蓮舫を叩く:過去の事業仕分けを成功体験とする都知事選立候補会見のハンパない自己正当化バイアス

2024-11-19 08:33:55 | 政治

蓮舫は国民の声は小池都政のリセットを望んでいるとしながら、都民の大多数をしてリセットを望む声に変えるだけの発信力を持っていなかった自覚はゼロ

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 蓮舫は2024年5月27日午後、党本部で記者会見して、7月の東京都知事選挙への立候補を表明した。

 蓮舫「国民の声は、裏金議員や政治とカネの問題がある自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしいというものだ。その先頭に立つのが私の使命だ」(NHK NEWS WEB記事)

 そして「小池知事が掲げた7つのゼロの公約はどこに行ったのか」と述べ、「改革するのが私の政治の原点」だ、いわば公約実現に向けた有言実行をアピール、財源は改革の果実で捻出、その果実で弱者救済を訴えたという。

 「小池都政をリセットしてほしい」という「国民の声」が実際に挙がっていたのなら、あとはその「リセット」を蓮舫に託したいという期待に振り向けさせる発信力の問題となるが、そういった声が挙がっていなければ、都民の大多数を以ってしてリセットは当然だとする納得の声に変えることができるか否かのこれまた蓮舫自身の発信力の問題となる。

 但しリセットを望む声をマスコミが伝えていた記憶はないから、納得の声に変える発信力に相当な自信を持っていなければならないが、そういった自覚があって、「国民の声」を持ち出したかどうかは自身をアピールする目的のパフォーマンスは得意という彼女の性格からして疑わしい。

 いずれにしても選挙結果からして、リセットを望む「国民の声」は存在しなかっただけではなく、蓮舫は都民の大多数をしてリセットを望む声に変えるだけの発信力は持っていなかったことになる。

 但しこのことに対する自覚は都知事選敗北後に行った自身のインスタライブからはその影さえも窺うことはできないから、その無自覚は疑う思考習慣を持たない場所、あるいは相対的思考力が働かない場所に根差すゆえに「常に自分の考えは正しい」とする自己正当化バイアスに強く影響を受けていることになる。多分、悪いのは蓮舫に投票しなかった都民ということになるのだろう。

 2024年7月7日の都知事選投票日を前に現職の小池百合子、参議院議員蓮舫、広島県安芸高田市元市長石丸伸二、航空自衛隊元航空幕僚長田母神俊雄4人の東京都知事選立候補予定者共同記者会見(日本記者クラブ主催)が2024年6月19に行われた。
 
 最初に4人が主たる政策の主張を書き入れたフリップを掲げて、「1分間の政策主張」を行っているが、その発言のみを取り上げてみる。特に蓮舫の場合、自己正当化バイアスそのものがこの1分間の政策主張に現れていて、それがハンパない事例として取り上げるのはこの発言のみで十分と見る。

 東京都知事選立候補予定者共同記者会見(日本記者クラブ/2024年6月19)
 
 石丸伸二(フリップ『政治屋の一掃』)「私の政策、さらに言うなら、掛け声です。『政治屋の一掃』。仕事をする振りをして、一向に成果を上げない、そんな政治屋を一掃したいとこれまでずっと考えてきました。

 (大きな声で)『恥を知れ、恥を』。これが国民の思いだと思っています。東京都知事選は日本全国の関心事になるはずです。東京が変われば、日本が変わります。東京の政治が変われば、日本の政治が確実に変わります。是非私達の力で東京を動かしてください」

 小池百合子(フリップ『首都防衛 命、暮らし、防災、経済』)「私はこのように『首都防衛』に力を込めています。もっとよくなる『東京大改革3.0』を続けてまいります。3期目の挑戦をさせて頂きます。未来を、子どもや子育てを守る。その世界を守っていきます。物価高など厳しい環境から生活を守ってまいります。国会協調など一括で(?)経済を守り、かつ成長させていかなければなりません。

 自然災害も激甚化させております。都民の命と東京の未来を守る戦い、これを都民のみなさまに訴えていきたいと思います。2期8年、全公約164の項目の90%を達成、そして推進を致しております。コロナ禍の中でなかなかできなかったものもございますけども、2期8年の東京大改革、さらに歩みを進めてまいります。そして都民のため都民とともに世界で1番の都市、東京にして参ります」

 蓮舫(フリップ『若者の手取り増 都、ガラス張り』)「若者の手取りを徹底して増やす。そして都をガラス張りにする。この2点です。若い人たち、残念ながら、貧困から抜け出せない方が、奨学金の負担、雇用の不安、徹底的に取り戻す。若者が元気になれば、今まで諦めていたことを諦めないで済むようになると思います。そして自分の人生を歩んでいくことができる。それは結果として税収、社会保険料の増に繋がります。

 そして企業を支えていく持続可能な、そんな東京都を作りたいと思っております。

 私の専門分野です、行政改革。東京都の行革を進めます。小池都知事が進めてくれたデジタル化、さらにその先へ。都の財政に東京は事業レビューシート(?)と言います。約6000の事業。どこで誰がいつ、どのように使ったのか、契約、どんな遣り方なのかもしっかりと公表する。

 そして収めた税金が何に使われているのか。もしここで果実が出たら、躊躇なく、若者に、現役世代に、シニアに振り分けて行きたいと思います」

 田母神俊雄(フリップ『結果を出す政治 都民の安全と豊かな暮らし』)「私はですね、『政治は結果である』。結果を出す政治でなければいけない。都政は都民の安全と豊かな暮らし、これを実現しなければならないと思います。しかしこの15年を見ているんですね。都はより安全になったのか。暮らしは豊かになったのか。なってはいないんではないのか。だから、この公約を掲げてもですね、結果が出ていなければ、意味がないと思うんですね。公約の良し悪しよりはですね、その人は本当に実現能力あるのかと、その実行能力を十分に判断して頂きたいというふうにむしろ思います。

 私は自衛官だったんですけれども、防衛省に於ける行政経験を通じた行政をどういうふうに改善していくかというノウハウは弁えているつもりです。是非、私に任せてほしいというふうに思います。ありがとうございました」
 
 蓮舫は行政改革は私の専門分野だと言い、都の約6000の事業を仕分けし、「もしここで果実が出たら、躊躇なく、若者に、現役世代に、シニアに振り分けて行きたい」と宣言した。

 「行政改革」とは省庁等の国の行政機関の人材の配置面を含めた組織運営の適正化、効率化、予算編成と予算に基づいた事業推進の適正化、効率化等を図ることを言う。組織自体をより活性化の方向に持っていく。

 蓮舫が「約6000の事業。どこで誰がいつ、どのように使ったのか、契約、どんな遣り方なのかもしっかりと公表する」と言っていることは各予算に基づいて実施することになった、あるいは既に実施している事業の必要性や予算や事業の進め方のムダを点検し、廃止、見直し等を含めて予算と事業の適正化を図っていく事業仕分けのことで、いわば行政改革の主たる手段の一つに事業仕分けを位置づけているということであるはずだ。

 但し、「私の専門分野です、行政改革」と言い切ることができたのは行政改革を成し遂げ得たかどうかは不明だが、過去に事業仕分けを経験し、成功を収めたと見ているからこその自信の現れであって、そのことを自らの成功体験としているからこそであろう。

 蓮舫は2010年6月8日に菅内閣発足により行政刷新担当大臣として初入閣を果たし、2009年(平成21年)11月から始まった事業仕分けに仕分け人として参加し、その舌鋒鋭い追及をマスコミは華々しく取り上げた。

 では、金額分でどのくらいムダがあったのか、次の記事から見てみる。

 『民主党時代の経済・財政政策(3)ポピュリズムと財政赤字』(小峰隆夫の経済随想 私が見てきた日本経済史(第110回)日本経済研究センター/2022/11/18)

 〈鳩山内閣は、大きく膨らんだこの10年度予算の概算要求を3兆円以上削減することを目指して「事業仕分け」を行うこととした。
  ――中略――
 問題はその成果だが、行政刷新会議の報告によると、仕分けの対象となった事業のうち、必要性が乏しい事業を「廃止」や「予算削減」としたことにより、約7400億円が削減された。さらに公益法人や独立行政法人の基金のうち約8400億円を国庫に返納するよう求めた。両者を合わせると、仕分け効果は総額で約1兆6千億円となった。目標の3兆円には全く届かなかったわけだ。

 このことは「無駄を削る」という掛け声だけでは予算を圧縮する効果は乏しいことを物語っている。そもそも、それぞれの事業は何らかの必要性に基づいて企画され、予算措置が取られているものであり、「これは無駄」「これは無駄ではない」と簡単に分けられるようなものではない。無駄を削るという考え方もまた、あまりにもナイーブだったのだ。〉――

 記事は何らかの必要性に基づいた予算措置だから、ムダを基準に簡単に分けられないとしているが、国管理の空港のうち、大東京という地の利に恵まれているのだろう、羽田空港のみが黒字で、その他の成田を筆頭に新潟、徳島、鹿児島、高知、大分、小松等々の空港は赤字となっている。

 要するに必要性の見間違いによってムダな事業が存在する場合もあることになるから、"必要性"の視点からだけでムダの存在が排除されるわけではない、

いずれにしても、民主党の事業仕分けがマスコミに騒がれた程にはムダの削減によって望み通りの財源を生み出したわけではなかった。さらに民主党菅内閣の「マニフェスト2010」に、〈10.自公政権で行われた2010年度予算概算要求を各府省の政務三役が政治主導で見直し、1.3兆円の予算を削減しました。

11. 事業仕分け
  公開の場で一つひとつの事業を外部有識者などが検証する「事業仕分け」で政策効果の低い事業の凍結や、天下り法人などの「中抜き」を見直した結果、約2兆円の財源を確保しました。〉と書いているが、前政権の予算と事業は政治主張や政策の違いから見直しやすく、そのことに応じてムダと指摘できる項目も多々あることになる。

 だが、新政権が新たに編成した予算と関連事業は自らが準備した予算と事業である手前、基本的にはムダは極力あってはならないことになる。でなければ、自らムダを作って、自らムダを指摘し、その予算を削る、あるいは見直すというマッチポンプな事業仕分けを結果的に演じることになるからだ。

 大体が前政権の事業仕分けを行った手前、自らの政権が予算を組む場合、その段階で見直しを必要としない、当然、ムダと指摘されない内容の予算を組む責任を負っていることになるから、事業仕分けからのそれなりに期待できる財源の捻出は政権交代の一年にほぼ限定されることになる。

 以上のような事業仕分けというものの性格を蓮舫が都知事選に当選して、都知事になった場合に当てはめてみると、東京都の事業仕分けを行うとしても、最初の事業仕分けは小池百合子が編成した予算とその事業が対象になるから、それなりのムダな財源を捻出できるとしても、次に都知事である蓮舫自身のもとで編成した予算と事業に対する事業仕分けはムダを指摘することも、事業の廃止や見直しを求めることも自己矛盾を曝すことになって、できにくくなり、その点に何がしかの財源を求めること自体が矛盾することになる。精々できることは事業を行ってみて、カネの使い道にムダがなかったか、改善点はなかったか、費用対効果はどうだったかなどなどを検証することぐらいだろう。

 蓮舫はこういったことを民主党政権時代に拝命した行政刷新担当大臣として臨んだ事業仕分けで経験していて、自らの知識・情報としていたはずである。

 だが、都知事選立候補者の共同記者会で、「私の専門分野です、行政改革」と言い切り、「収めた税金が何に使われているのか。もしここで果実が出たら、躊躇なく、若者に、現役世代に、シニアに振り分けて行きたいと思います」と各世代に満足の行く形でそれぞれの要望を充足できる財源の捻出ができるかのように発言したのは、事業仕分けが持つ性格を考えもせずに民主党時代の事業仕分けを世間一般の受け止めとは異なり、成功体験としているからではなくてできないはずだ。

 要するに民主党政権時代の事業仕分けに対する一般的な評価を頭に置くことができない、この感性はやはり「常に自分の考えは正しい」とする自己正当化バイアスが仕向けることになっている心理傾向であろう。

 当然、事業仕分けが政策財源の一つの大きな捻出対象であるかのような発言は控えなければならなかった。若者・現役世代・シニア等の生活者を重点的な政策対象と考えているなら、それらの対象を優先順位に位置づけていることを周囲が理解できる6兆円余の都の財源を配分した政策を直接的に示すべきだった。事業仕分けは政策ではなく、単なる検証作業に過ぎない。

 だが、逆に事業仕分けが政策財源の主要な捻出対象であるかのような印象を与えてしまった。やはり民主党政権時代の事業仕分けを成功体験としていて、大いなる自身の勲章としているからに違いない。

 蓮舫が民主党政権時代の事業仕分けで、「スパコンは世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか」と発言、次世代スーパーコンピュータ「京」の開発計画が一時凍結された際、当方は蓮舫を擁護するブログ記事を書いた。勿論、予算削減を視野に入れた必要性の方向から擁護したわけではない。記事題名を見れば、一目で分かる。

 《スパコンは世界1位でなくても2位、3位であってもいい、日本人の創造性世界1位を目指すべき》(『ニッポン情報解読』by手代木恕之)

 いくら計算速度の早いスーパーコンピューターを作ったとしても、計算速度が早いというだけの箱物であって、必要とする創造性を与えてくれるわけではない。当時、スーパーコンピューターが新薬開発に画期的なまでのスピードアップを与えると期待されていたが、どのような成分の化学物資を配合したら特定の病気に対して有効性が期待できるかは人間の頭が司るのであって、スーパーコンピューターが司るわけではない。

 それが証拠にコロナが収束するまでに日本は国産のコロナワクチンを製造することができずにアメリカやドイツのワクチンに頼った。

 尤も最近はAIが機械に記憶させた過去にまで遡った膨大な資料の中から必要とする情報を瞬時のうちに拾い出してくれるが、その情報を生かすのも殺すのも、やはり人間の創造性にかかることになる。

 AI技術の構築と発展に日本が遅れを取ったのはその方面の創造性が不足していたからだろう。

 最後は余談になったが、自己正当化バイアスに陥ることも創造性の欠如が一因となる。
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