ケイの読書日記

個人が書く書評

横溝正史「神楽太夫」・谷崎潤一郎「秘密」

2011-01-17 20:29:30 | Weblog
 この「神楽太夫」は終戦後、横溝が疎開先の岡山で書いた記念すべき復活第一作だそうです。
 戦時下の岡山で、世話になっている遠縁の人から茸狩りに誘われ、道に迷った時に出会った見知らぬ男から聞いた話、という設定になっている。

 神楽というのは、田の神様へ奉納する舞か何かだったろうが、それが段々変化して芝居になり、娯楽の少ない農村部では大きな楽しみだったようである。

 とにかく、その神楽がもとで喧嘩になって人殺しまでいってしまった事件は、たいしたトリックは無いが、当時の時代背景や地域の雰囲気がよく書かれていて、読み応えがある。
 役立たずの亭主を持つ若い女の元に、複数の男が夜這いにやってくるのは、昔の農村部ではよくある話のようだ。


 その横溝が、非常に大きく影響を受けているのが谷崎潤一郎。
 そうだよね。特別ミステリーを書こうと思っているわけじゃないだろうが、谷崎の作品のほとんどがすごくミステリアス。
 この「秘密」という作品も、男が行きずりで関係を持った女を、素晴らしくミステリアスに描いている。

 以前から思っていたんだが、どうして谷崎よりも川端康成の方が、うんと評価が高いんだろうね。
 川端の「伊豆の踊り子」とか「雪国」って美しいかもしれないが、とっても退屈な作品。
 それに比べ、谷崎の小説は退屈するヒマを与えてくれないほど刺激的です。

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