ケイの読書日記

個人が書く書評

蒼井雄「船富家の惨劇」

2012-03-02 14:59:46 | Weblog
 蒼井雄の名前は知っていたが、いままで読む機会はなし。先回の「三の字旅行会」と同じ本に収められていたので、喜んで読みました。
 昭和11年2月作品。

 うーん、長編でかなりの力作です。トラベルミステリの先駆け的作品。
 私はトラベルミステリはあまり好きではないのだが、それでも、大阪、紀伊半島白浜温泉、熊野街道、木曽・御岳と、犯人と思われる男たちを追って、警察や私立探偵のドーベルマンのようなしつこさは、読みごたえあります。

 なんといっても昭和11年だから、山奥の村には電話が無く電報がその代わりになっている所など、ホームズ作品を思い出します。
 交通網も発達しておらず、自動車は村にたった1台。道も整備されておらず、逃げる方も追いかける方も、徒歩で山のけもの道を谷に転がり落ちる危険にさらされながら、進んでいく。
 
 この作者は、もともと山歩きが趣味なんだろうか? 山岳地帯の描写が、すばらしく上手なのだ。それだけでも一読の価値あり。


 併載されていた「霧しぶく山」は、連載時に発禁になったらしい。どこか思想的に引っ掛かったんだろうか?と別の意味で期待しながら読んだが…なんだよ、SM部分が後半にあり、それで発禁になったんだろう。
 期待して損した。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2012-03-03 04:57:11
TBさせて頂きました。
この作品は、フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』の影響を受けてる感じがしますね。探偵の扱いとかも。
ところで、蒼井優って女優さんがいますが、この人の名前を聞くと、「船富家……」って思ってしまいます(^^;。
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たかさんへ (kei)
2012-03-05 10:54:17
 コメントありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありません。

 本当ですね。『赤毛のレドメイン家』に似てますね。探偵が2人出てくるところなんか。
 1人の探偵は、気の毒なほど、コケにされてる所もそっくり!

 こちらからもTBさせてください。
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Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2012-03-06 05:04:13
全然関係ないですが、カーの『蝋人形館の殺人』が、創元推理文庫から今月末に出るみたいです。
初完訳だとか。
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たかさんへ (kei)
2012-03-06 15:39:33
 貴重な情報、ありがとうございます。
 たかさんって、こういう事、詳しいですね。
出版社のホームページをチェックするといいのかな?
 
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Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2012-03-07 04:35:21
この本の事はアマゾンで知りました(笑)。
こんな本ばかりチェックしているので、アマゾンさんがお勧めして来てくれるのです(笑)。まあボクは買わないと思いますが(^^;。
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たかさんへ (kei)
2012-03-07 11:08:44
 なるほど、アマゾンですか。
 そういえば私、アマゾンで買い物したことないですね。ダンナや子どもは色々買っているようですが。
 
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