夫婦別姓:民法で認めることから子どもの氏の問題は解決 子の自律(あるいは自立)を促す

2025-02-25 10:18:21 | 政治


Kindle出版電子書籍「イジメ未然防止の抽象論ではない具体策4題」(手代木恕之著/2024年5月18日発行:500円)

 誰であっても、何をするか、何をしたかの自分は、例え親の庇護のもと生活をしていても、あるいは親の言動の影響を受けることはあっても、本質のところでは父親や母親の存在や人格とは独立した自分独自の存在、自分独自の人格を形成していくことになって、何をするか、何をしたかの行動自体は自分の姓と名前を一体とさせた一個の存在、あるいは一個の人格に基づいて行われていることになり、それらの総合が自分なりに独自な経験として積み重ねられていき、個人としてのアイデンティティを築いていくという成長の過程を辿る。

 要するに同姓夫婦の子どもであり、当初は親の影響は受けていても、あるいは異姓夫婦の子どもであり、同じく当初は親の影響は受けていても、どちらの子どもであっても、本質的のところでは与えられた自分の姓と名前を一体とさせた一個の存在、一個の人格として行動することになり、自らのアイデンティティを成り立たせていくことになるが、その場合、名字より名前の方に自分は自分というアイデンティティの基礎を置くことになるだろう。

 断るまでもなく、兄弟姉妹を含めた家族の中で自分を周囲とよりよく区別することができるのは姓よりは名前だからである。

 例えば児童養護院に預けられた子どもが親の姓と自身の名前で生活していたとしても、ある年齢で養子縁組をして、養子先の親を自分の親として受け入れることができた場合、養子先の姓と自分の名前を一体とさせた一個の存在及び一個の人格として行動していくことになるが、やはり変わらないものとして自分の名前により重点を置いて行動していくことになるだろう。

 つまり誰であっても、どのような姓であったとしても、自分自身の名前により重点を置いた、その姓と一体とさせた一個の存在、一個の人格として行動することになり、自らのアイデンティティを獲得していくことになる。
 
 民法750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」を、「夫婦は、夫又は妻の氏を称するか、夫の氏又は妻の氏をそれぞれ称する」と改めさえすれば、後者の場合、子どもは夫又は妻の氏のいずれかを名乗ろうと、その姓は付与されたものとして自身の名前と一体とさせた行動を取り、行動に応じた経験を積み、経験の総体がアイデンティティの形成への取っ掛かりを作っていくことになる。

 夫婦別姓の親は子どもに、「僕の、あるいは私の名字はお父さんと、あるいはお母さんと一緒だけど、お父さんと、あるいはお母さんと違うのななぜ」と聞かれる物心つく前から、あるいは「僕の、あるいは私の名字がほかの兄弟(姉妹)と違うのはなぜ」と聞かれる物心つく前から、法律で認められた夫婦別姓であること、子どもは父親か母親の名字を名乗らなければならないこと、例え一方の親と名字が違っても、兄弟姉妹と違う名字であったとしても、与えられた名字と名前で、名前により重点を置いた一人の人間として自分という存在を生かしていく点については名字の違いは問題ないということ、何をしたいか、何をするかの自分は与えられた名字と名前で行動していき、その行動によってほかの人間との違いが出てきて、それが生き方の違い、何をし、何を成し遂げるかの違いとなって現れるのだから、一方の親との名字の違いや兄弟との名字の違いが自分の生き方を根本のところで決めるわけではないといったことを噛み砕いた言葉で繰り返し言い聞かせて、やがて理解できるようにしていかなければならない。

 その理解がゆくゆくは誰もが自分自身は本質のところでは父親や母親の存在や人格とは独立した自分独自の存在、自分独自の人格を形成していて、何をするか、何をしたかの行動自体は自分の姓と名前を一体とさせた一個の存在、あるいは一個の人格に基づいて行われていること、それらの総合が自分なりに独自な経験として積み重ねられていって、個人としてのアイデンティティを成り立たせていくんだという道理に到達することになる。

 そしてこういった理解と道理を子どもに求めていく夫婦別姓を選んだ親自身の努力が子どもに対して自律心(あるいは自立心)を促す教え、あるいは教育そのものとなるだろうことは容易に想像できる。

 自律心(あるいは自立心)の育みに向かわせる教え諭しが主体性や責任意識への育みを共に伴走させる。

 このように考えると、夫婦同姓の親が子ども共々同姓であることを長い歴史を引き継いだ当然の慣習と見て、そのような慣習の上に安住しているのに対して夫婦別姓の親が子どもに一方の親や兄弟で姓が違うことを理解させるために尽くす言葉の数々は却って高度な教育の形を取ることになるのだから、その利点は自らのアイデンティティを守ることに劣らない、子どもに向けた教育価値を有していることになる。

 大体が安倍晋三や高市早苗等、保守派の別姓反対の急先鋒が家族の一体性を同姓に求めること自体が、形だけを求める安っぽい形式主義に過ぎない。
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安倍派裏金事件:政倫審幹部証言が明かすことになる、4月・8月会合は安倍晋三罪薄めの自作自演の猿芝居

2025-02-20 06:42:08 | 政治


Kindle出版電子書籍「イジメ未然防止の抽象論ではない具体策4題」(手代木恕之著/2024年5月18日発行:500円)

 安倍派清和研の政治資金パーティ裏ガネ収支報告書不記載に関して、2024年4月1日に、《安倍派政治資金パーティキックバック裏金:22年4月と8月の会合を作り話とすると、全てがスッキリする - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を、2024年5月31日に、《安倍晋三が設計首謀者の現金還付・収支報告書不記載の慣習・制度だっだと疑うに足る相当性ある状況証拠の提示 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》をブログに投稿した。

 その内容の正確性についてだが、最近、AI文字起こしのスマホアプリ「音声文字変換&音検知通知」(フリー)の存在を知り、政倫審国会質疑が原則としては非公開であることから議事録が衆参共に非公開となっているために動画をダウンロード、安倍晋三出席のもと現金還付中止を決めた2022年4月と、2022年7月の安倍晋三の銃撃死後、中止と決めた現金還付再開を決めたのではないかと疑われている2022年8月の会合に共に出席していた安倍派清和研幹部西村康稔、塩谷立、下村博文、世耕弘成出席の政倫審動画から発言を文字起こししてみた。

 文字起こしの精度は6~70%程度といったところか、動画を聞きながらの修正にかなり時間がかかり、聞き取れない箇所はNHKの国会中継録画を字幕付きで利用、完成させた質疑を全て読み返してみた結果、現金還付・収支報告書不記載裏ガネシステムの設計首謀者を安倍晋三とするのは間違いの可能性に気づいた。

 第1次安倍政権では参院選で過半数割れの敗北を受けてねじれ国会を生じせしめ、閣僚のスキャンダル等もあったが、政権運営に苦労し、ほぼ一年しか持たなかった苦い経験からだろう、第2次安倍政権では選挙時期に合わせて消費税増税を二度延期したり、選挙の際、国民に不人気な政策は争点から隠したり、毎年4月の首相主催「桜を見る会」では招待客の選考基準を無視して選挙地元山口の安倍後援会会員を多数招待したりして、政権運営の第一義をなりふり構わずに選挙に勝つことに置いている様子がミエミエだったから、裏ガネシステムの設計首謀者ではなくても、システムの貪欲な推進者だった可能性は捨てきれない。

 例えば、このノルマ超えのキックバックは参議院選挙のある年の安倍派改選参議院議員はノルマに関係なく、パーティ券売上の全額が派閥からキックバックされて、各議員の選挙事務所に裏ガネとして収められていたと言うが、これも政権運営の第一義を選挙に勝つことに置いているなりふり構わない例の一つに数えることができる。

 参議院選挙が行われる年の「桜を見る会」では自民党改選議員は友人や知人、後援会関係者などを4組まで招待できるシステムとなっていて、愛人がいれば、愛人だって招待できただろう、いわば首相基準の招待ではなく、自民党改選参議院議員基準の招待という特別扱いとなっていたと言うから、選挙に勝つためにはなりふり構わないという点で見事通底している。

 4月と8月の会合が安倍晋三の関わり、その罪を限りなく薄めるためにデッチ上げた作り話とする見立てに関しては狂いはなく、却って確信を深めた。上記4人の幹部の政倫審発言を適宜取り上げて、そのことを証拠立ててみる。

 政倫審での追及側の議員は4月と8月の会合を現実に存在した事実と見ていて、4月の会合で安倍晋三が現金還付中止の指示を出したことも事実、8月の会合で幹部たちが話し合って、そのうちの誰かの決定によって中止をひっくり返したのも事実、その結果、現金還付と収支報告書不記載が継続されることになったと見立てて、追及する結果、ウソから事実が出てくるわけがなく、埒の明かないことになる。

 逆に両会合をデッチ上げと見ることによって明らかになってくる事実がいくつかある。

 では、最初に2022年4月の会合で安倍晋三の現金還付中止の指示がどのような様子で行われたのか、西村康稔の自民党武藤容治に対する答弁から見てみる。

 「安倍会長がですね、令和4年、22年の4月に現金での還付を行ってる。これをやめるということを言われまして、私もこれはやめようということで、幹部でその方針を決めまして、そして若手議員何人かをリストアップして、電話も致しました。私自身も若手議員にかけ、電話をしてやめるという方針を伝えたところ、伝えたわけであります。

 従って、会長はその時点で何らかのことを知っておられたんだろうというふうに思います。全体のこと、どこまでご理解、把握しておられたのか分かりません。けれども、兎に角、現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめると、まあ、還付そのものをやめるということで、我々方針を決めて対応したわけであります」――

 西村康稔は安倍晋三の現金還付中止について、「会長はその時点で何らかのことを知っておられたんだろうというふうに思います」と安倍晋三を違法行為から一定程度離れた位置に立たせているが、弁明では、「清和会主催の政治資金パーティー収入の還付にかかる処理は歴代会長と清和会の事務職である事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことであり、会長以外の私たち幹部が関与することはありませんでした。先程申し上げた通り、事務総長はこのことを含め、会計には関与しておりません」と安倍晋三を違法行為の主犯格そのものに仕立てていることと矛盾している。

 勿論、後者はあとで知った事実と片付けることはできるが、この矛盾の正当性を順次見ていく。

 西村康稔の中止指示に関わる具体的な状況説明はこれだけで、他の幹部は中止の指示があった程度の簡略した証言で終わらせている。一見、西村康稔が詳しく説明しているように見える。だが、隠している事実が少なからず存在している。

 もし幹部たちが「現金は不透明で疑念を生じかねない」の意味するところを承知していたなら、いわば現金還付を自分達も受けていて、その現金の不記載処理に応じていることを知っていたなら、人間の自然な感情として何かバレそうなヤバいことが持ち上がったのだろうかとか、あるいは誰かからか注意を受けたのだろうかとか、共犯者意識からビックっとし、「何かあったんですか」と安倍晋三に問わずにはいられないだろう。

 もし現金還付も不記載も幹部自身には関知しない事実であったなら、「どういうことですか」と安倍晋三に問うことになるだろう。あるいは中止指示を言い出す前に安倍晋三の方から、「派閥ではこういうことをしていた。議員側には巻き込むことがないよう、知らせていないが、秘書にのみ知らせていた。裏ガネに政治活動の便宜を求める時代ではもうない」などといった何らかの理由を説明しなければならないし、当然、することになるだろうから、知らずに加担させられていたことに驚き、安倍晋三に対して何も言い返せなかったとしても、顔を青ざめさせるぐらいの感情の変化は見せるのが人間の自然な姿だろう。

 要するに中止を指示されたことに対して幹部たちの気持ちや感情が何も紹介されていない。であるなら、質問者の方で追及して、違法性を把握していたのか、していなかったかを知り得る材料とすべきだったが、綻びを前以って予防して行なっている説明を人間の自然な感情の点から突くことをしないから、相手の筋書きに乗せられてしまう。

 例え関知していなかったが事実であたとしても、大枚のカネの支払いと受領を現金で遣り取りすること自体が記録や証拠の類いを残さない便宜からの利用であることは世間的な相場となっている以上、現金還付中止を切り出された時点で、そこに違法性を嗅ぎ取らないこと自体が奇麗事だけでは済まない政治の世界に長年身を置いている派閥の幹部としての姿に反する。

 何の感情も湧かなかったとしたら、現金で遣り取りされることの裏の意味も、内心察することもなかったことになって、あまりにも不自然である。
 
 要するに安倍晋三の現金還付中止の指示に対して4人の幹部がどのような認識で反応したのか、どのような印象を持ったのか、尋ね返したことはないのか、様々に問う過程で見えない事実が見えてくる可能性は決して否定できない。

 だが、追及側は西村康稔が打ち立てたこの証言を事実とのみ掴まえ、その範囲内で不記載を知っていたのではないかどうかと質問しているから、知らなかったと答えられると、効果的な反論を見い出すことができず、極めて疑わしい感触を持ったまま否応もなしに事実の体裁を取らせてしまうことになる。

 この4月の会合に説明にはもう一つ、大きな事実が隠されているが、その事実を明かすには8月の会合の各幹部の証言が必要になり、両会合共にデッチ上げであることを証明できるが、その前に追及する側が最も必要とする情報は何のために政治資金パーティ券の売上にノルマを課したのかであろう。

 ノルマを課すことは課した相手の交渉力や人脈構築力の程度を確かめるだけではなく、忠誠心や功名心を競わせる効用がある。そこに何よりも価値を置いているから、ノルマを超えたカネを還付することで、苦労や努力の見返りとしての満足や感謝を与えて、忠誠心や功名心をなお誘い出す動機づけに利用することができる。

 派閥所属議員側にしても、パーティ券のノルマを超える売上は自己能力の誇示のみならず、
政治の世界で将来的には閣僚の地位を、あるいはそれ以上を狙うだけの野心があったなら、ノルマ達成は派閥内での序列を上げるまたとないチャンスだったろうし、自己承認欲求を駆り立て、自身の能力を可視化できる価値あるシステムの一つとすることができる

 だとすると、世耕弘成の自民党佐藤正久に対する、「安倍会長からは5月に、2022年の5月のパーティでしたけども、4月上旬に幹部が集められて、ノルマどおりの販売にしたいってことは即ち還付金はやめるというご指示が出ました」の証言からすると、派閥側は所属議員に対して引き続いてノルマに応じた売上を目標とした貢献を求めるが、所属議員に対してこれまで行なっていた見返りの貢献は省くことになり、彼らのモチベーションを一定程度下げることになる。

 当然、派閥のボスという立場にある安倍晋三は所属議員のモチベーションを維持する、現金還付に代わる方策を自分で考案するか、幹部たちに相談して構築するかして、組織の変わらぬ結束を意図する責任を有していたはずだが、そのような責任主体として扱われていない。

 安倍晋三のこのような非現実的な存在性からも、4月の会合が事実あったことと認めることはできない。

 また西村康稔は自身の事務所に対して清和会のパーティーはノルマ分だけ売ればいい、自身の政治活動費は自身の政治資金集めパーティで確保していくからといった趣旨で立憲民主党の枝野幸男に対して答弁しているが、ノルマ達成が自身の出世の階段を一歩一歩登っていくのに役立つという性格を無視した、この奇異な発言は自民党下野後の2009年自民党総裁選に総裁の谷垣禎一、河野太郎と共に出馬、最下位となっているものの、政治の世界で頂点を目指す野心を抱えていることと明らかに矛盾する。

 確かに西村康稔は弁明で述べているが、2018年から4年間で不記載金額は100万円と少なく、ノルマ分だけ売ればいいの証言が正しく聞こえるが、実家は時計店を経営していたものの、夫人の父親である吹田愰は、wikipediaによると、衆議院議員となる前から岸信介と付き合いがあり、A級戦犯だった岸の政界復帰に尽力し、岸の首相就任に奮闘し、岸の政界引退に際しては後継指名を受けて、衆議院議員選挙に出馬、当選後は岸の娘婿であると同時に安倍晋三の父親である安倍晋太郎の首相就任に執念を燃やし、自治大臣も努めた政治家であるから、そのコネを受けて、西村康稔自身が政のみならず、財・官まで含めてパーティ券を売るコネに事欠かない状況にあることは容易に想像できる。

 西村康稔の安倍派清和研のパーティ券はノルマ分だけ売ればいいとした出世の意欲を欠いた発言と政治の世界で頂点を目指す野心を抱えていることと、結果、周囲から将来の首相候補と目されていることと、パーティ券を売るコネに事欠かない政財官の人脈を抱えているだろうこととに整合性を与えるとしたら、西村康稔は自分の方から与えられたノルマ以上のノルマを申し出て、パーティ開催のたびに達成、結果として還付分が少なかったものの、安倍晋三から人物としての高い評価を受け、自らは自己承認欲求を満たしていたとも考えることができる。

 このことはあくまでも推測に過ぎないが、限りなく疑わしいノルマ分だけ売ればいいの淡白さであり、4月と8月の会合をデッチ上げと見る要素とはなりうる。

 安倍晋三から現金還付中止を指示されて、各幹部が手分けして所属議員に電話で伝えたとしているが、事務局長が出席していたのだから、会合の日が平日なら、その場から事務局に電話を入れて、休日・祝日なら、日を置いて事務局職員に指示して一つの文面で複数のメールアドレスに送信できるカーボン・コピー(CC)形式で送信すれば、遥かに手っ取り早く、効率よく連絡することができる。わざわざ幹部の手を煩わす電話を用いたとしていることも、4月の会合の存在を怪しくさせる。

 もし現金還付が「不透明で疑念を生じかねない」という性格上、メールでは証拠が残ることが懸念されたとしたなら、幹部たちも現金還付の違法性に気づいていたことになって、電話での伝言は都合が悪い関係上の演出となり、やはり4月の会合はデッチ上げの可能性が高くなる。

 追及側は現実には現金還付と収支報告書不記載が続いていたことから、安倍派幹部4人が4月の安倍晋三の中止の指示を安倍晋三が亡くなったことの影響もあって徹底できず、8月の会合で4人のうち誰かが中止撤回を決めたと見て、質問が8月の会合に集中することになった。

 では、8月の会合についてそれぞれの証言を見てみる。

 西村康稔の自民党武藤容治に対する証言。

 「その後安倍総理、安倍会長が亡くなられて、その後、ノルマよりも多く売った議員がいたようでありまして、返してほしいという声が出てきました。それを受けて8月の上旬に幹部で議論をし、そしてどうするかと、還付は行わないという方針を維持するという中で、しかしこう返して欲しいという人をどう対応するか、色んな意見がありましたけれども、結局結論は出ずにですね、私は8月10日に経済産業大臣になりましたので、事務総長を離れることにもなります。

 その後どういった経緯で現金での還付が続けられる、継続されることになったのか、その経緯は承知をしておりません。その後、幹部の中で私が入った幹部の中で、そして議論は行っておりませんので、その経緯は承知しておりませんが、今思えばですね、安倍会長がもう還付をやめるということを言われたわけですので、事務総長としてしっかりとそうした方針を徹底してですね、少なくとも令和4年の還付はもうやめるということをしておけばよかったなと思っています」

 他の幹部も同様な答弁なのは整合性の点で不思議はない。8月の会合に出席していたとする安部派幹部の一人塩谷立は日本維新の会の岩谷良平に対して次のような発言をしている。

 「パーティーは1月から2月頃から売り始めていますので、多くの人がもう売ってしまったという状況の中で、8月に売った分を是非お願いしたいという声が出てきたというふうに私は理解をしております」

 4月と8月の会合に出席はしていなかったものの、還付現金不記載の違法行為を行なっていた、同じ安部派幹部高木毅は同じ日、2024年3月1日の衆院政倫審の弁明の中で次のように述べている。

 「私の事務所では、清和研のパーティー券代金専用の銀行口座を開設し、基本的に購入者の方にはその口座に振り込み入金して頂くという形で売上金を管理しており、パーティーが終わった段階で口座から引き出した現金を清和研事務局に持参して全額を収めるという運用をしていました」

 清和研の事務局側に対するパーティー券の売上入金が5月のパーティー終了後であるとし、パーティー券の販売開始を2月からと遅く設定したとしても、4月と8月の両会合に出席している安倍派の会計責任者である松本淳一郎事務局長はパーティ開催が1ヶ月余と迫る4月の会合の段階で既に売り上げている議員の存在を想定していなければ、事務局長としての事務処理担当の意味を失う。

 要するに安倍晋三が現金還付中止の指示に併せて2022年の5月のパーティに関わるノルマを超えた売り上げの発生を想定して、その分に対してどう対応するか、その対応策も同時に所属議員に伝える責任を有していて、各幹部は所属議員に手分けをして中止を伝えるだけではなく、対応策も伝えなければならなかった。だが、中止を伝えただけで終えている。

 特に7月に参院選挙があり、改選議員にとって選挙に自由に使えるカネだからと、返し貰えないかどうかを8月の段階で幹部に訴えていたとしたら、遅過ぎて、奇妙な不一致を生む。

 新聞報道によると、実際には参議院選挙があった2019年だけではなく、会合のあった2022年の安倍派改選参議院議員に対してパーティ券売り上げ全額がキックバックされていたと伝えていて、この報道が政倫審以後に知り得た情報に基づいていたとしても、そのキックバックは7月の参院選前でなければ、改選議員限定の意味を成さないから、8月の会合で返金を求めた議員の中には改選参議院議員は存在していなかった計算になるし、4月の会合で出席していた世耕弘成が安倍派参議院議員グループ清風会の会長を務めている立場上、参議院議員中心に電話で中止の伝達を行なっていただろうから、改選参議院議員に対しては現実とは異なる電話伝達をしていたことになって、4月の会合の現実性を失わせると同時に8月の会合の現実性も失わせることになる。

 4月と8月の会合を現実にあった話だと仮定したとしても、安倍晋三が4月の会合で指示した現金還付中止を全員で決めたというのが事実なら、中止の徹底を図るのが安倍派幹部としての義務と責任だが、4ヶ月も経った8月の時点で還付を望む声が上がり、そのことを8月の会合で話し合わなければならなかったとしていること自体が各人の義務と責任を果す能力を幹部という地位に反して有していなかった矛盾を曝け出すだけではなく、還付に代わる合法的な手段での資金手当ての方策を講じるのが安倍晋三亡きあとの派閥の結束を図るための義務と責任であるはずだが、話のどこにも義務と責任を果たそうとする努力の影すら見えないのは4月、8月の会合が実体を備えていなかった、いわば作り話であることの何よりの証拠となるだろう。

 極めつけは違法性の話がなかったから、還付現金の不記載に気づかなかったとしている点である。

 共産党塩川鉄也に対しての西村康稔の答弁。

 「あの収支報告書についても、事務局長に於いてこれ恐らく会長と相談されてたと思いますし、会計については会長と事務局長の間で行われてきたということでありまして、事務総長としてもまた他の幹部も関わってなかったと思いますので、そのときに収支報告書の話はしておりませんし、還付が適法か違法かといった議論も行っておりません」

 共産党の山下芳生の違法性を前提に現金還付中止の指示があったのではないのかという問いに対する世耕弘成の答弁。

 「8月に何かが決まったというようなこと、あるいは違法性について議論をしたということは全くないと。これが検察の調査の結果として示されてるというふうに思います」

 共産党の塩川哲也の塩谷立に対する追及。

「下村議員はその合法的な形で出すということがあるのではないかという案があったと言ってるわけで、この合法的な形で出すということが、そこには違法性の認識があったということになるんですが、こういう違法的な認識について、会合の場で表明をされていたということでありませんか?

 「その点については、あの私は認識しておりません。違法性のお話があったということも、具体的にはそういった話は出てないと思います」

 同じく塩川哲也対塩谷立。塩川哲也が8月の会合で下村博文がノルマを超えた分を個人の資金集めパーティに上乗せをして収支報告書で合法的な形で出すということもあるのではないかという案があったと2023年1月の記者会見で述べていたことに関して、不記載という違法性の認識があったから合法的な形で出すといった物言いになったのではないかといった趣旨の問いかけをすると、「それは現金をやめようという中で、それらが出たと私は理解しております。あくまであの不記載のことについては一切話が出ておりません」

 日本維新の会の音喜多駿「令和4年4月に安倍元首相はキックバックをやめると言った時、安倍元首長は違法性の認識を持っていたかどうかお分かりでしょうか」

 世耕弘成「そのミーティングではですね、違法性についての議論は一切行われなかったと思います」

 同じく音喜多駿が世耕に対して安倍晋三がキックバック中止を指示した際、世耕自身が「違法性があるやり方であると思いましたか?思いませんでしたか」と問いかけたのに対して、「ここは(4月の会合は)もう話し合いとか違法性を議論する場ではなくて、ノルマ通りの販売とするという指示が伝達された。そういう場だったというふうに思っています」

 要するに4月の会合で安倍晋三から「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうした現金の還付はやめる」と指示された際に違法性の話があったわけでも、違法性の議論があったわけでもないから、理由も何も察することなく、右から左へ電話で以って所属議員に幹部が手分けして中止の伝達を伝える仲介役をただ単に果たしただけということになる。

 ここからは自民党最大派閥、天下の安倍派の幹部という、それなりに矜持を備えた姿は見えてこないし、良識ある大人の姿さえも彷彿不可能で、単にガキの使いを果たしただけにしか見えない。

 義務感と責任感を含めて、このように幹部が幹部なりの実質性を備えていない姿を描き出す結果となっているのは、4月と8月の会合が実際にあった話ではなく、架空の話であることに伴った連鎖的な現象だからだろう。

 実際にあった会合なら、4月の時点で現金還付と還付した現金の収支報告書不記載に終止符を打つために幹部としての義務と責任を果たし得ていただろうし、幹部でいる以上、果たし得なければならなかっただろう。

 だが、何もし得ずに放置した結果、政治的大スキャンダルとなって、国民に対して大きな政治不信を招き、2024年10月の総選挙で自公与党割れという懲罰を受けることになった。

 想像するに、連続在任日数で歴代1位であることと、銃撃死後、首相経験者では1967年の吉田茂元首相以来、戦後2例目となる国葬を2022年9月27日に受けた安倍晋三の輝かしい経歴のメッキが剥がれて、汚れたカネの力に頼って政治を動かしてきた政治家としての評価を受けることを恐れ、政治資金規正法違反の罪となる現金還付・収支報告書不記載の強力な推進者とされることから少しでも遠ざけるために、2023年11月頃からマスコミに騒がれ出して急遽打つことになった芝居が4月、8月の会合ということなのだろう。

 安倍晋三が現金還付を中止したという事実が欲しかった。現金還付中止は収支報告書不記載の中止を伴うから、そのような事実を以って安倍晋三を政治資金規正法違反から距離を置き、その罪薄めを謀った。

 現実世界では5月の安倍派政治資金集めのパーティでも引き続いて現金還付と収支報告書不記載の違法行為が続けられていたのだから、このことと照らし合わせると、安倍晋三に向けた幹部たち自身による罪薄めの自作自演の猿芝居という結末しか見えてこないのは当然のことだろう。

 また、罪薄めの自作自演に迫られたということは安倍派幹部たち全員が現金還付の事実と収支報告書不記載の事実を前以って知っていたことを証拠立てることになる。違法性を承知していたからこそ、芝居を打つ必要に迫られた。
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2025年1月31日衆院予算委:参考人招致全会一致議決自民批判対長妻昭の刺激も面白みもない陳腐な反論

2025-02-06 11:36:46 | 政治

 2025年1月30日の衆院予算委員会で旧安倍派の事務局長兼会計責任者松本淳一郎の国会参考人招致について採決が行われ、野党側の賛成多数で招致が議決された。自民党安倍派の政治資金パーティ券ノルマ超過売上分が派閥幹部等、多くの安倍派議員に現金還付され、それを収支報告書に不記載とし、裏ガネ化していた不正行為に(ほかの派閥も行なっていたが、安倍晋三率いる安倍派程大掛かりではなかった)派閥の事務局長兼会計責任者として深く関わっていた松本淳一郎から、未だ明らかにされていない、安倍晋三や派閥議員の関与の実態等を聞き質して明らかにしたい目的からである。

 参考人招致に関わる議決は全会一致が原則だそうで、賛成多数による議決は1974年以来の51年ぶりだそうだ。これも国会議席が与野党逆転となったことと、このこととの関連で予算委員会委員長に野党第一党立憲の安住淳が就任していることに関係があるのだろう。

 招致が議決された松本淳一郎は還付現金収支報告書不記載のスキャンダルが発覚後、告発を受け、昨2024年10月に政治資金規正法違反(虚偽記載)で禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定している。

 但し参考人招致に法的拘束力はなく、出席は任意で、松本淳一郎は「裁判で証言した以上のことはない」との理由で招致には応じられないとの意向を関係者に示しているという。出席は見込みなしということなら、議決した手前、出席させることができるかどうかは野党の腕の見せどころとなる。

 自民党は慣例の全会一致が反故にされ、賛成多数での議決が腹に据えかねたのか、それとも疑惑がほじくり返されて、何か出てくることを恐れたのか、翌1月31日の衆院予算委員会で全会一致に抗議の発言をしたとマスコミが伝えていた。

 その抗議に対して質問に立った立憲の長妻昭代表代行の、同じくマスコミが伝えていた反論が刺激も面白みも何もない、陳腐な内容で、もう少しまともなことが言えないのかと思ったものの、マスコミ記事のみでは下手に批判できないと思い、質疑の動画をネットからダウンロードして、文字起こししてみた。

 その結果は最初の印象どおりに刺激も面白みも何もない、陳腐そのものの長妻昭の反論に過ぎなかった。

 自民党小野寺五典と中曽根康隆の全会一致に抗議した発言、中曽根康隆の抗議をターゲットにした長妻昭のまとも過ぎる反論と、最後に参考人招致の出席を促すよう、総理大臣石破茂に迫った、同じく立憲の奥野総一郎の埒のあかない質問を取り上げてみる。

 小野寺五典「自由民主党の小野寺五典です。冒頭一言申し上げます。当初の予定であれば、この委員会は昨日から始まる予定でありました。熟議を掲げる国会であります。一日一日を大切にしなければなりません。安住委員長にはそうした点も十分考慮し、公平な委員会運営をお願いしたいと思っております。

 で、さて、これから審議する予算でありますが。国民所得の拡大はもちろん、経済、成長、地方創生、外交安全保障など我が国にとって重要な政策の裏付けとなる予算となります。野党の皆さんとも誠実に向き合いながら審議を進め、一日も早い成立を期したい、そのように思っております」――

 国民生活と国家運営に直結する重要な予算審議が参考人招致の議決で一日先延ばしにされたと暗に野党を批判しているが、参考人招致に自民党は反対したのだから、当然、それを阻止したかったが、
総選挙で過半数を割った悲しさ、少数頭数で阻止できなかったことの悔しさが口を突いて出たといったところなのだろう。

 但し参考人招致に法的拘束力はなく、出席は任意で、松本淳一郎は「裁判で証言した以上のことはない」との理由で招致には応じられないとの意向を関係者に示しているという。出席は見込みなしということなら、議決した手前、出席させることができるかどうかは野党の腕の見せどころとなる。

 しかし小野寺五典の悔しさは実際には国民に真摯に向き合う姿勢を全面的に欠き、自民党自身にのみ向き合う姿勢が言わせたご都合主義に過ぎない。

 なぜなら、立憲の奥野総一郎も質問で取り上げているが、最近に至っても政治資金パーティに関わる疑惑は十分に解明されていない、政府の説明は不十分だと見る国民が世論調査で無視できないまでの多数を占めているからなのは断るまでもない。無視できない多数に対する無視は国民に向き合う姿勢を欠いていることによって可能となる。

 小野寺五典は少しあとで、「強い日本を作って国民を守る、そのための強い経済、地方、人材育成、外交安保など様々な切り口から令和7年度予算について議論を深めていきたいと思っております。その第一は強い経済の実現です。日本は過去30年デフレが続き、その間コストカット型経済に走り、本来振り向けるべき投資を国内より海外に加速させてきました。その結果、国内の資本蓄積は細り、成長率は低下。世界に比べ、日本だけが低空飛行の状態が続いてまいりました」と言って、国家と経済の立て直しの緊急重要性を言い立てているが、過去30年のデフレも、コストカット型経済も、投資の国内よりも海外加速も、国力の日本だけが低空飛行も、自民党政治が招いた惨状で、反省から入るべきを、そうしないのは実際のところは国民に向き合う姿勢を欠いているからにほかならない。

 次が中曽根康隆。自分達にのみ向き合う姿勢はより露骨になっている。

 中曽根康隆「自由民主党の中曽根康隆です。冒頭一言、申し上げたいと思います。熟議を重ねながら、参考人招致を審議の条件とし、国民生活に直結する予算の審議入りが一日遅れたことは甚だ遺憾であります。また、安住予算委員長の職権により行われた昨日の参考人出頭決議についても言及をさせて頂きます。

 賛成多数による議決は51年ぶりとはいえ、判決が確定した当事者という観点からは過去に例はなく初めての事例となりました。これは長年積み上げてきた全会一致の原則を逸脱するものであると共に司法権の独立と人権法の観点からも重大な禍根を残すものであり、極めて遺憾であります。

 さらに言えば、立憲委員一名が遅刻によってこの重大な採決を欠席されたことは大変遺憾であります。以上申し述べて、質問に入りたいと思います」

 政治資金収支報告書に記載すべきカネの収支を不記載とし、闇のカネとした。最大派閥の清和政策研究会(安倍派)に至っては所属99人のうち77人が関係し、2018~22年の5年間で総額6億7654万円が不記載、闇のカネとしていたという。

 この"5年間"は政治資金収支報告書の不記載という虚偽記載罪の公訴時効が5年となっているから、5年以前は罪に問えないというだけの話で、いつ、誰が始めたかによって、闇の深さに違いが出てくるが、事の真相自体が闇に葬られたままの状態になっていて、闇が闇のままに放置され、その放置が国民に政治不信の形を取らせ、2024年10月27日衆議院議員選挙で自公与党過半数割れという衝撃的な悪夢を自公与党に与えた。

 自民党としたら、参考人招致に反対したのだから、これ以上の真相解明はご免蒙り、ご免蒙ることで、いわば真相を薮の中に隠すことで、悪夢の再来を断ち切りたいと考えているのだろう。

 こういった姿勢自体が真相解明を求めるより多くの国民・有権者に真摯に向き合う姿勢を持たず、自分たち自民党のみに目を向けている、自民党のみと向き合っている姿勢であることの論拠とすることができる。自分勝手も甚だしい。

 では、中曽根康隆の野党批判に対する立憲民主党長妻昭の面白みも何もない、陳腐な反論を見てみる。

 長妻昭「立憲民主党の長妻昭です。よろしくお願いします。先ずですね。午前中、中曽根さんが一方的にお話になった件について一言申し上げます。旧安倍派のですね、。松本元事務局長はですね、この昨日の議決は全会一致ではなく、議決するのはおかしいなどなどと、滔々と述べられたわけですね。 私は相当的外れだったと思います。

 誰がこんな議決をさせる原因を作ったのか? 国会で膨大な時間を使わせてんのは誰なのか? 全く当事者意識が感じられません。率先して真相解明する自民党がそれをしないから、議決せざるを得なくなったんではないでしょうか? (野党席から拍手)

 その自民党が、その自民党が何と議決自体に反対。採決でも反対する。とんでもないことだと思います。本来は、自民党がですよ。今ヤジ飛ばしておられますけれども、松本元事務局長からきちんとヒアリングをして、キックバック再開に関わった政治家を特定して発表していればですね、呼ぶ必要ないんですよ。(野党席からパチパチと拍手)

 それを怠ったために呼ばざるを得なくなったと(声を大きくして)、ということをですね、よく認識いただきたい。どの口が言うのかということを強く申し上げたいというふうに思います」

 長妻昭のこの反論が面白みも何もない、陳腐な言葉を並べただけだと思わなければ、余程鈍感だと言わざるを得ない。長妻昭の発言にパチパチと拍手を送った野党議員はみな鈍感の部類に入れることができる。

 自民党は本質のところでは真相解明に後ろ向きだった。国民・有権者の真相解明を求める声に真摯に向き合う姿勢を見せず、逃げの姿勢を打った。例えば安倍派に関して言うと、5年間で総額6億7654万円という誤魔化してきた金額の大きさ、誤魔化した人数が所属99人のうち77人の多さからしたら、松本淳一郎だけではなく、安倍派幹部5人も証人喚問が当然なはずだが、ウソをつけば、3カ月以上10年以下の偽証罪に問われ、相当な理由がなく出頭や証言を拒否した場合は1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金が課せられる、ウソはつけない、出頭はできても、証言は拒否できない、制約の厳しさに断り続けてきたところに逃げの姿勢が現れている。

 国民の多くが自民党のこのような有り様に潔くない印象を受け、旧統一教会の問題も影響したのだろうが、直近の問題として10月の総選挙で懲罰の意味もあったはずで、自公への投票を回避、結果として過半数割れという敗北を招くことになったはずだ。

 長妻昭はこのことを指摘し、「真相解明は我々野党だけが求めているのではない。多くの国民、多くの有権者が求めていて、我々野党がその声を代弁して真相解明を求めてもいる。国民・有権者の求めにいつまでも後ろ向きの姿勢でいたなら、今後の国政選挙で10月の総選挙の二の舞いを演じることにならないか。演じてもいいのか」と、選挙と紐付けて迫るべきだった。

 少なくとも、夏の参院選挙で昨年の総選挙の二の舞を演じてもいいのかといったことを匂わせなければならなかった。少しは迫力ある追及ができたはずだ。

 勿論、自民党としたら、選挙への悪影響を最も恐れているだろうからである。

 但し真相解明がされればされたなりに選挙への悪影響は付き纏う。政権交代を余儀なくされるかもしれない。その真相解明が誰か派閥の領袖が築いてきた輝かしい経歴をメッキだったと暴露する性格のものなら、派閥連合体と言ってもいい自民党の体質そのものを醜悪なものと曝す危険性を抱えることになるから、自民党の長い歴史に傷をつけることになる汚点を最小限にとどめるために真相を薮の中に置いたまま選挙に敗れて政権交代の道を選択する可能性も浮上する。

 もし自民党の歴史に傷がつくことを恐れて真相解明に後ろ向きの姿勢を続けるようなら、そのことを優先して、国民・有権者の真相解明を求める声、政治の信頼回復を求める声に真摯に向き合おうとする意識を置き去りにしているからで、政治の基本から外れた国民・有権者に背を向ける行為にほかならないと、野党一つになって一大合唱すべきだろう。

 長妻昭の反論がまとも過ぎたのは食うか食われるかの戦う姿勢が不足しているからに違いない。大体が前日の衆院予算委で参考人招致に自民党が全員で反対したこと自体が既にこれ以上は真相解明を前へ進める気はないという、ある意味サインであって、それを読み取ることができていたなら、「松本元事務局長からきちんとヒアリングをして、キックバック再開に関わった政治家を特定して発表していればですね、呼ぶ必要ないんですよ」はするはずもないこととして、口を突いて出ることはない発言だったが、読み取ることができていないから、甲斐もないことを言うことになり、この点にも戦う姿勢の不足を感じ取ることになる。

 この戦う姿勢の不足は、多分、野党第一党の議員でございますと胡座をかいているからではないかと疑えなくはない。

 最後に立憲民主党の奥野総一郎が松本元事務局長が参考人招致の議決に従って国会に出席するよう石破茂に何度も求める埒のあかない質問を取り上げてみる。

 奥野総一郎(冒頭)「私は先ず、参考人招致の議決について総理に伺おうと思いますが、総理ね、読売の一月の世論調査ではですね、政治とカネの問題。自民党のこれまでの対応は十分だと思いますか?という問いに対して、『思う』はたったの9%なんですよ。読売ですよ。

 そして『思わない』が86%。ということは多くの国民、殆どの国民は自民党の対応は不十分だと、こう思ってるわけですよ。8億円を赤い羽に寄付したとか、あるいは政倫審も勢力的に開いていますが、全く事実は解明されてない。

 国民はそれをよく見てるわけです。そして松本氏の参考人招致についてはこれTBSの一月調査ですが、招致すべきは61%。する必要はないは29%なんですね。これも多くの国民が招致に賛成してるわけです。それも当然です。

 パネルをご覧ください。これはまあ何回も言われてきたことでありますけれども、松本氏は22年8月の幹部会の結果、これ裁判での証言ですけれども、安倍派の幹部会の中で還付は再開したと。還付やりますとなって、4人の議員がそれぞれに連絡をしたということなんですね。これに対して政倫審では下村、西村、世耕各氏は、『そんなことは決まっていない』ということですね。

 塩谷さんはちょっと違いますけれども、 3人、主要幹部3人とこの松本氏の証言が食い違ってる。これが一つ。そして最近の政倫審でもですね、多くの議員が一連の問題が発覚するまでは記載を知らなかった。そして還付金を収支報告書に記載しないようにとの党の指示は派閥の事務局、これは松本氏ですよね、松本氏から、事務局からそれぞれの秘書に対して行われていた。そう発言しているんですが、こんな大事なこと、本当に議員に知らせなかったのか、知らなかったのか。

 ここも一つポイントになりますが、これも松本氏に聞かなければならない重要な問題だと思います。松本氏は裁判で述べていますが、前任の鳩山さんという方ですね、その方から事務局長を引く継ぐ際、2019年1月頃と言ってますが、キックバックの件を引き継いだとこういうふうに述べているわけです。

 経緯を知るキーパーソンなんですよ。そして新たに求めている、その招致を受けることはですね、私はまさに国政調査権の発動であって、世論の求めに応じた当然のことだと思うんですね。ですから、総理はこの議決に従って、国会の議決は重いんですよ。自民党は反対されたかもしれない。しかし議決は通りました。

 総理はきちんと国会の議決に従って松本氏に参考人招致、自民党総裁として応じるように促すべきだと思うんですよ。総理、促して頂けませんか?」

 石破茂「検察による厳正な捜査が行われ、決着がついておるものでございます。また、民間人を参考人として招致するということについては、慎重であるべきで、さらばこそずっと全会一致ということが行われてきたと承知を致しております。国会の議決は国会の議決として、それは尊重すべきものではございますが、私ども自由民主党としては民間人、そしてまた検察の捜査、それなりの決着がついているもの、そういう方を参考人として招致するのは慎重であるべきだという立場には変わりはございません」

 奥野総一郎「係争中のときにこの話をすると、係争中だから、司直の手にかかってるから呼べない、聞くべきじゃないと話になるわけですね。そして判決が出て、確定して終わった。終わったら呼ぼうとしたら、今のような答弁になるんですね。じゃあこれ、呼べないじゃないですか? 国政調査権発動できないじゃないですか?自ら縛っていいんですか? おかしいですよ。これだけ世の中が求めているときに僕は政治に対する信頼を失う、失ってる大きな原因だと思います。この大変なときにこそ、きちんと解決すべきだと思います。

 もう一回聞きますが、総理は促すつもりはないということでよろしいんですね」

 石破茂「国会の議決がなされたということはそれなりに重いものだと思っております。国会の議決というものはなされた上で、その方がどのように判断されるかということについて、今予断を持って申し上げる立場にはございません」

 奥野総一郎「委員長。これまでじゃあ話を伺ったことありますか? 岸田前総理は火の玉になって、先頭に立って聞き取りはあると。私不十分だったと思いますが、それなりに一生懸命やっておられたと思うんです。石破総理はどうですか? 再調査もしない。新たな事実が出てきても再調査しないと仰り、そしてこの松本氏の参考人招致も促さないと。先程反対だとこう仰ってるわけですよ。

 これでは解決できません。国益に私は反すると思うんですね。もう1回聞きますが。今まで聞いたことありますか?そして松本さんから話を聞いたことがありますか?そしてこれから参考人招致を促そうと。もう一度聞きますが、促すつもりないということなんですか」

 石破茂「この方、ただいま民間人でございます。国会の議決がございました。どういう判断をされるか、私には今申し上げる立場にはないところでございます」

 奥野総一郎「お答えになってないんですね。結局本人次第だとおっしゃるが、しかしいくら民間人であっても、自民党総裁として責任と責任者として促すぐらいできると思うんですね。促してダメだというのあるのかもしれません。これまでね、そういう話はされましたか?

 そしてされてないんであれば、せめて出なさい、国会の場で説明しなさいと。総理を促すべきだと思うんです。それもしないんですか」

 石破茂「先程来申し上げておりますように国会の議決がございまして、我が党は反対を致しましたが、国会の議決がなされたものでございます。で、今その方、民間人であって、私ども自由民主党と関係が直接ある方ではございません。これをどのようにご本人が判断されるということが分からない時点で、出なさい。なぜという立場に私はおりません」

 奥野総一郎「ちょっと聞き方を変えましょう。自民党の政治改革本部ですか?として聞き取りをすればいいじゃないですか。民間人であっても、国会じゃいけないんだと言うんだったら、自民党総裁として自民党の中で聞き取りをして、それをここでそれを述べてくださればいいんじゃないですか?それもやらない、それもできないんでしょうか」

 石破茂「検察による厳正な捜査が行われて、結論が出てるものでございますが、それでは足りないと。従って国会で参考人として申し述べよというのが現在の国会の立場でございます。それをご本人がどう判断されるか、私どもとして検察による厳正な捜査が行われ結論が出ており、今は民間人であるということは、それは尊重していかねばならない。法治国家である以上、当然のことでございます」

 奥野総一郎「今の私の質問に答えていないんですね。その自民党の中で総裁として聞いてはどうですか、と。それもやらないんですか、という質問に答えていただいてないんですよ。

 極めて後ろ向きじゃないですか? これではいつまで経っても、この問題終わりませんよ。いくらやったって、法案が通った、何したって、この問題が出てきてますよ。この問題は決して終わらないんですよ。

 だから、松本さんに語って頂くことが大事だと。裁判と同じことでもいいんですよ。そのことは国民を知らないわけだから。

 どうですか、総理。裁判で語った以上のことは語れないとおっしゃったのかもしれないけども、同じことを繰り返していただいたって構わない、国会で。どうですか」

 衆院予算委員長安住淳「質問ですかね?」

 奥野総一郎(自席に座るが、立ち上がって)「じゃあ、まあまあこれでもう終わりにしときますが、極めて後ろ向きだと思うんです。これじゃあ国民は納得しません。さっきの話ですけど、1割の方しか納得しないということを申し上げておきます。そしてこの問題は後々これからきちっとここでやっとかないとですね、なかなか、あの、終わらないと思います。えー、このぐらいにしときます。

 え、そして次はフジテレビ問題ですが、昨日ですね。官房長官に伺いたいんですが、え、政府広告を――」

 参考人招致させることに議決された。出席するか否かは本人の任意ということなら、出席させることができるかどうかは質問者の腕の見せどころなのに、同じ質問を繰り返す堂々巡りを演じたに過ぎなかった。途中で埒のあかないことをしているなと自ら気づくことはなかったのだろうか。

 参考人招致の採決に自民党全体で反対なら、その反対の意思に倣って、招致に応じることはないだろうと予測がつく。石破茂が、「民間人だ、民間人だ」と言っても、自民党の伝統ある最大派閥安倍派のメシを何年間か食ってきた民間人である。自身も表沙汰にできないことを色々と隠してきているだろうから、仲間意識の方に引っ張られる力の方が強いはずだ。

 取り調べで22年8月の幹部会の中で還付は再開したとしている証言が他の幹部と違うとしているが、約2年間を置いたそれぞれの証言ということを考えると、口裏を合わせて記憶違いを演出、実態を隠すための撹乱戦法ということもありうる。

 とは言え、読売の一月の世論調査を持ち出して、自民党の対応は十分だが9%、不十分だが86%の数字を示したのだから、「ということは多くの国民、殆どの国民は自民党の対応は不十分だと、こう思ってるわけですよ」と数字どおりの解説で済ます策のないことをするのではなく、86%はただ単に真相解明を不十分だと思っているということではなく、政治資金パーテイに関わる政治とカネの問題が発覚以来、政府と自民党が真相解明を求める国民の声、有権者の声に真摯に向き合ってこなかった姿勢に対して不満を示した国民の割合、有権者の割合なのだと位置づけて、「その不満を解消して政治の信頼を回復させる大きな手立てが今回の参考人招致を実現させ、知っていることを正直に話させることではないのか。実現させるためには石破総理が先頭に立って、国民の声、有権者の声に真摯に向き合わなければならないはずだ」とでも迫るべきだったろう。

 もし石破茂が、「検察による厳正な捜査が行われて、結論が出てるだ」、「今は民間人であるということは、それは尊重していかねばならないだ」と言ったら、「真相の解明を求める国民・有権者に真摯に向き合わずに、真相を隠そうとする自民党自身にだけ向き合う逃げの姿勢ではないか。政治は何事も有権者とその家族、即ち全ての国民に向き合うことから始まるはずだが、石破総理は国民・有権者に向き合わない政治スタイルでやっているのか」と反論すればいい。

 「真相解明が不十分だ」、「派閥幹部の説明は不十分」といった世論調査の高い確率を武器に国民・有権者に真摯に向き合わずに背を向けているから、世論調査のこういった数字が弾き出される結果となっているのではないのかと、"国民・有権者と真摯に向き合っているのか、真摯に向き合うことができないでいるのか"の一点で押していく。

 そうすれば、埒のあかない堂々巡りの追及を避けることができる。

 現在の石破自民党は国民・有権者に対して真摯に向き合わない姿勢を続けるに応じて去年の衆議院選挙に引き続いて、票の一票一票失っているかもしれない。自民党議員の目にも、国民・有権者の目にも見えない、さながら自民党終末時計といった具合で票が失われつつあるかもしれない。

 だとしても、石破自民党からしたら、国民・有権者の真相解明が不十分だ、説明責任を果たしていないという声に真摯に向き合わうのも地獄、向き合わないのも地獄、どう対応していいのか窮地に陥っているのかもしれない。

 2025年2月4日のNHK NEWS WEB記事が、「既に検察の事情聴取や刑事裁判の公開の法廷でも述べたとおりであり、これ以上、申し上げることはない」と衆院予算委員会理事会に文書で回答があったと伝えていた。そもそもからして予想がついていたことだが、出席に向けた野党の腕の見せどころがこうまでもお粗末では、予想を覆すどころか、本命ガチガチが当然といったところかもしれない。

 以上見てきた芸のない国会議員に国民の税金で給料を払っていると考えると、複雑な気持ちになる。
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