ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「白い兎が逃げる」

2011-09-08 12:19:37 | Weblog
 4つの中短篇を収録。その中でも、表題作の『白い兎が~』が一番長くて、一番出来がいいが、私としては『比類のない神々しいような瞬間』が最も印象に残った。

 この、大層な表現『比類のない神々しいような瞬間』は、エラリー・クインの言葉らしい。
 『Xの悲劇』の中で、ドルリー・レーンに「彼は死ぬ直前のほんのわずかな時間に、自分が残す事のできる唯一の手掛かりを残したのです。このように、死の直前の比類ない神々しいような瞬間、人間の頭の飛躍には限界がなくなるのです」と言わせているらしい。

 つまりダイイングメッセージ。

 もともと有栖川有栖は、ダイイングメッセージを好まず「犯人が判った後なら、どうにでも意味づけできる」と作中で書いている。
 私もそう思うよ。

 実際に、殺人事件の被害者で、ダイイングメッセージを残す人っているんだろうか?
 
 死の恐怖でパニックになったり、なんとか助かりたいとジダバタするのがほとんどで、犯人の名前を記すなんて建設的な被害者はいないんじゃないか?
 通り魔に襲われて倒れて死を待つ間、イヤガラセに、パワハラした上司の名前を書いたりして…。

 本当にダイイングメッセージらしいものが残っていたら、ワイドショーで大騒ぎだろうね。


 少し前、NHKで『探偵Xからの挑戦状』という番組をやっていた。その中の北村薫原作のトリックとドンピシャ!!!同じアイデア!
 日本の古典芸能を元にしたもので、有栖川の方が少し捻った構成になっている。
 発表時期も有栖川の方が早いだろう。

 このアイデア、推理作家の中で流行したんだろうか?

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