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日本の基礎研究の底力

2018-09-13 21:39:37 | 徒然

Yahoo!のトピックスを見ていたら、「日本の基礎研究から応用研究への底力」を感じるような記事があった。
NEWSポストセブン:がん再発率75%下げる夢の新薬「ペレチノイン」が最終治験に

この新薬を研究開発をしたのは、興和という創薬からOTC薬まで製造をしている企業だ。
一番馴染みがある薬は、「キューピーコーワ」だろうか?
そのため、OTC薬のイメージが強く私自身創薬のイメージは、まったくなかった。
というのも、今の創薬(あるいは新薬)を中心に行っている企業は、欧米の製薬企業の傘下になったり業務提携をするなど、巨大化しているからだ。
何故なら、新薬の開発には膨大な時間と労力、何よりお金がかかるからだ。
そのような状況の中で、興和がほぼ単独で研究開発を進めて、このような新薬を創り出した、ということが驚きだった。
その意味では、高額ながん治療薬として話題になった、「免疫チェックポイント阻害剤・オプジーボ」を研究開発した小野製薬と同様の驚きがある。

ここ数年の新薬の研究・開発の基礎となっているのは「ヒトゲノム解析」によって、得られたデータを基にした研究だ。
それでも、このような創薬の為に重要なのは、「ヒトゲノム解析」によるデータを活用するための基礎研究の蓄積が必要だろう。
興和のHPを見ると、2010年には既に学会で第Ⅱ相、第Ⅲ相の治験結果を発表しているようなので、随分前からこの新薬を開発していたことが分かる(第Ⅱ相治験は、少数の患者を対象とした治験、第Ⅲ相治験は大規模治験のこと)。
興和:肝細胞がん再発抑制「ペレチノイン」の第Ⅱ/第Ⅲ相臨床試験データ・・・・(注意pdfファイル)

面白い(といっては不謹慎だが)ことに、この「ペレチノイン」という新薬の効果となる仕組みが確認されたのは、治験が始まった後からのようなのだ。
理化学研究所:肝がん再発予防薬の作用メカニズムを解明(2016年1月8日 リリース)

2010年の治験の時には、まだまだ「ヒトゲノム解析」が高額で時間もかかっていたことを考えると、「ヒトゲノム解析」による「ゲノム医療」としてのスタートではなく、様々な可能性を考える中で薬剤を組み合わせて誕生したのかもしれない。
というのも、化学療法(=抗がん剤など薬によるがん治療)専門医の先生から「昔から使われている抗がん剤の中には、その効果は認められるのだが、効果の仕組みがはっきりしないモノがある」という、話しを随分前に聞いたことがあるからだ。
そして、そのような薬の開発にはこれまでの「がん」についての、基礎研究とデータの積み重ねと研究者のひらめきがあったからこそ、できた薬なのかもしれない。

「がんの治療薬」という分野では、日本は基礎研究はトップクラスだが、応用研究となると欧州の製薬企業に劣る、といわれてきた。
小野製薬の「オプジーボ」の研究・開発以来、日本の基礎研究+応用研究による、新薬への期待が高まりつつあるように感じている。
興和は製薬企業の中でも、欧米の製薬企業に比べれば規模も資本力も小さいと思う(実際のことはわからないのだが、日本の製薬企業で一番大きな企業は武田製薬)。
企業規模では劣る興和という企業が、「がんの予防薬」という新しい切り口の新薬を研究・開発した、ということは日本の企業の基礎研究の底力だと感じるのは私だけではないと思う。