ケイの読書日記

個人が書く書評

歌代幸子「音羽お受験殺人事件」

2007-12-05 14:21:23 | Weblog
 皆さんは、今から8年前に起こったこの事件を覚えていらっしゃるだろうか?


 1999年11月、東京都文京区に住む主婦山田みつ子は、当時2歳の若山春奈ちゃんを音羽幼稚園に近接した公衆トイレで首を絞めて殺害。その遺体をバックにいれて静岡県大井川町の実家に運び、裏庭に埋めた。

 みつ子は僧侶の夫と5歳の長男、2歳の長女の4人家族で、若山さん宅と同じ家族構成。子ども2人の年齢が同じで、長男はともに音羽保育園に通っていた。
 みつ子は、そこで顔見知りだった主婦の幼い娘を殺害したのである。

 娘さんは両方とも、お茶の水女子大学付属幼稚園を受験し(くじ引き受験だが)春奈ちゃんは合格し、みつ子の娘は落ちていた。そのため、当初は「お受験殺人」と騒がれたが、その後みつ子が「事件と子どもの受験は関係ない」「母親同士の心のぶつかりあいが原因」と供述していた。


 なんともやりきれない事件。みつ子が子どもを音羽幼稚園ではなく、区立の保育園へ入れていたら、こんな事には決してならなかっただろう。

 実は、みつ子は副住職の夫を手伝い、お寺の大黒さんとしてキチンと仕事をしてきたのだ。長男を区立の保育園に預けようと申請したら、勤務時間が短いと言われ、急遽、音羽幼稚園に行く事になったらしい。


 私は3人の子どもを皆保育園に入れたので、お母さん同士の付き合いはあっさりしたものだったが、幼稚園に入れたお母さんは本当に大変。
 バスのお迎えが来て子ども達を送り出した後、しばらく立ち話。そして、場所をファミレスに移しておしゃべり。
 ママ友に話好きな人がいると本当に大変。自分だけサッサと帰るわけにもいかず(帰ってもいいが、その後欠席裁判でボロクソにけなされる事を覚悟しなければ)お付き合い。ストレスたまるだろうなぁ。


 筆者も、お嬢さんを1人持つお母さんルポライターだから、そういった母親たちの心理を丁寧に追っている。

 新堂冬樹も、この音羽お受験殺人を題材に『砂漠の薔薇』という小説(フィクション)を書いている。こっちは胸が悪くなるほどえげつない。


 それにしても、この山田みつ子という加害者は、本当に人から同情をかうタイプなんだ。
 山田みつ子の公判が終わり退席しようとすると、傍聴席から「みっちゃん、がんばれ!」と声がかかる事もあったらしい。
 遺族としては居たたまれないだろう。

 救いなき悲劇。みつ子の子ども2人は施設に預けられたそうだが、自分が殺人を犯したら、わが子たちがどうなるのか考えなかったのだろうか。
コメント (4)
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