ケイの読書日記

個人が書く書評

宮部みゆき「魔術はささやく」

2011-08-04 14:23:29 | Weblog
 主人公・日下守は、色んな事情が重なって母親の死後、伯母一家に居候している。なんとか慣れたその矢先、タクシー運転手をしている伯父(伯母の夫)が、死亡事故を起こす。
 車の前に女性が飛び出して来たと主張する伯父さん。
 しかし、目撃者はいない。

 そんな時、守の家に「殺してくれてありがとう。あいつは死んで当然だったんだ」という電話がかかる。
 これは単純な事故ではないのか? 仕組まれた?!
 そう直感した守るは、彼なりのやり方で事故を調べようとする。


 この主人公・守が、すごくりりしい高校生なのだ。スタジオ・ジブリのヒロインを陰で支えようとする男の子みたいな。
 彼には父親がいない。4才の時に、公務員だった父は公金を横領して姿をくらました。どうもホステスさんに貢いでいたらしい。
 父親の失踪後、母親と守の生活は激変。近所の冷たい視線や心無い仕打ちにさらされる事になる。 
 その母親も無理がたたって他界。守は伯母さんに引き取られる。


 3人の女性がすでに死亡し、残りの1人にも魔の手が伸びるといったサスペンス。その死亡にいたるトリックも興味深いが、それ以上に主人公・守の逆境に負けない強さに心打たれる。
 どこまでいっても「公金横領犯の息子」というレッテルはついてまわる。というか、そういう事情をかぎつける人間が、どこにでもいて、引越し先や転入先の学校にも触れ回るのだ。
 でも、彼を理解しようとする・助けようとする大勢の人たちもいるのだ。
コメント
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