安倍晋三のアベノミクスで「景気回復全国津々浦々波及」は格差拡大に対する無自覚な開き直り

2018-02-02 11:17:22 | 政治

 1月31日(2018年)の参院予算委で民進党小川敏夫が「アベノミクスは失敗、厳然たる事実だ」と追及した。対して安倍晋三は政権発足後の雇用環境の改善こそが「厳然たる事実」と反論、「景気回復の波が全国各地に及んでいる」とアベノミクスの効用に胸を張った。

 実際は格差拡大に貢献しているだけのアベノミクスだから、無自覚なままに開き直ったといったところだが、両者の遣り取りの一端を2018年1月31日付「NHK NEWS WEB」から見てみる。       

 小川敏夫「『豊かになった実感を持てない』という声を聞く。明らかに言えることは、アベノミクスによって国民生活は苦しくなった。安倍総理大臣は、聞くたびに都合のいい数字を常々引っ張るが、厳然たる事実だ」

 安倍晋三「厳然たる事実の1つは、働く場所があるということだ。政権交代前は有効求人倍率が1倍もなかったが、今はすべての都道府県で1倍を超えている。景気回復の波が全国津々浦々に及んでいるということであり、みんなの稼ぎである総雇用者所得は確実に上がっている」

 アベノミクスの効用に総雇用者所得を持ち出すこと自体、無自覚なままに格差拡大の証明を自ら行っているに過ぎない。実質的には「アベノミクスは格差ミクス」と自分から言明しながら、そのことに気づきさえしないのだから、相当に無自覚な人間に仕上がっている。

 総雇用者所得とは雇用者1人当たりの賃金(現金給与総額)に雇用者総数を掛けた所得なのは断るまでもない。日産自動車会長だった時代のカルロス・ゴーンの年間所得10億以上等々、高額報酬受給者の所得も合算した、否応もなしに格差を構造としている総雇用者所得を用いて「みんなの稼ぎは確実に上がっている」とアベノミクスの成果とし、「景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」と結論づけて何ら恥じない。

 「有効求人倍率が1倍」と言っても、総務省統計局の「労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)12月分」(2018年1月30日公表)を見ると、働く意思と能力を持ち、求職活動を行っていながら、就職の機会を得られない完全失業者数は前年同月比19万人減となっているものの、174万人となっている。  

 「有効求人倍率が1倍」であり、尚且つ人手不足と騒ぎながら、174万人も完全失業者が存在する。望む仕事が見つかないという状況を示しているはずで、このことは2016年の大卒1年以内離職率は11.3%、高卒17.2%(「厚労省」)等の統計にも現れている。 

 完全失業者数や少なくない離職率は「有効求人倍率1倍」をある程度不完全とする。だが、安倍晋三は「有効求人倍率1倍」をアベノミクス効用の完全な証明に用いて揺るがない。

 総務省統計局の2人以上世帯の「家計調査」によると、2017年12月分の勤労者世帯の実収入は1世帯当たり 94万875円で、前年同月比実質0.4%の増加、名目1.7%の増加と記載されている。  

 要するに1年前の2016年12月分と比べて2017年12月分の手取り額は1.7%増加しているが、物価変動による購買力で計算した実質では0.4%しか増えていない計算になる。物価が高くなればなる程、手取りの金額は金額通りの価値を失う。

 実質賃金の0.4%の伸びということは2016年12月分の1世帯当たり勤労者世帯の実収入は67万2053円(×1.4=94万874円・検算)となり、1年間で94万875円-67万2053円=26万8822円と実質で伸びたことになる。

 各種生活物価の高騰を前にして実質賃金が1年間で26万8822円も伸びたと実感できる世帯がどのくらい存在するだろうか。高額所得者の収入も含めているから、統計上、昨年比26万8822円のプラスと出ているだけのことで、上記総務省統計局の2017年12月分消費支出調査は1世帯当たり32万2157円で、前年同月比実質0.1%の減少、前月比(季節調整値) 実質2.5%の減少となっているが、実質賃金が1年間で26万8822円も伸びていることに逆転したこの消費支出の減少は格差の存在の証明以外の何ものでもない。

 格差が小さければ小さい程、統計に表れる収入にしても、消費支出にしても、中低所得層の生活実態と大きく掛け離れていない統計上の平均値を取り、格差が大きければ大きい程、中低所得層の生活実態と統計上の平均値は大きくかけ離れることになり、尚且つ収入の伸びと家計支出の伸びがプラスマイナスの逆転状況を呈することになる。

 確かに安倍晋三がアベノミクスを誇るように各階層に満遍なく仕事は増えたし、賃金も大企業・中小企業共に増えているかもしれない。だが、安倍晋三がアベノミクスをどう誇ろうと、雇用増加や賃金増加以上に安倍政権下の円安と株高が「おいで、おいで」と招くことになった格差は拡大している。

 いわば進行形で格差を拡大させている中での安倍晋三の「景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」状況ということであって、ここに開き直りの精神構造を見ない訳にはいかない。

 しかも開き直りを無自覚なまま発揮しているのだから、余計に始末に悪い。
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