ケイの読書日記

個人が書く書評

コリンズ「月長石」

2009-10-06 15:14:31 | Weblog
 とにかく長い。大々長編。図書館で借りて表紙を開いた時、3段で細かい文字がギッシリ印刷されているのを見て、借りたのを後悔した。
 でも、せっかくだからと自分を叱咤激励して読み始める。

 ストーリーとしては、1848年、裕福な貴族の館で起こった「月長石」と呼ばれるダイヤモンド盗難事件が書かれている。
 うーん、推理小説というより、盗難事件がキッカケで誤解が生じ、別れ別れになった1組の男女の愛の復活の物語、と言った方がいいんじゃないか?

 しかし、推理小説としても十分優れている事は確か。推理小説お馴染みの密室も首のない死体もダイイングメッセージも無いが、構成がすごくしっかりしていて、最後まで「誰が盗んだか?」の謎で読者をひっぱっていく。

 1人が記述するという形式ではなく、数人がそれぞれ自分の知っている事を記述して、真実に近づいていくという形式をとっている。
 第1部の、館の執事の記述は、名門貴族の執事らしく非常に回りくどい表現をしているので、とても読みづらい。しかも彼のパートは半分くらいあるのだ!

 でも、我慢して読み進めると、第2部クラック老嬢の記述部分はとても面白い。クラック老嬢はこの裕福な貴族の一門なのだが、どうゆうわけか貧しく、狂信的なクリスチャンで親戚に福音を説くので、皆から疎んじられている。
 彼女は裕福な親戚を嫉み、特に若くて美しいヒロイン・レイチェルを記述の中で猛烈に攻撃する。いやぁ、とっても痛快!

 だって、誰もがレイチェルの賛美者なんだもの。つまらない。こういう人がいないと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カーター・ディクスン「読者よ、欺かるるなかれ」

2009-10-01 14:54:12 | Weblog
 女流作家マイナが催した、読心術師ペニイクを迎えての夕食会。招待客の心を次々と当てたペニイクは、さらにマイナの夫の死を予言する。
 はたして予言の時刻、衆人環視の中で、夫は原因不明の死をとげた。
 ペニイクは念力で殺したと言うが、それでは逮捕できない。遅れて到着したH.メルヴェル卿にペニイクは新たな殺人を予告するが…。

 カーにしてはオカルト色が薄く、ちょっと物足りない。肝心のトリックだが、偶然がそんなに何度も続くものか…とは思うが、なんといっても、カー大先生だから納得するしかないね。


 1937年のイギリスという設定だから、時節柄、ヒットラーとかムッソリーニとかいった固有名詞が出てくる。
 ペニイクよ!念力で人が殺せるなら、マラリヤで死にかかった老人を殺すんじゃなくて、イギリスの敵・ヒットラーやムッソリーニを呪い殺さんかい!!
 それができれば、英雄になれるゾ!

 同じ事が現代の日本でもいえる。
 自称・超能力者の皆さん、せっかく超能力があるのなら、タレントの結婚年齢なんか当てるんじゃなくて、キムジョンイルの余命が何年か(何ヶ月か)当ててみぃ!せっかくの能力を世界平和に役立ててください。超能力がもし、本当にあるとするなら…ね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする