英語道(トラスト英語学院のブログ)

トラスト英語学院(長野県伊那市)塾長。英語指導や自身の英語学習雑感、趣味のランニングと筋トレについて綴ります(^^)

英語民間試験 活用断念

2021年05月25日 | 2020年大学入試制度改革
文部科学省の有識者会議が昨日開かれ、英語の「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能評価を目的とした大学入学共通テストでの民間試験活用について、正式に断念する方向でまとまりました。

先月には、同テストでの記述式問題の導入も正式に断念する方針で決まっていますので、2020年度大学入試制度改革の目玉とされた2つが無くなり、結局は、従前どおりの形に収まることになります。

2020年度大学入試制度改革が現役の高校生・受験生、教育現場を混乱に陥れたのは事実ですが、世論を巻き込み、試行錯誤と議論を経ての結論なので、評価できます。

とどのつまり、「大学入試センター試験」から「大学入学共通テスト」に名前が変わっただけですが、英語は発音・アクセント、文法、英文整序問題がなくなり読解問題のみになってしまったので、こちらも早急に今までのセンター試験に倣った形に戻してもらいたいですね。
英語力の礎は、大学受験であろうが英検・TOEICであろうが、リーディングが基本です。“4技能”という美辞麗句に踊らされず、徹底して「読む」力にこだわって指導してきたことに、間違いはありません。


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2021年度大学入学共通テスト 英語R

2021年01月18日 | 2020年大学入試制度改革
大学入試センター試験に代わる初の大学入学共通テストが終わりました。英語のリーディングに関しては、発音・アクセント、文法、英文整序問題がなくなり、すべて読解問題となりましたが、昨年までのセンター試験以上に、解いていて面白さを感じませんでした。

我々のような英語の指導に携わっている者ならこの程度の英文量には慣れていて当然ですが、多くの高3生にとっては圧倒される英文量でそれだけでストレスでしょう。そして、設問での問われ方を予測しつつ、その英文をビクビクしながら読む感じだったのではないでしょうか。「思考力・判断力・表現力を重視する」という共通テストの意図を反映する問題が散見されたのは理解できますが、ただただ冗長な英文を多量に読ませることによって受験生の英語力の本質を計れるのかは疑問です。

英文量、設問とも昨年よりは難易度は上がりましたが、問題数が少なくマークシートでたまたま正解になった受験生も多いと推測できますので、平均点は53点前後と予想します。

今回の平均点や関係者の意見・感想を基に、大学入試センターが来年度からどのように修正してくるか、楽しみではあります。
因みに、私は新聞に掲載された問題を解きました。語数、語彙、英文構造の何れもどうってことなかったですが、最強の難敵は“老眼”だと知りました。来年から解く時は、正規の文字の大きさでプリントアウトして解こうと思った48歳の英語講師です(笑)。


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本音と建前

2020年06月18日 | 2020年大学入試制度改革
来年1月16日・17日に実施予定だった大学入学共通テストが、予定通り実施されることが決定されました。振り返ってみると、今年度の高校3年生は大学入試制度改革に始まり、新型コロナウイルス禍の休校による9月入学実施の可能性まで話が及ぶなど振り回された挙句、結局は、予定通りの実施に落ちつきました。

私個人的な見解は、学校が休校になろうが、予定通りの実施を支持します。高校の授業を決められた時間だけ受ければ大学に受かるのでしょうか。それだったら、極論すれば、すべての人が東大に受からないといけませんね(笑)。規定された通りに学校の授業を受けてから大学受験があるべきだというのは、公平性を担保するという“建前”に過ぎません。

義務教育の中学ならまだしも、義務教育ではない高校なら休校があろうがなかろうが、大学受験を目指す高校生なら、勉強は自分でしているはずです。偏差値75の超進学校の生徒と偏差値40前後の高校生が同じだけ授業を受けたからって、同じ土俵で戦えるのでしょうか。では、大検の受験生は?高校に行かないという選択をしたのは自分とは言え、高校の授業は受けておらず、自分の責任で大学を目指しているわけです。浪人生は高校の授業を終えた後、更に予備校などで勉強を積み上げているわけです。そもそも皆が公平になるわけもないのです。これが“本音”だと思います。

ただ、日本社会は本音と建前で成り立ってますから、一応は建前を整えておかなければいけないのでしょう。だからこそ、大人たちが時間をかけて話し合い、折り合いをつけるために時間がかかってしまったに違いありません。

本音をとるか、建前を優先するか。はっきり言って、受験生にとってはどちらでもいいこと。肝要なのは、受験生が振り回されないよう、早期に日程を固めて、大学受験へのロードマップを描けるようにしてあげることです。

1992年度 早稲田大学 入学試験


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私はセンター試験一期生

2020年01月18日 | 2020年大学入試制度改革
今日と明日、現行では最後となる大学入試センター試験が行われます。

私はセンター試験一期生。高校3年生の時に共通一次からセンター試験と名前が変わりました。それまでは国立大学の一次試験であった共通一次が、私立大学も参加できるようになったのが大きな特徴でした。しかし、初年度に参加した私立大学は確か20校にも満たなかったと記憶しています。第一志望が早稲田で典型的な私立文系だった私は、「センター試験なんて、私文の俺には関係ねー」と、申し込みすらしませんでした。

一浪した時は、大学受験で使う予定はありませんでしたが、センター試験を受けました。結果は、英語157点、国語159点、政治・経済84点で、500満点中400点。8割の得点率でしたが、「早稲田を目指す俺には、センター試験なんて関係ねー」と、相も変わらずセンター試験を卑下していたように思います。しかし、その考え方が間違っていたと気づいたのは、大学受験を指導する側になってからのことです。
早稲田を目指している受験生が、センター試験で8割しか取れないようでは、合格は無理ですね。センター試験は基礎力が重視され、受験生の実力が如実に点数に現れる試験なのです。早稲田を目指すのなら、9割以上取れて当然です。その年の受験は、やはり望んだ結果とはなりませんでした。

1990年の第1回から今年でちょうど30年。そして、共通一次時代を含めれば、40年という時間の中で磨かれてきた大学入試センター試験は、平均点が6割となるように作られ、受験生の実力が客観的に点数に現れる素晴らしい試験なのです。そのような崇高な試験に、容易に記述式を導入してその価値を落としめようとした今回の入試制度改革の短絡さには、改めて辟易してしまいます。
中央公論2月号では、今回の大学入試制度改革の頓挫に関して、論客たちが様々な視点から切り込んでいます。


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伝統的英語教育への回帰

2019年12月22日 | 2020年大学入試制度改革
今日は冬至(winter solstice)ですね。

sol…ラテン語で「太陽」
sistere…ラテン語で「静止する・立たせる」

冬至には伊那市では南アルプス・仙丈ケ岳(3,033m)から朝日が昇る「ダイヤモンド仙丈」が見られますが、あいにく今日は曇りですので見られませんでしたので、3年前の冬至に撮影したダイヤモンド仙丈を載せておきます(*^_^*)。
さて、昨日、週刊朝日オンライン記事で、元外交官の多賀敏行さんが大学受験英語の有用性について説かれていましたので、少し長いですが以下に引用します。
元外交官が嘆く、英語教育改革の愚 センター試験の「読み」重点は正しい NHKラジオ英語講座で磨ける能力とは

萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言から延期が決まった、大学入学共通テストでの英語民間試験。「読む・聞く」の2技能を測るセンター試験の英語を、民間の試験を活用し、「話す・書く」を含めた4技能を測るように変えようとしていたものだ。今回の延期について、外交官として様々な国の大使や公使を務めた多賀敏行さん(69)は、「延期に留めるのではなく、廃止した方が良いと思う」と指摘する。自身の経験を踏まえ、英語の学び方について語った。

英語には[読む][書く][聞く][話す]の四つの側面があるが、まず[読む]ことができれば、あとの三つは少しの努力で付いてくる。

[読む]ことによって学んだ英語表現を使って英作文[書く]ができるし、聞きとることができれば、それを紙に書き下ろし、それを[読む]ことができれば、文章の意味を理解できる。[話す]ことは[英作文]と同じことで、言ってみれば、[瞬間英作文]である。要するに[読む力]が全ての原動力になるのだ。

他方、[読む力]が無ければ、あとの三つは伸びない。読んで理解出来ないことは聞いても理解できない。英語のCDを何度も聞いているとある日突然、理解出来るようになるというのは誇大広告である。いやむしろ「詐欺」に近い。

たくさんの受験生(約50万人)が受ける試験の段階では、[読む力]に重点を置くことには合理性がある。現行のセンター試験でも[読む力]に重点が置かれているが、それに加えて[聞く力]も既にリスニング試験の形で組み込まれている。一昨年、私自身センター試験の監督をしたのでよく知っている。リスニング試験は機材の点検に気を使わねばならず大変である。よく実施しているなあと感心したものだ。

これらに加えて新たな共通テストで[話す力]と[書く力]まで試験を行う[あるいは英語民間試験を活用することにより同様の効果を狙う]ことになっている。これは質の良い採点者(学生アルバイトでは困るのである)の確保、受験機会の公平性の維持の難しさを考えると実際上、実施不可能と言わざるを得ない。そもそも最初から愚策であったのだ。

この政策の提唱者たちは[話す力][書く力]を強調してみせるのは格好良いが、実際上は全ての推進力の根源である[読む力]の授業時間の削減を意味し、英語力全体の低下を結果として招くことに思い至っていない。

そもそも[話す力]と[書く力]は各大学が2次試験で行えば良いことである。こういう基本的なことを理解出来ない政治家たちが寄ってたかって、日本の英語教育を劣化させている気がして憂慮に耐えない。

私は41年の外交官生活を終えて、3年前から私立大学で英語を教えている。今の学生たちを見てつくづく思うのは、私自身が受けた英語教育は間違っていなかったということである。

英語を自由に使いこなせる人はその中に一人も居ないと思われる人口10万人の地方都市に生まれ、中学、高校は名古屋の進学校で教育を受けた。英語は文法を中心とした大正時代から続いているであろう伝統的な教育であった(教科書は[新々英文解釈研究]山崎貞著であった)。

今でも自分を褒めてやりたいと思うのは、学校での勉強に加えて、中学3年ころからNHKラジオの英会話番組(講師は松本亨先生)を聞き始めたことである。学校の先生方は優れた英文法教育を施してくれたが、英語の発音はカタカナ英語であった。NHKラジオに出てくるネイティブのゲストの発音と随分かけ離れていて、どっちが正しいのか最初のうちは戸惑った。

やがてNHKラジオのお陰で私のカタカナ英語は矯正されて、ネイティブに近い発音が出来るようになった。発音が良くなればどんどん通じ始める。通じるとどんどん話したくなってきた。勉強が楽しくなり少しでも余った時間を見つけては勉強した。大学入試も、外交官試験も英語で点数を稼ぐことが出来たので、あまり苦労はしなかった。

社会人になってあるとき、各界で活躍している人で英語のうまい人に出会うと「どうやって英語を勉強したのですか」と聞いてみた。答えは私の勉強法と同じだった。つまり英文法、英文解釈を中心とする伝統的英語教育、それに加えてNHKの英語講座を熱心に聞いて発音やリズムを学んでいたというのだ。

世の中には二つのタイプの人々が居る。第1のグループは英語を無事習得できた人たち。第2のグループは英語を(何らかの不幸な原因があり)習得できなかった人々である。そしてそのことを生涯心の傷として抱えている人々である。

第2のグループの人々が自分の恨みを英文法教育、英語教育のあり方に向けて、ああでもない、こうでもない、と長年いじくり回した結果、今の混沌(こんとん)とした英語教育の現状につながってしまったのではないかと思う。もっと第1のグループの人たちの意見を聞けば良いのにと思う。(聞き手・永井貴子)

◇多賀敏行(たがとしゆき)
1950年、三重県松阪市生まれ。一橋大学法学部卒業後、外務省入省。ケンブリッジ大学でLL.M(法学修士号)取得。駐チュニジア、ラトビア大使などを歴任し、2015年退官。現在、大阪学院大学教授、中京大学客員教授。著書に「外交官の[うな重方式]英語勉強法」(文春新書)などがある。大学1年時に、英検1級、通訳案内業試験(英語)に合格。

この記事をツイッターでシェアさせていただいたところ、今年最多の「いいね!」とリツイートをいただき、バズリました。それだけ多くの方が共感されている証拠です。

私も全く同感で、同様のことを昨年11月15日のブログ記事「受験英語こそ王道」にも書かせていただきました。学生時代に勉強という名の努力を怠り、後の人生で英語が出来なくて苦労した輩が、その原因を「受験英語」に求めているだけなのです。結果、「文法はいいから英会話が出来るようになりたい」という、支離滅裂な言動につながるのです。


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努力した分だけ報われる

2019年12月18日 | 2020年大学入試制度改革
我が家からは、私の母校・伊那北高校の校舎が見えます。長男(高1)を最寄り駅まで送迎するため、毎朝6時25分頃に車のエンジンをかけるのですが、ここ一ケ月は、朝6時過ぎには電気が灯っています。
北校舎の3Fだから、3年生の教室と廊下です。センター試験まで一ケ月となり、早朝から自習などやっているのでしょうか。まさにこの写真の教室に私がいたのが、ちょうど30年前の1989年。その時も、共通一次から衣替えをして初めての大学入試センター試験が一ヶ月後に迫っていました。初めての迎える大学受験。不安だらけだった受験勉強の日々でしたが、大学入試制度自体に疑念を抱く余地は全くありませんでした。

こんな風に早朝から受験生が頑張っているまさにその日、大学入学共通テストへの記述式問題導入の延期が発表されました。大学受験とは、大学・高校・受験生・高校生が当事者であるはずです。その当事者の声を聞かずに無視し、政治主導で行おうとした大学入試改革なんて糞くらえ。混乱を招いた国の責任は大きい。

努力したものが、その努力した分だけ報われる大学入試でなければなりません。1点刻みで何が悪い、マークシートのどこに問題があるのか。差をつけなければ、誰でも入れてしまう。思考力を問う記述式は既に二次試験で行われている。

思考力とは、客観的な知識を持ち備えた者がなしうる論理的思考。一次試験のマークシート式で客観的学力を問い、二次試験でその昇華の程度を測る。これ以上以下もない。現行の形を維持しながら、精度を高めていけばいい。


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不易流行であるべきセンター試験

2019年12月07日 | 2020年大学入試制度改革
本日(12月7日)の信濃毎日新聞朝刊の社説で、記述式問題導入延期について取り上げられました。以下に本文を引用します。

記述式見送りへ 政治主導 ひずみあらわに


文部科学省が進める大学入試の改革は、二つの軸をいずれも失うことになる。骨組みがぐらつく共通テストへの移行はいったん白紙に戻し、改革のあり方を根本から議論し直すべきだ。

英語の民間試験の活用を先送りしたのに続き、共通テストの国語と数学への記述式問題の導入を見送る方向で政府が調整に入った。年内に最終判断するという。

およそ50万人が受験する大がかりな試験で記述式の問題を課すことにもともと無理がある。見送りは遅きに失したと言わざるを得ない。大学や高校の現場から強い異論が出ていたにもかかわらず、実施ありきで突き進み、混乱を招いた政府の責任は重い。

延期でなく、導入自体を取りやめるのが筋だ。記述式問題を課す必要があるなら、各大学が個別の試験で出題すれば足りる。実際、多くの大学が既にそうしている。共通テストにあえて組み入れる理由がそもそもない。

採点に充てられる期間は20日ほどと短く、1万人規模の人手を確保しなくてはならない。大勢で手分けするほど採点にはぶれが生じる。入試としての公平、公正さが保てない恐れがある。

極力それを避けようと、試行テストの国語では、細かく解答の条件を付け、書き出しや文末の表現まで指定した。これで、思考力や表現力を見る記述式本来の目的が果たせるとは思えない。条件に当てはめて書くのでは、主体的に考える力や表現力はむしろ損なわれるという指摘も出ている。

採点業務は、通信教育大手ベネッセコーポレーションのグループ会社が請け負った。ベネッセは一方で模擬試験や対策講座も手がける。そのことも、入試の公正さへの疑義を生じさせている。

入試改革は、官邸直属の教育再生実行会議が2013年に出した提言を土台に検討が本格化した。複数回受験など大幅な制度の変更を当面見送り、柱に据えたのが記述式と英語の民間試験だった。

現行のセンター試験をなぜ変える必要があるのか、具体的に検証されたとは言いがたく、大学や高校で議論の積み上げがあったわけでもない。移行の初年を21年とした根拠もはっきりしない。

現場を置き去りにして政治主導で無理押ししてきたひずみがあらわになっている。入試のあり方は本来、大学が主体となり、二次試験を含めて考えるべきものだ。政府が前面に出て手綱を引き、現場を振り回すようなやり方そのものを改めなければならない。(12月7日)
2020年度大学入試制度改革の問題点が、時系列で完結にまとめられていて、非常に分かりやすい社説です。信濃毎日新聞は大学入試制度改革について、その首尾一貫した批判的態度を貫き、社説やコラムで何度も取り上げてきました。教育現場で身を置く者として、とても心強く思います。これまでの社説やコラムはこちらにまとめてあります。

さて、これで大学入試制度改革は白紙に戻り、センター試験の英語の出題が変わっただけで、他は現行通りとなります。今回の社説にあるように、現行のセンター試験に問題がない限り、そのまま継続すべきです。前身の共通一次から40年以上の年月をかけて磨かれてきた日本の大学入試制度の根幹をなすセンター試験。いきなり大きな変化を取り入れてはその長所が損なわれます。これからも時代に合わせて少しずつ変えていく姿勢が大事なのではないでしょうか。そこには不易流行の精神が求められます。


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「色男」の完全なる退場

2019年12月06日 | 2020年大学入試制度改革
先月、大学入学共通テストへの英語民間試験導入延期が決定されましたが、もう一つの問題点であった、国語と数学の記述式問題導入も見送られることが確実となりました。以下は信濃毎日新聞「信毎web」からの引用です。
国・数の記述式導入、見送りへ 50万人分の公平な採点懸念

大学入試センター試験の後継で2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、政府は5日、国語と数学への記述式問題導入を見送る方向で最終調整に入った。与党幹部が明らかにした。約50万人の答案を短期間で公平に採点するのは不可能といった批判が相次ぎ、予定通りの実施は困難との見方が強まっていた。

公明党の斉藤鉄夫幹事長は同日午後、萩生田光一文部科学相と省内で面会し、導入延期を要請。斉藤氏によると、萩生田氏は「重く受け止める。受験生のことを考えると1年前までに方向性が決まっていないのは不安だろうから、年内がリミットだ」と述べ、近く最終判断する考えを示したという。(12月5日23時16分)
これで、2020年度大学入試制度改革の二本柱を失うことになります。しかし、これは当然の帰結。従来の大学入試センター試験に何も悪いところはなかった。記述式問題で受験生の思考力や論理力を試すのは、国公立大学の二次試験で既に行われていること。50万人以上が受けるセンター試験で行う意味はそもそもない。カネと利権が絡んだ政府主導の“改悪”に、受験生が食い物にされるところだったのです。

従来の形に戻ることになりそうで、一安心です。ただ、「英語」のリスニングが100点になるのはいいのですが、発音・アクセント・文法・英文整序がなくなり、読解だけになるのは納得できませんが・・・(苦笑)。

英語民間試験導入延期と国語・数学の記述式問題導入延期が決定されるまでの騒動で、私の頭の中に常にあったのは、大学受験英語の神髄を世に知らしめた、我が長野県出身の碩学・伊藤和夫先生の言葉です。先生が亡くなる12日前に記された『予備校の英語』のあとがきからの抜粋を紹介させていただきます。22年前、すでに今日の状況を予言されたような記述で、鳥肌が立ちます。
予備校が滅び、大学受験の中で受験英語が必要でなくなる時代が来れば、今の「色男」対「悪役」という体制のうち、後者が退場することになる。色男は大喜びだろうが、その時代に残るのは会話英語とカルチャー英語という、うまそうな匂いだけで実体のない、ごく薄っぺらなものでしかないと思う。ただそれですべてが終わるはずはない。この日本人の中で、一部少数ではあっても英語の読める人間が必要だという事態は必ず存続する。

(伊藤和夫『予備校の英語』あとがき より引用)
さあ、これで「色男」は完全に退場しました。私はこれからも一部少数の「悪役」であり続け、英語の読める人間を育ててまいります。


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The テノヒラガエシ

2019年11月30日 | 2020年大学入試制度改革
今月1日に文部科学省が2020年度の大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入を見送ったことを受け、学部入試を実施する国立大82校のうち80校が、一般入試で民間試験の受験を必須としない方針を公表しました。共通テストへの導入見送り前は78校が使うとし、多くの大学が出願時に民間試験の成績提出を義務付けていたのですから、見事なまでの方針転換、手の平を返した感じです。まあ、当然の帰結でしょうが・・・。

信州大学も以下のようにHPで発表しました。
選抜を実施する全ての学部の学科、コースおよび専攻において、大学入学共通テストの外国語(英語)の得点は,大学入試センターから提供される成績のみを利用します。リーディング(100 点満点)とリスニング(100 点満点)の得点を「4:1」の比率で 200 点満点に換算します。外国語(英語)民間試験の成績は利用しません。なお,教育学部英語教育コースにおいて,英語認定試験の結果(CEFR 段階「A2」以上)を出願資格としていましたが,出願資格として定めません。
信州大学の評価できる点はリーディングをとリスニングの比率を4:1にしていることです。これまで行われている現行のセンター試験の全く同じです。つまり、現行制度をそのまま踏襲しようという姿勢の表れ。英語の基本は「読む」力だということを、入試制度を通して訴えているように思います。

信州大学農学部
私は英語民間試験を信用していないわけではありませんが、記述式のライティングやスピーキングなど、人が採点に関わった時点で、公平性は担保されないのは明らかです。また、指導経験上、英検2級では、英語力は十分ではありません。それらを大学受験で評価基準にするのは無理な話です。


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因果応報であるべき大学受験

2019年11月16日 | 2020年大学入試制度改革
本日(11月16日)の信濃毎日新聞朝刊の社説で、大学共通テストの記述式問題について取り上げられました。以下に本文を引用します。
大学共通テスト 記述式も見送るべきだ

およそ50万人が受ける一斉試験の筆記の答案を、人の手で20日間ほどで採点する。そのこと自体、無理があるのは目に見えている。

現在の大学入試センター試験に代わる共通テストで、国語と数学に導入を予定する記述式問題である。採点業務は民間に委託し、1万人規模の採点者には学生アルバイトも含まれる。入試としての公正さを保てるのか。高校、大学、受験生自身から疑問や懸念の声が上がるのは当然だ。

導入見送りが決まった英語の民間試験だけでなく、入試改革のもう一つの柱である記述式問題についても、制度の不備は隠せない。共通テストへの移行そのものを見送り、現場の声を踏まえて議論をやり直すべきだ。

記述式問題の採点は、大勢で分担するほどぶれが生じやすい。極力それをなくそうとすれば、解答に条件を付し、機械的に採点するしかない。そうなると今度は、思考力や表現力を問う記述式の目的から遠ざかってしまう。

限られた人数であれば採点のぶれは生じにくく、出題、解答ともに制約は減る。記述式問題は各大学が個別の試験で課すのが本来だろう。実際、多くの大学が既にそうしている。あえて共通テストで出題する意味は見いだせない。

採点を請け負う業者は、試験の前に設問の内容や正答例を知らされるという。大量の人員を集め、アルバイトにも頼らざるを得ない態勢で、問題漏えいなどの不正を防げるのか。そのための手だても明確になっていない。

自己採点の難しさも指摘されている。試行テストの国語の記述式問題では、実際の採点と一致しない割合が3割に達した。自己採点に基づいて出願する大学を決める受験生への影響は大きい。

国語は、マーク式の問題とは別に記述式の3問を全体で5段階に評価する。その仕組み自体が分かりにくい上、各大学が成績をどう使うのかもはっきりしない。

大学の教員らが共通テストの延期を求める声明を出したほか、高校生たちが4万人を超す署名とともに文部科学省に中止を申し入れている。国会でも野党が導入中止の法案を共同で提出した。

文科省は再来年1月から共通テストを実施する方針を変えていない。国語の記述式問題の成績を2次試験の門前払いには使わないよう国公立大に求めるというが、根本的な不備に目をつむって押し切ろうとする姿勢は、受験生へのしわ寄せを招くだけだ。見送りの判断をためらってはならない。(11月16日)
信濃毎日新聞の社説やコラムは、2020年度大学入試制度改革において首尾一貫して否定的な姿勢を貫いてきました。過去の社説・コラムは以下をお読みください。

民間試験見送り 判断遅れた責任は重い(11月2日)
信濃毎日新聞コラム「斜面」(10月29日)
大学入試改革の混迷 見切り発車を止めねば(9月29日)
英語民間試験 導入を無理押しするな(8月28日)
英語民間試験 今ならまだ立ち止まれる(7月8日)

今日の社説にもあるように、記述式導入の問題点を簡潔にまとめると、以下の5点になります。

①採点の公平性の担保
②記述問題の意義の喪失
③自己採点の難しさ
④問題漏洩の危険性
⑤二段階選抜(=足切り、門前払い)での記述式部分の点数除外

何のための記述式なのか?もはや、そこに導入意義を見出すことはできません。無理なものは無理、良くないものは良くないのであって、単純明快なことです。

努力が確実に点数に反映され、それに見合った大学を受ける。努力したものだけが報われる因果応報の単純な仕組み。全身の共通一次を含めれば40年以上の時間をかけて磨かれてきたセンター試験を、簡単に変えることなどできないのです。


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