ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「ぎっちょんちょん」 新潮社

2017-12-15 16:22:11 | 群ようこ
 表紙絵が、鶴・亀・浴衣姿の女の子・鳥居・三味線・三味線を抱えたお姐さん・猫・うさぎ・椿 などなど可愛らしいイラスト一杯だったので、思わず手に取る。
 群ようこが、近年着物や三味線に凝っているのは知っていたので、そういった話かな、と思って読み進めたが、そういった話だった。

 エリコは、短大卒業後、結婚式場に勤め、そこで知り合った男性と結婚、1人娘を授かるが離婚する。夢中で家事・育児・仕事と駆け回るが、子どもが大きくなり手がかからなくなると、三味線と小唄を習う事にする。祖母が時おりくちずさんでいたから馴染みがあったのだ。
 なんといっても30代半ばでのお稽古事なので、なかなか覚えられず、初めは本当に苦労するが、エリコは三味線が向いているのが、めきめき上達する。

 ここら辺になると読むほうもダレてきて「で、最終的に三味線や小唄の名取になってめでたしめでたし、で終わるのかしら? 退屈な小説だな」と思っていたら、話はあらぬ方向に。
 このエリコさん、39歳で会社を辞め、芸者になっちゃうのである!!!!!
 えええ!!! 39歳で芸者になれるの?!

 どうも、なれるらしい。もちろんお座敷がかからなければ収入はなく、置屋に払う5万円の登録料も自腹を切らなければならないが。このエリコさんも、今のところ会社員時代の貯金を取り崩して生活している。
 でも、全国から入門希望者が集まる京都の花柳界ならともかく、東京の花柳界は人手不足が顕著らしい。特に、地方といってエリコさんがやりたがっている三味線専門の芸者さんは、風前の灯みたい。
 踊りは華やかだから、憧れる人は多いだろうけど、三味線だけだと地味だものね。
 お稽古代、美容院代、着物代etc かかるしね。

 あーーーーー、エリコさん、騙されてるんじゃない? 言葉は悪いが、金づるになっているような…。

 作品中に、端唄も色々紹介されていて、面白いものが多い。この本のタイトル『ぎっちょんちょん』も、〔丸い卵も切りようで四角、ぎっちょんちょん ぎっちょんちょん 物も言いよで角が立つ おやまかどっこい どっこい どっこい よーいやな ぎっちょんちょん ぎっちょんちょん〕から取ったようだ。
 他にも〔猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが、猫が猫が足駄はいて 絞りの浴衣でくるものか オッチョコチョイノチョイ チョコチョイノチョイ〕など、聴いてみたいです。猫好き必聴の唄。

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