ケイの読書日記

個人が書く書評

林真理子 「中島ハルコの恋愛相談室」 文藝春秋

2021-07-24 14:49:09 | 今村夏子
 中島ハルコは歴史上の人物ではなく、林真理子の小説のキャラクター。50歳過ぎの厚かましいおばちゃん。50過ぎとしては美人だが、年齢は誤魔化せない。社員50人の美容関係の会社を経営している。本人曰く。美人社長として有名で、マスコミからいつも取材されるようだ。

 一方、語り手は30代後半のフードライター。比較的、お金持ちの家のお嬢さん。(フードライターってのは貧乏な生まれ育ちだとなれないんだって。裕福な家庭に育って、子どもの頃から美味しい物を食べなれている人間でないと、この仕事には就けないらしい。そんなもんかなぁ)不倫関係の愛人とは10年も続いている。その顛末をハルコに相談している。だからタイトルが『中島ハルコの恋愛相談室』

 よくある設定だが、あまり無いのが中島ハルコのキャラ設定。なんと!!珍しい事に、名古屋生まれ名古屋育ち中高を金城学院出身のお嬢様ってことになっている。中学・高校が公立なのが当たり前の名古屋では、私立の金城中学・金城高校出身者は『純金』といわれ、裕福な家庭のお嬢様の証なのだ。(もちろん大学もあるが、大学はお嬢様でなくても入れるので、価値はグッと下がる)
 いやぁ、林先生、よく調べましたね。他にも「娘が3人いれば身上潰れる」という諺もあるし。お嫁に行く時もっていったタンスや電化製品、和服をズラッと座敷に並べ近所の人に見せる風習もある。(今では廃れてると思うけど) 
 何よりも驚いたのが、林先生が名古屋のそういった習慣を好意的に書いているのだ。名古屋人として素直に嬉しい。

 以前、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』を読んだとき、その作品の主人公も名古屋出身の設定だったけど、筆者があまり良いイメージは持っていない雰囲気だったので、気分が悪かった。
 確かに閉鎖的な土地柄だと思うよ。あまり地元を離れたがらない。私もそう。地元を離れなくても仕事がたくさんあるからだと思う。もちろん職種によっては、どうしても東京に出た方が有利という事はあるだろう。この中島ハルコさんもそう。今は東京にオフィスを構えている。でも、お母さんやお兄さんが名古屋にいるものだから、いっつも帰っているよ。
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