2025年1月30日の衆院予算委員会で旧安倍派の事務局長兼会計責任者松本淳一郎の国会参考人招致について採決が行われ、野党側の賛成多数で招致が議決された。自民党安倍派の政治資金パーティ券ノルマ超過売上分が派閥幹部等、多くの安倍派議員に現金還付され、それを収支報告書に不記載とし、裏ガネ化していた不正行為に(ほかの派閥も行なっていたが、安倍晋三率いる安倍派程大掛かりではなかった)派閥の事務局長兼会計責任者として深く関わっていた松本淳一郎から、未だ明らかにされていない、安倍晋三や派閥議員の関与の実態等を聞き質して明らかにしたい目的からである。
参考人招致に関わる議決は全会一致が原則だそうで、賛成多数による議決は1974年以来の51年ぶりだそうだ。これも国会議席が与野党逆転となったことと、このこととの関連で予算委員会委員長に野党第一党立憲の安住淳が就任していることに関係があるのだろう。
招致が議決された松本淳一郎は還付現金収支報告書不記載のスキャンダルが発覚後、告発を受け、昨2024年10月に政治資金規正法違反(虚偽記載)で禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定している。
但し参考人招致に法的拘束力はなく、出席は任意で、松本淳一郎は「裁判で証言した以上のことはない」との理由で招致には応じられないとの意向を関係者に示しているという。出席は見込みなしということなら、議決した手前、出席させることができるかどうかは野党の腕の見せどころとなる。
自民党は慣例の全会一致が反故にされ、賛成多数での議決が腹に据えかねたのか、それとも疑惑がほじくり返されて、何か出てくることを恐れたのか、翌1月31日の衆院予算委員会で全会一致に抗議の発言をしたとマスコミが伝えていた。
その抗議に対して質問に立った立憲の長妻昭代表代行の、同じくマスコミが伝えていた反論が刺激も面白みも何もない、陳腐な内容で、もう少しまともなことが言えないのかと思ったものの、マスコミ記事のみでは下手に批判できないと思い、質疑の動画をネットからダウンロードして、文字起こししてみた。
その結果は最初の印象どおりに刺激も面白みも何もない、陳腐そのものの長妻昭の反論に過ぎなかった。
自民党小野寺五典と中曽根康隆の全会一致に抗議した発言、中曽根康隆の抗議をターゲットにした長妻昭のまとも過ぎる反論と、最後に参考人招致の出席を促すよう、総理大臣石破茂に迫った、同じく立憲の奥野総一郎の埒のあかない質問を取り上げてみる。
小野寺五典「自由民主党の小野寺五典です。冒頭一言申し上げます。当初の予定であれば、この委員会は昨日から始まる予定でありました。熟議を掲げる国会であります。一日一日を大切にしなければなりません。安住委員長にはそうした点も十分考慮し、公平な委員会運営をお願いしたいと思っております。
で、さて、これから審議する予算でありますが。国民所得の拡大はもちろん、経済、成長、地方創生、外交安全保障など我が国にとって重要な政策の裏付けとなる予算となります。野党の皆さんとも誠実に向き合いながら審議を進め、一日も早い成立を期したい、そのように思っております」――
国民生活と国家運営に直結する重要な予算審議が参考人招致の議決で一日先延ばしにされたと暗に野党を批判しているが、参考人招致に自民党は反対したのだから、当然、それを阻止したかったが、
総選挙で過半数を割った悲しさ、少数頭数で阻止できなかったことの悔しさが口を突いて出たといったところなのだろう。
但し参考人招致に法的拘束力はなく、出席は任意で、松本淳一郎は「裁判で証言した以上のことはない」との理由で招致には応じられないとの意向を関係者に示しているという。出席は見込みなしということなら、議決した手前、出席させることができるかどうかは野党の腕の見せどころとなる。
しかし小野寺五典の悔しさは実際には国民に真摯に向き合う姿勢を全面的に欠き、自民党自身にのみ向き合う姿勢が言わせたご都合主義に過ぎない。
なぜなら、立憲の奥野総一郎も質問で取り上げているが、最近に至っても政治資金パーティに関わる疑惑は十分に解明されていない、政府の説明は不十分だと見る国民が世論調査で無視できないまでの多数を占めているからなのは断るまでもない。無視できない多数に対する無視は国民に向き合う姿勢を欠いていることによって可能となる。
小野寺五典は少しあとで、「強い日本を作って国民を守る、そのための強い経済、地方、人材育成、外交安保など様々な切り口から令和7年度予算について議論を深めていきたいと思っております。その第一は強い経済の実現です。日本は過去30年デフレが続き、その間コストカット型経済に走り、本来振り向けるべき投資を国内より海外に加速させてきました。その結果、国内の資本蓄積は細り、成長率は低下。世界に比べ、日本だけが低空飛行の状態が続いてまいりました」と言って、国家と経済の立て直しの緊急重要性を言い立てているが、過去30年のデフレも、コストカット型経済も、投資の国内よりも海外加速も、国力の日本だけが低空飛行も、自民党政治が招いた惨状で、反省から入るべきを、そうしないのは実際のところは国民に向き合う姿勢を欠いているからにほかならない。
次が中曽根康隆。自分達にのみ向き合う姿勢はより露骨になっている。
中曽根康隆「自由民主党の中曽根康隆です。冒頭一言、申し上げたいと思います。熟議を重ねながら、参考人招致を審議の条件とし、国民生活に直結する予算の審議入りが一日遅れたことは甚だ遺憾であります。また、安住予算委員長の職権により行われた昨日の参考人出頭決議についても言及をさせて頂きます。
賛成多数による議決は51年ぶりとはいえ、判決が確定した当事者という観点からは過去に例はなく初めての事例となりました。これは長年積み上げてきた全会一致の原則を逸脱するものであると共に司法権の独立と人権法の観点からも重大な禍根を残すものであり、極めて遺憾であります。
さらに言えば、立憲委員一名が遅刻によってこの重大な採決を欠席されたことは大変遺憾であります。以上申し述べて、質問に入りたいと思います」
政治資金収支報告書に記載すべきカネの収支を不記載とし、闇のカネとした。最大派閥の清和政策研究会(安倍派)に至っては所属99人のうち77人が関係し、2018~22年の5年間で総額6億7654万円が不記載、闇のカネとしていたという。
この"5年間"は政治資金収支報告書の不記載という虚偽記載罪の公訴時効が5年となっているから、5年以前は罪に問えないというだけの話で、いつ、誰が始めたかによって、闇の深さに違いが出てくるが、事の真相自体が闇に葬られたままの状態になっていて、闇が闇のままに放置され、その放置が国民に政治不信の形を取らせ、2024年10月27日衆議院議員選挙で自公与党過半数割れという衝撃的な悪夢を自公与党に与えた。
自民党としたら、参考人招致に反対したのだから、これ以上の真相解明はご免蒙り、ご免蒙ることで、いわば真相を薮の中に隠すことで、悪夢の再来を断ち切りたいと考えているのだろう。
こういった姿勢自体が真相解明を求めるより多くの国民・有権者に真摯に向き合う姿勢を持たず、自分たち自民党のみに目を向けている、自民党のみと向き合っている姿勢であることの論拠とすることができる。自分勝手も甚だしい。
では、中曽根康隆の野党批判に対する立憲民主党長妻昭の面白みも何もない、陳腐な反論を見てみる。
長妻昭「立憲民主党の長妻昭です。よろしくお願いします。先ずですね。午前中、中曽根さんが一方的にお話になった件について一言申し上げます。旧安倍派のですね、。松本元事務局長はですね、この昨日の議決は全会一致ではなく、議決するのはおかしいなどなどと、滔々と述べられたわけですね。 私は相当的外れだったと思います。
誰がこんな議決をさせる原因を作ったのか? 国会で膨大な時間を使わせてんのは誰なのか? 全く当事者意識が感じられません。率先して真相解明する自民党がそれをしないから、議決せざるを得なくなったんではないでしょうか? (野党席から拍手)
その自民党が、その自民党が何と議決自体に反対。採決でも反対する。とんでもないことだと思います。本来は、自民党がですよ。今ヤジ飛ばしておられますけれども、松本元事務局長からきちんとヒアリングをして、キックバック再開に関わった政治家を特定して発表していればですね、呼ぶ必要ないんですよ。(野党席からパチパチと拍手)
それを怠ったために呼ばざるを得なくなったと(声を大きくして)、ということをですね、よく認識いただきたい。どの口が言うのかということを強く申し上げたいというふうに思います」
長妻昭のこの反論が面白みも何もない、陳腐な言葉を並べただけだと思わなければ、余程鈍感だと言わざるを得ない。長妻昭の発言にパチパチと拍手を送った野党議員はみな鈍感の部類に入れることができる。
自民党は本質のところでは真相解明に後ろ向きだった。国民・有権者の真相解明を求める声に真摯に向き合う姿勢を見せず、逃げの姿勢を打った。例えば安倍派に関して言うと、5年間で総額6億7654万円という誤魔化してきた金額の大きさ、誤魔化した人数が所属99人のうち77人の多さからしたら、松本淳一郎だけではなく、安倍派幹部5人も証人喚問が当然なはずだが、ウソをつけば、3カ月以上10年以下の偽証罪に問われ、相当な理由がなく出頭や証言を拒否した場合は1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金が課せられる、ウソはつけない、出頭はできても、証言は拒否できない、制約の厳しさに断り続けてきたところに逃げの姿勢が現れている。
国民の多くが自民党のこのような有り様に潔くない印象を受け、旧統一教会の問題も影響したのだろうが、直近の問題として10月の総選挙で懲罰の意味もあったはずで、自公への投票を回避、結果として過半数割れという敗北を招くことになったはずだ。
長妻昭はこのことを指摘し、「真相解明は我々野党だけが求めているのではない。多くの国民、多くの有権者が求めていて、我々野党がその声を代弁して真相解明を求めてもいる。国民・有権者の求めにいつまでも後ろ向きの姿勢でいたなら、今後の国政選挙で10月の総選挙の二の舞いを演じることにならないか。演じてもいいのか」と、選挙と紐付けて迫るべきだった。
少なくとも、夏の参院選挙で昨年の総選挙の二の舞を演じてもいいのかといったことを匂わせなければならなかった。少しは迫力ある追及ができたはずだ。
勿論、自民党としたら、選挙への悪影響を最も恐れているだろうからである。
但し真相解明がされればされたなりに選挙への悪影響は付き纏う。政権交代を余儀なくされるかもしれない。その真相解明が誰か派閥の領袖が築いてきた輝かしい経歴をメッキだったと暴露する性格のものなら、派閥連合体と言ってもいい自民党の体質そのものを醜悪なものと曝す危険性を抱えることになるから、自民党の長い歴史に傷をつけることになる汚点を最小限にとどめるために真相を薮の中に置いたまま選挙に敗れて政権交代の道を選択する可能性も浮上する。
もし自民党の歴史に傷がつくことを恐れて真相解明に後ろ向きの姿勢を続けるようなら、そのことを優先して、国民・有権者の真相解明を求める声、政治の信頼回復を求める声に真摯に向き合おうとする意識を置き去りにしているからで、政治の基本から外れた国民・有権者に背を向ける行為にほかならないと、野党一つになって一大合唱すべきだろう。
長妻昭の反論がまとも過ぎたのは食うか食われるかの戦う姿勢が不足しているからに違いない。大体が前日の衆院予算委で参考人招致に自民党が全員で反対したこと自体が既にこれ以上は真相解明を前へ進める気はないという、ある意味サインであって、それを読み取ることができていたなら、「松本元事務局長からきちんとヒアリングをして、キックバック再開に関わった政治家を特定して発表していればですね、呼ぶ必要ないんですよ」はするはずもないこととして、口を突いて出ることはない発言だったが、読み取ることができていないから、甲斐もないことを言うことになり、この点にも戦う姿勢の不足を感じ取ることになる。
この戦う姿勢の不足は、多分、野党第一党の議員でございますと胡座をかいているからではないかと疑えなくはない。
最後に立憲民主党の奥野総一郎が松本元事務局長が参考人招致の議決に従って国会に出席するよう石破茂に何度も求める埒のあかない質問を取り上げてみる。
奥野総一郎(冒頭)「私は先ず、参考人招致の議決について総理に伺おうと思いますが、総理ね、読売の一月の世論調査ではですね、政治とカネの問題。自民党のこれまでの対応は十分だと思いますか?という問いに対して、『思う』はたったの9%なんですよ。読売ですよ。
そして『思わない』が86%。ということは多くの国民、殆どの国民は自民党の対応は不十分だと、こう思ってるわけですよ。8億円を赤い羽に寄付したとか、あるいは政倫審も勢力的に開いていますが、全く事実は解明されてない。
国民はそれをよく見てるわけです。そして松本氏の参考人招致についてはこれTBSの一月調査ですが、招致すべきは61%。する必要はないは29%なんですね。これも多くの国民が招致に賛成してるわけです。それも当然です。
パネルをご覧ください。これはまあ何回も言われてきたことでありますけれども、松本氏は22年8月の幹部会の結果、これ裁判での証言ですけれども、安倍派の幹部会の中で還付は再開したと。還付やりますとなって、4人の議員がそれぞれに連絡をしたということなんですね。これに対して政倫審では下村、西村、世耕各氏は、『そんなことは決まっていない』ということですね。
塩谷さんはちょっと違いますけれども、 3人、主要幹部3人とこの松本氏の証言が食い違ってる。これが一つ。そして最近の政倫審でもですね、多くの議員が一連の問題が発覚するまでは記載を知らなかった。そして還付金を収支報告書に記載しないようにとの党の指示は派閥の事務局、これは松本氏ですよね、松本氏から、事務局からそれぞれの秘書に対して行われていた。そう発言しているんですが、こんな大事なこと、本当に議員に知らせなかったのか、知らなかったのか。
ここも一つポイントになりますが、これも松本氏に聞かなければならない重要な問題だと思います。松本氏は裁判で述べていますが、前任の鳩山さんという方ですね、その方から事務局長を引く継ぐ際、2019年1月頃と言ってますが、キックバックの件を引き継いだとこういうふうに述べているわけです。
経緯を知るキーパーソンなんですよ。そして新たに求めている、その招致を受けることはですね、私はまさに国政調査権の発動であって、世論の求めに応じた当然のことだと思うんですね。ですから、総理はこの議決に従って、国会の議決は重いんですよ。自民党は反対されたかもしれない。しかし議決は通りました。
総理はきちんと国会の議決に従って松本氏に参考人招致、自民党総裁として応じるように促すべきだと思うんですよ。総理、促して頂けませんか?」
石破茂「検察による厳正な捜査が行われ、決着がついておるものでございます。また、民間人を参考人として招致するということについては、慎重であるべきで、さらばこそずっと全会一致ということが行われてきたと承知を致しております。国会の議決は国会の議決として、それは尊重すべきものではございますが、私ども自由民主党としては民間人、そしてまた検察の捜査、それなりの決着がついているもの、そういう方を参考人として招致するのは慎重であるべきだという立場には変わりはございません」
奥野総一郎「係争中のときにこの話をすると、係争中だから、司直の手にかかってるから呼べない、聞くべきじゃないと話になるわけですね。そして判決が出て、確定して終わった。終わったら呼ぼうとしたら、今のような答弁になるんですね。じゃあこれ、呼べないじゃないですか? 国政調査権発動できないじゃないですか?自ら縛っていいんですか? おかしいですよ。これだけ世の中が求めているときに僕は政治に対する信頼を失う、失ってる大きな原因だと思います。この大変なときにこそ、きちんと解決すべきだと思います。
もう一回聞きますが、総理は促すつもりはないということでよろしいんですね」
石破茂「国会の議決がなされたということはそれなりに重いものだと思っております。国会の議決というものはなされた上で、その方がどのように判断されるかということについて、今予断を持って申し上げる立場にはございません」
奥野総一郎「委員長。これまでじゃあ話を伺ったことありますか? 岸田前総理は火の玉になって、先頭に立って聞き取りはあると。私不十分だったと思いますが、それなりに一生懸命やっておられたと思うんです。石破総理はどうですか? 再調査もしない。新たな事実が出てきても再調査しないと仰り、そしてこの松本氏の参考人招致も促さないと。先程反対だとこう仰ってるわけですよ。
これでは解決できません。国益に私は反すると思うんですね。もう1回聞きますが。今まで聞いたことありますか?そして松本さんから話を聞いたことがありますか?そしてこれから参考人招致を促そうと。もう一度聞きますが、促すつもりないということなんですか」
石破茂「この方、ただいま民間人でございます。国会の議決がございました。どういう判断をされるか、私には今申し上げる立場にはないところでございます」
奥野総一郎「お答えになってないんですね。結局本人次第だとおっしゃるが、しかしいくら民間人であっても、自民党総裁として責任と責任者として促すぐらいできると思うんですね。促してダメだというのあるのかもしれません。これまでね、そういう話はされましたか?
そしてされてないんであれば、せめて出なさい、国会の場で説明しなさいと。総理を促すべきだと思うんです。それもしないんですか」
石破茂「先程来申し上げておりますように国会の議決がございまして、我が党は反対を致しましたが、国会の議決がなされたものでございます。で、今その方、民間人であって、私ども自由民主党と関係が直接ある方ではございません。これをどのようにご本人が判断されるということが分からない時点で、出なさい。なぜという立場に私はおりません」
奥野総一郎「ちょっと聞き方を変えましょう。自民党の政治改革本部ですか?として聞き取りをすればいいじゃないですか。民間人であっても、国会じゃいけないんだと言うんだったら、自民党総裁として自民党の中で聞き取りをして、それをここでそれを述べてくださればいいんじゃないですか?それもやらない、それもできないんでしょうか」
石破茂「検察による厳正な捜査が行われて、結論が出てるものでございますが、それでは足りないと。従って国会で参考人として申し述べよというのが現在の国会の立場でございます。それをご本人がどう判断されるか、私どもとして検察による厳正な捜査が行われ結論が出ており、今は民間人であるということは、それは尊重していかねばならない。法治国家である以上、当然のことでございます」
奥野総一郎「今の私の質問に答えていないんですね。その自民党の中で総裁として聞いてはどうですか、と。それもやらないんですか、という質問に答えていただいてないんですよ。
極めて後ろ向きじゃないですか? これではいつまで経っても、この問題終わりませんよ。いくらやったって、法案が通った、何したって、この問題が出てきてますよ。この問題は決して終わらないんですよ。
だから、松本さんに語って頂くことが大事だと。裁判と同じことでもいいんですよ。そのことは国民を知らないわけだから。
どうですか、総理。裁判で語った以上のことは語れないとおっしゃったのかもしれないけども、同じことを繰り返していただいたって構わない、国会で。どうですか」
衆院予算委員長安住淳「質問ですかね?」
奥野総一郎(自席に座るが、立ち上がって)「じゃあ、まあまあこれでもう終わりにしときますが、極めて後ろ向きだと思うんです。これじゃあ国民は納得しません。さっきの話ですけど、1割の方しか納得しないということを申し上げておきます。そしてこの問題は後々これからきちっとここでやっとかないとですね、なかなか、あの、終わらないと思います。えー、このぐらいにしときます。
え、そして次はフジテレビ問題ですが、昨日ですね。官房長官に伺いたいんですが、え、政府広告を――」
参考人招致させることに議決された。出席するか否かは本人の任意ということなら、出席させることができるかどうかは質問者の腕の見せどころなのに、同じ質問を繰り返す堂々巡りを演じたに過ぎなかった。途中で埒のあかないことをしているなと自ら気づくことはなかったのだろうか。
参考人招致の採決に自民党全体で反対なら、その反対の意思に倣って、招致に応じることはないだろうと予測がつく。石破茂が、「民間人だ、民間人だ」と言っても、自民党の伝統ある最大派閥安倍派のメシを何年間か食ってきた民間人である。自身も表沙汰にできないことを色々と隠してきているだろうから、仲間意識の方に引っ張られる力の方が強いはずだ。
取り調べで22年8月の幹部会の中で還付は再開したとしている証言が他の幹部と違うとしているが、約2年間を置いたそれぞれの証言ということを考えると、口裏を合わせて記憶違いを演出、実態を隠すための撹乱戦法ということもありうる。
とは言え、読売の一月の世論調査を持ち出して、自民党の対応は十分だが9%、不十分だが86%の数字を示したのだから、「ということは多くの国民、殆どの国民は自民党の対応は不十分だと、こう思ってるわけですよ」と数字どおりの解説で済ます策のないことをするのではなく、86%はただ単に真相解明を不十分だと思っているということではなく、政治資金パーテイに関わる政治とカネの問題が発覚以来、政府と自民党が真相解明を求める国民の声、有権者の声に真摯に向き合ってこなかった姿勢に対して不満を示した国民の割合、有権者の割合なのだと位置づけて、「その不満を解消して政治の信頼を回復させる大きな手立てが今回の参考人招致を実現させ、知っていることを正直に話させることではないのか。実現させるためには石破総理が先頭に立って、国民の声、有権者の声に真摯に向き合わなければならないはずだ」とでも迫るべきだったろう。
もし石破茂が、「検察による厳正な捜査が行われて、結論が出てるだ」、「今は民間人であるということは、それは尊重していかねばならないだ」と言ったら、「真相の解明を求める国民・有権者に真摯に向き合わずに、真相を隠そうとする自民党自身にだけ向き合う逃げの姿勢ではないか。政治は何事も有権者とその家族、即ち全ての国民に向き合うことから始まるはずだが、石破総理は国民・有権者に向き合わない政治スタイルでやっているのか」と反論すればいい。
「真相解明が不十分だ」、「派閥幹部の説明は不十分」といった世論調査の高い確率を武器に国民・有権者に真摯に向き合わずに背を向けているから、世論調査のこういった数字が弾き出される結果となっているのではないのかと、"国民・有権者と真摯に向き合っているのか、真摯に向き合うことができないでいるのか"の一点で押していく。
そうすれば、埒のあかない堂々巡りの追及を避けることができる。
現在の石破自民党は国民・有権者に対して真摯に向き合わない姿勢を続けるに応じて去年の衆議院選挙に引き続いて、票の一票一票失っているかもしれない。自民党議員の目にも、国民・有権者の目にも見えない、さながら自民党終末時計といった具合で票が失われつつあるかもしれない。
だとしても、石破自民党からしたら、国民・有権者の真相解明が不十分だ、説明責任を果たしていないという声に真摯に向き合わうのも地獄、向き合わないのも地獄、どう対応していいのか窮地に陥っているのかもしれない。
2025年2月4日のNHK NEWS WEB記事が、「既に検察の事情聴取や刑事裁判の公開の法廷でも述べたとおりであり、これ以上、申し上げることはない」と衆院予算委員会理事会に文書で回答があったと伝えていた。そもそもからして予想がついていたことだが、出席に向けた野党の腕の見せどころがこうまでもお粗末では、予想を覆すどころか、本命ガチガチが当然といったところかもしれない。
以上見てきた芸のない国会議員に国民の税金で給料を払っていると考えると、複雑な気持ちになる。