ケイの読書日記

個人が書く書評

中島京子「平成大家族」

2011-09-03 20:43:40 | Weblog
 平和だった緋田龍太郎の平穏が無残にも破られることに。

 嫁に行った長女は、夫の事業が失敗して、子どもを連れ親子3人で出戻ることに。
 次女も、高学歴共働き夫婦として幸せに暮らしていたはずなのに、離婚し実家に戻って来て仕事を再開する。お腹が大きくなってきたが、どうも離婚した前夫の子どもではないらしい。
 長男は、自室に引きこもったまま、はや30歳になろうとしている。10年以上、親と言葉を交わしていない。
 
 そこに、龍太郎の義理の母親(妻の実母)と、彼女の面倒をよく見るヘルパーさんが参入し、緋田家はもう大混線!!

 それぞれの登場人物の目から見た緋田家と、自分自身の生活を書いている11の短篇から成っていて、なかなか面白い。


 特に私がいいなと思ったのは、長女の一人息子・さとる(龍太郎の孫)の話。
 
 彼は小学校4年生から進学塾に行き、見事、有名私立の中高一貫校に入学、通っていたのだが、父親の事業の失敗で、学費が払えなくなり、地元の公立中学に編入する。
 ここで、新参者の自分がいかにイジメられないようにするか『公立中サバイバルマニュアル』を自分で作成し、学校生活に臨むのである。

 自分に親切にしてくれた女の子が、どうやらクラスの女子の中でイジメの標的にされていると知ったさとるの変わり身の速さといったら! あきれ返るが、しかし、その女の子がイジメがもとで転校する事になり、それを知ったさとるの後悔は本物だと思う。

 よく書けてるよ。中島京子さんにお子さんはいらっしゃるのだろうか?

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