ケイの読書日記

個人が書く書評

北村薫「六の宮の姫君」

2006-01-19 23:20:41 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 芥川龍之介の「六の宮の姫君」の創作背景を、国文科の女子大生が推理しています。
 最初の1/3ぐらいまでは(北村先生には申し訳ないが)つまらなくてリタイアしようと思っていたのですが、それ以降、ぐんぐん面白くなって最後の方の1/3は一気に読めました。


 やはり芥川だけだと退屈しますが、芥川ー菊池寛を軸にした交友関係が描かれると、私のように文学史に疎いものでも、十分読み応えあります。


志賀直哉、佐藤春夫 有島武郎 萩原朔太郎 谷崎潤一郎 正宗白鳥 久米正雄…


 そうそうたるビックネームがどんどん登場し、共に語り議論し反駁し仲直りしている様子がいきいきと描写されています。


 特に、芥川と菊池の関係は切ない。文学的情熱に燃え、共に手を取り合い前進し、一時は兄弟以上に親しくしていたのに、めざす方向の違いから次第に疎遠になり、芥川は自死します。


 でも、誰が悪いのでもない。そうなる運命だったんだ。


 主人公の女子大生はもうじき就職だというのに、いまだに男っけなし。 
 いまどきこんな素直な子いないよ、と思いながらも、ラテン化している日本の女の中で、柴犬のようにキリリとしているこの女子大生に、好感を持つようになりました。
コメント (2)
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