ケイの読書日記

個人が書く書評

高山文彦「少年A・14歳の肖像」

2007-12-20 11:06:18 | Weblog
 1997年神戸の友が丘中学校周辺で起きた猟奇殺人。犯人がまだ14才の少年だったこのセンセーショナルな事件も、もう10年たつんだ。
 でも、全然風化していない。
 図書館の書架にあったのだが、手に取らずにはいられない。


 実は5年ほど前に、文春文庫「少年A・この子を生んで…父と母、悔恨の手記」という本を読んだ事がある。
 父母が書いたというより、語ったことをライターが文章化したんだろうが、どこにでもある普通の家庭という印象だった。

 ”猫を解体している最中、勃起して射精する。だから猫殺しが止められない”
といった行為は、育て方の問題だろうか?それとも先天的なもの? そして治るんだろうか?
 対象が猫から小さい子どもに変わっていくのは必然だろう。

 しかし、この家族は猫の解体も全く知らないし、被害者の淳君の首を自宅で切り落とした事も全然気が付かなかったという。
 11才のちょっと太目の男の子の首を切り落としたら、ハンパじゃない出血であろう。いくら水で流したり拭いたりしても、形跡は残るんじゃないだろうか? ましてはお母さんは専業主婦。フルタイムで働いているのではない。
 脱衣所に血をふき取った跡があれば「あら?誰か怪我したのかしら?」と不思議に感じないのだろうか?

 やはり、母親というものは私を含め、見たいものだけを見て、見たくないものは見えていても見ない、という事だろうか。


 この本の後半に、少年Aと深く関わり今後の彼を見守ろうとする人物が出てくる。そこを読んで本当に腹が立った。
 確かに少年Aと信頼関係を結ぼうと色々な働きかけをして成功しているようだ。でも、これじゃまるで少年Aの下僕である。

 殺された淳君、彩花ちゃん、そして瀕死の重傷を負った女の子は、放られっぱなしである。少年Aにだけ、大勢の優秀な医療スタッフがつき、彼を更生させようと大金がつぎ込まれる。

 本当に不公平。結局は大罪を犯しても、生きているものが勝ちなのだ。ああ、不公平。
コメント (2)
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