ケイの読書日記

個人が書く書評

「屍衣の花嫁」 平井呈一編訳 創元推理文庫

2021-09-24 16:41:55 | 今村夏子
 この「屍衣の花嫁」という短編は、私が今読んでいる「世界怪奇実話集」の一番有名な話らしいので期待して読んだが…イマイチですねぇ。

 せせこましいロンドンから脱出したいと思っていた兄と妹2人は、素晴らしい貸し家を見つけた。外国住まいの金持ちが所有する邸宅で、そのお屋敷の左翼の棟だけ3か月間家賃無料だという。あまりにも好条件なので、なにかいわくがあるのではと怪しんだが、やっぱり幽霊屋敷という噂だ。しかし、幽霊が出ても家賃がタダは魅力なので、下働きしてくれる夫婦を連れて引っ越す。

 こういったイギリスの屋敷って、どうしてこんな不便な所にあるのかな? 領主の城だったから? だけど鉄道の駅からは遠いし、お店のある村の中心部からも遠い。どこで食料品を調達するんだろう? だいたい、屋敷の門から屋敷に行くまでに広い並木道や芝生を突っ切らなきゃたどり着けないなんて、庭師が何人いるんだよ!! とにかく使用人が大勢いなくちゃ生活できない。 
 だから、無料でも人に貸して、その人たちに掃除してもらいたいんだろう。

 下の妹は、兄と妹がせっせと仕事している間(上の2人は画家だった)屋敷内をまわり、円天井の廊下に出る。そこは天井に採光窓があり、この屋敷の人々の肖像画がずらりと掛かっていた。その一番奥に、愁いを帯びた美しい男女の肖像画が掛けてあった。
 その男女が…出るんだ。何かの因縁があるんだろうが、とうとうその部分は語られず、兄と妹たちは幽霊に屋敷を追い出される。恋仲だっただろう肖像画の男女は、どうも悲劇的な最期を迎えたようだが、そこらへん全く書いてないのは不親切だよね。

P.S. 作品内に「日本製の凝った戸棚には、千金の値もするような珍しい陶器が飾ってある」という箇所があって、思わぬところで日本に出くわし、ドキッとした。
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