大学受験英語を多少なりともやられた方なら一度は耳にしたことがあるのが「クジラの公式」。
A is no more B than C is D
(AがBでないのは、CがDでないのと同じである。)
この公式に当てはめられる以下の英文から、クジラの公式と呼ばれている。
A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
(クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同じである。)
Bに名詞が入るときはいいのだが、問題は形容詞が入る場合だ。
The dog was no bigger than a cat.
She was no more careful than I was.
つまり、比較級がmore~となるか、~erとなるかで、Bの位置に形容詞を入れる場合は注意が必要となる。
ところが、先日塾で教えている生徒が学校で使っている問題集に、以下のような問題があった。
あなたは私と同様に怠惰ではない。
You are no than I am.
形容詞 lazy は lazier - laziest と変化するので、
You are no lazier than I am.
と思った。しかし、括弧が一つ余るため、
You are no more lazy than I am.
も一応正解となるのか?
生徒には、以上二つの可能性がある旨を説明し、「ミスプリントの可能性もあるかも知れない。学校の授業で先生の言う解答に注目しておこう。」と指導した。
案の定、学校の先生が示した解答は後者の You are no more lazy than I am. だけだった。
その生徒は、授業後、その先生に質問に行った。「lazy の比較級は lazier ではないですか。」
するとその教師は、その他の可能性すら示すことなく、「more lazy で何ら問題ないよ」との返答。
これは調べてみなくてはならないと思い、江川泰一郎著『英文法解説』を隈無く読んでみた。
この事項について、『英文法解説』より抜粋しまとめると、以下のようになる。
・no more ~ than … の構文では、than 以下の内容が(形は肯定でも)事実ではないという前提のもとに使われる。than 以下の内容の事実性ゼロについて次の例文を対照させて考えてみる。
① He is no younger than I am.(彼は私より決して若くはない。)
② He is no more young than I am.(彼は私と同じで若くない。)
① は、年齢の比較だけで、両人とも実際に young かどうかは不明。
② は、I am (young) の事実性ゼロが前提。
ということは、先の問題では、日本語に照らし合わせると、
You are no more lazy than I am.
で正解となる。しかし、この2文の区別をしっかりと説明している参考書は『英文法解説』以外は見あたらない。高校生が使用する参考書で学べば、大抵が no lazier を正答としている。
今回の件で、私が言いたいのは次の2点。
・本問の正解は日本語に照らし合わせれば、この教師が言うとおり、You are no more lazy than I am. が正解となる。しかし、大抵の文法参考書に従うと、You are no lazier than I am. を正解として解答せざるを得ない。
・この教師が、以上述べてきたようなことにまで疑念を抱き、熟考・研究して、指導していたかは甚だ疑わしい。
今日は、この文法事項について、3時間ほど時間を費やして熟考した。このような研究ならいくら時間をかけても惜しくない。それにしても、英文法は奥深いです。
A is no more B than C is D
(AがBでないのは、CがDでないのと同じである。)
この公式に当てはめられる以下の英文から、クジラの公式と呼ばれている。
A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
(クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同じである。)
Bに名詞が入るときはいいのだが、問題は形容詞が入る場合だ。
The dog was no bigger than a cat.
She was no more careful than I was.
つまり、比較級がmore~となるか、~erとなるかで、Bの位置に形容詞を入れる場合は注意が必要となる。
ところが、先日塾で教えている生徒が学校で使っている問題集に、以下のような問題があった。
あなたは私と同様に怠惰ではない。
You are no than I am.
形容詞 lazy は lazier - laziest と変化するので、
You are no lazier than I am.
と思った。しかし、括弧が一つ余るため、
You are no more lazy than I am.
も一応正解となるのか?
生徒には、以上二つの可能性がある旨を説明し、「ミスプリントの可能性もあるかも知れない。学校の授業で先生の言う解答に注目しておこう。」と指導した。
案の定、学校の先生が示した解答は後者の You are no more lazy than I am. だけだった。
その生徒は、授業後、その先生に質問に行った。「lazy の比較級は lazier ではないですか。」
するとその教師は、その他の可能性すら示すことなく、「more lazy で何ら問題ないよ」との返答。
これは調べてみなくてはならないと思い、江川泰一郎著『英文法解説』を隈無く読んでみた。
この事項について、『英文法解説』より抜粋しまとめると、以下のようになる。
・no more ~ than … の構文では、than 以下の内容が(形は肯定でも)事実ではないという前提のもとに使われる。than 以下の内容の事実性ゼロについて次の例文を対照させて考えてみる。
① He is no younger than I am.(彼は私より決して若くはない。)
② He is no more young than I am.(彼は私と同じで若くない。)
① は、年齢の比較だけで、両人とも実際に young かどうかは不明。
② は、I am (young) の事実性ゼロが前提。
ということは、先の問題では、日本語に照らし合わせると、
You are no more lazy than I am.
で正解となる。しかし、この2文の区別をしっかりと説明している参考書は『英文法解説』以外は見あたらない。高校生が使用する参考書で学べば、大抵が no lazier を正答としている。
今回の件で、私が言いたいのは次の2点。
・本問の正解は日本語に照らし合わせれば、この教師が言うとおり、You are no more lazy than I am. が正解となる。しかし、大抵の文法参考書に従うと、You are no lazier than I am. を正解として解答せざるを得ない。
・この教師が、以上述べてきたようなことにまで疑念を抱き、熟考・研究して、指導していたかは甚だ疑わしい。
今日は、この文法事項について、3時間ほど時間を費やして熟考した。このような研究ならいくら時間をかけても惜しくない。それにしても、英文法は奥深いです。