国税庁e-Tax制度から見て、安倍晋三の持続化給付金制度に思う素朴な疑問

2020-06-15 10:30:32 | 政治
 【訂正】(2020年6月15日 13:15)「e-Tax 利用件数約3759万件は平成30年1年間の件数であり、持続化給付金申請件数は5月初めから6月11日まで約199万件であって、比較できないのではないのか」と指摘するメールを頂いが、1年間で最も忙しい2月半ばから4月中までの3ヶ月間に確定申告申請が集中することを考慮すると、ある程度の比較ができて、経費の差額を決定的に否定できないと思うが、指摘の事実を割り引いて読んで頂きたい。

 e-Tax年間利用件数(約3,759万件)÷12ヶ月≒313万件/1ヶ月>持続化給付金5月1日~6月11日申請件数199万件

  新型コロナウイルス感染症の拡大による営業自粛等で収入の減少を受けた個人事業者や中小企業等に現金を支給する持続化給付金制度が2020年5月27日に閣議決定された。

 「個人事業者等向け持続化給付金申請要領(申請のガイダンス)」(中小企業庁 令和2年度補正 持続化給付金事務事業 持続化給付金事務局/2020年5月9日)

持続化給付金とは?
感染症拡大により、 営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただくため、 事業全般に広く使える給付金を給付します。
給付額 個人事業者等は100万円まで
 ※ただし、 昨年1年間の売上から減少分が上限です。
■給付額の算定方法
前年の総売上 (事業収入) - (前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)
給付対象 フリーランスを含む個人事業者が広く対象となります。

持続化給付金の申請手順
持続化給付金ホームページへアクセス!
持続化給付金の申請用HP (htps://jizokuka-kyufu.jp)
申請ボタンを押して、 メールア ドレスなどを入力 [仮登録]
入力したメールアドレスに、メールが届いていることを確認して、[本登録]へ
ID・パスワードを入力すると[マイページ]が作成されます
●基本情報 ●売上額 ●口座情報 を入力
 必要書類を添付
入力すると、申請金額を自動計算!
【通帳の写し】 をアップロード!
 2019年分の確定申告書類の控え
 売上減少となった月の売上台帳等の写し
 身分証明書の写し
※スマホなどの写真画像でもOK (できるだけきれいに撮ってください ! )
申請
持続化給付金事務局で、申請内容を確認
※申請に不備があった場合は、メールとマイページへの通知で連絡が入ります。

 以上、主なところを拾ってみた。

 中小企業庁は「中小法人向け」のHPも作成していて、〈法人は200万円まで ※ただし、昨年1年間の売上から減少分が上限です。〉となっていて、給付対象は〈資本金10億円以上の大企業を除く、中小法人等を対象とし、医療法人、農業NPONPO法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となります。〉と断り、「給付額の算定方法」等以下は個人事業者向けと同じになっている。

 要するに電子申請(紙によって行われている申請や届出などの行政手続をインターネットを利用して自宅や会社のパソコンを使って行えるもの)の形式となっている。申請用のサイトを作成する労力と受け付けた申請の内容が適正か、間違いや誤魔化しがないかを審査する労力と、申請内容に不備があった場合、問い合わせる労力と、最終的に適正の判断を下した場合は登録した口座番号に入金する労力と受付完了の記録をつける労力が残されることになる。

 問題は申請件数である。2020年6月13日 付「Yahoo!ニュース」は6月12日付「TBSニュース」の配信記事で経済産業省の発表として、〈6月11日までにおよそ199万件の申請があり、このうち75%ほどにあたる149万件に給付、給付額は1兆9600億円〉にのぼり、〈申請が開始された5月1日から11日までに受け付けた、およそ77万件について、このうち6%程度にあたる5万件ほどが1か月以上たった現在でも給付が済んでいない〉と紹介している。

 支給・未支給に関係なしに約200万件の申請に対する審査とその他の労力を必要とした。勿論、適正か否かを判定する審査の労力に最も多くの時間を取られたはずである。

 2020年6月6日付「しんぶん赤旗」記事掲載の画像でお分かりのようにっ政府はこの「持続化給付金事業」を一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で委託、一般社団法人サービスデザイン推進協議会は電通に749億円で下請け(再委託)させている。電通はさらに「電通東日本」や「電通デジタル」等に孫請けさせている、一般的には同系列会社複数への下請けや孫請けは利益を分散して、課税額を抑えるために利用される。
 上記「しんぶん赤旗」は、〈この事業では給付金の受け付けやコールセンター業務の外注を受けた電通ライブ社が、さらに派遣大手のパソナ、IT業のトランスコスモスに外注していました。〉と書いている。電通関連ではこのほかに申請サポート会場の運営も行っているという。要するに電子申請にかかる労力以外にコールセンター業務と申請サポート会場運営の労力が加わることになる。

 この上記労力から見た約200万件かそこらの申請にかかる持続化給付金事業の外部委託に国の税金を769億円もかける適正性を見ることができるだろうか。

 この適正性か否かに気づいたのは国税庁が確定申告を紙媒体以外にインターネットでも行っていることからである。文色は当方。

 平成30年度におけるe-Taxの利用状況等について(国税庁/2019年8月)

≪評価指標≫ ≪実績値≫ ≪前年対比≫
○ オンライン利用率 ※別紙1参照(3ページ)
・ マイナンバーカードの普及割合等に左右される国税申告2手続(所得税申告、消費税申告 (個人))58.5% (+3.4 ポイント)
・ 上記以外の国税申告4手続(法人税申告 消費税申告(法人)、酒税申告、印紙税申告)82.9% (+2.9 ポイント)
・ 申請・届出等9手続(給与所得の源泉徴収票等(6手続)、利子等の支払調書、納税証明書の交付請求、電子申告・納税等開始(変更等)届出書) 76.9% (▲0.5 ポイント)
○ ICT活用率 ※ 別紙2参照(4ページ) 82.7% (+2.9 ポイント)
○ e-Tax の利用満足度 81.5% (+5.5 ポイント)
○ 国税庁HP「確定申告書等作成コーナー」の利用満足度 93.5% (▲0.1 ポイント)
オンライン申請の受付1件当たりの費用265円 (▲8 円)
○ 国税申告手続の事務処理時間 833,000 時間 (▲35,000 時間)

※ICT活用率
所得税申告及び消費税申告(個人)の総件数のうち、
① e-Tax 利用件数
② 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成した申告書を印刷して書面により税務署に提出した件数の合計件数が占める割合。

※オンライン申請の受付1件当たりの費用
① e-Tax の運用等に係る年間経費
② システム整備に係る1年当たりの経費(※)の合計額をe-Tax 利用件数で除して算出したもの。
年間運営経費等(約99億円)÷e-Tax 利用件数(約3,759万件)≒265円
※ システム整備に係る経費(システム開発費など)は、税制改正などにより毎年変動するため、システム整備に要した経費の総額を支出年数で除して算出。

 「 e-Tax 利用件数(約3,759万件)」「約3,759万件」で、年間運営経費等「(約99億円)」「オンライン申請の受付1件当たりの費用」「265円」

 国税庁も確定申告コールセンターを開設し、確定申告会場を各地域の税務署に設けているが、上記数値はe-Taxに限定した経費と言うことになる。対して持続化給付金事業は「6月11日までにおよそ199万件の申請」、これが倍の400万件と仮定したとしても、769億円で一般社団法人サービスデザイン推進協議会に外部委託し、電通が749億円で再委託を受けた。

 769億円÷400万件=19225円

 持続化給付金事業の申請件数400万件と仮定した場合の電子申請にかかる1件当たりの経費19225円に対して国税庁の約3759万件のe-Taxにかかる1件あたりの経費が265円。差額は18960円。

 持続化給付金事業の申請件数400万件を6月11日までの申請件数199万件に近づけていけばいくほど、差額は増えていき、2万円や3万円を超えることもあり得ることになる。この差額は国が行うのと民間が行なうのとの違いで、止むを得ないという言い訳は許されない。こういったことに最低限、素朴に疑問を感じないのだろうか。

 差額の不可解さは持続化給付金事業の入札にも現れている。文色は当方。

 「中小企業庁 2020年4月の競争入札」

令和2年度補正持続化給付金事務事業
契約を締結した日 2020年4月30日
契約の相手方の商号又は名称 一般社団法人サービスデザイン推進協議会
予定価格(円) 非公表
契約金額(円) 76,902,084,807円 (769億208万4807円)
落札率(%) 非公表

 予定価格を公表したら、落札率も分かってしまう。但し予定価格と落札率はそれが適正な落札かどうかを判断する材料の一つであって、それを非公表とするのは秘密の介在を疑わないわけにはいかない。

 安倍晋三は2020年6月11日午前の参院予算委員会で、「委託に当たってはそうした事業目的に照らしてルールに則ったプロセスを経て、決定されたものと承知をしております」と白々と答弁しているが、予定価格と落札率が非公表では「ルールに則ったプロセスを経て、決定された」とは言い難い。

 入札に参加するためには事業に於ける各項目の費用を一つ一つ見積もって、それらを積み上げて全体の入札金額を算出、提示しなければ、発注者側はそれが適正な価格なのかどうかは判断できない。当然、中小企業庁は持続化給付金事務事業の入札に当たって一般社団法人サービスデザイン推進協議会から見積書の提示を受けているはずである。中小企業庁側からしたら、そのような見積書の提示があって初めて発注の当否が判断可能となる。

 経産省側は入札額が769億円の記入がある書類を野党に提出しているが、サービスデザイン推進協議会が事業の各項目にかかる経費を見積もり、全体の入札金額を算出・提示した見積書を公表したという報道にはお目にかかっていない。その公表によって、経産省側の落札が正当か否かの唯一の判断根拠となり得る。

 但し見積書の公表は予定価格と落札率の非公表と相反する措置となる。予定価格と落札率の非公表に対応させた見積書の非公表と見るべきだろう。

 だとしたら、野党は見積書の公表を迫り、公表を実現させなければならないが、どうも野党はピント外れの追及に終始しているようだ。但し当方のこの判断の方が間違っているということもあり得る。

 間違っている可能性もあることを承知で、ピント外れに思えた質疑を一つ取り上げてみる、

 2020年6月11日午前の参院予算委員会

 蓮舫「持続化給付金というのはどういう重みがあるとお考えですか」

 安倍晋三「新型ウイルス感染症の影響で経済、大きな打撃を受けている中に於いて中小企業・小規模事業者の皆さま、大変経営が困難な状況に追い込まれている中に於いて手持ち資金が不足をしている。明日からの経営にも大きな支障が出てきているという中に於いてですね、その固定費たる賃料等々のですね、半年分ということで最大200万円の給付を行うことにしているところでございます。

 大切なことはですね、スピードでございまして、できる限り多くの方々にお届けしたい。現在のところですね、既に1兆6000億円をお手元にお届けをさせて頂いているというふうに伺って、承知をしております」

 蓮舫「大切なのはスピード、全くその通りです。5月1日、初日に申請して、未だに未支給なのは何軒ありますか」

 梶山弘志(経産相)「5月1日の申請、18万件ありまして、そのうちの未支給というのは5000件であります。

 蓮舫「一か月以上も経って、まだ5000件の未支給。なぜですか」

 梶山弘志「データ等の不備がありまして、再度遣り取りをしているものもあります。そういったものも含めて審査をしているということであります。

 蓮舫「スピードが大事、総理、そう仰ってるんですけれども、まだ未支給の方がおられて、この作業をしているのは、サービスデザイン推進協議会、中抜き団体、再委託、再々委託。大変問題になっている。ここに委託したのは、総理、適正だとお考えですか」

 安倍晋三「業務の中身につきましてはですね、梶山大臣から答弁をさせて頂きたいと思いますが、委託に当たってはそうした事業目的に照らしてルールに則ったプロセスを経て、決定されたものと承知をしております。
 大変な業務量の中ではありますが、既に120万件の中小企業・小規模事業者の皆さまに1兆6000億円の現金をお届けしているというふうに承知をしております」

 蓮舫「計算大臣、確認しますが、本当に実態あるんですか。この法人は」

 梶山弘志「これまでも受注実績がありますし、補助金の仕事もしております。実際実態があると思って、実体があるという前提で我々も契約をしております」

 蓮舫「答弁、大丈夫ですか。国会でね、問題視されて、議員がアポを取ろうにも、ここ電話ないんですよ、事務所に。事務所に行ったら、人いないんですよ。電通に取材したら、答えないって言うんですよ。これ、適切な対応ですか?」

 梶山弘志「これリモートワークをずっとしておりました。さらにまた今回全国で数十カ所、審査会場があります。またサポート、申請のサポート会場もあります。そういったところに出向いているということでもございます」

 蓮舫「大臣ね、6月8日に国民の批判に耐えかねて、ようやく会見をして、6月の9日から業務を再開しますと、これは労務と、労務管理等を始めて、5人が昨日、おとといから仕事を再開したって、大々的にメディアに公開したんですよ。そしたら昨日国会議員が視察に行ったら、誰もいません、何ですか。これ」

 梶山弘志「実際には継続している仕事も、おもてなし認証等がございます。そういった仕事も含めた中でやっとりますけど、その中で、今回の事業に関するものは、21名、対応しておりますけども、5名が経理の担当と言うことで、銀行との遣り取りをしております。ただ、これはリモートでも出来ますので、リモートも含めて今、事業の対応をしていることであります」

 蓮舫「リモートワークを解除して5人が常駐すると言って、メディアが来た時だけその仕事をしてる姿を見せて、昨日から誰もいないんで、もっと言ったら、呼び鈴も内線電話も外されていました。どういうことですか」

 梶山弘志「私共はリモートワークをしているという認識でございます。ただこれは実態がないと言われますけれども、実際に仕事をしているんですね、しっかりとね。そして我々とも報告もある、ただ、そこにリモート、リモート、その場所にいなければ仕事が出来ないのかと言うと、そうではありません

 リモートワークで今は全てできております」

 蓮舫「そもそもこの推進協議会が前田中小企業庁長官が大臣官房審議会の時、最初に協議会におもてなし規格認証事業を業務委託しました。これどんな事業でした」
 埒が明かないから、以下略。

 国税庁のe-Tax制度の事業規模と経費から見て、より事業規模が小さくて、その小ささに反比例して経費が多額な持続化給付金制度に感じる素朴な疑問が依然として埋まらない。

 このような素朴な疑問自体が間違っているなら仕方がない。

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