ケイの読書日記

個人が書く書評

二階堂黎人「地獄の奇術師」

2007-12-15 12:39:07 | Weblog
 タイトルからしてなんて江戸川乱歩チックなんだろう、と思う人も多いのでは?中味も本当に乱歩的なんである。
 私は「少年探偵団」とか「怪人20面相」とかは、子どもの頃あまり好きではなかったので、最初は読みにくかったが、この虚構の世界に飛び込んでしまえば、すごく面白い。
 こういった探偵小説にリアリティを追求しても意味が無い。


 昭和42年晩秋、東京・国立市の裕福な一家に、恐ろしい惨劇がふりかかる。
 当主の次女が、逆さづりされた上、皮膚を剥ぎ取られて殺され、次に当主の妻と長男も毒殺、当主もまたノドをかき切られ惨殺される。
 これらは皆、地獄の奇術師の仕業なのか…?


 犯人はすごく分かりやすい。ホテルでの殺害トリックも、比較的しっかりしている。ただ、人間の心理が、あまりよく書けていないと感じる。

 当主である暮林の血を引かないのに冷遇されておらず、同等の扱いを受けるとはかえって不自然。
 当主一家が敬虔なカトリック教徒であるという設定で《十の大罪》を全部犯したので皆殺しする、というのはあまりにも取ってつけたという印象がする。

 大体、生粋の日本人でありながら、敬虔で狂信的なカトリック教徒というのは、ちょっとイメージできないね。
 だいたい暮林の一家は、戦前戦中、日本の軍部と関係が深く、戦犯で処刑されそうになったという経歴の一家ではないか。
 あまりにも、作り物めいている。


 二階堂黎人の探偵小説では、登場人物のおしゃべり中に古今東西の推理小説の感想が含まれている事が多く、それがすごくためになる。
 二階堂先生はとても親切。
 これで、私の「これから読みたいミステリ」のリストがどんどん増えていくじゃないか。
コメント (4)
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