第2次安倍政権発足の2012年12月26日の翌年2013年1月11日に安倍政権は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定している。
東日本大震災からの復興・防災対策に関わる対策を羅列してから、「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化等」と題して、〈命と暮らしを守るために緊急に必要とされるインフラの再構築のため、老朽化対策、事前防災・減災対策を抜本的に強化し国土強靭化を推進する。また、東日本大震災の経験を踏まえ社会の重要インフラ等の防御体制の整備を進めるとともに、子どもの命を守る学校の耐震化・老朽化対策等の防災対策を推進する。さらに、緊急に必要な大規模な災害等への対応体制を強化する。〉と謳い上げている。
「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化」とは自然災害に強い国土造りを目標に置いていることになる。
この対策に基づいてなのだろう、2013年12月11日に「国土強靭化基本法」が公布・施行された。その前文は次のように謳っている。
〈我が国は、地理的及び自然的な特性から、多くの大規模自然災害等による被害を受け、自然の猛威は想像を超える悲惨な結果をもたらしてきた。我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉
そのため大規模自然災害等に対する国家危機管理として、〈今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて早急に事前防災及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害等に強い国土及び地域を作るとともに、自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。〉
この法律に基づいて2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定し、3年間を国土強靭化集中期間(第一段階)と目標設定して、15兆円の追加投資を決めている。
2018年9月20日、安倍晋三は自民党総裁選3選を受けて自民党本部で記者会見している。告示は9月7日、開票は9月20日。
安倍晋三「あわせて、この夏は猛暑による熱中症も相次ぐなど、全国の皆さんが、近年の急激な気象の変化、それに伴う自然災害の増加に、大きな不安を抱えておられます。この総裁選挙でも、全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました。
強靭なふるさとづくりは、待ったなしの課題です。直ちに着手いたします。被災地の復興を加速することとあわせ、小・中学校へのクーラー設置やブロック塀の安全対策など、急を要する対策について、来たる臨時国会に補正予算を提出する考えであります。速やかに編成作業を開始します」
2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定した国土強靭化集中期間の3年間は2016年6月に期限切れとなっている。当然、3年間が過ぎて、新たに3年間を期限とした国土強靱化基本計画を策定していなければ、安倍晋三の発言は出てこない。
自民党総裁選から約2ヶ月半後の2018年12月14日に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を閣議決定している。自然災害に触れている箇所を一箇所拾ってみる。
〈(1)大規模な浸水、土砂災害、地震・津波等による被害の防止・最小化
突発的又は広域かつ長期的な市街地等の浸水、大規模な土砂災害、火山噴火、地震による住宅、建物等の複合的・大規模倒壊や不特定多数が集まる施設の倒壊、広域にわたる大規模津波等のほか、密集市街地等における大規模火災により多くの人命・財産が失われる事態や、農地・森林等の被害による国土の荒廃に伴い複合災害・二次災害が発生する事態を回避する必要がある。
このため、これらの自然災害による被害を防止・最小化するために必要な対策のうち、近年の自然災害発生状況に鑑み、特に緊急に実施すべき対策を実施する。〉
この国土強靱化基本計画を前以って念頭に置き、総裁選挙で、「全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました」と言ったことになる。
だが、初めに口にすべきは最初の「お約束」をどの程度果たすことができたか、できなかったかであって、その成果の程度に応じてどのような見直しを行ったのかの説明であろう。その説明がないのは矛盾を通り越して、誤魔化しそのものとなる。実効性ある、3年間という期間を置いた国土強靱化基本計画だったのか、どうだったのか。
安倍晋三は新しい「お約束」を「直ちに着手いたします」と言っているが、「直ちに着手」は最初の「お約束」も同じであって、そうである以上、なおさらに前の3年間の「お約束」の果たし具合を明らかにしなければならない。
「国土強靱化の経緯」(総務省)を見ると、このページの作成日は表示されていないが、「国土強靱化基本計画(2014年6月)」と、「国土強靱化基本計画の見直し(2018年12月)」の2事例しか載っていない。この見直し以外の見直しはないことになる。3年間という期限から見ても、2018年12月からの3年間は2020年12月となるから、新たな見直しは2020年12月以降となることになって、余すところ5ヶ月という、新たな3年間の最終局面にかかっていることになる。
2018年11月27日に首相官邸で第2回重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議が開催され、安倍晋三は2018年12月の見直しについて前以って発言している。
安倍晋三「近年、災害が激甚化する中、国民の命を守る防災・減災・国土強靱化を進めることは重要かつ喫緊の課題であると痛感しています。このため、重要なインフラが災害時にしっかりとその機能を維持できるよう、洪水や土砂災害対策のためのインフラのほか、災害時に拠点となる病院など防災のための重要インフラについて、また電力や交通インフラのほか、水道や食料に関する施設など国民経済、生活を支える重要インフラについて、総点検を実施し、本日取りまとめました。
この総点検の結果などを踏まえ、特に緊急に実施すべきものについて、達成目標、実施内容、事業費等を明らかにした防災・減災・国土強靱化のための3カ年緊急対策として年内に取りまとめます。国土強靱化基本計画にも位置付けた上で、3年間集中で実施してまいります。各大臣におかれては、強靱な故郷(ふるさと)、誰もが安心して暮らすことができる故郷をつくり上げるために、総力を挙げて対策を講じるようにお願いいたします」
安倍政権下の「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は2018年12月14日から新たな3カ年が始まり、前の3カ年に加えて、現在、4年半を経過したことになる。「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は相当に進んでいると見てもいいのだろうか。
新たな3年間の2018年12月14日から前の3カ年をプラスして4年近く経過した、現時点から9ヶ月前の2019年10月6日から2019年10月13日にかけた台風第19号と前線の影響を受けた記録的な大雨は関東地方や甲信地方、東北地方などに洪水、土砂災害をもたらし、死者91人という甚大な被害を発生させた。
マスコミ報道によると、91人の死者の7割が60歳以上だそうで、常に災害弱者を直撃する。河川の決壊は西日本豪雨の際は25河川37か所だったそうだが、今回は国と県管理の河川で5倍強の合計140箇所となっている。
その他、水道管破裂や浄水場浸水により断水が各地で起こった。これもマスコミ報道だが、浸水した面積は2018年7月の西日本豪雨の約1万8500ヘクタールを超えて、約2万3000ヘクタールに達したという。農林水産業の被害については安倍晋三が2019年10月25日夕方の首相官邸開催の「非常災害対策本部」で、「現時点で1000億円余りに上る」と発言したそうだ。
かくかように台風19号と前線の活発化は甚大なまでの記録的な被害を広範囲に与えた。この状況は自然の猛威に対して無力であることを思い知らすことになる。大きな自然災害に襲われるたびに改めてのように人間の無力を突きつけられる。
但しこの人間の無力は安倍晋三も、以下の政権閣僚も、「国土強靭化基本法」の策定に関わった役人も十分に承知していた。前のところで既に触れているように2013年12月11日の「国土強靭化基本法」の前文で、〈我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉との認識に立っているからである。
但しこのような認識に立ちながら、なおかつ安倍政権は「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」に果敢に挑戦した。つまり大規模自然災害に対して人間は無力ではあるが、それでもなおかつ人知・人力を尽くして自然の猛威を少しでもコントロールすべく、自然災害に立ち向かう姿勢を見せた。
それが最初の3カ年であり、3カ年経過後の、2021年12月に終了期限を迎える、既に1年半を経過した新たな3カ年であった。安倍政権の国土強靭化対策に、あるいは強靭なふるさとづくり対策に込めることになった人知・人力は自然の猛威に対してどれ程に楯突く力を備えることになり、その力が人間は無力だという思いをどれ程に削ぎ、逆にどれ程に希望を与える力となっているのだろうか。
2020年7月3日から熊本県、鹿児島県を中心に九州南部を襲った豪雨は熊本県内を流れる球磨川を氾濫させ、多くの人命を奪うことになった。2020年7月6日2時18分発信のNHK NEWS WEB記事は熊本県で24人が死亡、16人が心肺停止、12人が行方不明と伝えている。心肺停止12人と行方不明12人はこれまでの自然災害時の経験からすると、限りなく死者の数に入れられることになるだろう。
さらに球磨川などの2河川11カ所で氾濫等を発生させ、広い範囲での浸水、土砂災害を多数発生させているという。濁った水が家屋を、その屋根部分を残して飲み込んでいる様子や、水が引いたあとの流木が道路や家の敷地を所構わずに乱雑に積み重なって埋め尽くしている様子をニュース映像で見る限り、同じくニュース映像でこれまで見てきた自然災害の爪痕と何ら変わりなく、安倍政権の国土強靭化対策が、あるいは強靭なふるさとづくり対策が自然の猛威に楯突く人知・人力となり得ていない光景しか見えてこない。
特に球磨川の支流である「小川」が氾濫して、1階部分が完全に水に浸かった特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者の51人の生存が確認された一方で、14人もが心肺停止となったとマスコミは報道しているが、「千寿園」は球磨川とその支流である「小川」の合流点からは約400メートル離れた距離であることから、球磨川が増水によって得た水嵩と流れの勢いが支流の本流よりもより弱い水の流れを遮る壁の役目を果たして、その流れを押し返す「バックウォーター現象」によって支流の増水を招き、その増水がついには支流自身の堤を越える氾濫を誘った可能性が高い。
「バックウォーター現象」による支流の氾濫は本流との合流点から約1キロ以内で発生する危険性が高いという。「千寿園」は既に触れているように球磨川との合流点から約400メートルしか離れていない支流のすぐ脇に位置している。
事実は「バックウォーター現象」が招いた氾濫でなくても、「バックウォーター現象」は既に広く知られている知識なのだから、その危険性がある場所として何らかの人知・人力を以ってそれ相応の対策を施すべき場所ではなかったろうか。
だが、何も対策を施していなかった。施していたとしても、役に立たない対策だったことになる。
安倍晋三は7月4日の午前11時23分から同38分まで、熊本、鹿児島両県などの大雨に関する「関係閣僚会議」を開いている(時事ドットコム「首相動静」)。
「政府として、今回の大雨を踏まえ、何よりも人命第一に地元自治体と連携し、被害状況の把握、応急対策に万全を挙げています」と発言し、「各位にあっては、国民の皆様に対し、避難や大雨・河川に関する情報提供を引き続き適時、的確に行うとともに、被害が発生している地域においては、地元自治体と連携しつつ、政府一体となって、人命第一で応急対策に万全で取り組んでください。また、各地で開設されている避難所に対しては、新型コロナウイルス感染症対策も十分に考慮の上、必要な物資をプッシュ型で提供してください」等、発言している。
千寿園の14人の心肺停止は蒲島郁夫熊本県知事が7月4日午後5時前に記者団に対して明らかにしたということだから、安倍晋三は7月4日午前11時23分からの関係閣僚会議では把握していなかった情報だろうが、大きな自然災害が起きるたびにいつも、いつも「何よりも人命第一」を言い、避難所に避難している住民に対してはいつもいつも必要な物資のプッシュ型提供を口にする。
但しこういった発言は安倍政権下の「国土強靭化」対策、「強靭なふるさとづくり」対策がある程度の成功を収め、自然の猛威に対しての人間の無力感を少しは和らげ、「国土強靭化」と「強靭なふるさとづくり」に関わる安倍政権の人知・人力を国民が少しは感じ取る状況にあることを前提としていなければならない。
前提とすることができずに大規模な自然災害が発生するたびに何ら変わらない被害光景が繰り返しているなら、少なくとも被害地域に於いては対策が力となっていないからこその同じ光景でり、そうである以上、「何よりも人命第一」の発言は空疎そのものとなるだけではなく、同じく対策が力となっていないことの延長線上にある避難所の開設であり、必要な物資のプッシュ型提供にしても同じ線上にある結果論に過ぎないことになる。
対策より自然災害の猛威の方が常に上回ると言ってしまったなら、人知・人力に賭ける人間の意志力を自ら放棄することになって、自然災害対策は後追いの形を取ることになり、自然災害の猛威に追いつき、追い越すことのない永遠の追っかけっことなる。
確かに自然災害は場所を選ばない。自然災害の猛威に対してそれを防ぐ公共土木事業をいくら積み重ねても、自然災害発生場所が一歩違うと、対策は空振りに終わって、何ら変わらない被害光景を曝け出すことになる。その一方で、国土強靭化の防災・減災の公共土木工事を以ってして日本国土の全てを残らずカバーすることはカネの面(予算の面)で不可能なことも常識としているはずである。
であるなら、カネをかけない防災・減災の国土強靭化を国土を可能な限りより広く、そして可能な限りより短時間に覆う人知・人力を発揮する必要が生じる。
例えば先に例を挙げた球磨川本流から支流沿いに合流地点から僅か400メートル程離れた千寿園が支流の氾濫によって1階部分が水没、14人が心肺停止状態となったことは「バックウォーター現象」が発生しやすい場所として前以って川堤の嵩上げが必要箇所となるが、そのような場所は日本全国至るところにあって、川堤の造り替えから始めていたなら、全ての箇所の工事を終えるには気が遠くなるくらいの時間とカネを必要とし、その間に工事前の場所が大雨によって氾濫し、多くの死者を出す事態を招くことも否定できない。
但し造り替えずに強度を十分に保つ工事方法は存在する。
左側の画像は2019年10月の台風第19号で長野市千曲川の堤防が約70メートルに亘って決壊した箇所を、土木工事の土留めに使う鋼板製のシートパイルで工事終了までに新たな水害を阻止するために決壊箇所を塞いだもので、産経ニュースは「本堤防と同程度の強度がある」と伝えている。
ニュース写真で見ると、千寿園の脇を流れる支流は単なる土手で、コンクリート製ではない。コンクリート製なら、鉄筋を繋ぎにして新たに同じ幅のコンクリートを打つことで嵩上げはできるが、土手の場合は単に上に新たに土を盛っただけでは強度を保つことができず、強度を足すためには新たにコンクリート製の堤に造り変えるかする方法しかなく、工事費がかかることになる。
但し画像にあるようにシートパイルを並べて土中に打ち、現在の土手の表面からシートパイルの頭を1メートルか2メートル、大雨の際に予想される水位の高さにまで覗かせる形にすれば、嵩上げした川堤の役を果たすことになるし、シートパイルは大型重機に吊るして振動で打ち込むだけだから、さして時間がかかる工事とはならないし、シートパイルに溶融亜鉛めっきを施せば、錆びや腐食を発生しにくくして、長持ちさせることができると言う。土手から鉄板が出ていて見栄えが悪ければ、蔦を這わせるなりすれば、見栄えの悪さをカバーできる。あるいは溶融亜鉛めっきを施した場合は表面が白銀色になるから、そのまま放置しておいても、見栄えはさほど悪くならない。
さらに川の堤防決壊や増水による河川の氾濫の原因の多くは大雨による山の土砂崩れが樹木を根こそぎにして、その樹木を土砂と共に山の麓にまで滑らせ、さらに増水した川に押し流して流木とし、その流木が橋脚に引っかかって水をせき止める役目を果たすことになって、川の水を更に増水させて氾濫や堤防の決壊を誘うことにある。
このような状況を防ぐ方法は橋脚のない橋に架け替えることが最善の方法となるが、どの自治体も寿命が来た橋をすべて架け替えるだけのカネがなくて、補修、補修で誤魔化している状況にある。
となると、新規に架け替えるよりも安価に済む方法で橋脚を撤去するしかない。左側画像は2020年6月20日に開通した、周辺の渋滞緩和と東京オリンピック・パラリンピックの開催の際には選手などの輸送ルートとする目的の「海の森大橋」で、長さが250メートル、アーチ橋であって、橋脚は存在しない。
画像にあるようなアーチ部分と既存の橋に橋桁から下に出る長さで上からすっぽりかぶせることができる広さで側板をアーチの左右下部に取り付けてから、その側板を橋桁を両脇から挟む形にアーチ全体を吊り降ろす状態にして、橋脚部分を除いて、H鋼で橋桁の下から左右の側板を繋いで、アーチ全体を既存の橋に固定して、それから橋脚を抜けば、新しく橋を架け替える間の交通遮断も1日か2日で済み、仮の橋を架ける必要もなく、安価でより短時間で橋脚のない橋に架け替えることができる。
山の斜面に道路が走っていて、その道路のすぐ脇に川が流れているような地区の橋が山崩れによって発生した流木が川に流れ込んで橋脚箇所で堰を造ってしまう危険性を避けるためにはこのような方法で橋脚をなくしていくことが求められているはずである。
今回の大雨がやんだあと、住民が建物の中に流れ込んだ泥濘や道路の泥濘をスコップで掬って、ネコ車に積み、片付けるいつものシーンにお目にかかったが、再び雨が降り出してきて、遣り直さなければならないことを思い遣ってのことなのだろう、疲れて落胆した様子を見せていたが、10トンクラスの泥濘をホースで吸い取るバキュームカーを用意していれば、例え雨が降ってきて作業を中止しなければならなかったとしても、雨が止めば、人力よりも短時間で労力も使わずに泥濘を片付けることができる。
自衛隊に兵器を何百億と掛けるだけではなく、災害対処部隊の役目も負っているのだから、兵器に掛けるカネをバキュームカーにも回して、災害のたびに出動させたなら、家が流された、水に浸かったとタダでさえ落胆している被災者の労苦を軽くすることができるはずである。
安倍政権は「国土強靭化だ」、「強靭なふるさとづくり」だ、「人命第一だ」と言う割に防災・減災に向けて人知・人力を最大限に尽くしていると言えるだろうか。
毎年毎年、大雨が降る時期になると、今年もどこかで大きな被害が出ると予想しなければならないことが証明しているように、少なくとも「国土強靭化」にしても、「強靭なふるさとづくり」にしても、国民は確かさを感じ取ることができないままでいる。にも関わらず、自然災害で大きな被害が発生するたびに「人命第一」を言うのは、明らかに鉄面皮に過ぎる。
東日本大震災からの復興・防災対策に関わる対策を羅列してから、「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化等」と題して、〈命と暮らしを守るために緊急に必要とされるインフラの再構築のため、老朽化対策、事前防災・減災対策を抜本的に強化し国土強靭化を推進する。また、東日本大震災の経験を踏まえ社会の重要インフラ等の防御体制の整備を進めるとともに、子どもの命を守る学校の耐震化・老朽化対策等の防災対策を推進する。さらに、緊急に必要な大規模な災害等への対応体制を強化する。〉と謳い上げている。
「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化」とは自然災害に強い国土造りを目標に置いていることになる。
この対策に基づいてなのだろう、2013年12月11日に「国土強靭化基本法」が公布・施行された。その前文は次のように謳っている。
〈我が国は、地理的及び自然的な特性から、多くの大規模自然災害等による被害を受け、自然の猛威は想像を超える悲惨な結果をもたらしてきた。我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉
そのため大規模自然災害等に対する国家危機管理として、〈今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて早急に事前防災及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害等に強い国土及び地域を作るとともに、自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。〉
この法律に基づいて2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定し、3年間を国土強靭化集中期間(第一段階)と目標設定して、15兆円の追加投資を決めている。
2018年9月20日、安倍晋三は自民党総裁選3選を受けて自民党本部で記者会見している。告示は9月7日、開票は9月20日。
安倍晋三「あわせて、この夏は猛暑による熱中症も相次ぐなど、全国の皆さんが、近年の急激な気象の変化、それに伴う自然災害の増加に、大きな不安を抱えておられます。この総裁選挙でも、全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました。
強靭なふるさとづくりは、待ったなしの課題です。直ちに着手いたします。被災地の復興を加速することとあわせ、小・中学校へのクーラー設置やブロック塀の安全対策など、急を要する対策について、来たる臨時国会に補正予算を提出する考えであります。速やかに編成作業を開始します」
2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定した国土強靭化集中期間の3年間は2016年6月に期限切れとなっている。当然、3年間が過ぎて、新たに3年間を期限とした国土強靱化基本計画を策定していなければ、安倍晋三の発言は出てこない。
自民党総裁選から約2ヶ月半後の2018年12月14日に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を閣議決定している。自然災害に触れている箇所を一箇所拾ってみる。
〈(1)大規模な浸水、土砂災害、地震・津波等による被害の防止・最小化
突発的又は広域かつ長期的な市街地等の浸水、大規模な土砂災害、火山噴火、地震による住宅、建物等の複合的・大規模倒壊や不特定多数が集まる施設の倒壊、広域にわたる大規模津波等のほか、密集市街地等における大規模火災により多くの人命・財産が失われる事態や、農地・森林等の被害による国土の荒廃に伴い複合災害・二次災害が発生する事態を回避する必要がある。
このため、これらの自然災害による被害を防止・最小化するために必要な対策のうち、近年の自然災害発生状況に鑑み、特に緊急に実施すべき対策を実施する。〉
この国土強靱化基本計画を前以って念頭に置き、総裁選挙で、「全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました」と言ったことになる。
だが、初めに口にすべきは最初の「お約束」をどの程度果たすことができたか、できなかったかであって、その成果の程度に応じてどのような見直しを行ったのかの説明であろう。その説明がないのは矛盾を通り越して、誤魔化しそのものとなる。実効性ある、3年間という期間を置いた国土強靱化基本計画だったのか、どうだったのか。
安倍晋三は新しい「お約束」を「直ちに着手いたします」と言っているが、「直ちに着手」は最初の「お約束」も同じであって、そうである以上、なおさらに前の3年間の「お約束」の果たし具合を明らかにしなければならない。
「国土強靱化の経緯」(総務省)を見ると、このページの作成日は表示されていないが、「国土強靱化基本計画(2014年6月)」と、「国土強靱化基本計画の見直し(2018年12月)」の2事例しか載っていない。この見直し以外の見直しはないことになる。3年間という期限から見ても、2018年12月からの3年間は2020年12月となるから、新たな見直しは2020年12月以降となることになって、余すところ5ヶ月という、新たな3年間の最終局面にかかっていることになる。
2018年11月27日に首相官邸で第2回重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議が開催され、安倍晋三は2018年12月の見直しについて前以って発言している。
安倍晋三「近年、災害が激甚化する中、国民の命を守る防災・減災・国土強靱化を進めることは重要かつ喫緊の課題であると痛感しています。このため、重要なインフラが災害時にしっかりとその機能を維持できるよう、洪水や土砂災害対策のためのインフラのほか、災害時に拠点となる病院など防災のための重要インフラについて、また電力や交通インフラのほか、水道や食料に関する施設など国民経済、生活を支える重要インフラについて、総点検を実施し、本日取りまとめました。
この総点検の結果などを踏まえ、特に緊急に実施すべきものについて、達成目標、実施内容、事業費等を明らかにした防災・減災・国土強靱化のための3カ年緊急対策として年内に取りまとめます。国土強靱化基本計画にも位置付けた上で、3年間集中で実施してまいります。各大臣におかれては、強靱な故郷(ふるさと)、誰もが安心して暮らすことができる故郷をつくり上げるために、総力を挙げて対策を講じるようにお願いいたします」
安倍政権下の「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は2018年12月14日から新たな3カ年が始まり、前の3カ年に加えて、現在、4年半を経過したことになる。「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は相当に進んでいると見てもいいのだろうか。
新たな3年間の2018年12月14日から前の3カ年をプラスして4年近く経過した、現時点から9ヶ月前の2019年10月6日から2019年10月13日にかけた台風第19号と前線の影響を受けた記録的な大雨は関東地方や甲信地方、東北地方などに洪水、土砂災害をもたらし、死者91人という甚大な被害を発生させた。
マスコミ報道によると、91人の死者の7割が60歳以上だそうで、常に災害弱者を直撃する。河川の決壊は西日本豪雨の際は25河川37か所だったそうだが、今回は国と県管理の河川で5倍強の合計140箇所となっている。
その他、水道管破裂や浄水場浸水により断水が各地で起こった。これもマスコミ報道だが、浸水した面積は2018年7月の西日本豪雨の約1万8500ヘクタールを超えて、約2万3000ヘクタールに達したという。農林水産業の被害については安倍晋三が2019年10月25日夕方の首相官邸開催の「非常災害対策本部」で、「現時点で1000億円余りに上る」と発言したそうだ。
かくかように台風19号と前線の活発化は甚大なまでの記録的な被害を広範囲に与えた。この状況は自然の猛威に対して無力であることを思い知らすことになる。大きな自然災害に襲われるたびに改めてのように人間の無力を突きつけられる。
但しこの人間の無力は安倍晋三も、以下の政権閣僚も、「国土強靭化基本法」の策定に関わった役人も十分に承知していた。前のところで既に触れているように2013年12月11日の「国土強靭化基本法」の前文で、〈我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉との認識に立っているからである。
但しこのような認識に立ちながら、なおかつ安倍政権は「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」に果敢に挑戦した。つまり大規模自然災害に対して人間は無力ではあるが、それでもなおかつ人知・人力を尽くして自然の猛威を少しでもコントロールすべく、自然災害に立ち向かう姿勢を見せた。
それが最初の3カ年であり、3カ年経過後の、2021年12月に終了期限を迎える、既に1年半を経過した新たな3カ年であった。安倍政権の国土強靭化対策に、あるいは強靭なふるさとづくり対策に込めることになった人知・人力は自然の猛威に対してどれ程に楯突く力を備えることになり、その力が人間は無力だという思いをどれ程に削ぎ、逆にどれ程に希望を与える力となっているのだろうか。
2020年7月3日から熊本県、鹿児島県を中心に九州南部を襲った豪雨は熊本県内を流れる球磨川を氾濫させ、多くの人命を奪うことになった。2020年7月6日2時18分発信のNHK NEWS WEB記事は熊本県で24人が死亡、16人が心肺停止、12人が行方不明と伝えている。心肺停止12人と行方不明12人はこれまでの自然災害時の経験からすると、限りなく死者の数に入れられることになるだろう。
さらに球磨川などの2河川11カ所で氾濫等を発生させ、広い範囲での浸水、土砂災害を多数発生させているという。濁った水が家屋を、その屋根部分を残して飲み込んでいる様子や、水が引いたあとの流木が道路や家の敷地を所構わずに乱雑に積み重なって埋め尽くしている様子をニュース映像で見る限り、同じくニュース映像でこれまで見てきた自然災害の爪痕と何ら変わりなく、安倍政権の国土強靭化対策が、あるいは強靭なふるさとづくり対策が自然の猛威に楯突く人知・人力となり得ていない光景しか見えてこない。
特に球磨川の支流である「小川」が氾濫して、1階部分が完全に水に浸かった特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者の51人の生存が確認された一方で、14人もが心肺停止となったとマスコミは報道しているが、「千寿園」は球磨川とその支流である「小川」の合流点からは約400メートル離れた距離であることから、球磨川が増水によって得た水嵩と流れの勢いが支流の本流よりもより弱い水の流れを遮る壁の役目を果たして、その流れを押し返す「バックウォーター現象」によって支流の増水を招き、その増水がついには支流自身の堤を越える氾濫を誘った可能性が高い。
「バックウォーター現象」による支流の氾濫は本流との合流点から約1キロ以内で発生する危険性が高いという。「千寿園」は既に触れているように球磨川との合流点から約400メートルしか離れていない支流のすぐ脇に位置している。
事実は「バックウォーター現象」が招いた氾濫でなくても、「バックウォーター現象」は既に広く知られている知識なのだから、その危険性がある場所として何らかの人知・人力を以ってそれ相応の対策を施すべき場所ではなかったろうか。
だが、何も対策を施していなかった。施していたとしても、役に立たない対策だったことになる。
安倍晋三は7月4日の午前11時23分から同38分まで、熊本、鹿児島両県などの大雨に関する「関係閣僚会議」を開いている(時事ドットコム「首相動静」)。
「政府として、今回の大雨を踏まえ、何よりも人命第一に地元自治体と連携し、被害状況の把握、応急対策に万全を挙げています」と発言し、「各位にあっては、国民の皆様に対し、避難や大雨・河川に関する情報提供を引き続き適時、的確に行うとともに、被害が発生している地域においては、地元自治体と連携しつつ、政府一体となって、人命第一で応急対策に万全で取り組んでください。また、各地で開設されている避難所に対しては、新型コロナウイルス感染症対策も十分に考慮の上、必要な物資をプッシュ型で提供してください」等、発言している。
千寿園の14人の心肺停止は蒲島郁夫熊本県知事が7月4日午後5時前に記者団に対して明らかにしたということだから、安倍晋三は7月4日午前11時23分からの関係閣僚会議では把握していなかった情報だろうが、大きな自然災害が起きるたびにいつも、いつも「何よりも人命第一」を言い、避難所に避難している住民に対してはいつもいつも必要な物資のプッシュ型提供を口にする。
但しこういった発言は安倍政権下の「国土強靭化」対策、「強靭なふるさとづくり」対策がある程度の成功を収め、自然の猛威に対しての人間の無力感を少しは和らげ、「国土強靭化」と「強靭なふるさとづくり」に関わる安倍政権の人知・人力を国民が少しは感じ取る状況にあることを前提としていなければならない。
前提とすることができずに大規模な自然災害が発生するたびに何ら変わらない被害光景が繰り返しているなら、少なくとも被害地域に於いては対策が力となっていないからこその同じ光景でり、そうである以上、「何よりも人命第一」の発言は空疎そのものとなるだけではなく、同じく対策が力となっていないことの延長線上にある避難所の開設であり、必要な物資のプッシュ型提供にしても同じ線上にある結果論に過ぎないことになる。
対策より自然災害の猛威の方が常に上回ると言ってしまったなら、人知・人力に賭ける人間の意志力を自ら放棄することになって、自然災害対策は後追いの形を取ることになり、自然災害の猛威に追いつき、追い越すことのない永遠の追っかけっことなる。
確かに自然災害は場所を選ばない。自然災害の猛威に対してそれを防ぐ公共土木事業をいくら積み重ねても、自然災害発生場所が一歩違うと、対策は空振りに終わって、何ら変わらない被害光景を曝け出すことになる。その一方で、国土強靭化の防災・減災の公共土木工事を以ってして日本国土の全てを残らずカバーすることはカネの面(予算の面)で不可能なことも常識としているはずである。
であるなら、カネをかけない防災・減災の国土強靭化を国土を可能な限りより広く、そして可能な限りより短時間に覆う人知・人力を発揮する必要が生じる。
例えば先に例を挙げた球磨川本流から支流沿いに合流地点から僅か400メートル程離れた千寿園が支流の氾濫によって1階部分が水没、14人が心肺停止状態となったことは「バックウォーター現象」が発生しやすい場所として前以って川堤の嵩上げが必要箇所となるが、そのような場所は日本全国至るところにあって、川堤の造り替えから始めていたなら、全ての箇所の工事を終えるには気が遠くなるくらいの時間とカネを必要とし、その間に工事前の場所が大雨によって氾濫し、多くの死者を出す事態を招くことも否定できない。
但し造り替えずに強度を十分に保つ工事方法は存在する。
左側の画像は2019年10月の台風第19号で長野市千曲川の堤防が約70メートルに亘って決壊した箇所を、土木工事の土留めに使う鋼板製のシートパイルで工事終了までに新たな水害を阻止するために決壊箇所を塞いだもので、産経ニュースは「本堤防と同程度の強度がある」と伝えている。
ニュース写真で見ると、千寿園の脇を流れる支流は単なる土手で、コンクリート製ではない。コンクリート製なら、鉄筋を繋ぎにして新たに同じ幅のコンクリートを打つことで嵩上げはできるが、土手の場合は単に上に新たに土を盛っただけでは強度を保つことができず、強度を足すためには新たにコンクリート製の堤に造り変えるかする方法しかなく、工事費がかかることになる。
但し画像にあるようにシートパイルを並べて土中に打ち、現在の土手の表面からシートパイルの頭を1メートルか2メートル、大雨の際に予想される水位の高さにまで覗かせる形にすれば、嵩上げした川堤の役を果たすことになるし、シートパイルは大型重機に吊るして振動で打ち込むだけだから、さして時間がかかる工事とはならないし、シートパイルに溶融亜鉛めっきを施せば、錆びや腐食を発生しにくくして、長持ちさせることができると言う。土手から鉄板が出ていて見栄えが悪ければ、蔦を這わせるなりすれば、見栄えの悪さをカバーできる。あるいは溶融亜鉛めっきを施した場合は表面が白銀色になるから、そのまま放置しておいても、見栄えはさほど悪くならない。
さらに川の堤防決壊や増水による河川の氾濫の原因の多くは大雨による山の土砂崩れが樹木を根こそぎにして、その樹木を土砂と共に山の麓にまで滑らせ、さらに増水した川に押し流して流木とし、その流木が橋脚に引っかかって水をせき止める役目を果たすことになって、川の水を更に増水させて氾濫や堤防の決壊を誘うことにある。
このような状況を防ぐ方法は橋脚のない橋に架け替えることが最善の方法となるが、どの自治体も寿命が来た橋をすべて架け替えるだけのカネがなくて、補修、補修で誤魔化している状況にある。
となると、新規に架け替えるよりも安価に済む方法で橋脚を撤去するしかない。左側画像は2020年6月20日に開通した、周辺の渋滞緩和と東京オリンピック・パラリンピックの開催の際には選手などの輸送ルートとする目的の「海の森大橋」で、長さが250メートル、アーチ橋であって、橋脚は存在しない。
画像にあるようなアーチ部分と既存の橋に橋桁から下に出る長さで上からすっぽりかぶせることができる広さで側板をアーチの左右下部に取り付けてから、その側板を橋桁を両脇から挟む形にアーチ全体を吊り降ろす状態にして、橋脚部分を除いて、H鋼で橋桁の下から左右の側板を繋いで、アーチ全体を既存の橋に固定して、それから橋脚を抜けば、新しく橋を架け替える間の交通遮断も1日か2日で済み、仮の橋を架ける必要もなく、安価でより短時間で橋脚のない橋に架け替えることができる。
山の斜面に道路が走っていて、その道路のすぐ脇に川が流れているような地区の橋が山崩れによって発生した流木が川に流れ込んで橋脚箇所で堰を造ってしまう危険性を避けるためにはこのような方法で橋脚をなくしていくことが求められているはずである。
今回の大雨がやんだあと、住民が建物の中に流れ込んだ泥濘や道路の泥濘をスコップで掬って、ネコ車に積み、片付けるいつものシーンにお目にかかったが、再び雨が降り出してきて、遣り直さなければならないことを思い遣ってのことなのだろう、疲れて落胆した様子を見せていたが、10トンクラスの泥濘をホースで吸い取るバキュームカーを用意していれば、例え雨が降ってきて作業を中止しなければならなかったとしても、雨が止めば、人力よりも短時間で労力も使わずに泥濘を片付けることができる。
自衛隊に兵器を何百億と掛けるだけではなく、災害対処部隊の役目も負っているのだから、兵器に掛けるカネをバキュームカーにも回して、災害のたびに出動させたなら、家が流された、水に浸かったとタダでさえ落胆している被災者の労苦を軽くすることができるはずである。
安倍政権は「国土強靭化だ」、「強靭なふるさとづくり」だ、「人命第一だ」と言う割に防災・減災に向けて人知・人力を最大限に尽くしていると言えるだろうか。
毎年毎年、大雨が降る時期になると、今年もどこかで大きな被害が出ると予想しなければならないことが証明しているように、少なくとも「国土強靭化」にしても、「強靭なふるさとづくり」にしても、国民は確かさを感じ取ることができないままでいる。にも関わらず、自然災害で大きな被害が発生するたびに「人命第一」を言うのは、明らかに鉄面皮に過ぎる。