていましたので、少し長いですが以下に引用します。
元外交官が嘆く、英語教育改革の愚 センター試験の「読み」重点は正しい NHKラジオ英語講座で磨ける能力とは

萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言から延期が決まった、大学入学共通テストでの英語民間試験。「読む・聞く」の2技能を測るセンター試験の英語を、民間の試験を活用し、「話す・書く」を含めた4技能を測るように変えようとしていたものだ。今回の延期について、外交官として様々な国の大使や公使を務めた多賀敏行さん(69)は、「延期に留めるのではなく、廃止した方が良いと思う」と指摘する。自身の経験を踏まえ、英語の学び方について語った。

英語には[読む][書く][聞く][話す]の四つの側面があるが、まず[読む]ことができれば、あとの三つは少しの努力で付いてくる。

[読む]ことによって学んだ英語表現を使って英作文[書く]ができるし、聞きとることができれば、それを紙に書き下ろし、それを[読む]ことができれば、文章の意味を理解できる。[話す]ことは[英作文]と同じことで、言ってみれば、[瞬間英作文]である。要するに[読む力]が全ての原動力になるのだ。

他方、[読む力]が無ければ、あとの三つは伸びない。読んで理解出来ないことは聞いても理解できない。英語のCDを何度も聞いているとある日突然、理解出来るようになるというのは誇大広告である。いやむしろ「詐欺」に近い。

たくさんの受験生(約50万人)が受ける試験の段階では、[読む力]に重点を置くことには合理性がある。現行のセンター試験でも[読む力]に重点が置かれているが、それに加えて[聞く力]も既にリスニング試験の形で組み込まれている。一昨年、私自身センター試験の監督をしたのでよく知っている。リスニング試験は機材の点検に気を使わねばならず大変である。よく実施しているなあと感心したものだ。

これらに加えて新たな共通テストで[話す力]と[書く力]まで試験を行う[あるいは英語民間試験を活用することにより同様の効果を狙う]ことになっている。これは質の良い採点者(学生アルバイトでは困るのである)の確保、受験機会の公平性の維持の難しさを考えると実際上、実施不可能と言わざるを得ない。そもそも最初から愚策であったのだ。

この政策の提唱者たちは[話す力][書く力]を強調してみせるのは格好良いが、実際上は全ての推進力の根源である[読む力]の授業時間の削減を意味し、英語力全体の低下を結果として招くことに思い至っていない。

そもそも[話す力]と[書く力]は各大学が2次試験で行えば良いことである。こういう基本的なことを理解出来ない政治家たちが寄ってたかって、日本の英語教育を劣化させている気がして憂慮に耐えない。

私は41年の外交官生活を終えて、3年前から私立大学で英語を教えている。今の学生たちを見てつくづく思うのは、私自身が受けた英語教育は間違っていなかったということである。

英語を自由に使いこなせる人はその中に一人も居ないと思われる人口10万人の地方都市に生まれ、中学、高校は名古屋の進学校で教育を受けた。英語は文法を中心とした大正時代から続いているであろう伝統的な教育であった(教科書は[新々英文解釈研究]山崎貞著であった)。

今でも自分を褒めてやりたいと思うのは、学校での勉強に加えて、中学3年ころからNHKラジオの英会話番組(講師は松本亨先生)を聞き始めたことである。学校の先生方は優れた英文法教育を施してくれたが、英語の発音はカタカナ英語であった。NHKラジオに出てくるネイティブのゲストの発音と随分かけ離れていて、どっちが正しいのか最初のうちは戸惑った。

やがてNHKラジオのお陰で私のカタカナ英語は矯正されて、ネイティブに近い発音が出来るようになった。発音が良くなればどんどん通じ始める。通じるとどんどん話したくなってきた。勉強が楽しくなり少しでも余った時間を見つけては勉強した。大学入試も、外交官試験も英語で点数を稼ぐことが出来たので、あまり苦労はしなかった。

社会人になってあるとき、各界で活躍している人で英語のうまい人に出会うと「どうやって英語を勉強したのですか」と聞いてみた。答えは私の勉強法と同じだった。つまり英文法、英文解釈を中心とする伝統的英語教育、それに加えてNHKの英語講座を熱心に聞いて発音やリズムを学んでいたというのだ。

世の中には二つのタイプの人々が居る。第1のグループは英語を無事習得できた人たち。第2のグループは英語を(何らかの不幸な原因があり)習得できなかった人々である。そしてそのことを生涯心の傷として抱えている人々である。

第2のグループの人々が自分の恨みを英文法教育、英語教育のあり方に向けて、ああでもない、こうでもない、と長年いじくり回した結果、今の混沌(こんとん)とした英語教育の現状につながってしまったのではないかと思う。もっと第1のグループの人たちの意見を聞けば良いのにと思う。(聞き手・永井貴子)

◇多賀敏行(たがとしゆき)
1950年、三重県松阪市生まれ。一橋大学法学部卒業後、外務省入省。ケンブリッジ大学でLL.M(法学修士号)取得。駐チュニジア、ラトビア大使などを歴任し、2015年退官。現在、大阪学院大学教授、中京大学客員教授。著書に「外交官の[うな重方式]英語勉強法」(文春新書)などがある。大学1年時に、英検1級、通訳案内業試験(英語)に合格。

この記事をツイッターでシェアさせていただいたところ、今年最多の「いいね!」とリツイートをいただき、バズリました。それだけ多くの方が共感されている証拠です。

私も全く同感で、同様のことを昨年11月15日のブログ記事「受験英語こそ王道」にも書かせていただきました。学生時代に勉強という名の努力を怠り、後の人生で英語が出来なくて苦労した輩が、その原因を「受験英語」に求めているだけなのです。結果、「文法はいいから英会話が出来るようになりたい」という、支離滅裂な言動につながるのです。


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