野党の旧統一教会と裏ガネ疑惑対与党追及の拙劣さが招いた国民の怒り未満の欲求不満が選挙結果に現れた

2024-11-06 06:47:20 | 政治

 Kindle出版電子書籍「イジメ未然防止の抽象論ではない具体策4題」(手代木恕之著/2024年5月18日発行:500円)

 2009年7月21日、衆議院が解散され、2009年8月30日にその投票が行われた。その結果、民主党は115議席から一挙に193議席増えて308議席、対する自民党は300議席から181議席減って119議席、公明党は10議席減の21議席となった。この結果、自民党は1955(昭和30)年の保守合同による結党以来、初めて第一党の座を失った。9月16日、特別国会で鳩山由紀夫が首相に指名され、鳩山民主党政権がスタートした。

 2007年7月の参議院議員選挙で第一党に躍り出て、ねじれ国会を作り出したという布石はあるものの、民主党は政権獲得を文句なしの一発で決めた。

 この選挙での自民党+公明党に対しての有権者の191議席減の審判はその在り方に対する怒りの度合いを示していて、民主党の193議席増は与党の在り方に対する怒りの反動の度合いを示すことになり、議席減と議席増が大幅でほぼ拮抗している点は怒りの質とその発露の大きさを現していると言える。

 もし与党の在り方に対する有権者の怒りが中途半端なら、怒りの質とその発露も中途半端な結末へと向かう。今回の2024年10月の衆議院選挙結果が有権者のどのような怒りの感情がどの程度に働いて議席の増減を生み出したのか予測してみる。

 与党自民党公示前258議席から67議席減の191議席獲得。
 与党公明党公示前32議席から8議席減の24議席獲得。
 立憲民主党公示前98議席から50議席増の148議席獲得。

 与党自公で公示前290議席から75議席減の215議席獲得。立憲民主党との獲得議席数の差は自公プラスの67議席。野党全体では過半数233議席を18議席上回っているが、纏って一丸となっているわけではなく、党としての在り方についても、政策的にもバラバラ状態を呈している。

 要するに今回の衆院選に於ける自公与党に対する国民の怒りの審判は2009年8月30日の衆院選のときのように強烈なものではなく、中途半端だったから、立憲民主党は単独で自公の議席を越えて、文句なしの一発の状態で自公を政権の座からから引きずり下ろすことができなかった。国民の怒りが強烈で真正な質のものであったなら、十近くの野党が乱立していたとしても、野党第一党としてそれなりの議席を抱えていたのだから、一気に政権担当に向かわせる支持を集めることもできたはずである。

 この怒りが中途半端なものであることは投票率にも現れている。民主党が政権を取った際の2009年8月衆院選小選挙区投票率は前回比+1.77ポイントの69.28%もあったが、今回の小選挙区の投票率は前回比+2.08ポイントの53.85%で、しかも戦後3番目の低さだというから、有権者の自民党に対する怒りも程々で、怒りを向けるべき矛先の、その表現の具体的な形としての自民党に対する懲罰も程々だったことが分かる。

 与党の在り方に対する怒りの感情が存在したにも関わらず、その発露(=懲罰)は全体的には沸騰点には至らない生煮えの状態だった。その原因を推測する前に有権者の怒りを発動させることになった自由民主党の党としての在り方の非難対象となった諸事情は断るまでもなく、2022年7月8日発生の安倍晋三銃撃死によって表面化し、政治問題に発展した安倍晋三を仲介元とし、自民党議員の多くが選挙運動で利益を得ることになった反社会的勢力同然の旧統一教会との関係であり、安倍派後援会政治資金パーテイで安倍派所属議員にパーティ券売上にノルマを課し、その超過分は政治資金報告書不記載で現金還付した政治的不正行為であったはずだ。

 後者は他派閥も行ってはいたが、安倍派程には多人数で、金額的にも大掛かりではなかった。前者後者共に首相であった当時の安倍晋三が大掛かりな仕掛け人として関与していた。旧統一教会との関係では選挙期間中に信者による運動ボランティアと票の提供を受け、見返りに国会議員の名前を信者獲得に利用させた。いわば票の利益の代償として広告塔の役目を担った。

 安倍派後援会政治資金パーテイでの政治資金収集報告書不記載で還付された現金は表に出していないカネという性格上、表に出せない政治活動費――裏ガネとして使われていたはずで、そうでなければ不記載という見えない形にする必要性は生じないからで、そのことを関係したどの議員も否定していて、野党からの国会での追及をその地点でかわすのに成功させている。

 結果、誰が裏ガネ制度を考案し、始めたのか、裏ガネを何に使い、どのような利益を受けていたのか、全て真相は藪の中となった。もし追及によって真相が解明できていたなら、自民党の在り方に対する国民の怒りは沸点に達し、政権交代という懲罰で対応した可能性は十分にありうる。だが、追及が生半可で、真相に至らず、国民の怒り未満の欲求不満を誘っただけだから、その程度の審判、いわば一発で政権交代に向かわせる選挙結果とはならない程度で終わった。

 安倍晋三が中心人物として関わったはずの旧統一教会問題での国会追及も似たような経緯を辿ることになった。1980年代から旧統一教会の信者本人や信者の家系に悪い因縁や霊の祟りが取り憑いていて、それを除くに霊験があるとする印鑑、数珠、多宝塔、壺などを法外な値段で売りつけたり、高額な寄付で賄わせたりする、いわゆる霊感商法が1980年代には既に社会問題となっていた。

 名称は霊感商法と尤もらしく名付けているが、実態は詐欺商法そのものであった。

 旧統一教会は1997年になって正式名「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」へと名称変更の相談を当時の文部省文化庁の宗教法人を所管する宗務課に相談したが、当時宗務課長を務めていた元文科次官の前川喜平が部下の職員から相談の報告を受け、断ったことを2022年8月5日の立憲民主党や共産党などの合同ヒアリングで証言している。

 「宗務課の中で議論した結果、実態が変わっていないのに名前だけ変えることはできない。当時、『世界基督教統一神霊教会』という名前で活動し、その名前で信者獲得し、その名前で社会的な存在が認知され、訴訟の当事者にもなっていた。その名前を安易に変えることはできない。実態として世界基督教統一神霊教会で、『認証できないので、申請は出さないで下さい』という対応をした。相手も納得していたと記憶している」(NHK NEWS WEB記事)

 体を表してきた名前を変えたなら、体を隠してしまうことになる。そのような隠蔽工作には手を隠すことはできないということだったのだろう。

 ところが、18年後の2015年(平成27年)になって、前川喜平が文部科学審議官を務めていた際、当時の宗務課長から教会側が申請した名称変更を認めることにしたと説明を受け、認証すべきでないという考えを伝えたという。

 「そのときの宗務課長の困ったような顔を覚えている。私のノーよりも上回るイエスという判断ができるのは誰かと考えると、私の上には事務次官と大臣しかいなかった。何らかの政治的な力が働いていたとしか考えられない。当時の下村文部科学大臣まで話が上がっていたのは、『報告』したのではなく、『判断や指示を仰いだこと』と同義だ。当時の下村文科大臣はイエスかノーか意思を表明する機会があった。イエスもノーも言わないとは考えられない。結果としては、イエスとしか言っていない。下村さんの意思が働いていたことは100%間違いないと思っている」

 勿論、下村博文は否定している。文化庁の担当者からは『旧統一教会から18年間にわたって名称変更の要望があり、今回、初めて申請書類が上がってきた』と報告を受けていた。担当者からは、『申請に対応しないと行政上の不作為になる可能性がある』と説明もあったと思う。私が『申請を受理しろ』などと言ったことはなかった」

 国会で追及を受けることになった際の文科大臣の末松信介は2022年8月8日の記者会見で次のように発言している。

 「形式上の要件に適合する場合は受理する必要がある。担当者に確認したところ、当時、旧統一教会側から『申請を受理しないのはおかしいのではないか』という違法性の指摘があった。教会側の弁護士が言っているという話だった」

 形式上の要件が整っていたとしても申請を認証せず、文部科学大臣の諮問機関である「宗教法人審議会」で判断すべきだったという指摘が出ていることについて。

 「申請の内容が要件を備えていることを確認して認証を決定したと認識していて、宗教法人審議会にかける案件ではなかった」

 「申請の内容が形式上の要件を備えている」とは、宗教法人として既に認証されているから、活動内容を問う項目はなく、あったとしても、宗教活動の陰で信者を利用して不法な利益活動を行っているなどと書くはずもなく、宗教法人の主たる活動場所、代表名、新名称等々、書類が要求する様式に則って外見上の事実が滞りなく記入されていれば、書類として完備しているというだけの話で、宗教法人「世界基督教統一神霊教会」(いわゆる旧統一教会)の名前で世間に明るみに出つつあった悪徳霊感商法や不法な寄付強要、裁判沙汰といった裏の実態に関わる情報については宗教法人を所管する文化庁宗務課ならアンテナに捉えておくべき責任行為の一つであるはずだが、責任行為に反して旧統一教会がその手の宗教団体だと見られ始めていた各不法行為を結果として不問に付した。あるいは名称変更を認証することによって旧名に纏わりつくことになっていた悪名を隠してやる便宜供与を与えた。

 情報収集しているはずの文化庁宗務課という一部署が収集しているはずの情報を問題外として、果たして単独で認証できることなのか、安倍晋三という上にまで遡った地位からの指示なのか、いずれかが考えられるが、役人が単独で行ったなら、ワイロを受けていたか、政治家の力が働いていたなら、同じくワイロを受けているか、政治活動上の何らかの利益を受けていなければ、不法行為の不問という事態は招き得ない。

 現実問題として安倍晋三が中心的な橋渡し役となって旧統一教会と自民党政治家を結びつけて持ちつ持たれつの利害関係を築いていた。

 旧統一教会と自民党国会議員との間を選挙の便宜で結びつけたことと政治資金パーティノルマ超現金還付収支報告書不記載の裏ガネ作りの双方に安倍晋三が中心人物として位置していた遠因は第一次安倍政権が一年足らずの短命で終わったことと無関係ではあるまい。

 2006年9月26日成立後、閣僚の不祥事・失言が相次ぎ、支持率が20%台まで低下、2007年(平成19年)7月29日の参議院選挙で与党は過半数割れの惨敗を喫し、ねじれ国会となって政権運営は機能不全に陥り、病気を理由に2007年(平成19年)8月27日に辞職し、1年も持たない短命に終わった。

 あとに続いた麻生太郎政権も、福田康夫政権も、ねじれ国会を安倍遺産として困難な政権運営を強いられて、前者は一年未満、後者は一年丁度で政治の舞台を去ることになって、2009年8月30日の衆議院選挙で民主党に政権を譲り渡すことになった。

 だが、2012年9月26日に自民党総裁に返り咲いた安倍晋三は民主党政権4年間の不人気に助けられて2012年(平成24年)12月16日の衆議院選挙で解散前118議席から176議席増の294議席、公明党31議席と合わせて325議席獲得、一方の民主党は解散前230議席から173議席減らし、57議席となり、政権を渡すことになった。

 このような屈辱的な名誉喪失と名誉回復の変転が安倍晋三をして選挙の勝利こそが政権運営の始まり、いわば選挙に勝たなければ、政権は維持できないんだ、"選挙の勝利こそが全て"と肝に銘じさせ、それが執念と化し、凝り固まることになったに違いない。選挙に負けたら、自分の政治は思い通りには動かせない。選挙に勝ちさえしたら、自分の政治は思い通りに動かせる。

 その好例は先ず第一番に消費税増税の選挙を使った2度の延期を挙げることができる。一般国民の最大の利害は"生活"だと熟知し、選挙に利用した。野田内閣が2012年3月に消費税増税を含む社会保障•税一体改革法案を国会に提出、2012年6月に民主、自民、公明の3党が同法案について消費税率を2014年4月に8%、2015年10月10%に引き上げる内容で修正合意し、2012年8月に法案(「社会保障と税の一体改革関連法」)が成立した。

 2012年12月26日に第2次安倍政権が発足し、法律に基づき、2014年4月に消費税率8%に引き上げたものの、前年2013年10月に消費税率8%への引き上げを閣議決定していたから、駆け込み需要が発生、一般国民はトイレットペーパーや調味料等の長期保存の効く生活用品の買い溜めが精々だったが、富裕層は住宅や車等の高額商品の先買いに走った。

 増税前とか商品の値上がり前は先買いに走ってしまうのは人情だが、この消費税増税前の駆け込み需要の所得層に応じた金額差はアベノミクスが格差ミクスを正体としていたことに関連付けると、何か象徴的である。但し駆け込み需要が反動を招いて、増税後の消費活動が停滞、景気の悪化を招いた。

 このことに懲りたのだろう、安倍晋三は2014年4月の消費税率8%への増税から約8ヶ月後、2015年10月の消費税率10%への増税予定から遡ること約1年前の2014年11月18日の記者会見で3党合意に基づいた法律を曲げて10%増税の2017年4月への先送りを表明。この判断の是非について国民の信を問うためとの口実のもと、任期を約2年を残して解散を行い、2014年12月14日に衆議院選挙を行うことにした。

 自民党は選挙前議席から4議席減、海江田万里代表の民主党は政権運営で評判を落としたものの、逆に10議席増を獲得。僅かでも民主党に有利な結果をもたらした状況を受けて、消費税増税を延期しておいてよかったと胸を撫で降りしたに違いない。もし増税を予定通りとしていたなら、マイナス4議席で済まなかった可能性は否定できない。増税によってさらに消費が冷え込み、経済が悪化したなら、政権の命取りになりかねないことを予測し、増税延期の手を早めに打ったはずだ。

 この選挙によって衆議院議員の任期は2017年12月13日までとなるが、2016年6月1日の記者会見で2017年4月へと先送りした消費税10%への増税を何だかんだと理由をつけて2年半も先の2019年10月に再延期すると表明。

 その何だかんだの一部を見てみる。

 「1年半前の総選挙で、私は来年(2017年)4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました」

 「1年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました。リーマンショック級や大震災級の事態が発生しない限り、予定どおり来年4月から10%に引き上げると、繰り返しお約束してまいりました」

 「内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。そう判断いたしました」

 「2020年度の財政健全化目標はしっかりと堅持します。そのため、ぎりぎりのタイミングである2019年10月には消費税率を10%へ引き上げることとし、30カ月延期することとします。その際に、軽減税率を導入いたします。」

 「信なくば立たず。国民の信頼と協力なくして、政治は成り立ちません。『新しい判断』について国政選挙であるこの参議院選挙を通して、『国民の信を問いたい』と思います」

 この2016年6月1日の記者会見からほぼ1ヶ月10日後の2016年7月10日の参院選挙で自民党は+6議席、岡田民主党は-13議席。生活を最大の利害としている一般国民の、それゆえに抱えることになる消費税増税への忌避感を巧みに和らげることに成功した。

 "選挙の勝利こそが全て"が執念と化した状況を手に入れるために増税の時期を巧みに操作する消費税の政治利用を敢行した。

 2014年12月14日の衆議院選挙から任期を1ヶ月半余を残して解散し、打って出た2017年10月22日の衆議院選挙に備えて10%への増税が2年も先の2019年10月からだと言うのに消費税をちゃっかりと選挙に利用している。

 2017年9月25日記者会見。

 安倍晋三「再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。

 この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。増税分を借金の返済ばかりでなく、少子化対策などの歳出により多く回すことで、3年前の8%に引き上げたときのような景気への悪影響も軽減できます」

 そして、「(9月)28日に、衆議院を解散いたします」と解散を宣言。そして2017年10月22日投票の結果、自民党は解散前284議席に対して獲得284議席の±0、枝野立憲新党は新党への期待値からか、解散前15議席に対して獲得55議席の+40議席。民主党後継の前原民進党が合流した新党小池百合子希望の党が解散前57議席に対して獲得50議席の-7議席。

 有権者の選挙への関心を呼び起こすために2年も先の消費税10%増税を持ち出して、その税収は社会保障の充実と借金の返済に当てるべきところを少子化対策を含めた子育て世代への投資にまで広げるといい事尽くめのバラマキで自民党への投票を誘導しようとしたのだろうが、如何せん、2年も先の増税を争点化したのだから、生活が最大の利害と言えども切実感は湧かず、しかも選挙のたびに同じ手を繰り返されたのでは新鮮味を失う。

 だが、議席の獲得がどうであったとしても、消費税増税を選挙での票の獲得に利用したという点では、選挙に勝つためには何でも利用する、"選挙の勝利こそが全て"とする執念を示していることに変わりはない。

 安倍晋三は毎年4月に神宮外苑で行われる首相主催の「桜を見る会」でも、本人が主催の際には参加者の募集で票と結びつけていた疑いが出て、国会で追及を受けている。勿論、本人は否定している。2019年12月2日参議院本会議での共産党参議院議員田村智子の代表質問に対して次のように答弁している。文飾は当方。

 安倍晋三「『桜を見る会』への私の事務所からの推薦についてお尋ねがありました。私の事務所に於いては内閣官房からの依頼に基づき後援会の関係者を含め地域で活躍されてるなど、『桜を見る会』への参加にふさわしいと思われる方を始め、幅広く参加希望者を募り、推薦を行っていたところであります。その過程に於いて私自身も事務所からの相談を受ければ、推薦者についての意見を言うこともありましたが、事務所を通じた推薦以外は行なっておりません。

 他方、繰り返しになりますが、『桜を見る会』の招待者については提出された推薦者につき最終的に内閣官房及び内閣府に於いて取り纏めを行っているところであり、私の事務所が申し込めば、必ず招待状が届くものではありません」――

 最終的な参加者決定は内閣官房及び内閣府が行っていて、我々が関知しないことであり、選考から漏れる場合があるとしている。事実かどうか見ていく。

 内閣官房・内閣府による《「桜を見る会」開催要領》によると、招待範囲は皇族、元皇族から始まって各国大公使等、衆参両議長、副議長、最高裁長官、国会議員、省庁事務次官や局長、都道府県知事、都道府県議会議長等であり、それ以外の一般人ということか、「その他の各界代表等」となっている。招待人数は「計 約1万人」。〉

 ところが、「桜を見る会」(Wikipedia)を見ると、小泉政権で1万人を割っていた招待客が最後の2006年に1万1000人となり、福田内閣が1万人、麻生太郎が1万1000人、鳩山由紀夫が1万人。安倍晋三の第2次が始まって最初の年が1万2000人、年々増えていって、参議院の選挙があった2019年4月の出席者数は約1万8200人、募集人数の約2倍近くまで膨れ上がっている。
 
 要するに内閣官房・内閣府による招待可否の選別は見えてこない。因みに予算額は第二次安倍政権最初の2013年は1718万円だったのが翌年から1766万6000円と増え、最後の2019年は1766万円で、6千円の減額となっているが、支出額は毎年2倍近く、あるいは2倍以上となり、最後の7月に参議院選挙のあった2019年4月は予算額1766万円に対して3倍以上の5518万7000円にまで膨れ上がっていて、この理由を内閣府大臣官房長は国会答弁で、「テロ対策の強化や混雑緩和のための措置」としているが、テロ対策と混雑緩和措置は別々に行う課題ではなく、混雑緩和がテロ対策に役立つ関係から同時並行で行う作業で、しかもテロの脅威が差し迫っている状況なら、飛び抜けた予算が必要な場合も考えられ、予算額の倍以上、あるいは3倍以上となる可能性も生じるが、差し迫っているわけでもない以上、予算額の1.5倍程度なら理解できるが、常識的に言って、2倍以上、3倍以上は考えられないことで、支出額の面からも予算額の範囲内に収める"招待客絞り"は見えてこない。

 安倍後援会事務所も「平成31年4月13日(土)」の日付けで〈内閣府主催「桜を見る会」参加申し込み〉の用紙を後援会員向けに配っている。以下、書き込み欄以外の全文をテキストにして抜き出してみた。

 FAX:083-(ぼかし)あべ事務所行

 内閣府主催「桜を見る会」参加申し込み
   平成31年4月13日(土)

 《記入についてのお願い》
※ご夫妻で参加の場合は、配偶者欄もご記入ください。
※後日郵送で内閣府より招待状が届きますので、必ず、現住所をご記入ください。
※参加される方が、ご家族(同居を含む)、知人、友人の場合は別途用紙でお申し込みください。 (コビーしてご利用ください)
※紹介者欄は必ずご記入ください、(本人の場合は「本人」とご記入下さい)
※前日の「夕食会」「観光」「飛行機」等につきましては、後日、改めて参加者の方にアンケートさせていただきます。

 そして氏名(参加者、配偶者)や性別、生年月日、現住所、連絡先(自宅、携帯)等を書き込む欄となっている。

 最初に断っておくが、政治家の後援会員を「桜を見る会」の招待客の対象とすること自体が間違っている。その後援会員が「各界代表等」の該当者であったとしても、後援会員としては一政治家を選挙で当選させる利益のために活動しているのであって、それが国のためになると考えていたとしても、各界代表等」の活動とは別物である。「桜を見る会」の招待客としてふさわしいかどうかは本人が職業として、あるいはボランテティアとして専門に活動し、所属している団体、あるいは所属している地域の公共団体の総意を受けた推薦に負わなければならないはずである。当然、後援会の代表者である政治家には自身が受けている利益の見返りとなる政治利用に当たることになって、推薦する資格はないことになる。

 だが、安倍晋三はこの道理を無視して、既に上に挙げているが、自身の後援会を通して自らも招待を行っているばかりか、内閣官房・内閣府の「桜を見る会開催要領」の「その他の各界代表等」に当てはめ、それを口実に安倍後援会を通した招待を正当化している。

 2019年11月8日の参議院予算委員会での共産党田村智子に対する答弁。「『桜を見る会』についてはですね、各界に於いて功績・功労のあった方々をですね、各省庁からの意見等を踏まえ、幅広く招待をしております。招待者については内閣官房及び内閣府に於いて最終的に取り纏めをしているものと承知をしております」

 「各界に於いて功績・功労のあった方々」であったとしても、安倍晋三後援会事務所を通して推薦した場合、安倍晋三の選挙のために活動している利害関係者に当たることから、その見返りの招待ということになって、政治の私物化、あるいは職権乱用以外の何ものでもない。

 要するに安倍晋三が「私の事務所が申し込めば、必ず招待状が届くものではありません」と国会答弁していることに反して、推薦=招待となっていることと、このことが政治利用のシステムとしていた。

 第一番に安倍後援会事務所の「参加申し込み」案内状のどの文面を見ても、招待されないケースがあり得ることの断りを入れた、あるいは断りを窺わせる文言は見当たらない。

 逆に参加申し込みがそのまま招待を意味することを暗黙の了解とした文章の作りとなっている。最初の、〈※ご夫妻で参加の場合は、配偶者欄もご記入ください。〉は、招待の案内はするが、招待決定は安倍事務所から離れて内閣官房・内閣府に委ねられ、招待の選から漏れるケースがあるとの断りがないままで選から漏れた場合は夫妻同伴で招待を画策した意味を失い、相手に対して不愉快な感情を与えるばかりか、後援会から離れるキッカケや選挙活動に不熱心となるキッカケを与える場合も考えられることで、自らの無責任が作り出した不利益を回避するためにはお知らせ=招待となっていなければ、整合性は取れない。

 〈※後日郵送で内閣府より招待状が届きますので、必ず、現住所をご記入ください。〉にしても、"参加申込=招待状郵送"を意図した文言であって、安倍晋三が、"あべ事務所が申し込んでも必ずしも招待されるわけではない"と国会答弁したこととは齟齬する文言となる。

 〈※参加される方が、ご家族(同居を含む)、知人、友人の場合は別途用紙でお申し込みください。 (コビーしてご利用ください)〉も、"参加申込=招待状郵送"を絶対前提とした案内そのものとなる。篩に掛けるが事実なら、本人だけが招待される、あるいは本人以外が招待される可能性も考慮することになって、このような文面の「参加申し込み」はできないことになるからだ。

 こういった無規律な参加者募集が2019年4月の「桜を見る会」では内閣官房・内閣府が招待客を約1万人としながら、2倍近い1万8千人も出席させることになったとしなければ、常識的な納得は得ることはできない。もし内閣官房・内閣府が篩にかけていたなら、自分たちが前以って想定していた1万人前後の範囲内に収めていたはずである。総理大臣主催なのだから、総理大臣側の圧力、あるいは横槍がなければ、1万人を遥かに超えた、1万8千人分もの招待状を発行することはないし、支出額が予算額の3倍以上も超過することもなく、淡々と事務処理して招待人数も支出額も予定内に収めていたはずだ。

 要するに安倍晋三の、「私の事務所が申し込めば、必ず招待状が届くものではありません」は虚偽答弁そのものだと断定できる。

 安倍後援会事務所への功労の見返りに「桜を見る会」に招待し、それぞれの自尊心を満足させ、自らは選挙での票の見返りを期待する政治利用を行った。  

 このことは参議院自由民主党事務局総務部が2019年7月の参議院選挙の改選議員に向けて平成31年1月31日の日付けで発信した、《「桜を見る会」のお知らせ》が何よりの証拠となる。文飾は案内状通り。

 〈一般の方(友人、知人、後援会等)を、4組までご招待いただけます。〉――

 直接的な当人以外であっても、申込みさえすれば、招待状が郵送されることを保証しているからこそ、下線を付け、文字を太くしてまで強調できる。その逆はあり得ない。しかも内閣官房・内閣府の《「桜を見る会」開催要領》が「その他の各界代表等」としている制限には何ら触れない、それを無視した「一般の方」までも対象者に含めた招待内容となっている。この無差別性が自民党改選議員を対象とした選挙利用の「お知らせ」であることを明らかに物語ることになる。約1万人が約1万8千人にまで膨れ上がったのは当然である。

 安倍事務所や参議院自由民主党だけではなく、自民党幹部の萩生田光一以下、それぞれの議員の後援会員を無差別に招待している点からして(後援会員の中にはどの点が「各界代表」と言えるのか不明の、選挙のウグイス嬢まで招待している点が招待の無差別性を如実に物語っている)、安倍内閣ぐるみの選挙利用と指摘できる。

 総理大臣主催の公の行事である「桜を見る会」の参加者招待を選挙利用の対象とする。安倍晋三の"選挙の勝利こそが全て"の執念が向かわせた選挙利用、権力の私物化と見るほかない。その根性の程度を知ることになる。

 結果、2012年12月の衆議院選挙を皮切りに衆議院選挙3回、参議院選挙3回、計6回の選挙を6戦全勝とすることができた。野党は安倍晋三の消費税増税延期を巧みに操った選挙利用、安倍晋三が中心的役割を果たした旧統一教会と多くの自民党議員を介した選挙利用、「桜を見る会」の参加者招待を対象とした選挙利用、政治資金パーティのノルマ超の売上を現金還付して収支報告書不記載とした以上、選挙資金として自由に使える裏ガネに資金洗浄したことになる選挙利用を国会追及したものの、不発のまま終わらせ、最終的に7年8ヶ月という長期政権を許した。

 結果、有権者の側は多くが疑いの目を持ったとしても、内心の怒りを中途半端な状態で抑えつけられ、怒り未満のその欲求不満が今回の選挙での反自民の票の程度となって現れることになり、一発で政権交代を決める場所にまで到達することができなかった。

 世論調査を見ると、現在でも政治とカネの問題について「けじめがついていない」と見る世論は高く、裏ガネ収支報告書不記載問題の真相解明の国会追及だけではなく、旧統一教会の問題も、現在、解散命令請求を東京地裁に出している関係から、裁判の行方次第では再び世間を賑わすことになり、安倍晋三を中心人物とした自民党内での旧統一教会との関係、その政治利用に関わる真相解明を求める声が再度高まり、その高まりに応えた野党の国会追及が成果を上げることができたなら、怒り未満の欲求不満は怒りそのものへと解放され、自民党への懲罰の形を取り、来夏の参議院選挙で野党の票へと向かう、そういった空気を作り出すことができたなら、ねじれ国会も夢ではなく、ねじれ国会を出発点として、野党連合という形であっても、政権交代も視野に入ってくる。
 
 要するに政権交代の怒りを作り出すには自民党という政党の在り方に対する国会追及を貫徹・成功させることが絶対条件となる。
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