ケイの読書日記

個人が書く書評

「あやしい美人画」 松嶋雅人  ㈱東京美術

2018-05-10 13:51:47 | その他
 日本の美人画と言えば、すぐに思い浮かぶのは浮世絵の美人画だが、この画集では主に明治以降の日本画・洋画を収録している。やっぱりモデルは舞妓や芸妓、遊郭の太夫や花魁が多い。
 特に、最高級遊女の花魁(太夫)は、髪飾りやかんざし、着物や帯が大掛かりで、こんなの付けてたら重くて動けないんじゃない? たっぷりの黒髪を、かもじを使って膨らませて結い、たくさんの高価で重そうなかんざしを髪にさすので、すごく肩が凝り、仕事どころじゃないでしょ、と思ってしまう。

 そうそう、どうして帯を前結びにするんだろう? たしかに座った場合、前結びの方が豪華に見えるからかな? それとも、単に帯をほどきやすいからだろうか?
 花魁の隣に座っている禿は、年齢で言えば少女だろうが、まるで遣り手婆のよう。なんでこうも初々しさが無いの?

 花魁(太夫)は、当時の庶民からすれば、手が届かない美女のはずだが、うーーーん、現代の感覚からいうと、とうてい美しいとは思えないなぁ。それにお歯黒。どうして白い歯をわざわざ黒く染める必要があるんだろう。外国人も遊郭に行っただろうから、相方の遊女が笑うと、黒い歯がこぼれるのが強烈でビビってしまい、コトに及ぶのに支障が出るんじゃないだろうか?
 日本以外に、お歯黒の風習がある国ってあるんだろうか?
 やっぱり浮世絵の美人画は良い! 着物も帯もかんざしも、質量を感じさせず、軽やかに描いてある。

 たまに、素人女性の画が収録されていると、サッパリしてほっとする。菊池契月という日本画家が、長男の妻をモデルにした日本画『少女』はいい。一服の清涼剤のよう。

 
 そうそう、岸田劉生の『麗子微笑』も収録されていた。教科書に載っていて絶賛されてるけど…どうしてこんなに圧縮したように描くんだろう? 私が子供の頃、本物の麗子さんも、こういった圧縮されたような姿形の人なんだと思っていたが、そんなワケないよね。麗子さんがこの絵を見て「私、こんなにひしゃげてない!!!」とお父さんに怒ったりしないのかな。
 

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