ケイの読書日記

個人が書く書評

ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」新潮文庫

2023-03-18 10:19:31 | その他
 すごく売れている本なので、内容は皆さん、ご存じだと思う。母親が日本人、父親がアイルランド人、英国で生まれ育った11歳の男の子の成長リアルストーリー。ハッとさせられる所も、ホロリとする所も多い素晴らしいノンフィクションだが、私が一番印象に残ったのは、本の内容というより、この著者ブレイディみかこさんの事。

 1965年福岡生まれ。ブリティッシュロックが大好きだったので、高校卒業後、アルバイトして渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち、英国で保育士の資格を取得。保育園で働きながら、ライター活動を開始する。著書多数。

 つまり帰国子女でもないのに、こんなつっこんだ政治的話を子どもや配偶者や近所の人やママ友たちとできるんだな、すごいなぁ!と思う。ほら、よく聞くでしょ。外国の人と結婚して、その地に移り住み、子どもを産んで現地になじんでも、日常会話は上手くなるけど、それ以上に上達することは難しい。子どもはどんどん言葉を吸収し上達していくけど、自分はそれについていけないから、疎外感を感じるって。
 しかし、ブレイディみかこさんは違う。近所の人たちや子どもの友達の親とも、堂々とやりあうのだ。やっぱり音楽好きだから耳が良いんだろうか?

 そうそう、一般的に移民が多い地区ほど貧しくて、その地の公立学校はレベルが低いと、私たち日本人は思うけど、そんな単純な話ではない。高い教育を求めてインドやパキスタン東欧から移民してくる人も多く、所得が高い移民が多い学校は、オックスフォードやケンブリッジにたくさん入学させている。
 考えてみれば、今の英国の首相はインド系だし、ロンドン市長もパキスタン系じゃないかな?時代はとっくに私の遅れた意識を超えているんだね。

 で、このブレイディみかこさんの息子さんが通っている元底辺中学校(元だよ、今は違う)が、ほとんど白人労働者階級の子弟なのだ。だから移民の子どもはあまりいない。英国って階級が昔から固定していて、労働者階級の子弟が上の学校に進学して階級的に上昇しようとは、あまり思わないんだね。
 まあ、学歴をつけて上昇しようと思いすぎると、中国や韓国や日本みたいに、教育に金がかかりすぎるから生まない→少子化の進行に拍車がかかるけど。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ショコラ著「65歳から心せ... | トップ | 山本文緒 「自転しながら公... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事